インタビュー
描画60フレーム化、新要素の追加、そして新しくなった自車のデザインの秘密とは? 「3D アウトラン」インタビュー Part1
(2014/4/23 00:00)
ニンテンドー3DS向けにリリースされてきた「セガ 3D復刻プロジェクト」第2期の第2弾「3D アウトラン」がいよいよ4月23日より配信となる。価格は762円(税別)。
今回も、またまた開発を担当したエムツー(M2)さんにお邪魔し、セガのプロデューサーである奥成洋輔氏と、エムツーの堀井直樹氏にインタビューにお応えいただいた。さらに、サウンド周りの制作エピソードに関しては、並木学氏にお話を伺った。
ここでお詫びを申し上げねばならない。今回あまりにも多くのお話が聞けてしまったため、1回の分量としては過去のものを越えるものになってしまった。そこで、インタビューを2つに分割してお届けすることにする。ご了承くださいませ。
アーケード版「アウトラン」とは!?
【アウトラン】
1986年に稼動を開始した、セガの体感ゲームとしては第4弾にあたるドライブゲーム。男女2人がオープンカーに乗り、チェックポイント間を制限時間内に通過することで継続プレイとなる。敵車やコース外の建物などに激しく接触するとクラッシュし、自車が派手に回転したり吹き飛ばされたりする。ピラミッド状に展開するコース分岐をたどることで16のコースが用意されていた。
筐体はデラックス、スタンダード、コクピット、アップライトと4タイプが作られ、足元にはアクセルとブレーキペダル、そしてHiとLoの2段切り替えのシフトレバーがシート左側(アップライトは右側)に設置。デラックスとスタンダード筐体は、ハンドル操作にあわせて、またコースアウトやクラッシュの際に可動する。
新旧2つのバージョンがあり、国内では新旧が混在、海外では新バージョンが稼動していた。それぞれコースの並びが異なったり、バグが修正されていたりする。
「MAGICAL SOUND SHOWER」、「SPLASH WAVE」、「PASSING BREEZE」の3曲をプレイ開始時にラジオのようなセレクターで選択できたことも当時画期的だった。
また、ギアを上下に連続して行なう「ギアガチャ」により、コースアウトしても速度を落とさず走行する裏技的な走法が発見され、タイムアタックに燃えていたプレーヤーたちをさらに熱狂させることとなったのも記憶に残る本作のエピソードだ。この走法はシフトレバーを酷使するため、筐体の寿命を縮める結果につながってしまったが……。
基板は「スペースハリアー」より世代の進んだ通称「アウトランボード」で動作。MC68000×2とサウンド制御用のZ80が搭載されており、128枚のスプライトが表示可能。サウンドにはYM2151とセガオリジナルのPCMが搭載され、効果音だけでなくBGMのリズム隊などにも利用されている。
「新たなスタンダードになれるようなもの」を目指しての移植
――いよいよ、「セガ3D復刻プロジェクト」に「アウトラン」が登場することになりました。よろしくお願いします。
奥成氏:「3D復刻プロジェクト」第2期も3作目となりまして、シリーズ第11弾……まさか僕もこんなに続けられるとは思いませんでした。いよいよシリーズのクライマックスとも言うべき「3D アウトラン」が発売されることになります。ここまで長きにわたる応援、ありがとうございます。
堀井氏:ありがとうございます。
奥成氏:本当は、このタイトルを出すのは今年の夏かなと思ってたんですよね。去年もシリーズの最後は夏で締めくくっていましたので。それが思いのほか、スケジュールが守られて(笑)。
堀井氏:それ褒めてます? それとも信用されてない?
奥成氏:さまざまな方面の援護もいただき、結果的にゴールデンウィークにドライブできることになりました。私はいつもアーケードゲームは長期のお休みがあるタイミングで出してきたので、本当に良かったです。
――「アウトラン」はみんな待っていたタイトルだと思います。
奥成氏:それについて、これはよく聞かれることなので、最初にお話ししておこうと思うのですが、なぜセガの体感ゲームとしては特にメジャータイトルである「アウトラン」と「アフターバーナー」が、シリーズの初期に出なかったかということについてお話します。
第1期は地固めという部分があったので、まず「立体視」化ができるのかどうか、というところからスタートして、最初は「動かない」とエムツーさんに言われた「スペースハリアー」を動かすところから、時間と労力を使って動かす、というところに重きを置きました。そのため「今まで手がけてきたタイトル」を先にやらせていただきました。
おかげさまでこの「3D スペースハリアー」が高評価をいただけて、第2期を始めて、日本市場に特化したタイトルを選んでリリースしてきているわけですが、「アフターバーナーII」と「アウトラン」に関して第1期でやらなかったのは、エムツーさんがこれまで手がけていなかったタイトルで、開発そのものが大変だということと、リリースするにあたっていろいろ事前に準備することが多いタイトルだったから、という理由があります。
特に「アウトラン」に関しては、諸般の事情により、現在はアーケード版そのままを提供することができないので、もはや移植は不可能とされていたのですが、みなさんの反響の中には「『アウトラン』を出してほしい」という声が本当に多かったんです。もちろん我々もやりたかったタイトルの1つでした。「スペースハリアー」、「スーパーハングオン」、「ギャラクシーフォースII」があって、「アフターバーナーII」と「アウトラン」がないのはおかしいだろうと。
堀井氏:「サンダーブレード」がないのもおかしいじゃないですか!
――(笑)。
奥成氏:そこで話の腰を折るんだ。それは別におかしくないでしょ。
堀井氏:なんでですか……あれだけ目立っているのに。
奥成氏:それはこのインタビュー連載の中で目立っているだけだからね。
――「サンダーブレード」も出てほしいんですけどね。
奥成氏:とにかく、第2期をやるなら、この2本はできるかどうかを再度検証なければならない、ということを決めて、まず「アフターバーナーII」に関しては、細かいチェックポイントをクリアしていきながら、最終的に皆さんがおおよそ想像した通りの「3D アフターバーナーII」として無事リリースすることができました。
そして次が「アウトラン」です。「3D アウトラン」は「アフターバーナーII」と並行しつつ、同じスタッフが中心となって開発しています。このマニアックなインタビューを読んでくださるような方々が、1番気にされているであろうポイントについて、あえて触れておきますが、車のデザインが当時のものと同一ではありません。
これについては、本作を開発するにあたって、改めて完全再現がどうあってもできないことを確認した後に、それでも移植すべきかも含めて検討し、もし完全再現できなくても、「アウトラン」らしさは残せるのか、我々のできることはなんなのか? という部分とそのハードルをクリアするのにかなり時間をかけました。
これまでの歴代の移植版、セガサターン版、ドリームキャスト版、Xbox版などを再度見直し、良いところ、残せるところは可能な限り残し、これからは、再び「アウトラン」の移植を行なえる、新たなスタンダードになれるようなものを目指しました。
「SEGA AGES 2500」シリーズのスタート時から言っていたことですが、「セガの名作を現代に甦らせる」というコンセプトの元、、当時の体験や気持ちを含めて追体験してもらえるようにお届けするということを命題に進めてきました。それが忠実な移植であったり、「ムービング筐体」や「環境音」といったアイデアだったりという形でいろいろ出してきました。
……今できる、可能な限りオリジナルを楽しんだ時のイメージに近づけるのはどうしたらいいのか、この楽しさを伸ばしていく案は無いか、という部分で試行錯誤の結果が、今回の「3D アウトラン」になっています。
――初出時からプレーヤーカーのデザインに関しては、オリジナル版とは異なるものになったことに関して疑問でしたが、いろいろ事情があったということですね。個人的には、それが再現できないとオリジナルとゲーム性が異なってしまう、というものでなければ、ある程度の変化は受け入れられそうなのですが、読者の方々はどうなんでしょう?
奥成氏:予算やスケジュールで解決できる問題ならあるいは方法もあったかもしれませんが、少なくとも今回はそうではないので、「3D ABII」と本作については、ご了承いただければと思います。
【4月23日更新】初出時、一部の表記に誤りがございましたので反映させました。