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セガ3D復刻プロジェクト最新作「3D ガンスターヒーローズ」インタビュー

背景を1,500に分割して3D立体視化! シリーズ開発の技術の蓄積で困難を克服

6月24日 配信予定

価格:800円(税別)

CEROレーティング:A(全年齢対象)

プレイ人数:1人~2人

ついに人気の「ガンスターヒーローズ」が3D立体視化された

 セガゲームスは、ニンテンドー3DS用「セガ3D復刻プロジェクト」第2期追加タイトルの第2弾「3D ガンスターヒーローズ」を6月24日より配信を開始した。価格は800円(税別)。

 「ガンスターヒーローズ」は、メガドライブ用アクションシューティングとしてトレジャーが開発した往年の名作で、未だにファンの多いタイトルでもある。ワラワラと数多くの敵が襲ってくる中、シューティング要素だけでなく、つかんで投げたりスライディングで敵を蹴散らすなど、爽快感あふれるアクションには定評がある。

 通常モードだけでなく、すべての武器が常に使用可能となる新モード「フルスペック」や、体力が倍になるメガライフモードなどプレイしやすくなる追加要素も用意されている。ローカルプレイによる通信プレイは、すべてのモードで可能で、2人協力プレイも楽しめる。

 奥行き感のあるステージで繰り広げられる、多彩な攻撃を仕掛けてくる多関節キャラクターのボスや、巨大戦艦上での戦いなど、当時ハードの限界に挑んだ様々な画面演出を含め、全てを3D立体視で楽しめる。

 今回は、弊誌の恒例企画としてセガゲームスの奥成洋輔プロデューサー、制作を担当されているエムツーの堀井直樹社長のスペシャルインタビューをお届けする。

【3D ガンスターヒーローズ ゲーム紹介3D映像】

背景を1,500に分割して3D立体視化! シリーズ開発の技術の蓄積で困難を克服

リリースされる度にお邪魔してお話を伺っている、セガゲームスの奥成洋輔氏(左)と堀井直樹氏(右)

―― まずは「ガンスターヒーローズ」を選択した理由をお伺いできればと思います。「ガンスターヒーローズ」は発売当時、技術のあらん限りをつぎ込んで作り込まれたタイトルだったと思います。技術的にすごく高度なことが行なわれているタイトルとして、「(復刻は)ちょっと無理だろう」ということはなかったのでしょうか?

奥成洋輔氏: はい。最初に「セガ3D復刻プロジェクト」を立ち上げるにあたって、アーケードから数本、メガドライブから数本という形でタイトルを選んだわけです。バーチャルコンソールの時もそうですが、最初にメガドライブ自体を開発(エミュレート)できれば、新たなアーキテクチャ的な問題が出にくいので、スケジュールが大きくぶれることなく開発できるだろうというのが最初の想定にありました。

 第1期の8タイトルのうち、5タイトルがメガドライブで、残り3タイトルがアーケードになっています。これは(開発の難しい)アーケード3タイトルを確実に開発するためなんです。メガドライブからの移植タイトルをスケジュール的に組み込むことで、全体のスケジュールを読みやすくしていたんです。各ゲームがハード的にいろんなことをやっているアーケード用移植タイトルで想定外の問題が起きても、メガドライブ用ソフトを安定的に開発している中で吸収できるようにしたんです。

 シリーズのインタビューでも話しましたが、第1期のラインナップに過去PS2やWiiで移植実績があるタイトルを選んだのも想定外の問題をなるべく減らしてスケジュールを守るためのものでしたが、その中でも特にメガドライブ用タイトルはスケジュールを盤石にするためでした。メガドライブ用タイトルが5タイトル組み込まれているのはそういった意味がありました。

 このあと第2期のアーケードタイトルは、第1期のアーケードタイトルの移植で実績を積んだので、スケジュールが想定できるようになり、これまで我々が移植したことのない「アウトラン」なども移植できました。そして今回開発している第2期での新しい3本は、想定外のアーキテクチャの問題とは別の理由で、元々第1期に入れようとしてできなかったタイトルを選んでいます。当時エムツーさんに開発をお断りされたタイトルの復活です。

堀井直樹氏: 「3D ベア・ナックルII」の時にお話した、「そもそも背景が立体視にならないんじゃないか?」というお話のように、「ガンスターヒーローズ」もやはり、背景をきちんと立体視にすることが不可能であるという話があったので(移植候補から)外させて頂いてました。例えばステージ4の背景がクォータービューではなく、斜め45度に奥行きの線が入っているパースがあって、これが3D立体視にしにくいのです。

―― 今回、ステージ1冒頭から、地面が立体化されていて驚きました。

奥成氏: 実は第1期のタイトルの中にも同じような表現で描かれた箇所はあるのですが、多少ごまかしてる部分があったりするのです。

 例えば「エコー・ザ・ドルフィン」では実は水面は奥行きに対して倒れてるんですけど、第1期ではそのグラフィックスを3D立体視にすることが困難だったので、水の水槽の壁のように書き割りにして、水面と空の板の間をイルカが泳いでるという表現になっていたのです。当時は技術的にこの水面のふたの部分を3D立体視化することは、当時は不可能だったのです。

堀井氏: 無理でしたね。あの部分は有名なゲームだと「ストリートファイターII」の地面なんかもそうなんですけど、地面が奥に倒れているんですね。

奥成氏: 「ガンスターヒーローズ」はゲーム全体を通して背景が全体的にパースのかかった立体的なビジュアルになっていて、「エコー・ザ・ドルフィン」のように割り切ってグラフィックスとして3D立体視化すると、カッコ悪い3Dになってしまうんです。別の問題としてそもそも手数ということもあるのですが、見栄えのする3D立体視化が技術的に難しかったのも大きいんです。

―― 第1期開発当初は難しかったんですね。そんな中、開発が進み技術が蓄積され、解決策が見え始めたので、「ガンスターヒーローズ」の開発にゴーサインが出たということでしょうか?

堀井氏: その辺はいろいろ前後するのですが、まずプログラマーが「ガンスターヒーローズ」に登場する多関節のキャラクターを勝手に3D化して、スクリーンショットを私に送ってきたものの出来が良かったんですね。

 そしてもう1つが、前述の懸案だったステージ4の前半部分の背景を、背景グラフィックスのパーツを細かく切り刻んで1,500に分割して3D立体視を描けば破綻のない立体視が実現できるということがわかったので、ここがクリアできれば開発が可能だと。移植を期待されているタイトルですし、僕らもできることならすごく移植したいとすごく思ったので開発を始めました。

奥成氏: 全世界で発売できることになったことも大きかったですね。実はメガドライブ用タイトルは、当時とまったく同じで、日本ではそんなに反響があるわけではないのですが、逆に海外では特別人気が高かったんです。セガ3D復刻プロジェクトの第1期の結果を見て、海外で続けるならメガドライブのタイトルを移植すべきだろうという話がありました。そんな中、開発予算もさらに増やしましたので、開発にかかる手数の多さもカバーできるようになったんですね。

 ですから、今回の「3D ガンスターヒーローズ」にしてみれば、第1期のメガドライブタイトルの移植で言うと、3タイトル分の作業量になるわけです。

堀井氏: 実際に作業を行なったら、3タイトル以上の工数が掛かったという話も。先ほど話した背景を1,500のパーツに分割するシーンが1番多いと思っていたのですが、それを超える2,000パーツを超える分割を行なわなければならないシーンがあり、これがもう話しにならないくらいで、開発期間がプログラマー1人で14カ月以上かかっている状況なんです。

毎度お馴染みこだわりひとつ。画面モードの切り替えも用意されている

―― それだけ工数が掛かっているのですね。1年以上も前から! でも、それは商品化するという考えの元、算出されていたのですよね。

奥成氏: いや、無いです。

―― え、無いんですか!? じゃあタダ働きになる可能性もあったってわけですか?

奥成氏: そうですね。そもそも僕はエムツーさんが「ガンスターヒーローズ」を開発してるのを知らなかったのです。何しろ日本向けの第2期最終タイトルの「サンダーブレード」の開発が終わった時点で、このプロジェクトは本当は終了していたはずでしたから。

 このプロジェクトの第2期スタートの時点では、海外ではリリースできるかわからないという想定だったのです。ですがすべての開発が終わってから、この第2期を海外でリリースするという話が出ました。

 日本用にプロジェクト第2期を立ち上げた時は、日本単体で利益の上げられるタイトルを選んだので、予算と想定本数を見積もった際にメガドライブ用タイトルは入れられなかったんですね。その時は、「アフターバーナーII」から「サンダーブレード」までの販売本数がよほど上振れしない限りは、「サンダーブレード」が最終タイトルになるだろうということで進めていました。唯一、もし1年遅れでスタートした海外でヒットすれば、メガドライブの第2期もやれるかもしれないねとは話していて、それをエムツーさんとも共有はできていたと思います。

堀井氏: 「(制作)できるかもしれない」という方と、「もう1個をもうやってる」っていう方で、メガドライブで続けられたらなという想いがあったのですけが、開発はそれどころじゃなかったですね。

奥成氏: だから、もう1度2年前の「3D ベア・ナックル」のインタビューとか「3D ザ・スーパー忍 II」のインタビューなどを読んでいただくとわかるんですが、やけに堀井さんが「ギガドライブ最高!」って話をしているのですが、あれは読者の皆さんだけじゃなくて僕に対して「メガドライブ用タイトルをこの後も出したい」というアピールが含まれているんじゃないかと思うんです。

堀井氏: ああ、そうそう! 今だから言えるけど……ってバレバレか。

奥成氏: あの時点では第2期のラインナップを策定中だったので、第2期にメガドライブ用タイトルを入れてほしいというお願いを、堀井さんは遠回しにしてるんですよね。

堀井氏: そうですね。ここまで開発していましたし。

―― 毎回そうなんですけど、純粋に「開発したい!」という想いがスタート地点ですよね。会社という中で作ってますから、どうしても出せる出せないがでてきますが。

奥成氏: まあそういう意味で言えば、その後アメリカ・ヨーロッパでの反響を見て今回続けることができたというのは、堀井さんの目論見通りになりましたね。

堀井氏: 誠にありがたいことです!

【スクリーンショット】

メガドライブを3DSで動かすのは大変なんです! 普通なら不可能なんです!!

「3D ガンスターヒーローズ」をプレイしながらいろいろな制作秘話を語っていただいた

―― 「ガンスターヒーローズ」の話に戻りますが、ユーザーさんからの要望は高かったんですよね?

奥成氏: 「ガンスターヒーローズ」はこれまでもいろいろなハードに移植してきたんですね。移植が何度もされているということは、確かな実績がある証拠なので、優先度だったら最優先で、本来であれば第1弾に入っているべきタイトルなんですよ。

堀井氏: そりゃあ、そうですよね。

奥成氏: ただ3D立体視にするということは、単純な移植より1つハードルが上がります。元々メガドライブのバーチャルコンソールがやりたいというところから始まったプロジェクトではありますが、今日日ただ普通に移植したのでは、中々3DSのユーザーさんにアピールできないだろうという想定もありました。実際ゲームギアのバーチャルコンソールは非常に苦戦しましたし。とはいえ3D化に関する問題のために第1弾で「ガンスターヒーローズ」を選べなかったのは無念な結果ではあったんですよね。

―― 逆に技術的な問題点を解決できたという点では、ユーザー側からすれば(いまこの時期に)より完成度の高いものを出してもらえたというのが、ある意味いいかもしれないですよね。

堀井氏: 完成度が高まったという点では、本当に間違いないですね。「ガンスタヒーローズ」を3D立体視にしたらすごいと思ったけど、第1期で移植していたら「そこまでじゃなかったね」って感じになってたと思います。そこは前述の「エコー・ザ・ドルフィン」の例も含めそういった技術的な蓄積が生きていて、我々の「ギガドライブ」というアーキテクチャを若干拡張できるようになったからこそ可能となったことなんです。これらは、第1期最後のメガドライブ用タイトル「ザ・スーパー忍II」の開発中に初めて導入された技術なので、第1期で「ガンスターヒーローズ」の移植をしてたら全然ダメだったでしょうね。

奥成氏: 「セガ3D復刻アーカイブス」に収録した「スペースハリアー」では円熟した技術で再度移植したことで、シリーズ最初に出したものと最後に出したものを比較すると同じゲームの移植でもここまで違って見えるというのを、図らずもお客さんが体験できるというケースがありましたが、ああいうことは普通はないので、結果としてシリーズ3年目に移植できて良かったですね。

 実は3年くらい前には、とりあえず「ガンスターヒーローズ」を3DSで動かしてみようというものがありまして、平面の背景を宙に浮いたキャラクターが歩いているだけのとてもお客様にみせるものではない立体視で。そこから実際に開発するタイトルを選ぶ中で「ガンスターヒーローズ」は「いまの期間と予算でこれに手を入れてくのはむずかしい」というの判断をエムツーさんがされたんですよね。

堀井氏: さすがに無理だと思いましたね。

奥成氏: その判断が結果として良かったという話になるんですね。

ゲームバージョンはもちろん日本版と海外版で切り替えることができる
かなりコアなサウンド設定

―― ただ単に移植するだけなら問題ないが、それを3D立体視にするというところが問題ということですよね。先ほどおっしゃった背景の他に、多関節キャラの存在も苦労の1つなのでしょうか?

奥成氏: 確かに結果的に「問題ない」ってことなんですけど、ここも忘れられがちなんですが、そもそもメガドライブを3DSで動かすのが大変なんですよ。普通なら不可能なんです。3DS用の「メガドライブ」エミュレーターがあって、そこにROMイメージを載せたら簡単に動くというような作り方はできないんです。

 3DSはWiiのように簡単には動かないので、ここまで手がかからないと動かせないんだったら、さらに何か付加価値を加えて全体のプロジェクトを動かそうというところから、「セガ3D復刻プロジェクト」は始まっています。

 実は第1期の頃に動いていた「ガンスターヒーローズ」は、動作スピードが半分とは言いませんが、7割~8割といったとこでしたね。

堀井氏: 秒間40フレームくらいの速度でしょうか。

奥成氏: こういった高速化みたいなスキルなどの部分ももちろん含まれた上で、今回の「ガンスターヒーローズ」は動いてるんですけれど。

堀井氏: そうですね。その辺が今回大きく影響していて、そこがどうにかなるようだったら、開発としては大きいですね。

奥成氏: 実際、移植が簡単かどうか?と言われると、「簡単じゃないんです!」とつい反応して言っちゃうんですけれども。

堀井氏: そうですね、本当に3DSで動くという点が、どうにかなるかっていうところが大きかったので。

―― 他のマシンでプログラムを動かすというのは難しいですよね。

堀井氏: そのまま動かそうというのがかなり困難なところではあります。

―― ちなみに背景を2,000パーツに分割する、1,500パーツに分割するというのはどうするのでしょうか?

堀井氏: 説明が難しいのですが、背景には手前の背景、奥の背景というのがあるのですが、今までの3D立体視ですと、手前にも奥にも立体視をつけるという感じでした。これを細かくパーツごとに分けて奥行きの指定を行なうことで、立体視になっていきます。奥行きごとに8×8ドットのパーツに分けることで、今回の3D立体視をつけていってます。

 凄くマニアックな話になりますが、メガドライブのエミュレータというアーキテクチャのもとで、どのような拡張要素を加えるかという話になっているんです。

 メガドライブはVRAMが64キロバイトほどありまして、64キロバイト以降のデータが空いてるんですよ。その64キロバイト以降に新たなVRAMを設定し、1回その状態で立体視にされていない状態のグラフィックスを格納して、矩形で切って新しいVRAMに展開するんですね。そのグラフィックスデータをずらして立体視にして、初めて3D立体視のグラフィックスができ上がります。だから新しい「ギガドライブ」には背景4面が追加され、それに使えるVRAMは64キロバイトで、この中で「ガンスタヒーローズ」は動いているのですが、3D立体視で転送している間にメモリがいっぱいになるので、スクロールさせながら読み替える方法をとっています。

奥成氏: 「ギガドライブ スーパーグラフィックス」的な感じですか?

堀井氏: スーパーグラフィックスじゃなくてRevision 2かな? 3D立体視を追加したいけど、64キロバイトしか無いですよって話です。

【スクリーンショット】

―― 通常画面の描画処理をこなしながら、バックで3D立体視の作業も行なっているということですね?

堀井氏: そういうことになります。実際メガドライブのVRAMの64KBの後ろの空いている部分っていうのは、実際のメガドライブでは使われていないのですが、テラドライブとかではRAMが搭載されているので、好きに使ってるんです。ですから使用例はあるのですが、今回はそれを立体視用のフレームバッファとして使っています。

 ですからこの機能は、あくまで背景から拾ってきたデータを元に描画されたものを矩形で拾って転送しているだけの機能しかなく、反転したり回転したりパレット変えたりという機能はなく、単に立体視を豪華にするために使っています。

奥成氏: 元々、メガドライブのスクロールは2~3面しか持ってないんです。プレーヤーが動いているところの背景が1面で、グラフィックスとしてはこの後ろに1枚の背景があり、たまに手前にも1面あったりして、それらに3D立体視表現を組み込み、あの多層の立体表現を実現しているんですよね。

堀井氏: それで1番大変だったのが、何度も言いますがステージ4の斜めにパースの付いた背景で、一点透視ではなく左斜め上の方にパースがかかってるのが難点だったんです。これを3D立体視にするには、本当にどうすればいいだろうというレベルだったんですけど、前述の通り切り刻んだら3D立体視にすることができました。

奥成氏: ここは「3D ベア・ナックルII」の斜めスクロールと同じ方法なんですか?

堀井氏: ちょっと違いますね。「ベア・ナックルII」は床が平面なんですが、「ガンスターヒーローズ」では床も含めて斜めになっているので、細々とやってくしかないんです。

―― でも先ほどのお話では、通常のグラフィックスを描画してさらに3D立体視のグラフィックス描画を行なっていると言うことは、倍、3倍で処理が行なわれていると言うことですよね。よく3DSで動きますね?

堀井氏: 開発していると本当に任天堂さんが消費電力とか考えながらギリギリで作っているのがよくわかるんですけど、3DSのハードウェアは使えば使うだけ「なんか伸びしろがまだあるんじゃないか」って思わせる設計になっていて、そこは舌を巻きますね。「まだ動くんじゃないか?」と。いやまあ実際動くんですけど。

―― でも「ガンスターヒーローズ」はこれまでの集大成になっているわけですよね? あちこちで開発で蓄えた技術を総動員して制作されていると。

堀井氏: はい。集大成な上にプログラマーが魂を込めています。

奥成氏: 本当にね。ありきたりな喩えで言うと、「3D ザ・スーパー忍II」や「3D ベア・ナックル」が“界王拳”だったらとうとう“超サイヤ人”になれました的な感じですね。

堀井氏: 最初にここまでの目標を提示されていたらできなかったと思うんですよ。たまたま奥成さんが次の電柱まで歩こうと言って、その電柱まで繰り返し歩いていってたら、フルマラソンを走っていたという感覚ですね。

―― それはゲーム開発への情熱じゃないんですか?

堀井氏: 好きでゲームの開発をやってるところはもちろんあるし、同じ思考を持っている人が集まるので、何かあっても問題解決のアイディアがたくさんあるとは思いますね。

奥成氏: 最初の「3D スペースハリアー」の開発が始まってからだともう4年にもなりますから。

“シャチョーレーザー”だけじゃない! いろんな武器を使って欲しい!

―― ゲームの動作だけでも大変ですが、更にプラスアルファが入っていますよね?

堀井氏: はい、相変わらず追加要素を盛り込んでいます。

奥成氏: 今回も2つのプラス要素が入っていまして、まず大きく変わるのが。「スタンダード」と「フルスペック」という2つのゲームモードが入っています。「スタンダード」というのは今までのメガドライブ版と同じです。

 「ガンスターヒーローズ」では、4種類の武器から2つを手に入れられて、この2つのアイテムを組み合わせることによって10通り、計14通りの武器が使えるのですが、この「フルスペック」モードでは最初からすべての武器を持っていて、常に切り替えられるような状態になっています。正確には、武器をなんでもいいからひとつ取ってゲージを2つにしたら、2つの武器を切り替えられるようになります。シチュエーションに応じて14通りの武器をどれにするか自分でいつでもLRボタンで切り替えられるんですね。

 それと、「ガンスターヒーローズ」はレッドとブルーという2人のキャラクターがいます。それぞれ操作性が違い、歩きながら撃てるレッドと撃つときは止まるけど下方向も撃てるブルーと2種類のキャラクターから選択するんですね。

 実は「ガンスターヒーローズ」のあとに、同じトレジャー開発の「エイリアンソルジャー」というゲームがあり、このゲームでは武器やアクション設定をゲームのプレイ途中で切り替えることができるんです。歩きながら撃つか、立ち止まって撃つかという部分が、「エイリアンソルジャー」のようにプレーヤーが途中で切り替えられたらどうだろうと考えて、切り替えられるようにしました。ですからゲームの中でプレーヤーができる要素を常に切り替えられるということで、「フルスペック」と命名されています。

 また、それとは別にメガライフモードというのも選べます。これはシンプルに体力が最初から初期設定の倍あるというヘルプモードですね。メガドライブ版には難易度としてイージー、ノーマル、ハード、エキスパートとあったのですが、これまでエキスパートでは歯が立たなかった人でも、今回メガライフモードにして遊んでみるとクリアできるかもしれません。こういった遊び方もできると思います。また、「当時はクリアできたけど、今はもう難しい」というお客さんのために凄くシンプルに体力を上げることで難易度を下げるというのももちろんできるわけで、2つのメリットがありますね。

堀井氏: エキスパートモードにすると、ボスの攻撃が変わったり増えたりするんです。もともとボスが多彩な攻撃をするゲームだったので、これはかなり良かったと思います。もしまだ難易度を変えて遊んだことがなかったら、是非メガライフモードでエキスパートをプレイして欲しいですね。

奥成氏: Wiiの頃バーチャルコンソールをやってた時に思ったのですが、今やるには難易度が高いとか、色々実感して、お客さんの反応を見ても、当時はクリアできていたのにという声があったんです。クリアできないのはやはり自分が悪いということになるのですが、メガドライブの「ガンスターヒーローズ」が出てから20年経ってるわけですから、そういったユーザーさんを切り捨てるのは酷な話ですし、やったことのない人にもどんどん挑戦して欲しいゲームですので、これらの追加要素をもうどんどん使って遊んでいただければと思います。

―― 「ガンスターヒーローズ」は当時でも結構難易度が高いと言われてたと記憶しています。

奥成氏: そこがまた面白いところで、家庭用ゲームなので難易度は自分で決められるんですよね。武器の中に有名な“シャチョーレーザー”というのがありまして、これは自動追尾型のレーザーが画面に出てくる敵を次々と倒してくれるので、プレーヤーは、ほぼ避けに専念することができるんですよね。これを使うとかなり「ガンスターヒーローズ」の難易度は下がるんです。なので、開発者の方のインタビューとか拝見していると、「これはぬるい武器だ」と、“シャチョーレーザー”という名前も当時同社の社長がいつも使っていて手を抜いているとかが由来だと言われていたくらいの武器なのですが、かなり初心者救済の武器だったので、楽すぎて初心者はみんなそれ選んでいたようです。

 ですから今回ぜひとも“シャチョーレーザー”から脱却して、このゲームは他にもいろんな武器で戦うことができるんだよ! ということを知って欲しいですね。これまでだと道中でランダムに武器を拾う場合ですと、なかなか“シャチョーレーザー”にすることに一生懸命になってしまい、他の武器を試してみるといざボスで中々クリアできないという事態が発生したりします。でも、フルスペックでやると、できるだけ他の武器でやって、これはかなわないと思ったら、途中で“シャチョーレーザー”発動というようなことができるんです。

―― 当時は“シャチョーレーザー”プレイになりがちだった人も、このモードで簡単に武器を切り替えてプレイして欲しいということですね。

堀井氏: それと、“シャチョーレーザー”は難易度エキスパートになると威力が弱いので使い手が減っていくんですよね。これでクリアされたらやだなぁ感が出てくるというか。なので別の攻略をしてもらえたらなと思います。簡単にクリアしてもねぇ楽しくないでしょ?

奥成氏: 確かに“シャチョーレーザー”は難易度ノーマル用の武器ですよね。エキスパートはキチンと攻略して楽しんで欲しいですね。

堀井氏: そうですね

「フルスペック」でそれぞれの武器の面白さを再度感じて欲しいし、「メガライフ」でぜひとも念願の難易度エキスパートをクリアしていただきたい

―― そういう意味でのゲームバランスというか、「ガンスターヒーローズ」自体の制作者の方達の凄さを感じることはありますか?

堀井氏: ありますね。密度感というか熱量というかがやっぱりあるので、今も作った方にお話を聞くと、「1年もかからないうちにコアメンバーでわっと作りました」という話をされるので、それはすごいなという気はします。

―― 一応お作りになる前に、(元の「ガンスターヒーローズ」を作られた)トレジャーさんに行かれたのですか?

堀井氏: それはしていないんですが、たまたまエムツーの社内に元トレジャーのスタッフがいて、話を聞きました。ちょうど背景を担当していた者だったので、プログラマーが背景の3D立体視について開発が終わった段階で、ひと通り通しで見てもらって、「ここはどうなんですか?」と根掘り葉掘りツッコミを入れてもらって、「20年前だから忘れてるよ」といろいろ話をしつつ、メインの部分では、ここは違うつもりで描いたけれど、表現としては3D復刻プロジェクトは立体視を楽しむプロジェクトなので3D立体視を優先させた方が良いなど、建設的な話をもらいながら作業を進めてきました。

―― では原作と少し違っているところもあるのでしょうか?

奧成氏: 2D視点で言えば、違っているところはまったくありません。

堀井氏: 違っているということなのですが、僕が見た時はそもそも立体になったらどうなんだろうという疑問があるような背景だったので、違っているとは思えないですね。「自分が描いた時は、良いと思ったように描いたけど、当時はそもそもそこまで深く考えていなかったし、当時はメモリが足りないからこういった表現になった」という話でしたね。

―― 昔の制作者さんも納得の出来ということですね?

堀井氏: 納得してくれているといいですね。完成版はまだ見てないはずなのでわかりませんが。

奥成氏: トレジャーさん自身からは、「もう好きな様にやってください。信じてます」といったような感じで頂きました。その分、スケジュールも最後の最後まで3D立体視化に費やさせていただきました。

―― では先ほど伺った追加要素に関しては年齢を経たプレーヤーに向けて用意されたということですか?

堀井氏: そうですね

奥成氏: まあ、メガライフは当時の腕が取り戻せない人へのサポートとしても、今時のゲームを遊んでいる人でも楽しめるように難易度を下げるという意味でも良いと思います。フルスペックに関しては、少し新しい遊び方になるので、武器の多彩さを楽しんでいただけるモードではないかなと思います。繰り返しになりますが、「ガンスターヒーローズ」をプレイする上では選択肢がたくさんあって、それをみんな知っていたんだけれど、実際はレッドの“シャチョーレーザー”しか使っていなくて、そういったお客さんが結構高い割合でいらっしゃると思うので、実はこのブルーのフィックスドショットが気持ちいいっていうことだったり、プレイしていろいろ試してみることでわかることがあると思うんです。

 武器に関しては、当時もこだわっていたプレーヤーさんがいっぱいいたはずなんですけど、中々それを知る機会がなかったので、今回は実際に色々試していただけるんじゃないかなというところがあります。せっかく3DSで遊んでいただくんだから、最初からフルスペックのメガライフにして遊んでいただくだけでもいいんじゃないかなと思っています。願わくば目指すのは難易度エキスパートかもしれないですけど。

堀井氏: そうですね。難しいもんは難しいですし。

奥成氏: 久々に遊ばれる人は、両方のモードをONにしても、最初はノーマルでも苦労されるんじゃないかなと思いますね。

―― 本当にひたすらこう気持ちいいじゃないですか、「ガンスターヒーローズ」って。投げて爆発して、ダッシュでスライディングで蹴散らして……本当に楽しくて。でも先ほどプレイさせていただいたのですが、やはりいろいろと忘れていますね。

堀井氏: 撃って、敵を投げて、蹴り飛ばしてボディープレスでなぎ倒してという中に駆け引きの要素があって、その駆け引きを自分なりに構築してプレイしていたんだと思うのですが、歳を取るとそれを忘れてしまっていて、「うまくいかないなぁ」というのがあると思います。ただそこはプレイしていくうちに、「ああ、こうだったよね」と思い出すんだと思います。そこはもう買ってすぐ投げ出すような感じではなくメガライフでクリアまで遊んで、そのカンを元に戻せばいいんじゃないかなと思います。

奥成氏: 僕もあのステージ4の「スゴロク要塞」が、いつも出目が悪くて、「1」ばかりが出て、さらに振り出しに戻されたりということが度々あって、ゲームオーバーになってしまう。ですからステージ4からスタートして(「ガンスターヒーローズ」は最終面以外ステージを選択して好きな順番でプレイできる)、それからステージ1をプレイするという自分なりの攻略パターンを久しぶりに思い出しました。

堀井氏: もうみっちりチェックして頂いてありがとうございます。

―― 確かにそれはありますよね。ステージを自由に選べますから、自分の苦手な面からクリアしていくという。

奥成氏: 「3D ガンスターヒーローズ」の開発初期の頃はメガライフが入ってなかったので、ステージ4をプレイしたときに「こんなに苦労していたっけ?」と自分で思ったんですよ。自分はすべてのボスと戦ってあるある程度こうやって倒せるってのを覚えているはずなのに、やはりゲームオーバーになってしまう。あれ? 俺下手になっちゃったの?と思ってしまうのですが、そこはそうだった出目が悪いんだったっていう

堀井氏: サイコロの目も、1から3までしかないしね。

ステージは自分の好きな順番に攻略することができる。最初に「スゴロク要塞」を攻略しておくという手もあり。「スゴロク要塞」で出目が悪ければ、(卑怯だが)早々に再チャレンジという手段もあり

難易度エキスパートで「セブンフォース」の残り5形態を実際にプレイして欲しい!

いま見ても驚きの変形を見せるアイディアの塊のような「セブンフォース」。ぜひ難易度エキスパートで全形態を堪能していただきたい

―― では、ここは特に注目してほしいといった点はありますか?

堀井氏: 背景を切り刻んでつくりあげた3D立体視は、もう本当に空間として成立していると思うので、是非見て欲しいです。あと、敵キャラクターの「セブンフォース」や、そういったキャラクターもかっこよくなっていますので、ぜひ楽しんでもらえたらなと思います。

 本当に最初の懸念であった背景の3D立体視及び多関節のキャラクターといっても奥方向に回転するものが結構少なかったのですが、作りこみをしてくうちにいいものになったんじゃないかなと思います。

 見ていただけるとわかるのですが、もう本当にびっくりしますよ。横スクロールアクションを3D立体視にする意味があるというのを感じ取っていただけると思うので、そこは楽しんでいただきたいです。

奥成氏: 「セブンフォース」などは多関節のキャラクターとしてのイメージが強く、攻略方法がパズルのようなイメージで記憶にあると思うのですが、今回の「3D ガンスターヒーローズ」の「セブンフォース」はですね、ロボットとしての存在感というかすごい立体感になっています。

堀井氏: 奥行きが追加されるだけで、ディテールが追加されたように感じられますよね。より存在感がある

奥成氏: 「セブンフォース」の多関節感はペラッとした紙人形みたいな感じだったのですが、3Dになるとそういった雰囲気が微塵もなくなりましたね。「前から見たらどんな感じなんだろう?」みたいな。

堀井氏: わかる!

奥成氏: 若干メカらしくなりましたね。

堀井氏: そうですね。重厚にもなりました!

―― ではそこまで頑張ってプレイしなければなりませんね。

奥成氏: はい。公開した動画では「セブンフォース」の変形のうち、2つくらいしか出してないので、残り5形態は是非実際にプレイして見て欲しいですね。どれもとてもいいメカになっていると思いますので。

―― 「ガンスターヒーローズ」では、メカも魅力的ですものね。ではユーザに向けて、コメントを頂ければとおもいます。

奥成氏: そうですね。「ガンスターヒーローズ」に限らないのですが、今までのセガ3D復刻プロジェクトの中で、1番空間を感じられるゲームになっているんじゃないかなと思ってます。存在感を楽しんでいただきたいですね。

 今回、なぜそのこのゲームが空間を感じられるのかというと、プレーヤーキャラクターが小さいからじゃないかなと思うんですね。というのはプレーヤーが小さいので、背景が隅々まで結構見られるんですよね。その見ることができる部分が広いので、細かく3D化されているのを見渡せるようになりました。そのゲームのデザインのおかげで空間を感じられるのではないかと思います。

このスクリーンショットの寸前に、森の奥からこの敵ロボットの腕が出てくる驚きの演出が用意されている。3D立体視化されたことで、より臨場感が増している

 これは元々「ガンスターヒーローズ」というゲームが、よく出来てるからだと思うのですが、1面の最後に森のなかを進んでいくと森の奥から、ロボットの手が飛び出してきて、せまってくるという演出があります。そういう部分に特に空間を感じることができるんです。ドット絵としては確かに同じグラフィックスで見ているのですが、3D立体視になったことで、全然違った感じの感動がグラフィックスから味わえるというところが今回の苦労の末に出来上がった成果じゃないかなと思います、

 当時遊んでいただいた人ほど、この空間を楽しんでいただけると思いますし、「ガンスターヒーローズ」を当時プレイしたことのない人でも、ここまで奥行きを感じられる2Dアクションゲームは無いんじゃないかなと思います。

―― それが「セガ3D復刻プロジェクト」の真骨頂という感じですね。

奥成氏: そうなんですよね。それでも2Dで遊ぶ方もいるとは思うのですが。

堀井氏: ずっと3D立体視でプレイしている人なら深度をあげて遊んでくれると思いますけどね。

 僕からのコメントは、移植しなければならないタイトルなのに、ちょっと問題が多すぎて逃げ回ってたタイトルと言っていいんですけど、今回ついに真正面からぶつかって、ねじ伏せることに成功したと自負しております。結果を楽しみにしてください。

―― ちなみに、もう1本「3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」のリリースが予定されています。「ソニック2」がトリということは、やはりそちらのほうが開発は大変なのでしょうか?

奥成氏: 次回の予告と言うことで言うなら、第2期で5本ゲームを作ろう、5本のメガドライブ用タイトルを3D立体視にしようと話したときに、1番大変なのが「ソニック」というのをエムツーさんからいただきました。最初にすごいのを作ってお客さんを驚かさないとみんながついてこないということで、1番大変な「ソニック」を最初に開発しようと話していたのです。

 「ソニック」を作ったというこで、レベルがどんどんあがっていったのですが、今回「ギガドライブ」シリーズの最終作として、トリも「ソニック」になると、今度こそ最後の最後という感じです。それはやっぱり開発が1番大変だからなんです。

堀井氏: みなまで言うなって感じですが、みなさんが気にしているあのシーン……具体的に言うとスペシャルステージなんですけど、「あのシーンをどうするんだ?」と言うのが次回の見どころになると思います。

奥成氏: セガ3D復刻プロジェクトのギガドライブ編は、「ソニック」に始まり「ソニック」に終わるという感じで、ある意味「ソニック」の進化が見られる感じですね。

 といっても「ソニック2」を大切にとっておいたわけではなく、ようやく「ガンスターヒーローズ」が終わったなかで、並行開発していた「ソニック2」を最後に頑張って作っているところですので、いまエムツーさんの総力を結集して開発しています。こちらも楽しみにしていて下さい。

―― ありがとうございました!

(船津稔)