インタビュー

「セガ 3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE」インタビュー

「ターボアウトラン」-「バーチャレーシング」と接戦の末のアンケート1位!「バーチャファイター」も当初は予想に

奥成氏:次はいよいよ、目玉の新規移植タイトルですね。まずは、下村が以前のインタビューでも話したように、「アーカイブス2」を購入頂いた方からのアンケートで決めようというもので。

 そうして選ばれた1位が「ターボアウトラン」です!

【ターボアウトラン】

 人気となったドライブゲーム「アウトラン」の続編として、1989年にアーケードにリリースされた。前作の舞台だったヨーロッパから、「ターボアウトラン」ではアメリカ大陸を舞台にニューヨークからロサンゼルスを目指す。車へのチューンアップパーツという要素や、パトカーとのチェイス、ターボでの急加速など、前作にはなかった様々な要素が追加されている。

下村氏:アンケートの最終確定までに「ターボアウトラン」になったり、途中まで「バーチャレーシング」が強かったりもありましたが、どちらになったとしても結果に合わせられるように開発体制を組んでもらっていました。

 それこそアンケート結果を嘘つくことだってできたかもしれないですけどね。でも、そこでユーザーさんの信頼や期待を裏切ってしまったら……このプロジェクトは成立しないと思っています。嘘をつくメリットもないですしね。

奥成氏:12月末に「アーカイブス2」が発売されてからのアンケートでしたが、あのアンケートって送ってもらった方へのプレゼント締め切りが発売から3カ月後なんですよ。なので、そこをアンケートの最終締め切りとしています。逆算的にみても、それ以上待っていると開発期間が厳しくなるというのもありました。

 それで、1月の速報時点だと「バーチャレーシング」が1位。少し後に「ターボアウトラン」が続くという状況でした。3位以下は東京ゲームショウのステージでも紹介させて頂いたタイトルがある程度上下しつつ……という感じでしたね。

 下村が最初に想定していたのは「バーチャレーシング」と……「バーチャファイター」。そのどちらかが1位になるんじゃないか、というものだったんですよ。

 「アーカイブス2」の発売時期から社内の「バーチャレーシング」と「バーチャファイター」のデータを探し集めたりもしていたんです。昨年の12月あたりの話ですね。もちろん「アーカイブス3」を発売できるというのが決まるのはもっと後だったんですけど、発売の可能性を見越してやれることをやっておこうという感じですね。

 そんなこともしているなか、1月にアンケートの速報をみると「バーチャレーシング」は予想通り1位だったので「よしよし」となったものの……「バーチャファイター」は10位以下だったんですよね。結構意外でした。

下村氏:最初書いていた企画書の中には、「バーチャレーシング(アンケートの結果次第で『バーチャファイター』の可能性もあり)」みたいに書いていたんですけどね。社内でプレゼンした際にも、その点には誰も違和感もなくて。とは言え、結果としては全然違ってたんですけどね。

東京ゲームショウ2016でのステージイベントにて公開された、アンケートの最終結果

――東京ゲームショウ2016のステージで公開していたアンケート最終結果だと「バーチャファイター」は9位ということでしたし、最終的に少し伸びた感じですが……格闘ゲームはこのシリーズを追っているファンの人のツボとは、またちょっと違ってくるのかもしれませんね

下村氏:そうなんでしょうね。

堀井氏:格ゲーブーム以前から初期のタイトルを復刻してきたプロジェクトですからねー。

奥成氏:僕らとしては、初代の「バーチャファイター」は今オリジナルを手軽に遊べるものがないですし、“3D立体視でポリゴン世代初期のタイトルをやってみたい”というのもあったんですけど。でも、ジャンル的にも最新作の方が喜ばれるのかもしれませんし、「バーチャファイター 5 Final Showdown」は「龍が如く6 命の詩。」に収録されてもいますしね。

 アンケートの他を見ると、まぁレースゲームが滅茶苦茶強いんですよ(笑)。「アウトランナーズ」や「デイトナUSA」も入っていますし、「みんなレースゲームが好きなんだな」って。

――体感筐体もの、レースもの、というところですね

奥成氏:今までリリースしてきた中でも「アウトラン」が「スペースハリアー」と並んで人気ですし、前回の「アーカイブス2」で要望があって収録したのも「パワードリフト」だったじゃないですか。僕らとしてはレースゲームは結構やってきたからさすがにもう……と思いつつ、それでも「バーチャレーシング」は来るかなと思っていたんですけど。でも、他のレースゲームもランクインしてきて。すごいなと驚かされましたね。

――今回にポリゴン世代のゲームを入れるかどうかは難しいところですよね。今日は奥成さんが「アーカイブス3」収録タイトルのパッケージをご用意頂いてますが、こうして眺めてみると「スプライト表示のゲームで揃っているのが統一感があって良い」って感じるところもあります。

奥成氏:ユーザーの方にも「ポリゴン世代のタイトルはありなのかな?」みたいなところがあったかもしれませんね。それに「ギャラクシーフォースII」のインタビューとかでも、「スプライトの方が立体感が出るんですよ!! 」とか言ってきましたからね(笑)。

――(笑)

堀井氏:言ってた(笑)。実際、スプライト表示のゲームは面白い立体感が出るんですよねー。

奥成氏:ともかく、「バーチャレーシング」と「ターボアウトラン」がアンケートでは競っていたので、エムツーさんと「念のため『ターボアウトラン』のデータも集めておきましょう」という話をしていたのが2月で、そうしてエムツーさんが「ターボアウトラン」の検証を進めるなか3月に最終集計をしたら「ターボアウトラン」が「バーチャレーシング」を抜くという結果に。

堀井氏:びっくりですよ、ほんと。

奥成氏:僕はそれこそ、「このまま『バーチャレーシング』が1位だろうから『ターボアウトラン』の検証するぶんも『バーチャレーシング』をがんばっておいた方がいいんじゃない?」って言っていたぐらいなんですけどね。エムツーさんは「いや、まだわからないし!」と両方を準備していて。最終的にはまさかの「ターボアウトラン」が逆転1位だったので、エムツーさんの読みが当たったという感じですね。

下村氏:最終結果が出たあとに社内でも、「『バーチャレーシング』の方がいいんじゃない?」みたいな意見があったりもしたんですけどね。でも、ユーザーさんが求めているものを出すべきでしょう。

「ターボアウトラン」-「3D アウトラン」に取り入れられたものは当然のように「ターボアウトラン」へ

ドライブゲーム「アウトラン」の続編、「ターボアウトラン」。チューニングパーツを選択できたり、パトカーとのカーチェイスがあったりと、いろいろとパワーアップしているのだが、あまり大きなヒット作にはならなかった

奥成氏:今回「ターボアウトラン」がアンケートで1位を取ったことは僕も意外でしたし、SNSなどでもみなさんからの「意外だった」という感想を見かけました。たが、そこは偉大なる「アウトラン」というタイトルの続編「ターボアウトラン」が、これまであまり移植に恵まれていなかったということがあったのではないかと推測しています。

 ここにメガドライブ版がありますが、これが……メガドライブの「アウトラン」は8Mbitカートリッジだったんですが、なぜか続編の「ターボアウトラン」は4Mbitカートリッジでのリリースだったんですよ。

堀井氏:「なんでだよ!」って感じですよね。

奥成氏:アザーカーが3種類ぐらいしかないとか、かなりダウンサイジングされていて……。不思議な感じになっていますね。あとはFM TOWNS版がありましたが、国内ではこの2作ぐらいしかありませんね。

 ただ、BGMに関しては「アウトラン2 SP」に収録されたり、S.S.T.BANDのアルバム「SUPER SONIC TEAM-G.S.M.SEGA3-」に収録されていたりもしていますし、いろんな思い出のあるタイトルなんですよね。その反面、ゲームを実際にプレイされていた方はそれほど多くないのかなと。「パワードリフト」の後にそれほど間を開けずに稼働になったものなので、セガ3D復刻プロジェクトの体感ゲームとしては1番新しいタイトルだったりするんです。「パワードリフト」のあとに、当時3年前のアウトランボードを使った「ターボアウトラン」は、「ちょっとショボくない?」と見えたのではないかと。同じ100円を入れるなら、「パワードリフト」に入れたんじゃないかなーと。

 でも、今改めて「ターボアウトラン」を見ると、それほど大きな違和感を感じないんですよ。今となっては五十歩百歩というか、「アウトラン」、「アフターバーナーII」、「ギャラクシーフォースII」、「パワードリフト」という流れにおいて、このゲームを素直に見ることができるんです。

 かつ、これはエムツーさんのミラクルなんですが、「アウトラン」を1年ぐらいかけて60フレーム化して、追加パーツでチューニングしたり……と「3D アウトラン」に入っていた要素は「ターボアウトラン」にもほぼ入ってるんですよね。曲は選択式ではないので追加曲などはさすがに入れませんでしたが、ワイド化して60フレームで改めて遊んでみると、素直にドライブゲームとして遊べるのではないかなと。

 それと、このゲームが当時あまりヒットしなかった理由には、難易度の高さが挙げられると思うんですよね。特にラスト3面……ステージ14、15あたりは相当難しくて、コンティニューしてもステージ頭に戻されるということもあり、クリアできない方も多かったのではないかと。

 今回の復刻にあたっては、スタート時に下画面でパワーアップパーツを選択できるようにしていますし、1度進んだステージは4ステージごとですが選択できますし、難易度設定もアーケード版よりさらに一段下のものを作って、チェックポイントごとの制限時間も伸ばせたりと手を入れていただいたので、ほぼ誰でもクリアできるものになったのではないかと思います。

――「3D アウトラン」に取り入れられたものは、当然のように「ターボアウトラン」にも入っていると

奥成氏:エムツーさんとしては、「3D アウトラン」でやった追加要素に関しては……。

堀井氏:ないのは「話にならん」という感じはありますね。「なんでできないの?」ってまず社内で言われますから。

奥成氏:2作は同じアーケード基板で動作していたので、プログラマも「アウトラン」ではサブプログラマだった三舩(敏)さんが「ターボアウトラン」をメインで手掛けられていて、血統としては正しいんですが、三舩さんが「アウトラン」でできなかったこと……ビルのような大きなオブジェクトを出してみたりとか、ターボだったり、パトカーとのカーチェイスや、ライバルカーとのやりとり……横に乗っているガールフレンドがチェックポイントで乗り換えるとか、いろんなことをどんどんやっているんですね。そのぶん、エムツーさんは「3D アウトラン」の時のように「ターボアウトラン」に新たな要素を加えるために、さらに苦労を重ねることになっているという。

堀井氏:そうですね。でもその苦労はうまくいきました。社内的にも「アウトラン」をやっていたことは大きかったと思いますね。

各種の筐体モード再現や、原作よりもさらに優しい難易度の追加など、これまでのセガ 3D復刻プロジェクトシリーズで行なわれてきた積み重ねがばっちり収録されている