インタビュー

「SEGA AGES バーチャレーシング」インタビュー

思い出補正を超え、あの頃の衝撃を呼び覚ます“一番豪華なバーチャレーシング”!

4月25日 配信

価格:925円(税別)

CEROレーティング:A(全年齢対象)

プレイ人数:1~8人(インターネット通信プレイ2人)

 セガの名作を“こだわり満載”で復刻する「SEGA AGES」。3月25日に8タイトル目となる「SEGA AGES バーチャレーシング」の配信が開始されたので、恒例のインタビューをお届けしよう。

 今回のインタビューに参加頂いたのは、セガゲームスよりシニアプロデューサーの下村一誠氏、リードプロデューサー及びディレクターの小玉理恵子氏、スーパーバイザーの奥成洋輔氏。そして、開発を手がけるエムツーからは堀井直樹氏に、今回は「バーチャレーシング」をやりこんでいて開発にも口を出しているというエムツーの久保田和樹氏にも参加頂いた。

 満を持して登場するアーケード版「V.R. バーチャレーシング(以下、「バーチャレーシング」)」移植について、今回も開発秘話をたっぷりとお聞きした。じっくり楽しんで頂ければ幸いだ。

「セガ 3D復刻」シリーズ時代からの挑戦がついに! 今回はソースコードも見つかって“本物中の本物”と言える移植に

【バーチャレーシング】

 1992年にアーケードに登場したレースゲーム「バーチャレーシング」。F1(フォーミュラカーレース)をモチーフにしており、ゲームクリエイター鈴木 裕氏が手がける「ハングオン」、「アウトラン」、「パワードリフト」から続くレースゲーム・ドライブゲームのひとつの到達点。さらに、その後の3D格闘ゲーム「バーチャファイター」やレースゲーム「デイトナUSA」へと繋がる、セガの3Dゲームの元祖となるタイトルでもある。

 セガ初の本格的な3DCGボード「MODEL1」第1弾タイトルであり、当時まだ知る人の少ないポリゴンによる3Dグラフィックスを採用している。テクスチャーマッピング技術がまだ存在しないため、板形状のポリゴンそのままのところに単色がついているというものになるのだが、サーキットや車だけでなく、コース外の観覧車など様々なオブジェクト、コース上に残るタイヤ跡、コース外を走ったときに舞い散る草、さらにクラッシュしたときの激しい挙動や飛び散る火花など、多彩な表現でプレーヤーを魅了した。

 「バーチャレーシング」がポリゴンで表現したものの中で特筆すべきは、ピットインしたときに登場するクルーの動きやレースクイーンといった人間の表現。それは後に「バーチャファイター」の誕生へと繋がり、3Dグラフィックスの発展と定着を爆発的に加速させることとなった。「バーチャレーシング」は、その最初の種子のひとつと言える。

 使用された「MODEL1」基板は、最大180,000ポリゴン/秒という当時としては脅威的な3D描画性能を誇り、「バーチャレーシング」では、多数のオブジェクト描画の中で4つの視点のスムーズな切り替えや、30フレーム/秒での動作を実現していた。

 アーケードには当初、1人プレイの豪華なゲーム体験が楽しめる「デラックス」筐体がリリースされたが、その後、横並び2シートで対戦プレイができる「ツインタイプ」筐体も登場した。ツインタイプでは4台並べて最大8人の対戦も可能となっている。1993年には、70インチの大画面とほぼ実寸大のフォーミュラカーをモチーフにした可動式筐体を採用したアップデート版と言える「バーチャフォーミュラ」もリリースされた。

 家庭用ハードには、メガドライブ、スーパー32X、セガサターン、プレイステーション 2へと移植された。

「バーチャレーシング」デラックス筐体
「バーチャレーシング」ツインタイプ筐体
「バーチャフォーミュラ」4台通信プレイ仕様
「バーチャフォーミュラ」8台通信プレイ仕様
今回のインタビューにご参加頂いた皆様。左から順に、シニアプロデューサーの下村一誠氏、リードプロデューサー及びディレクターの小玉理恵子氏、エムツーの久保田和樹氏、エムツーの堀井直樹氏、スーパーバイザーの奥成洋輔氏

――SEGA AGES第8作目は、ついに「SEGA AGES バーチャレーシング」の登場となりましたね。おそらくNintendoSwitch「SEGA AGES」タイトルの中でも、完成までの道のりが1番長かったのではと思いますが。

奥成氏:SEGA AGESというプロジェクトをNintendo Switchで下村と小玉が立ち上げるにあたって、今回のSEGA AGES第1期の目玉となったのが、この「バーチャレーシング」ですね。エムツーさんからのラインナップ提案にも最初から入っていたタイトルです。

 ラインナップについては、どのタイトルも最初の提案から最終決定までにいろいろな紆余曲折あったのですが、「バーチャレーシング」は最後まで「本当に出せるかどうかはわからない」という不安がありつつ、それでもなんとか「このタイトルをリリースしたい」という想いで形にしていった……そういうタイトルですね。

――なにしろポリゴン世代のタイトルですし、これまでの取り組みからは1つ世代と規模の上がったチャレンジという印象があります。

奥成氏:ですね。だからこそ成し遂げたいというものがありました。

堀井氏:「バーチャレーシング」は、最初はニンテンドー3DSでの「セガ 3D復刻」シリーズで出そうとしていたんです。

 「セガ 3D復刻」シリーズの頃にも「ポリゴンの3DCG基板タイトルをやりたい」という話はあって、その中でも「バーチャレーシング」は当時の移植希望アンケートの投票でもランキング上位になりました。いつかやりたいと思い続けてきたんですよね。

 ただ、3DSの時はアーケード版の移植ではなくスーパー32X版の「バーチャレーシング デラックス」(以下、「32X版」)の移植を考えていたんですよ。

 それが叶わず、時を経てNintendo SwitchでSEGA AGESを展開するということになり。それなら3DSの時に考えていた32X版ではなくアーケード版をやりたいと考えました。それでSEGA AGESのラインナップに「バーチャレーシング」を提案させて頂いたんです。

――なるほど。3DSで32X版を……という話は、スペック等の問題からも厳しかったのでしょうか?

堀井氏:いや、できたとは思うのですが……「バーチャレーシング」1タイトルだけで1年以上はかかってしまうという感じだったんですよ。

奥成氏:3DSの時は……まず、僕が手がけた「セガ 3D復刻プロジェクト」から「セガ 3D復刻アーカイブス」の1作目が発売されるまでの頃だと、「バーチャレーシング」は制作期間的にも予算的にも不可能でしたね。

 その後は下村に引き継いで貰って、「セガ 3D復刻アーカイブス2」、「セガ 3D復刻アーカイブス3」を発売していったわけですが、その2年ぐらいに「せっかくなので配信版の詰め合わせだけでなく、新規の移植を作りたいよね」という話が挙がっていて。その候補にあったひとつが「バーチャレーシング」でした。

下村氏:あの当時だと、ユーザーの皆さんは「3DSにはさすがに『バーチャレーシング』は来ないだろう」と思っていたのではないかなと。そこをちょっと驚かせたいという気持ちがあって、「バーチャレーシング」にトライしようという話になっていたんですよね。

奥成氏:ですが、「セガ 3D復刻アーカイブス2」の時は、「セガ 3D復刻アーカイブス」の発売からは約1年あったとは言っても実際の開発期間としては半年ちょいぐらいしかなくて、「バーチャレーシング」は無理で。そこで、新作には元々のプロジェクトで作ることができなかった「パワードリフト」をYボードへのさらなるチャレンジとして移植したんですよね。

 そして、さらに1年後には「セガ 3D復刻アーカイブス3」が出たわけで、そこでも当然「『バーチャレーシング』をやれないか?」という話になったのですが、「セガ 3D復刻アーカイブス3」もまた“「2」が発売されてその売れ行きなどの結果が出てから「3」を作るのが本決まりする”という流れだったので、やっぱり開発期間が実質1年もない。それでも、その期間で「バーチャレーシング」の研究はしてもらっていたんです。

 その頃、「セガ 3D復刻アーカイブス2」を購入頂いた方からのアンケートがあって、そのアンケートの途中経過だと「バーチャレーシング」が1位だったんですよね。それで、「これはがんばらないといかん!」という話になり、できるかどうかを本格的に検討したところ、「ニンテンドー3DSでMODEL1を動かすのは厳しい」という結論になりました。

 では、どうしようかと下村や堀井さんとでいろいろなやり方を考えたのですが、そのいろいろの中には「MODEL1ではなく、フルスクラッチの『バーチャレーシング』を作るしかない」という、いわゆる力技もあったんですよね(笑)。そういう意見も出つつ、現実的な1番落としどころの良い方法として「32X版の移植」か「ガラケー版の移植」がいいだろうとなったんです。

――ガラケー版! そういえばありましたね!

堀井氏:実は、ガラケー版の「バーチャレーシング」って、32X版をベースに拡張したものなんですよ!

2008年の東京ゲームショウより。写真はEZアプリ版「V.R. バーチャレーシング」出展の模様で、「スーパー32X」版をベースにしていることが紹介されていた。詳しくはCar Watchの記事を参照頂きたい

奥成氏:驚かれると思いますが、ガラケー版は中身的には32X版の移植なんです。なので、32X版とガラケー版の「バーチャレーシング」のソースデータを手に入れて、アーケード版を参考にしつつ、32X版とアーケード版の上手いところを併せ持った3DS版を作れないか……そういう研究を3D立体視化を含めつつやっていたんですよ。

 ……ただ、僕らがそんな動きを慌ただしくやっていた一方で、移植希望アンケートでは「ターボアウトラン」が「バーチャレーシング」を抜いて1位になるという衝撃の結果が待っていたんですけどね(笑)。

堀井氏:あれは本当にびっくりしたっ!「これはもう『バーチャレーシング』で決まりでしょ? ロマンでしょ?」って思ってたのに。

奥成氏:その結果を受けて、「セガ 3D復刻アーカイブス3」に収録する新規移植は「ターボアウトラン」に決まりました。エムツーさんにも「バーチャレーシング」の研究はそこでストップしてもらって、「ターボアウトラン」の開発を急ピッチで進めてもらうことになったんです。

堀井氏:ですね。でも実は、その後も「バーチャレーシング」の研究は勝手に続けました。

――勝手に(笑)。

奥成氏:アンケートの最終結果が3月に出て「ターボアウトラン」に決まったものの、6月ぐらいまではエムツーさんが勝手に「バーチャレーシング」を進めていたっていう話でしたね(笑)。

堀井氏:少しはお見せできるぐらいの画面が表示できるようになって、「32X版のモデルを3DSに持ってくるとこんな感じになるのかー」と感慨深くなったりしてたんですけど、同時にその先の道のりも見えてきて、これはかなり時間がかかってしまうというのを痛感しましたね。どのみち「セガ 3D復刻アーカイブス3」には入れられないというのが確実になりました。

東京ゲームショウ2016でのステージイベントにて公開された、アンケートの最終結果。アンケート結果が届き始めた最初の1カ月ぐらいまでは「バーチャレーシング」が頭ひとつ抜けているぐらいの差をつけて1位だったが、最終的に1位になった「ターボアウトラン」が移植された
こちらが開発が続けられていた3DS用「3D バーチャレーシング」の画像。これをいつか遊びたいと願っていた人も少なくないはず

――その後、SEGA AGESになってからのインタビューでは「SEGA AGESの前に、3DSでもう1本『アーカイブス4』的なものを作ろうと考えていた」というお話でしたよね。

下村氏:そうそう、「バーチャレーシング」はそのメインにしようと思っていたんですよ。

堀井氏:「セガ 3D復刻アーカイブス4 FINAL STAGE 2」というものがもし実現していたら!

奥成氏:ただ、「セガ 3D復刻アーカイブス4」をやるとして、それを1年で発売できるのかというのが問題で。目玉のタイトルは「バーチャレーシング」ということで、堀井さんにあらためて「前に『バーチャレーシング』はもうちょい時間があればできるかもしれないって言ってましたけど、あと1年あったら完成しますか?」って聞いたら、「……あと2年かかります!」って言われたんですよね。そこで、「セガ 3D復刻」シリーズは完全に終了ということになりました。

――今だから明かせるお話ですね。それを経て、Nintendo Switchで展開するSEGA AGESとなっていったわけですが、そのタイトルラインナップに早速「バーチャレーシング」が入ってきたと。まぁ、当然入れていきますよね(笑)。

奥成氏:そうですね。でも、これがまた……SEGA AGESのスケジュールに組み込むにしては大変だったんですよ。

堀井氏:Nintendo Switchにハードが変わることで、「それならアーケード版を移植したい!」と考えたわけなんですけど、「バーチャレーシング」ってソースコードや基板データなどの資料が揃っていないんですよね。

 その不安定な状態で、Nintendo Switch上でMODEL1を再現して動かすことができるのかを探っていくしかなくて。社内でその検証を進めて、一応の目処が立ったところで「バーチャレーシング」のラインナップ入りを提案させてもらったのですが、同時に小玉さんをはじめとしたセガの皆さんには、「『バーチャレーシング』の基板のデータをもう1回探してください」というお願いもしていました。

 そうしたら……ついに小玉さんが見つけてくださったんですよ!

久保田氏:このソースコードの捜索は本当に長いことやって頂いて、何度かそれらしいものというのは出てきたんです。最初に「何か出てきたぞー!」ともらったものは、解析したら「デイトナUSA」のモデルデータで、その次に出てきたものは「これ……『バーチャファイター』の開発データじゃないですか!?」と、騒然となったり(笑)。

――確かにそのあたりなのは間違いないですね(笑)。

久保田氏:他にもいろいろ出てきたのですが、極めつけには、未発売の32X版「ウィングウォー」のデータなんていうものまで出てきたんですよ!

堀井氏:あれは興奮した!「32X版の『ウィングウォー』なんて作ってたんだ!ビルドしたい!」ってめっちゃ盛り上がりましたね!

奥成氏:ファーストかαかっていう段階のもので、おそらく着手してみたものの早々にギブアップが出たというものじゃないかと思うんですけどね(笑)。そういう残骸も残してあったりするんですよ。

――それにしても、小玉さんとしてはラインナップの中に、そういう移植の前段階に困難がある「バーチャレーシング」があったわけで。悩みの種だったのでは?

小玉氏:いやぁ、でも、私は今の話のような苦労は知らなかったので。「『バーチャレーシング』のソースがないんだ? じゃあ聞いてみるよ」ってぐらいの気持ちでしたね(笑)。

――しかも、それで見つけてしまったんですよね(笑)。

堀井氏:今までいろんな人に聞いてもらったりしても見つからず、「『バーチャレーシング』のソースは残っていない」っていう結論になっていたわけですけど、小玉さんはそういう経緯は知らずに、また別ルートから探してくださったんですよね。

奥成氏:僕は僕で、正攻法で探しても出てこなかったので、AM2研の知り合いとかに「『バーチャレーシング』のソースってないのかなぁ?」みたいに、ふわっと聞いてみたりもしたんですよ(笑)。

 そんなこんなで、これまでと違ういろんなアプローチから探してもらったら、最終的に当時のメインプログラマーの方が保管されていたデータが見つかったんです。

 ただ、それは「バーチャレーシング」ではなく「バーチャフォーミュラ」だったんですけどね。とは言っても、「バーチャレーシング」と「バーチャフォーミュラ」ってベースが同じもののアップデート版と言っていいものなので、それでも良かったんです。

堀井氏:「バーチャレーシング」と「バーチャフォーミュラ」とではゲームとしては細々と違うところはあるのですが、1番欲しかったところのベースのデータは同じで、それがきっちりありました。そのデータってROMからも吸い出せないもので、ソースコードそのものを見つけないとどうにもならないものだったんです。

久保田氏:見つかったソースコードの解析をしたのはプログラマーの原篠だったのですが、彼に渡して、「今回見つかったのはどうだろう?」としばらく待っていたら、すごく興奮した様子で「これ本物ですよ!」っていう連絡が来ましたね(笑)。

堀井氏:何度もハズレを掴んでいたから(笑)。

――アイテム掘り系のゲームで延々と潜った末に鑑定アイテムから当たりが出たみたいな話に(笑)。

堀井氏:まさに。今回どうしても見つけたかったデータというのは、おそらく世の中のどの「バーチャレーシング」移植にもちゃんと入ってはいなかったもので、他の移植版だとおそらく「デイトナUSA」の一部のデータを流用して「バーチャレーシング」の挙動を再現していたという部分なんです。今回はそれが見つかったんですよ!

――今回の「バーチャレーシング」の移植は、完全な本物であると。

堀井氏:そうなんです、本物中の本物!

――ちなみに、「バーチャレーシング」は“3DCGの研究として作っていたものがゲームとして面白かったので後から製品化されることとなった”という逸話がありますが……、ソースコードがなかなか見つからなかったのには、そういう特殊な経緯があったからという事情もあるのでしょうか?

奥成氏:その逸話については僕はそんなことはないのではと思うんですよね。直接お聞きしたわけではないですが、「バーチャレーシング」は、まず3DCGに対する鈴木 裕さんのチャレンジというのがありました。新作レースゲームそのものへの需要に応えるというのもありましたよね。

 レースゲームだと「バーチャレーシング」の前には「パワードリフト」がありましたけど、「パワードリフト」が思ったほどヒットしなかった理由には「ファイナルラップ」のようなツイン筐体で対戦できるというスタイルが流行していたことがあったと思います。後から「パワードリフト」もそれを受けて無理矢理に通信対戦に対応したバージョンも出ましたけれども。

 そうした時代の変化の中で、ナムコさんからは日本産アーケードゲーム初の3Dレースゲームである「ウイニングラン」が登場して、セガからは鈴木 裕さんが3DCGにチャレンジしていった。「バーチャレーシング」はそういうタイトルだと思います。

 でも、当時のセガには3DCGのノウハウというのはなく、じゃあ外部にはあるかと言えば外部にもそうそうない。軍事用シミュレーターの開発などにそういうノウハウがあるということでそれを頼るなど、いろんなところの技術を聞きながら、セガシステム基板のスタッフが技術を結集して作ったのが、後にMODEL1と呼ばれる基板ですよね。

 ちなみに、それがさらに研究されてMODEL2となっていくんですけど、MODEL1とMODEL2という基板もまた全然違っているんですよね。特にMODEL1という基板はそういう時代に作られた基板なので、今のポリゴン描画技術とは全然違う技術で成り立っています。なので、これを今エミュレーションするとなるとかなり大変。なのでエムツーさんとしてもソースコードがどうしても欲しかったというところがあったんです。

※「ウイニングラン」は1988年に当時のナムコよりリリースされたレースゲーム。3Dシステム基板「システム21」の第1弾ソフトであり、日本のメーカーによるアーケードゲーム初の3Dレースゲームとなった

目指したのは“1番豪華な「バーチャレーシング」”! 高解像度化だけでなく、無理と思われていた60フレーム化も苦闘の末に……?

――アーケード版の移植はどのように進んだのでしょう?

奥成氏:アーケード版の完全再現をするだけでも大変なタイトルなんですけども、お客さんの望んでいる部分というのは、さらに上だろうと。それを踏まえて研究して頂いています。とは言え、予算と期間に限りはありますから。発表の時には「今期中に出したい」と言っていたのに、もう今は今期ではないという現実もあります。

堀井氏:……永遠に今期ということでなんとか!

奥成氏:(笑)。まぁそうした状況の中で、何かできないかと今回もエムツーさんに模索して作って頂いています。

堀井氏:奥成さんから今「アーケード版の完全再現」という言葉がありましたけど、実は今回はアーケードの完全再現そのものには、そこまでこだわってないんですよ。なぜかというと、ポリゴンの3DCG基板なので、やれることがすごく多いんです。

 そこで我々が考えたのは“1番豪華な「バーチャレーシング」”を作るというものなんですよ。

 まずレンダリング解像度はアーケードに合わせずにかなり高めています。スクリーンショットで見ると、広告用のプリレンダ画像のようなクオリティになってますよね。

 そして、遠景のオブジェクト表示もアーケードよりずっと遠くまで表示されるようにしています。

 ここに制約をつけてアーケード版を完全再現していくこともできることはできるのですが、それはそれで時間と手間が2カ月、3カ月と時間がかかってしまいます。今回はその2カ月、3カ月分の労力を、8人同時対戦やリプレイ機能を作るのに当てていったんです。

 なので、アーケード版と違うところというのは厳密な言い方をすれば山盛りあるんですよ。遊んだ感覚などに関わる中身に関してはアーケード版を忠実に持ってきた本物ですが、画面表示などの見た目に関しては大幅にアップデートしているんです!!

レンダリング解像度をアーケード版から大幅アップ!

奥成氏:こういう考え方ができるのが2Dと3Dのゲームの違いですね。過去にはPS2のセガエイジスなどでMODEL2タイトルを移植しましたけど、あの時はそもそもマシンパワー的にギリギリというところがあったので、解像度もアーケード版に揃えていました。ですが、今回はNintendo Switchで余裕がありますから。

 昨年の東京ゲームショウ2018で「SEGA AGES バーチャレーシング」のスクリーンショットを公開した直後に「おかしい!」って気がつく人がいて、さすがだなぁって思いましたね(笑)。

堀井氏:あの時点では最終的にどうなるかが不透明だったこともあって、詳しく話せなかったのですが、「すごく遠くまで描画されてる!」って反応してもらえて嬉しかったですね。実は同じように、あの時には話せず黙っていたことがいくつかあったんです。

――それはどんなものでしょう?

堀井氏:まずひとつは、「Nintendo Switch1台での8人対戦」をもしかしたら実現できるかもしれない……という件ですね。

 もうひとつは、「60フレームレート動作させることは無理そう」と言わなかったことなんです。

 「バーチャレーシング」のプログラムってフレームレートを可変できるように作られていなくて、そこかしこのあらゆるルーチンが30フレーム決め打ちで作られているんです。なので60フレーム動作をさせるには、それら全ての箇所を60フレームにする調節をしないといけないのですが、頂いている期間内ではできそうになくて。

 でも、そのことは東京ゲームショウ2018では言わずにいました。言うと区切りがついちゃうので言わずに粘り続けたんです。

――今、見ているこの画面の滑らかさは……!

堀井氏:そうなんです!最終的に、無事に60フレーム化できたんです!

――おおー!ですよね、気持ち悪いぐらい滑らかに動いてます。

堀井氏:がんばりました!

60フレーム化を実現!

――レンダリングの内部解像度はいくつになっているのでしょう?

堀井氏:Nintendo Switchの携帯モードでは720p、ドックモードでは1080pで表示されますね。

――なるほど。そして60フレームであると。

奥成氏:ちなみに、ポリゴン以外のグラフィックスはアーケード版の解像度そのままなんですよ。BGによる空とか海とかの背景ドット絵はそのままですね。

――言われてみると違いがくっきりわかりますね。

堀井氏:アーケード版はポリゴンとBGが同じ解像度なんですよね。だけど今回はポリゴンだけレンダリング解像度を引き上げて細かくなっているから。

――浮き上がるというか、差が見えやすくなっていると。

奥成氏:まぁ遠景ですから、プレイ中にそこまでの違和感は出ないと思うんですけどね。

BGの解像度はアーケード版そのまま。レンダリング解像度が上がった3D部分は非常にくっきりした表示になっているので、差がわかりやすい

――当時は何もわからないままに遊んでいましたけど、今ではそうした作りのひとつひとつに感慨深いものを感じますね。

堀井氏:当時は、画面見ているだけで至福の時を過ごせましたからね!

――当時の僕にとって「バーチャレーシング」は未来の象徴でした。

堀井氏:まさに! 僕もそうですよ!

――理解を超えてる、未知のものが突然現われたみたいな(笑)。

全員:(笑)。

奥成氏:アーケードゲーム機として初めて16:9のワイド画面を使ったタイトルでもあるんですよ。

――デラックス筐体の画面は16:9だったんですよね。

奥成氏:そうです。シングルプレイで楽しむデラックス筐体は16:9画面を使っていて、筐体の横にはそれをアピールするかのような「ワイドスクリーン」っていう謎のロゴがついていました(笑)。

――1992年ですから、まだ一般には4:3のテレビやモニターしかなかった時代ですよね。というより、画面比率というものを考えることも、普通はしていなかった頃。

奥成氏:ですね。4:3のテレビが主流でハイビジョンの時代がもうすぐ来るみたいな頃に、「モニターの形が違うの!?」って驚かせたという。

堀井氏:ハイビジョンの横長ワイドブラウン管という製品が増えてくるギリギリの頃ですかね。先駆け!

奥成氏:今回の「SEGA AGES バーチャレーシング」は、ワイド画面な「バーチャレーシング」の初移植ということでもあります。

――どのモードでも画面表示範囲の基本となっているのは、16:9画面のデラックス版ベースということでいいのでしょうか?

堀井氏:そのあたりの話は久保田に答えてもらうといいと思います。

久保田氏:はい。そこは実は込み入った話でして、今回の「SEGA AGES バーチャレーシング」では、シングルプレイはデラックス版ですけど、対戦はツインタイプをベースにしているんです。

――なるほど! でもアーケード版のツインタイプは4:3画面でしたよね。

久保田氏:そうなんです。なので画面表示だけの話をすると、今回はデラックス版の16:9を基本に、対戦プレイのツインタイプでも16:9表示へ拡張しています。

奥成氏:「バーチャフォーミュラ」も16:9画面で通信対戦できるものになっていたので、それもベースにされていますね。

久保田氏:ですね。「バーチャレーシング」のデラックス筐体とツインタイプ筐体の違いの話に戻ると、先ほどもお話ししたように、ノーマルレース(5周)はデラックスタイプをベースにしていますが、対戦とグランプリモード(20周)ではツインタイプをベースにしているんです。なぜかというと、「バーチャレーシング」は基板をツインタイプの設定にしないとそもそも対戦できるように作られていないからなんですよ。

 他にも違いは色々ありまして、敵車の色はデラックス筐体ではカラフルになっていますが、ツインタイプだと1位~8位までは紫色に固定されています。その代わりにツインタイプではマイカーの色をセレクト可能になっているんです。実は敵車の難易度も若干違っていたりします(笑)。

――難易度も! 見た目にすぐわかるもの以上にいろいろ違うところがあって、言わば「バーチャレーシング」は2種類あるから両方収録すべきみたいなことなんですね。ちなみに今日、久保田さんがいらしているのはそのあたりに詳しいからというわけですか。

堀井氏:そうです!久保田と言えば弊社の「M2ショットトリガーズ」のディレクターなんですけど、「セガのレースゲームは俺が大好きだから口を出させろ!」ということで、いろいろがんばってくれて。それで、今日も参加させたんです。

久保田氏:ツッコミ入れまくりました! 特にプレイ感覚とか挙動について口だしさせてもらったのですが、プレイ感覚はもうアーケード版そのままだと感じましたね。ただ、コントローラーによる違いはさすがにあるので、その操作性については最後まで調整を繰り返して詰めてもらったんですよ。紆余曲折もあって、例えば、一時期はすごく曲がりやすくなったんだけど、コーナーの一部分だけいい感じに曲がれないとか。そういうこともありました。

――タイムアタックでライン取りを詰めた走りをしたときのコーナーの入りとか、特定の瞬間だけしっくりこないところがあったりとか。

久保田氏:そうなんです。タイムアタックをひたすらやっていたので、まさにそういうところをしっかり見させてもらって。弊社の担当プログラマーである篠田に何度も調整してもらいました。

――遠くのオブジェクトもアーケードよりずっと遠くまで表示されるということですが、これはもう画面を見ると一目瞭然ですね。

奥成氏:「バーチャレーシング」の移植は、メガドライブ、スーパー32X、セガサターン、PS2とありましてメガドライブ版が出てから約25周年ですね。当時に遊びこんでいたファンならわかる話として、初級コースのコーナーを“観覧車が表示されるタイミング”を目印に減速していたと思うんです。

 なので「観覧車が表示されるタイミングでゲームの遊び心地が変わってくるんだ!」っていう話を四半世紀前にはしていたんですけど……、今回は表示されるタイミングとかの問題じゃなくて最初からずっと観覧車が見えてます(笑)。

堀井氏:ただ、Nintendo Switchと言っても無尽蔵にパワーがあるわけではないので、Nintendo Switch1台でのオフライン対戦プレイの時は、プレイ人数が増えるにつれて遠景の描画が端折られたりします。

奥成氏:オリジナルに忠実であるべきかどうかというところは以前もお話したところではありますが、SEGA AGESのコンセプトというか、「セガ 3D復刻プロジェクト」の頃あたりからコンセプトを変えていて。

 それ以前はアーケード版を忠実に移植する、完全再現するというコンセプトでしたが、典型的なので言うと「スペースハリアー」で音が鳴りっぱなしになってしまうバグを再現するべきかどうかというものがあって、「セガ 3D復刻プロジェクト」からは、お客さんが細かく自分で設定を変えるのではなく、デフォルトでスタートボタンを押した状態のプレイが1番快適なものの方がいいという考え方に変えています。

 なので「SEGA AGES アウトラン」も60フレームモードを最初にしていますし、難易度もタイトルによってはアーケード版より低いものをデフォルトにしています。今回はそれをより豪華な方に振っているという感じです。

――なるほど。ただ、今回はアーケード版の仕様に忠実なオリジナルモード的なものは入れなかったんですね。

奥成氏:ですね。ただし、プレイ感覚はアーケード版に忠実であるというところはこだわっています。

――画面比率はデラックス版の16:9準拠なのは良いとして、30フレームでオブジェクト表示距離やタイミングもアーケード版を再現したモードが欲しかったという声も、やはりあるだろうと思うのですが。

堀井氏:それはそうですよね、間違いなくあると思います。でも、それを作る工数もかなりのものになってしまうので。

――そこはもう先ほどお話があった通り、そのリソースで対戦モードやリプレイ機能などを作る方向を選択したわけですね。限りのある期間内での2択だった。

堀井氏:そうなんです。2択になったので、楽しみを作ろうという方向を選んでいます。

久保田氏:表示限界を越えてオブジェクトを描写しているところは、アーケード版をやりこんだ人だと違和感を覚えるだろうと思いますね。先ほどの初級コースの観覧車出現での減速もそうですし、中級コースでもビッグブリッジが常に見えていたりしますので、慣れるまでは不思議な感じになると思います。

――そのあたりの記憶や思い出とはやはり異なってきますよね。でも、まぁ……今のハードで実現したらどうなるかや、Nintendo Switch1台での8人対戦みたいな無茶が見られるという楽しさと、期間的に2択になってしまうのなら、ボクは楽しさの方が見たいかなぁと思いますが。悩ましいところですね。

堀井氏:もちろんそのあたりは人それぞれに意見があるとは思うのですが。それも想像した上で、今回はこういう形に着地しました。

奥成氏:あとは、オンライン対戦が2人までなんですけど、そこも本当は8人までできたら良いよねと、当然思うんです。だけど、2人対戦を実現するのにも相当に苦労していて。最初からネイティブで作ったゲームと、アーケード基板のエミュレーションで動かしているものを後付けでオンライン対応させるものとでは、開発難易度が丸っきり別物になってしまうので。

――なるほど。

奥成氏:まぁ、そのあたりについては……いつかネイティブ動作で99人対戦できる「バーチャレーシング」を作りたいですね(笑)。

――バトルロイヤル「バーチャレーシング99」(笑)。

堀井氏:それなら「モトローダー」みたいに撃って攻撃するみたいな要素も入れないと!

小玉氏:それはもうオリジナルゲームとして作った方が早いよ(笑)。

奥成氏:「バーチャレーシング」の初級コースに99台入ったら渋滞するしね(笑)。

全員:(笑)。

――以前のインタビューでは、PS2の頃のセガエイジスでやられていたMODEL2タイトルだと「部分的にPS2ネイティブで動くように変えて実現させていた(※)」というお話がありました。今回のNintendo Switch上でのMODEL1はどうだったのでしょう?

※MODEL2タイトルは、PS2でもエミュレーションするにはスペックが足りなかったためと、「SEGA AGES ゲイングランド」インタビューにて語られている。

堀井氏:フルエミュレーションしていると言って差し支えないのですが、細かい話をすると変則的になっているところもありますね。

 今回「バーチャレーシング」に使えるCPUコアは3つあるのですが、そのうちの2個を使って最大8台分のMODEl1の演算をしています。CPU1個あたりMODEL1を4台動かしているわけですね。それで、その演算結果をもう1個のCPUで画面に描画させています。そういう変則的なやり方をしていますので、一般的なエミュレーションとは厳密に言うと違う気もするという話に。

――それはNintendo Switch1台で最大8人対戦を実現するために、そういう仕様になっているということで、ゲームそのものを動作させるためにNintendo Switchネイティブに変えざるを得なかった部分というのはなかったわけですよね。

堀井氏:それはないですね。ネイティブなコードには落としてないです。

久保田氏:弊社のディレクターの松岡からもコメントを預かっていまして、ゲームの動作においては完全にMODEL1のエミュレーションを実現しているということです。見た目がすごく豪華になっているので、自分も最初に見た時にはエミュレーションだとは思わなかったんですよね(笑)。

 自分はテストプレイをたくさんやったのですが、初級コースで“ハンドルを触れずに真っ直ぐ走っているのになぜか右に曲がっていってしまう”という箇所があるんですよね。それが、アーケード版とまったく同じ挙動で起きていて、「あ、これちゃんとフルエミュレーションなんだ」ってあらためて実感しましたね。

堀井氏:内部はエミュレーションと言っていいですけど、描画についてはエミュレーションよりも豪華に、もっと上へ行っちゃっているという感じですね。

――中身はソースコードを揃えた本物中の本物、だけど見た目はそこにこだわらずに豪華。これが今回完成した「SEGA AGES バーチャレーシング」というわけですね。

堀井氏:です!

技術の進化を実感できるNintendo Switch1台での最大8人プレイ! オンライン2人対戦ともに、グランプリモードもきっちり楽しめる

――対戦モードなどの追加要素について伺います。

 3DSの頃から数えると3年以上に渡ってトライしてきたことになる「バーチャレーシング」ですけども、今回はそこに「オンライン2人対戦」や、オフラインでは「Nintendo Switch1台での最大8人対戦」という、ものすごくアグレッシブな仕様が載っていますよね。

 これも開発当初から目指していたのですか?

堀井氏:2人対戦までは当初からやりたいと考えていたんですけども。それが去年の夏ぐらいには8人対戦できる可能性もなくはない……という話になり始めて。

久保田氏:Nintendo Switch1台での複数人数対戦は実験的にやっていたものなんですよ。最初は4人対戦ができて「すごいねー!」なんて言ってたんです。でも、それが1台ずつ増えていって、去年の秋ぐらいには8人対戦ができるようになってました。

堀井氏:ちょうど東京ゲームショウ2018の頃には、8人対戦ができるようになっていたんです。当然そんなの待ってくれているユーザーの皆さんに早く言いたいじゃないですか!

――まぁ、言いたくなりますよね(笑)。

堀井氏:でも、うちの社員に「製品にちゃんと載せられるかはまだわからないんだから、TGSのイベントでも絶対に言っちゃダメですよっ!」って釘を刺されて。すごい話したかった!

全員:(笑)

久保田氏:社員一同、いつもイベントやインタビューで社長が余計なことを口走らないか、ドキドキしています。

堀井氏:これからもドキドキワクワクさせるぞ。

――(笑)。話を戻しますが、アーケードの通信対戦仕様と同じ最大8人対戦を実現するのは、当初は目標にはなかったわけですね。

堀井氏:目標にもできないぐらいの状況だったというのが正直なところですが……、結果としてできたというか、できたらいいなと思っていたものが本当にできたっていう感じですよね。

 8人対戦を実現するにしても、本当はNintendo Switchを8台用意してもらって対戦するという方式も考えたのですが、今回は1台での8人対戦ができたので。まぁ、たまたまですよね。

久保田氏:(……たまたまって言っちゃダメです!)

堀井氏:ん、そうか! 努力のタマモノですよねー!

全員:(笑)

――基本となるアーケード版の移植難度の高さもあり、さらに対戦仕様もありと、小玉さんとしても進行の見通しが難しいタイトルだったのではないでしょうか?

小玉氏:ですねー。私が特に気にかけていたのはオンラインでの2人対戦でした。オンラインプレイを実現するというのが今回のSEGA AGESの大きな目標のひとつだったので、それができるタイトルのひとつとしても「バーチャレーシング」は大きいですから。

 8人対戦の方は……、私も「バーチャレーシング」は最大8人で対戦できるっていうイメージを持っていたりしますけど、まさかNintendo Switch1台での8人対戦を本当に作ってしまうとは思っていなかった(笑)。驚きましたね。

 ただ……、もう少し早く完成してくれたら、もっと良かったですね(笑)。

堀井氏:!! すいません! すいません!

小玉氏:(笑)。

――今回の移植は開発のプロセスにアドリブ感があるというか。制作期間内でやれる限りをやったみたいな印象を受けますね。

奥成氏:どうでしょうね。「バーチャレーシング」のアーケード版を移植するということがソースコードが見つかったことで決まったので、そこまでに貯めていた知見は一旦捨ててもらって、MODEL1をNintendo Switch上で再現するということに全力。その後の仕様については、解析が進むにつれて仕様が増えていったという感じですよね(笑)。

堀井氏:できたことに合わせて、それをちゃんと使えるようにするための仕様も増えているんですよ。

 例えば、Nintendo Switch1台で最大8画面を表示するので、表示のオプションなんかも半端ないことになっています。3人プレイなら縦に画面を並べたり、対面で2人プレイできるレイアウトにもできたり。いろいろ片っ端から入ってますね。

奥成氏:ちなみに60フレームで動くのは2人プレイまでですね。3人プレイ以降は、アーケードと同じ30フレームになります。ただ、内部処理は全部60フレームなんですよね?

久保田氏:ですね、あくまで描画だけが30フレームになるので。

奥成氏:3人プレイ以上で操作感が悪くなるということはない?

久保田氏:操作感は変わらないですね。

――あくまで描画に限った話ということですね。

奥成氏:今話に出てきたNintendo Switch1台での2~8人対戦における表示の種類ですが、メニューで対戦人数を選択すると画面分割のレイアウトが事前に見えるようになっているんです。

 こんな風に2人、3人、4人……と、プレイ人数を増やすごとに画面の数が増えていきます。

久保田氏:ここで、2人と3人プレイの時は画面のレイアウトも選択できるようになっているんですよ。例えば2人プレイの時だと……

――これは、1Pと2Pが逆さに表示されて……

堀井氏:携帯モードのNintendo Switchを、2人がお互い向き合っている間に置いてプレイする時用ですね。対面表示です!

――なるほど!

久保田氏:3人プレイの時も画面レイアウトがいくつかありますね。

堀井氏:3人プレイだと縦に3個画面を並べるというレイアウトもできるんですけど、PCモニターを縦置きしている人は、これにすると表示領域を全部使って大きく表示できますね。

奥成氏:そして、最大8人にするとこんな感じになります(笑)。

――アドバタイズデモが8画面同時に……壮観ですねー

奥成氏:いいですよねー。じゃあせっかくですし、実際に8人でプレイしてみましょうか!

――ぜひお願いします! まずはコントローラーを準備するわけですけど、Nintendo Switchは4つまで認識できるので、Joy-Con4セットを登録して、おすそわけの横持ちをして8人分となるわけですね。

奥成氏:ですね。オフライン対戦では全員がJoy-Con横持ちになります。

――画面分割のゲームも昨今はあまり見なくなりましたが、すごいですね、これは。

奥成氏:セガサターンの「ストリート・レーサー」に並びました!

(セガの広報の方にも参加頂いて8人プレイスタート!)

堀井氏:いいなこれ、このテレビの大きさなら全然問題なくプレイできますね!

――これなら1画面あたりは12インチぐらいですかね、今のタブレット端末ぐらいありますね。

奥成氏:全然いけますよ。技術の進歩ってすごい!

久保田氏:「バーチャレーシング」は順位の後ろの人はものすごくブーストがかかるんですよ。なので、シングルプレイでは出せないようなラップタイムも出せちゃったりするんです。

堀井氏:その辺は「ファイナルラップ」に習ってますね。

奥成氏:そうか、だから今スリップしてたのに1周40秒切ってたんだ。

――8人プレイでも観覧車はほとんどの場面で見えてますね。8人プレイでもアーケードの描画範囲は越えている感じがします。

堀井氏:一応、背景がポップするのは増えてはいるんですけども、観覧車は見えますねー。

久保田氏:ツインタイプは4周ゴール設定です。というわけで、1人がゴールしたら全員終了になります!(と解説しつつ、久保田氏が1位でゴールして対戦終了!)

堀井氏:いやー、当時は「バーチャレーシング」の8人対戦ってなかなかできなかったと思うんですけど、これが今や携帯もできるゲーム機1台でできてしまうのは感慨深いですよ。

奥成氏:当時のアーケードだと、ツインタイプ2台並びぐらいがほとんどで8人対戦できるところはほとんどなかったですよね、「デイトナUSA」は8人対戦をドーンと置いていたゲームセンターが結構ありましたけども。

――確かに、「バーチャレーシング」の8人環境があったゲームセンターというのは……記憶にないですね。

久保田氏:かなりレアだったんじゃないですかね。「バーチャフォーミュラ」なら海外のどこかのゲームセンターがズラッと並べているみたいで、そういう動画を見たことがあるんですけども。

――「バーチャレーシング」はまだポリゴン世代黎明期のタイトルですし、筐体の価格もかなり高かったということですから……。

久保田氏:そうそう、それが「バーチャフォーミュラ」になると筐体の値段がさらに高額だったということですから……、ズラッと並べているところは見られなかったですね。

――そうしていろいろ思い出してみると、「バーチャレーシング」で8人対戦できる機会は貴重だったんですね。

「バーチャフォーミュラ」は「バーチャレーシング」のアップデート版と言えるもので、筐体はさらに豪華なものとなった。それだけに筐体価格は非常に高価で、なかなか8台通信プレイ仕様のフルセットを見られる場所は少なかった

奥成氏:今回は20周勝負になる「グランプリモード」も収録しています。当時は、8人でのグランプリモードをプレイできる機会はより貴重だったと思いますけど、それができちゃうというね。そちらもプレイしてみましょうか!

(20周の長丁場!8人でのグランプリモードスタート!)

久保田氏:グランプリモードではタイヤが摩耗してグリップ力がなくなっていくので、ピットに入ってタイヤ交換するタイミングがポイントになりますね。初級コースと上級コースはピットがあるのでいいんですけど、中級コースはピットがないので後半はタイヤズルズルの地獄のようなプレイになるんですよ。

奥成氏:なんで中級コースはピットを作らなかったんでしょうね。まぁ、わいわいプレイするなら初級グランプリが1番いいですよね。

久保田氏:初級が1番バランスが良いですね。上級グランプリの20周はプレイ時間が長くて17分ぐらいかかるのもあるんですが、対戦時はLowar car boost(後方のマシンほど速くなる調整)が無いので、完全にドライビングテクニックでの勝負となります。

奥成氏:1プレイ200円でも全然元が取れるプレイ時間の長さ。F1やってる感が出てくるぐらい疲れますね(笑)。

奥成氏:今回はグランプリモードでのタイヤの摩耗もしっかりと解析して頂いたんですよ。グランプリモードを当時にやりこんでいて、タイヤの摩耗の仕組みを把握していた人がどれぐらいいるかは定かではないですが(笑)。

久保田氏:ちなみに、このグランプリモードはツインタイプだけに実装されているものでデラックス版には入っていないんですよ。

奥成氏:まぁ、デラックス版は1人用ですしね。ツインタイプ用に後から作った仕様なんでしょうね。ツインタイプで対戦用に何か入れたいと考えた時にグランプリっていうものと、タイヤの摩耗を考えたのかなって思います。

――タイヤの摩耗について今回解析されたということですが、どのような仕様になっているんでしょう?

久保田氏:スキール音が出る走りをすると摩耗していくんですよね。あとは、草地などを走ってもかなり摩耗するようになっています。

――タイヤが摩耗してグリップ感がなくなっていくのは、コーナーリング時に横に滑りやすくなっていくという処理で再現している?

久保田氏:ですね。滑るようになっていきます。詳しくは解析したプログラマーの原篠にコメントしてもらおうと思いますので、そちらをぜひ。

堀井氏:もうだいぶ滑るよー!

奥成氏:今は9周目……そこそこきてますね。

久保田氏:このあたりはピットに入ってタイヤを交換した方が速いのか、入らずに粘る方が速いのか、微妙なラインですね。

奥成氏:初級コースぐらいだとピットに入らずにがんばっちゃうのもあり?

久保田氏:ありっちゃありなんですけど、タイヤの摩耗によって約1秒ぐらいタイムが遅れていくんですよね。それがチリツモ(塵が積もって山になる)になって、結果としてピットに入った方が速いとなることもあるんですよ。それがどちらが良いかというのは、言い切れない微妙なところなんですけども。

奥成氏:なるほどねー、じゃあせっかくだしピットに入ってみよう。

久保田氏:初級コースでピットに入るのなら10周目ぐらいが良いかなと思いますね。

【プログラム担当の原篠氏にタイヤ摩耗について解説を頂きました!】

タイヤの磨耗はグランプリモードでのみ起こります。磨耗するタイミングは以下のとおりです。

- ドリフト中(タイヤが鳴っている期間)
- スピン中(車に衝突したとき、ドリフト中に草や砂に入ったとき)
- クラッシュ中(高速で壁にぶつかったとき等)
- リバウンド中(低速で壁にぶつかったとき等)
- 壁や車に接触中 - ブレーキスモーク中(急ブレーキ時)
- ホイールスピン中(急加速時)

上記の条件のいずれかを満たすと磨耗値が毎フレーム+1されていきます。

磨耗値の初期値は-1,000です。この値が0以下のあいだはグリップ力に影響はありません。

磨耗値が0を超えると徐々に遠心力に倍率がかかるようになります。遠心力倍率は最大1.4倍まで上がります。

初級/上級コースは磨耗値8,000で上限に達します。ピットのない中級コースは上昇がやや緩やかになっていて、磨耗値13,333で上限に達します。

参考までに、僕の走りで初級コースを1周した時の磨耗値上昇は+600程度でした。無事故で走り続ければ15周くらいで遠心力倍率が最大になる計算ですが、遠心力が上がればよりドリフトしやすくなるでしょうから周回を重ねるごとに上昇量も増える気がします。

――今3Pの奥成さんがピットに入ってますけど、曲は変わらないんでしたっけ?

久保田氏:対戦中の曲は1Pの音が基本になっていますね。2P~8Pのプレーヤーがピットに入ってもピット時の曲は流れないんですけど、1Pがピットに入ったときだけピット曲が流れるんです。

堀井氏:同時に全員分の音が再生されたりするとボリュームが爆発的に上がっちゃうので、その対策で1Pの音を基準にしているんですねー。

久保田氏:チェックポイント通過時の音はタイミングが合うと全員一斉に再生される可能性もあるんですけど、これも1Pをベースにボリュームバランスが調整されていますね。

――なるほど。こういった仕様もツインタイプに追加されているところなんですね。

堀井氏:ですねー。

――ちなみに、Nintendo Switchのテーブルモードでも今と同じように8人対戦できるわけですよね?

奥成氏:できることはできますが……どんな感じになるか、ちょっとだけやってみますか(笑)。

(Nintendo Switchをドックから取り外し、テーブルモードにして8人プレイ!)

久保田氏:これは、見えない……!

堀井氏:これなら久保田にも勝てるやもしれん!

奥成氏:画面の真横だと全然見えないよ!ちょっと移動しよう!(と言いつつ奥成氏は後ろに移動)

堀井氏:うぉー!俺には見える!見えるぞ!

奥成氏:ギリできなくもない……いや、厳しいかな(笑)。

堀井氏:そんなこと言いつつ、久保田くん、これでも1位走ってるじゃん!

久保田氏:だいたいこの辺でコーナーだよなみたいな、記憶で走ってる感じです(笑)。

――みんな堀井さんぐらい顔を近づけると、なんとかできますかね(笑)。

小玉氏:体がくっつくぐらい寄せ合わないとダメだよ……老眼の入っていない方ならできるかな(笑)。

――なかなか機会がないとは思うのですが、Nintendo Switch1台での8人対戦はやってみると楽しいですね。ただ、これが実装できるとわかったことで、いろいろ補完すべき仕様も増えたわけですね。

堀井氏:画面分割での8人対戦が実現できたことで、分割画面のレイアウトやそれに対応するUIも作る必要が出てきたんですよね。

久保田氏:プログラマーの原篠は「欲を言えばプレーヤー8人+ライブモニターの9分割を実現したかった」と話していましたね。それをやるにはMODEL1をライブモニター分もあわせて9台同時に動かさないといけないんですけどね(笑)。

――画面分割の収まり的にも9画面にしたかったというのはすごくわかりますね。でも、アーケード版でもライブモニターを出すのにもMODEL1を1台使うということでしたから、通信仕様は8人プレイまたは7人プレイ+ライブモニターが限界ではないんですか?

堀井氏:いえ、そのように言われているんですけど、実は最大で9台通信までいけるんですよ。

久保田氏:内部的には、9台のMODEL1を動作できるなら8人同時対戦+ライブモニターまでできるようになっていますね。でも今回はもうお話ししたとおり、CPUの割り当てとしてMODEL1を8台まで動かすという仕様で進めていたので、後からそれを変えて9台動かすようには、残念ながらできなかったですね。

――なるほど。オンラインでの2人対戦の方は、どのような作りになっているのでしょう?

久保田氏:ルームを作って対戦して頂くというランダムマッチ対戦になっています。基本的には「SEGA AGES ぷよぷよ」のオンライン対戦に近い作りですね。レースモードをノーマルとグランプリから選べるほか、言語設定、ヘルパー設定のオンオフがあります。

――マッチングするのは、それらレースモード、言語設定、ヘルパー設定のオン/オフが一致する同士でという仕様になっているのでしょうか?

奥成氏:レースモード設定が異なるプレーヤーとはマッチングしないようになっています。ヘルパー設定や言語設定は一致していなくてもマッチングしますね。

エムツーが夢見た「VRVR」とは? Nintendo Switchでの3D立体視モードは実現する?

小玉氏:今回はリプレイ機能も力を入れて作ってもらっていますね。

久保田氏:リプレイには今回、「バーチャフォーミュラ」のライブモニターをそのまま持ってきて見られるようにしています。リプレイ中の視点変更は、プレイ中の4つの視点+ライブモニターで5つになっているんですよ。

 ツインタイプのリプレイ(オフライン対戦とグランプリモード)では、アーケードのライブモニターをそのまま再現しているリプレイになります。ライブモニターには右上に「Mr.VIRT MCPOLYGON」という実況のポリゴンおじさんが登場するのですが、それももちろん再現してあります。

――今回はいろいろリプレイ中の視点操作とか、対戦の画面分割レイアウトだったりとか、細かな機能がたくさんありますねー。

奥成氏:そうですね。とは言っても、ゲームの仕様としては、オンラインや分割画面での対戦と、リプレイ機能ということになるので、追加要素としてはおとなしめかもしれないです。でも、「バーチャレーシング」はアーケードの完全移植というのはあまりなかったですし、グランプリモードを搭載していて一緒に遊んだりできるなど、これまでなかった要素が入っています。

――以前のインタビューでは堀井さんが「バーチャレーシング VR」、略して「VRVR」という野望を語っていたわけですが。(※)

 ちょうどこの2019年3月に「Nintendo Labo Toy-Con 04: VR Kit(以下、『VRキット』)」が発表され、4月には既存のタイトルも立体視対応できるのではという流れもあり。いろんな方向からタイミングが重なっているというわけなんですけども。

※「VRVR」とは、2018年9月のインタビューで堀井氏が語っていたNintendo Switchで立体視を実現して遊びたいという願望のこと。詳しくはこちらの記事を参照頂きたい

堀井氏:そうなんですよねー!ニンテンドーラボのVRキットに対応させて、360度見回したいと思うじゃないですか!実際のところ、Nintendo Switchでの3D立体視モードは実験的に試していて「おおっ!」ってなっていたので。いつかは……!いつかはやりたい!32X版の追加コースの件とともに。

奥成氏:まぁ、Nintendo Switch 3が出る頃ぐらいまでに……(笑)。

堀井氏:今回の「SEGA AGES バーチャレーシング」も、最初の見込みより十分にいろんなことができましたので。「VRキット」がもう少し早く来てくれていれば間に合ったやもしれぬ……!

奥成氏:間に合うも何も「VRキット」が発表されたのは3月ですからね。やりようがなかったですね(笑)。

――逆に言えば、タイミング次第、流れ次第だったのかもしれないんですね。残念。いつか機会が来るのを期待しています。

フラットでエッジの効いたポリゴンの魅力!サウンド面では“あの曲をあのテイストで収録”!

――MODEL1基板のタイトルをエムツーさんが移植されるのは初めてになりますか?

堀井氏:製品としてリリースされるものとしては1タイトル目になりますね。

――セガ初の3DCGボードにして黎明期の技術の塊だと思うのですが、エムツーさんから見たMODEL1基板の印象はどういうものなのでしょう?

堀井氏:テクスチャーもないですし、ポリゴン数もさほど多くはないので、3DCGボードに手をつけていくものとしては、わりとやりやすいものだと思うんです。

――ボードとしてはそういう印象になるんですね。でも、当時の3DCG技術であって、今とは違うというところがプログラム面にはあるのかなと思うのですが。

堀井氏:ですね。それは全然違っていて、ポリゴンは今だとZバッファー方式で面の奥行き情報をあらゆるところに持っているんです。でも、MODEL1はZソート方式でやっていて、1枚の面に対して個別に奥行き情報をつけているんですよね。なので、ポリゴンが交差して点滅したりっていうことも起きるんですよ。昔よくあったやつなんですけど、今回は久々にその画面を見たのでびっくりしましたね(笑)。

――重なってポリゴンが壊れて表示されちゃう、あれの時代なんですね。Nintendo Switch上で動かすMODEL1というのは、スペック的にはどうなのでしょう?CPUコア1つでMODEL1を4台分まわしているということですし、余裕自体はかなりあるのですか?

堀井氏:そうですね、1台分で換算すると随分余裕がありますね。

――Nintendo Switchのような3D世代のハードですと、アーケードのドット絵世代のボードと、MODEL1のようなポリゴン世代黎明期のボードとでは、MODEL1の方が楽に動かせたりするのでしょうか?

堀井氏:2D後期の、ラスター割り込みや拡大・縮小、BGも何枚もあってライン単位で描画しているみたいな基板よりは、MODEL1の方が動かしやすいとなりますね。

奥成氏:だからこそ今回は最大8台同時にMODEL1をぶん回すなんていうこともできたんですよね。でも、これ以降の、例えばセガサターンとかの頃のグラフィックスではテクスチャの解像度を高めたりもしないと見栄えが良くなかったりして大変になっていきますね。

 それに比べると、テクスチャーのないフラットなポリゴンには良さがあるというか。例えば元はドリームキャストで発売された「Rez」のワイヤーフレームの画面も、後にPS4版が出て高解像度になっても、テイストをそのままにキレイに描画できる。それどころか、よりエッジの効いた良さが引き出されますよね。

 今回の「バーチャレーシング」もタイヤとかはカクカクしていますけど、フラットでエッジの効いたグラフィックスのかっこよさが高解像度になってより出ているなぁと思います。

堀井氏:テクスチャーなしのポリゴン描画ですから、解像度を上げれば上げるほどキレイに見せられるという強みがありますよね。

――ちなみに余談と言えば余談なのですが、僕のイメージだとエムツーさんはドット絵集団な印象で、ポリゴン世代以降のタイトルのイメージは薄いのですが。

堀井氏:俺もっ!

久保田氏:いやいや、俺もってノッてる場合じゃないっすよ、社長(笑)。

全員:(笑)。

久保田氏:エムツーはPS2の頃のセガエイジスでMODEL2タイトルをやったりもしていますし、社内でいろいろ研究しているタイトルには3DCG世代のものもあるんですよ。

――技術的な得意不得意があるということではないんですね。

堀井氏:そうですね。ただ、3DCG世代以降のタイトルはリソースが一気に桁違いに多くなってしまうので、趣味的にいじるというのが大変になっちゃうんですよ。

――いわゆる“いつものエムツー”的な、自発的な取り組みはなかなかしづらい規模だということなんですね。

堀井氏:ですねー。

――MODEL1及び「バーチャレーシング」のサウンド周りについてはいかがでしょうか?

久保田氏:ディレクターの松岡から話を聞いてきたのですが、曲まわりはPCMですね。音源チップにはYM3438も載っていますが、こちらはもう効果音にしか使っていないということです。今回はPCMの中にLFO機能が搭載されていたということにプロジェクトの終盤になって気づいて、急いで実装したという経緯もあったみたいです。

奥成氏:今回のサウンド周りの話では、リプレイ機能にも注目ポイントがありますね。リプレイ再生中の曲は32X版のリプレイで流れていた曲を、MODEL1の音源でアレンジしているというものになっているんです。

 32X版のコンポーザーである幡谷尚史が作った曲を、アーケード版で音楽を担当している光吉猛修が演奏している……風ということですね(笑)。

――なるほど、逆輸入“風”ですね(笑)。

奥成氏:最初はこのリプレイでは32X版の曲がそのままで流れていたのですが、開発終盤になって突如、アーケード版音源アレンジされたものに変わりました。エムツーの工藤さんによる編曲ですね。

久保田氏:工藤は何度もブラッシュアップをして、最終的にはセガの幡谷さんにも聴いて頂いて、それでもう少し直したんです。

――作曲された幡谷さんご本人の直しも入ったんですね。

久保田氏:ご本人の希望で「ここをもう少しこうして欲しい」という要望を頂いたので、それも反映して仕上げているということですね。

奥成氏:MODEL1音源なので、もう少しパンを振ってくれると、より本物らしくなるのではというようなやり取りでしたね。

【エムツーサウンドチームの工藤氏にコメント頂きました!】

エムツー工藤です。

「SEGA AGES アウトラン」ぶりのアレンジワークでした。前回は好評を多く頂き、とてもうれしい気持ちになりました。

「リプレイではスーパー32Xのリプレイの曲が流れてほしいよね」という所が今回の発端で、ディレクターの松岡から当初自分が頼まれた内容は「スーパー32X版のリプレイ曲のドラム部分をACの音色に差し替えてACっぽくしたものを作ってほしい」でした。

まずはドラム音色が必要になるので、AC版のサウンドROMを解析してPCM音色を抜き出し。次にMD実機からドラムを鳴らさなくしたリプレイ曲を録音。抜き出したPCMでドラムを原曲通りに打ち込み、MDの録音音源とミックスして完成……

……のはずだったのですが、「ACっぽく」という言葉、担当プログラマーの「FMもアーケードのPCMにして欲しくなりますね」という感想、あとは個人的興味と前述の作業でACの全ての音色が手元にあったこともあり、いつの間にか全てをAC音色にしたもののテスト版が完成していました。

そこからは他の仕事の合間に他のスタッフから感想をもらいつつAC音色版のクオリティアップを進めていたのですが、ある日、原曲作曲者の幡谷様から感想を頂いた(!)との連絡が。恐る恐る確認して……ご好評でとてもホッとしました。他にも瀬津丸様、西村様にもご意見いただき、最後の磨き上げをすることができました。(ありがとうございました!!)

このアレンジ版はAC基板用のデータではなく、DAW(音楽制作ソフト)にAC版のサウンドROMから抜き出した波形データをサンプラーに読み込ませて制作し、最終的にはストリームで再生しているものですが、いつも通りAC基板に搭載されたサウンドチップの仕様に近くなるように制限を設けて制作しています。

具体的にはディレイ機能は無いので疑似ディレイで……等なのですが、かなり性能が高いサウンドチップなので、エフェクターを使わない以外は通常の音楽制作と似たものとなりました。ビブラート機能(LFO)が使えるので、ふんだんに使わせて頂いております。

一応発音数制限はあり、それを超えないように注意しているので、理屈の上では基板でも鳴らすことができる範囲には収まっていると思います。

恥ずかしながらこの曲は件の録音前に初めて聴いたのですが、その際に「これはすごくいい!」と感じ、しばらく聴き入っていました。その後、時間はない中ででしたがゴージャスにしたものを収録できたことがとても嬉しいです!

ソロで華麗に決めたもの、みんなでワイワイ楽しんだものなど、お気に入りのリプレイのお供に楽しんでいただければと思います!

――その他の機能についてですが、ヘルパー機能が今回も搭載されていますよね。これはどのような機能になっているのでしょう?

久保田氏:ヘルパー機能ではアザーカーとの接触判定がなくなっています。「バーチャレーシング」ではアザーカーとの衝突によるスピンが結構多いのですが、ヘルパーモードをONにしてアザーカーを気にせずにまずはコースを覚えてから実戦……という感じで遊んで頂ければと思います。

――操作のオプション周りですが、ジャイロ操作はあるのでしょうか?

久保田氏:ジャイロ操作も搭載しています!

――「SEGA AGES アウトラン」にもあった、Nintendo Switchを携帯モードで持って操作するのを想定した作りでしょうか?

久保田氏:そうですね、同じような形です。ジャイロは意外と曲がりやすくて、慣れると微妙なステアリングのコントロールがアナログスティック以上にできます。

――「バーチャレーシング」ですと、アーケード版では視点切替えが4個のボタンになっていましたが、今回のコントローラー割り当てだとどのようになっているのでしょう?

久保田氏:デフォルトでは1つのボタンで押すごとに視点が変わっていくローテーション形式で搭載していますね。ただ、キーコンフィグで個別の視点を割り当てることも可能です。

――オプション項目にマイカーカラーの変更というものもありますね。

久保田氏:自分の車のカラー変更機能ですね。デラックス版は車の色が固定なので変えられないですが、ツインタイプ版(対戦時・シングルプレイでのグランプリモード時)に変更できます。

――難易度設定の方はアーケード版に準じたものになっているのでしょうか?

久保田氏:アーケード版のディップスイッチ設定にあった4種類に加えて、さらに簡単な「イージスト」をオリジナルで作って入れてあります。アーケードのディップスイッチ設定は残りタイムが変わるだけで敵車の速さや挙動なんかは変わらないというものなんですけども、「イージスト」もそれに準じたものにして、かなり易しいタイム設定にしていますね。

奥成氏:誰でも……と言えるかはあれですけど、かなりゴールしやすい難易度ですね。

“32X版の追加コースや車をアーケード版で!”というロマン溢れる挑戦の結果は……!

――32X版の追加コースや車も入れて欲しかったなーと思うのですが、それはどうだったのでしょう?

奥成氏:そういう要望はあるだろうと、空気は読んでいたのですが……。

堀井氏:実はそれは裏の目標としてあって、トライしていたんです。ですが、コースの表示まではできるものの当たり判定を再現することができなくて。そこは手作業で新たにデータを作っていくほかなくなるのですが、ポリゴン世代以降のものはデータを新たに作るということの難易度が一気に上がってしまうんです。

――アーケード版の「バーチャレーシング」に32X版のデータを入れるというのでは、かなり手を入れないといけない状態になるわけですね。

堀井氏:3DSの時にも「32Xのデータでやるけどグラフィックスのモデルだけはアーケード版から引っ張ってこよう」とか考えたんですけどね。それだってもちろん難しかったのですが。

小玉氏:今回も進めてはいたんですけど、32Xの追加コースの当たり判定を全部MODEL1ベースに新しく作らないといけないというのは……難しいですね。

――なるほど。仮に、その工程をやるのと、32X版に少し手を入れて移植するというのを比べたら、32X版移植の方がまだ早くできちゃうぐらいですか?

堀井氏:それですと、32X版を素で持ってくるほうが……早いかもしれないですねー。それで遊べばいいとなるかもしれないですけど、でも、アーケード版に32Xのコースを入れるという無茶をやってこそがロマンだと思うんです!

奥成氏:まぁ、32X版の「バーチャレーシング」はそのままだと20フレーム動作ですからね(笑)。

堀井氏:コースデータなどのリソースを持ってくる話なわけですが、32X版には追加コースだけでなく追加の車もあるんです。その追加車の挙動をアーケード版で再現するのは、さらに難しい……。

――当然ですけど、「バーチャレーシング」と同じ名前がついていても、アーケード版と32X版は作りの異なる違うゲームですよね。違うゲームのデータを持ってきて普通に遊べるようにすることはもちろん難しい。

堀井氏:そうですね。でも、アーケード版で32Xの追加コースを表示することまではできましたし、それが新鮮でね、ぐっとくるんですよ。なんとかしたかったですねー!

――どういう形がいいかはあれですが、いつか見たいですね。下村さん的にはいかがでしょう? 例えば、「SEGA AGES バーチャレーシング」がたくさん売れて、要望もあれば、32X版の要素をなんらかの形で提供するというのは……?

下村氏:それはまずは今回の「SEGA AGES バーチャレーシング」がきっちり成果を残してくれて、その上でユーザーから熱いご要望をたくさんいただくことになれば、「SEGA AGES バーチャレーシング 2」も可能になるかもしれませんね。

――先ほど堀井さんがおっしゃっていた「グラフィックスモデルがアーケード版な32X版」もぜひ遊びたいですね。もちろん60フレームで(笑)。

堀井氏:いつかやりたい!売れて欲しい!頼みます!

小玉さんにお聞きする“デザイナー目線としての当時のポリゴン、当時の「バーチャレーシング」”

――小玉さんには、ぜひアーケード版が登場した当時、ひいてはポリゴンの3DCGが出始めた頃のお話も伺いたいのですが、1992年に「バーチャレーシング」が登場したときはどのような印象だったでしょうか?

小玉氏:1992年頃ですと私はF1にめっちゃハマっていて、ヨーロッパのグランプリ観戦にも行ったんですよ。

堀井氏:なんとっ!

小玉氏:それぐらい好きで、「バーチャレーシング」は実はそっちの目線からも注目していたんですよ(笑)。

奥成氏:1989年にF1モチーフの「スーパーモナコGP」がアーケードに登場して、メガドライブ版も1990年ぐらいに出ていて。「アイルトン・セナ スーパーモナコGP II」が1992年なので、「バーチャレーシング」がちょうどその頃ですね。

小玉氏:メガドライブ版の「スーパーモナコGP」の開発には私も参加しているんですよ。デザイナーはアーケード版を描いた人がそのままメガドライブ版もやっていて、私は終盤のお手伝いなんかをしたんですよね。そういう仕事もありつつF1が好きだったので、同時期の「バーチャレーシング」も印象に残っていますね。

 ただ、「バーチャレーシング」を開発されていたのは場所が全然違うところだったので、開発の様子とかは見ていないんですよ。デラックス版の赤い筐体はやっぱりインパクトがあって、すごく覚えていますね。

――デザイナー目線としてのポリゴン。当時の3DCGの波というのは、どのように映っていたのでしょうか? 最初はやはり違和感がありましたか?

小玉氏:いえ、意外と違和感はなかったんですよ。違和感があったのは、この後にテクスチャーがはられるようになった時で、それは「今までと違うな」っていう感覚がありましたね。「バーチャレーシング」はまだテクスチャーなしでポリゴンに色をつけている段階ですから。

 ただ、デザイナーが手を入れずとも“PC上でポリゴンに色をつけてビジュアルを作れる”というところは、すごいなと思いましたね。それまでの私たちって頭の中で想像してポリゴンっぽい画面を作っていたんです。具体化してPC上で色まで塗っていく。形も描かれる。そしてそれが、PC上だけでなくゲームの基板で描画できているのは初めての驚きがありましたね。

――頭の中に描こうとしているものの「奥行きの情報」であったり「違った角度から見るとこうなっている」というものがあって、3DCGだとそれが具体的に描画されるというような。

小玉氏:そうですね。ポリゴン以前は手での色づけで“いかにCGっぽくするか”みたいなことをやっていたわけで、それを本当にCGそのものを動かすようになって、しかもそれが巨大なコンピューターによる演算ではなくゲーム機でやるようになったというところに凄さを感じましたね。

――なるほど。3DCGの黎明期というか初期としてはこんな感じになるんだと思われたような。表現の変化としてはテクスチャーの方が違和感があったというのも納得感があるお話です。

小玉氏:今回の「SEGA AGES バーチャレーシング」でもリプレイ機能を追加して頂きましたが、当時AmigaのポリゴンのF1レースゲーム(※)があって、それにも自分の走りを後から見られるリプレイ機能があったんですよね。そういう見せ方の新しさに驚かされたところがありましたね。

※Amiga/Atari ST/Dos用に1992年に当時のマイクロプローズ・ソフトウェアよりリリースされたレースシミュレーションゲーム「Formula One Grand Prix」

堀井氏:「バーチャレーシング」を最初見た時には、どうにかしたら家で遊べるものとは思えなくて、ここまで来てしまったら、とても高い桁違いのコンピューターがないと遊べないゲームなんだろうなって思っていましたね。でも、わりと早い段階でメガドライブ版が出て、「(グラフィックスを)落とせば移植できるんだ」と驚いたのも覚えています。

 その後、32Xでよりしっかりしたものが出て、セガサターンやプレイステーションというハードも出てきて、3DCGがやってくるのは早かったなぁという印象があります。「バーチャレーシング」で何かが変わったというか、歴史が変わった、ゲームの画作りがガラッと変わった。そういうポイントになったのは間違いないと思いますね。

 なにしろそれまではゲームの中でカメラを動かすといっても、近づくか離れるかぐらいしかなかったわけですし、カメラワークという概念が出てきたわけで。すごくびっくりしましたね。

奥成氏:当時、アーケードの方の話で言うと、ナムコの「ウイニングラン」があって、「ドライバーズアイ」もあって、アタリの「ハードドライビン」なんかもありましたよね。アーケードにそういうポリゴンゲームが出始めていたわけですけど、正直まだコアなゲームファン向けというか。描画もまだ15フレームぐらいのもので、メガドライブにも「ハードドライビン」が移植されて僕もたくさん遊びましたけど、まだ“パソコンで実験をしているものの延長”というようなゲームでした。

 そこに「バーチャレーシング」が、突然現われるんですよね。30フレームの描画と表現している箱庭感というか密度の多さ。桁違いなインパクトがあって「あ、3Dグラフィックスってこうなるんだ」って初めて一般に伝わるところまでアピールできていて、それがヒットに繋がったんだと思うんです。

 そういう意味で言うと、家庭用の「バーチャレーシング」の移植ってメガドライブ版も32X版も、「バーチャレーシング」を楽しめるというところでは素晴らしいんですけど、さすがにアーケード版のテイストを再現しきれてはいなかったと思うんです。

 今回のNintendo Switchでの「SEGA AGES バーチャレーシング」は初めて、“アーケード版に出会った時の衝撃”を再現できているのではないかなと思うんですよ。おそらく今回レンダリング解像度が高められているのが、ちょうど自分の思い出補正といい感じにあってくるからなのかなって思うんですけど(笑)。

 当時に「バーチャレーシング」が好きだった人にとって、あの頃をきちんと思い出せるものになってくれたものになったのが、「バーチャレーシング」好きの1人として、とても嬉しいなと思いますね。

下村氏:「バーチャレーシング」はセガが1番キラキラしていた、そういう時代のタイトルで、僕もそのキラキラしていた頃に入社したというところもあって、このプロジェクトでは1番手掛けたかったタイトルですね。それを念願叶って自分達の手で成し遂げられたっていう喜びがあります。

 そういう想いの詰まった「バーチャレーシング」を今の新しいユーザーさんにお届けできる、知ってもらえるという嬉しさ。その相乗的な熱量も加算されて、「お待たせしました、これが僕らがベストを尽くした作品です」と、言えるかなと思います。

終わりのない夢、終わりのない情熱。第1期が全19タイトルとなり、これからも走り続ける「SEGA AGES」

「SEGA AGES ファンタジーゾーン」
「SEGA AGES G-LOC AIR BATTLE」
「SEGA AGES ヘルツォーク ツヴァイ」
「SEGA AGES イチダントアール」
「SEGA AGES SHINOBI 忍」
「SEGA AGES ワンダーボーイ モンスターランド」

――セガフェス2019では新たなラインナップ6タイトルを発表されました。その中には「ヘルツォーク ツヴァイ」もありましたが、下村さんは2016年のTGSでの「セガ3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE」ステージで「『ヘルツォーク ツヴァイ』、やってみたいと思いませんか?」と発言されているんですよね。その頃からついに念願叶ってというところなのでしょうか?

下村氏:「ヘルツォーク ツヴァイ」出したいねっていう気持ちはずっとありましたが、テクノソフトのタイトルを受け継いだその時点では、移植に対してはいずれはやりたいっていう想いだけだったので、今回ついに実現できたのは嬉しいですね。

 テクノソフトっ子としては、「サンダーフォース」と「ヘルツォーク」は外せないアイテムですから。

――発表された6タイトルは、「SEGA AGES」としてはいわゆる第2期という扱いになるのでしょうか?

奥成氏:いえ、第1期ですね。発表した6つを合計すると19タイトルになるのですが、これがSEGA AGES第1期の全部になります。

――SEGA AGES第1期、全19タイトル!

下村氏:当初は15タイトルだったところが、エムツーさん含めてスタッフのみんなががんばってくれて、19タイトルまで伸ばせました。予算いっぱいまで引っ張った結果となっていまして、区切りが悪いように見えますが、これ以上の追加は本当にありません。

――第1期で残すは、

「スペースハリアー」
「コラムスII」
「サンダーフォースAC」
「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」
「ぷよぷよ通」
「イチダントアール」
「SHINOBI 忍」
「G-LOC AIR BATTLE」
「ファンタジーゾーン」
「ヘルツォーク ツヴァイ」
「ワンダーボーイ モンスターランド」

ということに。

奥成氏:そうですね、そこまでが第1期です。この後が出てきたらそこからは第2期ですし、続かなければ……そこまでとなります(笑)。

――それでは最後に一言ずつお願いできますでしょうか。

堀井氏:皆さんがこの記事を目にしているという事は、突発のトラブルもなく無事にリリースされているはず……ということで、まずはめでたいっ!

 「バーチャレーシング」は新基板且つ新タイトルという事もあり大きいタイトルなのですが、そこにマルチプレイやらフレームレートの改定もあって、季節の変わり目やら元号の切り替わりなどのタイミングが重なったお陰か、気持ち的には一里塚を超えた感があります。

 「バーチャレーシング」は無事にでましたが、これから先も沢山のタイトルをやっていきます、野望もあります、成就に向けて応援宜しくお願いします。

久保田氏:中学生の時に「バーチャレーシング」と出会ってから、およそ26年。当時やり込んでいた自分も腰を抜かすほどのパワーアップを遂げて、さらに自分がその目付役を担うことになろうとは思いもしませんでした。ランキングで皆様と競える日を楽しみにお待ちしております!

 ちなみに、中級コースをグランプリモードでプレイするとなぜか1位の車がとんでもなく速いんですよね。自分は今まで一度も1位を取れたことがないんですけど、この「SEGA AGES バーチャレーシング」ではいつか勝ってやろうと思います!

小玉氏:いつも応援のお言葉をいただき、大変ありがたく思っております。まだまだ道半ばの状況ですが、一作一作丁寧に取り組み、待っていただいているユーザーのみなさまのご期待に添えるよう心掛けて制作して参ります。今後とも、ご意見や応援のコメントを寄せていただけると励みになりますので、よろしくお願いいたします!

奥成氏:ようやくすべてのタイトルを発表でき、プロジェクトとしてもこの「バーチャレーシング」を出せたことで、SwitchにSEGA AGESをスタートした意義があったというか、目標へようやく到達できたと言えるんじゃないかなと思います。その一方でプロジェクト的には、まだ半分すらリリースされていないという状況でもありますので、今後の「ヘルツォーク ツヴァイ」や「G-LOC」などでのエムツーさんの新たな工夫がどうなるのか、私も新しいROMが届くのを楽しみにしているところです。皆さんも是非ご期待下さい!

下村氏:ファンの皆様のご支援のお陰で、全19タイトルまでの発表ができました。本来であれば、このタイミングで全てのタイトルがプレイできる計画で立ち上げたプロジェクトでしたが、力が足りず、お待たせしてしまうこととなり、本当に申し訳ございません。ですが、その頂いたお時間の中で、エムツーのスタッフも頑張ってくれましたので、ファンの皆さんにご満足いただける内容になっていれば大変嬉しく思います。

 そして、今回シリーズ第8作目の「バーチャレーシング」の発売となりました。「セガ 3D復刻」シリーズでは実現できなかった、今までとはちょっと毛色の違うタイトルとなり、我々の渾身のチャレンジでもあります。

 もし、この19タイトル以降の第2期の展開ができるのであれば、それはファンの皆様にお許し頂けるということが第一義となりますが、このタイトルの成否が今後の判断に影響してくるかもしれませんね。期待も不安もありますが、本作に籠めたスタッフの熱い想いが皆さんに伝わることを願っております。

――ありがとうございました!