インタビュー
【ゆく年くる年特別企画】
これからがさらにすごい! 「エルダー・スクロールズ・オンライン」日本語版インタビュー
クライアント半額セール、ハウジング実装……「ESO」はこれからもずっと続く!
2016年12月21日 13:30
DMMがサービスをしているMMORPG「エルダー・スクロールズ・オンライン」日本語版(以下「ESO」)。6月のサービス開始から、半年が経過した。
弊誌では“「The Elder Scrolls Online」大満喫連載 アカヴィルたちの集い”を連載し、ゲームの中の風景を語り、魅力を紹介してきた。今回、年末に当たり、プロデューサーの松本卓也氏を始め、運営スタッフにインタビューを行なった。
松本氏達運営スタッフも「ぜひ語りたいことがある」という。「ESO」は魅力的なMMORPGであり、「One Tamriel」という大きな変化もあった。しかしコンテンツの持つ潜在的なパワーはまだユーザーの認知というところで発揮し切れていない。この半年を振り返り、そして未来を語ることで、「ESO」の将来像、そしてスタッフの“意気込み”を紹介したい。
「One Tamriel」で真の「ESO」に到達。パッケージも割引価格に!
まず最初に松本氏と運営スタッフに聞いたのはスタートからの感想。運営スタッフ「とにかくサービスをスタートするまでの準備が大変だった」と語り、松本氏は大きく同意した。1番きつかったのは“時差”。これはサービス前の運営・開発者インタビューでも語っていたが、やはり北米、テキサスとボルチモアにある開発と北米サービスの拠点と打ち合わせをする。特にサービス直前の数日は、日本では朝4時に家を出て、5時半にTV会議に参加するというスケジュールだったという。
「こっちが眠くて必死に目を開けているのに、カメラの向こうのスタジオでは夕方でピザとかむしゃむしゃ食べてるし、イエーみたいなすごいテンションで……大変でした」と松本氏がしみじみと語り、運営スタッフは頷いた。今ではボルチモアのBethesda Softworksとの打ち合わせは定期的に行なっており、向こうは深夜で少し疲れた表情だったりと、やはり時差では苦労は続いているという。
松本氏は、運営の感触として、北米の「ESO」という大型のMMORPGをDMMというゲーム業界では“新参者”といえるメーカーが運営を始めたところで、ユーザーからのサービスへの不安の声が大きなプレッシャーだったと語る。「The Elder Scrolls V: Skyrim」に至るまで、日本のユーザーにとっては「The Elder Scrolls」シリーズでのしっかりしたファンがいる。
DMMの「ESO」の運営でそのファン達を失望させてしまうのではないか、その不安と戦いながらの半年だったという。もちろん、アップデートでの不具合や、サービス停止なども大きな心配であり、プレッシャーを常に感じていた半年だと振り返った。サービスが続いたのは運営スタッフのがんばりももちろんだが、北米側の協力なしではなしえなかった。本当に北米側にも感謝していると松本氏は語った。
筆者としては、やはり個人的にも「北米MMORPGが日本語でプレイできている」と言う環境を提供してくれているこの状況は本当に感謝している。これまで様々なタイトルが日本ではサービスされているが、北米MMOタイトルは続かないものが多く、ここ数年は新作すらなかった。それをメッセージや音声まで含めてフルローカライズをしてくれているのは“奇跡”といっても良い状況だ。ものすごいボリュームの、本格MMOを運営してくれているスタッフ達にはやはり感謝を伝えたかった。
「フルボイスは、本当にやって良かったと思っています」。と松本氏は語る。「ESO」はクエスト中心のゲームであり、プレーヤーに決断を強いるもの、どんでん返しや裏切りなど、キャラクター達が織りなすドラマがゲームの中心となっている。テキストの日本語化だけでなく、吹き替え音声の声優達の演技はドラマに臨場感を与え、より日本人プレーヤーに訴えかけるものになっている。「ESO」では、DLCも含め全てのコンテンツがフルローカライズされている。ここまでリッチなMMOのローカライズは、日本では例がなかったと言える。
運営スタッフは「サービスがスタートしてからは『運営さんありがとう』という声をいただけています。しかし思い出すとサービス前はかなり心配されていたことを思い出しました。『DMMの運営なんて信用できない』という声は、ありましたね」と語った。しかし実際にサービスがスタートしてから、実際にプレイしている人の声は、運営に大きく力を与えた。
実際、課金システムの準備、パッチや、メンテナンス、不具合の対応、こういった負荷となる部分は、オンラインビジネスを中心に展開し成長しているDMMだからこそできている部分があるのは確かだという。
しかし、「ESO」プレーヤーには忘れられないトラブルもあった。「ルー語(ルー大柴から)現象」と呼ぶ、一部のメッセージのみ英語になってしまった現象だ。サービスがスタートし安定してきたぞ、といえる状況だっただけに運営スタッフの神経をかなりすり減らしたという。「ちょうどTGSでの出展と重なったんですよ、ユーザーの皆さんには本当に申し訳なかったです」と松本氏はコメントした。
この不具合は北米スタッフとの協力でクリアしたが、つい最近まではPCにあまり慣れていないユーザーから「自分のPCでは動かない」という声が上がっていたという。サービスから半年たち、本格的コンバットシミュレーターゲーム「War Thunder」も始まり、コアなPCファンもDMM GAME PLAYERに増えてきて、そうした声は少しづつ減っているという実感も得ているとのこと。
TGSでは大きなスペースで存在感も出せ、特に5画面を並べた試遊台は人気だったようだ。会場にいたスタッフは「Twitterでユーザーの反応がわかるのですが、プレーヤーさんが会場に来て下さったのはもちろんですが、彼らが初めての人達を応援してくれるのがうれしかったです」と語った。
会場ではグループダンジョンに挑戦できるコンテンツを用意したのだが、プレーヤー達が初心者を助けてくれる場面を見ることができた。特に海外の団体がこのグループダンジョンに積極的で、そのリアクションの大きさも楽しかったとのことだ。松本氏は「皆がPCを並べて遊ぶああいう空間はやっぱり楽しいですね、また何かの機会でやってみたいです」とコメントした。
そして「ESO」として大きな変化が「One Tamriel」である。このアップデートでプレーヤーはこれまで制限されていた他の地域を行き来できるようになった。運営スタッフも1プレーヤーとしてその変化を実感しているという。プレイ感覚で大きいのは敵が自分のレベルに合わせて調整される機能。これまでは異なるレベル帯の地域に間違って踏み出すと即死だったが、これが緩和された。初期のクエストでも適正レベルの報酬が得られるようになったので、やり残したクエストをプレイできる楽しさも増した。
また、「他種族のセカンドキャラクターで遊ぶのが楽しい」というところもあるという。「One Tamriel」は勢力間の垣根をなくしたため、他の同盟でもパーティプレイが楽しめる。セカンドキャラクターはいつもの友達と違う所属で作っても、引き続き友達と遊び続けられるのは「One Tamriel」ならではだという。
そして、実は「One Tamriel」こそ、開発スタッフが目指していた真の「ESO」ではないかと松本氏は考える。「Skyrim」をプレイして実感するのは、どこに行っても敵は自分のレベルに調整されるので、クエストの順番設定はされているものの、本質的にはどこに行っても自由だし、どこでも自分にあった冒険が楽しめる。
これまでの「ESO」はレベリングのルートが決められていた。「One Tamriel」はここに踏み込み、大筋のストーリーはあるものの、自由度は大きく広がった。「Skyrim」をはじめとした「The Elder Scrolls」シリーズの基本理念に近づけたことこそ「One Tamriel」の存在は大きいという。
しかし一方で「現在のバランスはちょっと初心者に厳しくなったのではないか」という感想も持っているとのこと。これまでは他でレベル上げをすれば、メインクエストをソロで回すことができたが、今ではちょっと苦戦するように調整されているので、ボスなどがソロでは難しいバランスになった。「ちょっと今は高レベルキャラクターに向いているバランスで、今後、初心者向けの調整をして欲しいと思うところもあります」と運営スタッフは語った。
それでも丁寧に積極的にクエストをこなしていけば以前よりずっと強力な装備が入手できる。以前の「ESO」は生産を積極的に行ない、装備を充実させるのがゲーム攻略の鍵だったが、「One Tamriel」によって自分の欲しいアイテムがクエストで入手できるようになったのは大きいところだ。
この年末の予定としては「ニュー・ライフ・フェスティバル」が12月16日から開催されている。これは最大9個のデイリークエストで、様々なプレゼントがランダムで入手できるという。そしてそれらをクリアすることでも様々なアイテムがもらえる。クラウンストア(課金ポイントショップ)でも特別なアイテムが販売される。このお祭りは2017年1月5日までだ。運営としてはこの開催に合わせ、SSコンテストを実施する予定だ。
12月21日からはDMM GAMES5周年を記念したセールも行なわれる。サイバーマンデーで半額になった「ESO」のパッケージだが、今回また半額で販売されるという(ダウンロード版のみ)。「ESO」はソフトを購入すれば、その後は基本月額課金なしでプレイできる。コンテンツはたっぷりあり、戦争などやり応えもあるコンテンツもある。何よりもコンシューマーゲーム以上のボリュームのある本格ファンタジーRPGが“日本語で楽しめる”というのは大きい。ソロでもたっぷり楽しめる。この機会を逃さないで欲しいと運営スタッフは熱く語った。
さらに既存プレーヤーにとっても課金ポイントの「クラウン」が12月28日までの期間限定で半額になる。プレーヤーにとって“馬”は大きな目標になるが、実はゲーム内通貨で馬はかなり高価だ。クラウンで馬を購入し、序盤からハイスピードでゲームを進めるスタイルは、オススメである。クラウン半額セールは初心者にもうれしいところだ。
そして「無料トライアル版」も大きくアピールしたいと運営スタッフは語った。以前は期間限定で配布していた2週間の無料トライアル版バージョンが、現在は常設になっている。ゲームの雰囲気を味わうことはもちろんだが、「現在のPCできちんとプレイできるか」を無料トライアル版で確かめて欲しいという。無料トライアル版のプレイデータは製品版に引き継げる。ぜひプレイして欲しいと松本氏は語った。
2月にはハウジングも実装。松本氏が宣言、「『ESO』は長く続きます」
今回松本氏がユーザー達に知らせたいのは、開発元であるZeniMax Online Studiosの訪問体験だ。松本氏も含め、運営スタッフはサービスがスタートしてからそれぞれのスケジュールで開発元を訪れているが、松本氏は「One Tamriel」実装後に初めて訪問したとのこと。
開発者達も「『ワンタムリエル』でようやく『ESO』は完成した」という実感を持っている、そういう空気を強く感じたと松本氏は語った。最初に提示した、開発者が思い描いていた「ESO」が2年以上の運営を経てようやく実現できたとのことだ。
その場所で打ち合わせた中で今明かせるものの1つが10月14日から開催した「魔女祭り」。ハロウィーンにちなんだゲーム内の季節イベントだが、実は「「One Tamriel」実装まで季節イベントはほとんど行なったことがなかった。今回がまさに皮切りとなって、今後は定期的に行なっていく。イベントに関しては日本の意見も取り入れたり、日本人向けのアレンジも考えているとのことだ。
定期的に行なわれるイベントとしては「DLCセール」がある。これは実は日本のプレーヤーにはありがたいと松本氏は語った。6月のサービス開始時期、「ESO」は4本のDLCが入っている状態で、日本のユーザーは「実装時の興奮」というのは知らない状態だった。しかもスタート時に高レベル向けコンテンツであるDLCは縁遠い存在である、日本人プレーヤーにとって「DLCって何?」という印象が少なからずあった。
しかしセールで半額でサービスされることで改めてDLCにフォーカスが当たり、コンテンツの概要が説明され、セールを機会にプレイするユーザーも増える。「ESO」では今後もDLCのセールを行ない、ユーザーアピールを定期的に行なう。現在日本ユーザーのレベルも高くなっているので、DLCをプレイする準備も整っている。今後もセールは行なわれていくので、日本人プレーヤーも楽しみにして欲しいと松本氏は語った。
実はアニバーサリーや季節イベント、セールでの盛り上がりなど、こういったユーザーへのアピールは「One Tamriel」で基幹システムを準備したためだ。今回のアップデートで、今後の計画がしっかりできたところが大きい。そのことを松本氏はZeniMax Online Studiosの訪問で強く約束されたという。
そして2017年2月の目玉がハウジングシステム「ホームステッド」だ。ZeniMax Online Studiosではこのアップデートに向けた打ち合わせも行なわれた。日本でも同時期にきちんとアップデートされる予定だ。
開発としてはようやくの実装というところで今後も充実していく要素とのことだ。また、ガチャのようなアイテムボックス「クラウン木枠箱」は日本向けに実装を現在調整を進めており、今後の発表を待って欲しいという。
松本氏はZeniMax Online Studiosの訪問はユーザーへの要望もきちんと伝えているという。今はまだ「何をどう伝えた」かを言及してしまうと、「あのとき言ったのに入らないじゃないか」ということになりかねないので、今は明かせないと答えた。今後のアップデートにより、情報は出していきたいとのことだ。
1つ公開できるのは「ダミーの実装」だ。攻撃するとどのくらいのダメージが出るか、それがきちんと確認できるダミーの実装は「こちらでも要望が出ていた」とのことで、開発が決定したという。掲示板やTwitterで寄せられた意見を開発側に届けているし、今後も継続して募集して行く。「日本が何を求めてるか」というのは開発陣も高い興味を持っており、ぜひ声を寄せて欲しいという。
「日本のユーザーの方に言いたいのは『ESO』はまだまだこれからだ、ということ。ZeniMax Online Studiosで今後の予定を確認してきました。内容はまだ全然言えませんが、『ESO』はこれからずっと続いていくサービスです。そしてDMMも全力で運営を行なっていきます。私たちのゲームは続いていきます。それだけはしっかりと約束します。開発を訪問したことでこれからの『ESO』に私自身大きな期待を持ちました。プレーヤーの皆さんにも安心してプレイしていただきたいと思います」と松本氏は語った。
運営スタッフはZeniMax Online Studios側の“歓待ぶり”にも驚かされたという。最初は数人だったのだが、「これを作った奴に会わせてやる」、「あいつに話をさせよう」などなど、会議室が溢れるほどに多くのスタッフが集まってきていっぱいになった。
「日本のユーザーに自分のゲームをアピールできるというのが、彼らにはうれしいみたいですね。彼らの根底にあるのは『日本のゲーム』へのリスペクトだと感じました。日本のゲームコンテンツに触れた開発者達にとって、日本のユーザーにゲームをサービスできていることはかなりうれしいんだな、と感じました」と運営スタッフは語った。
運営スタッフが継続的に取り組んでいくのは、ユーザーのゲーミングPCへの理解だ。どんなPCで遊べるか、どういった環境が必要なのか、そういったゲーミングPCへの啓蒙も行なっていく。もう1つ、ユニークなところとしては「4Kモニター」がある。「ESO」は4Kの出力が可能だが、4KモニターはDMMグループでも推していくところである。「ESO」は社内でも4Kモニターの品質テストに利用しており、4Kモニター使用者に、「ESO」を告知していくことも行なっていきたいとのことだ。
最後は、インタビューで答えた松本氏を含む4人の運営スタッフ1人1人のメッセージを掲載したい。
「私は1プレーヤーとして、ユーザーのイベントに参加したりもしています。今後は運営スタッフとしてのイベントなども企画したいと思ってますので、よろしくお願いします」。
「運営側では、ユーザーイベントを公式で告知すると言ったフォローも行なっています。ぜひ、この告知を利用してください。11月末には『デユエルトーナメント』が開催されました。まだまだ申し込みが少ない状態です。どんな小さなイベントでも、大歓迎です。ぜひよろしくお願いします」。
「お客様からの意見は本当に感謝しています。僕らもできるだけ応えていきたいと思いますし、開発にも届けていきます。ご指摘ももちろん、色々な声をかけてください」
最後に松本氏は長い話を始めた。「もうすぐクリスマスですね。私には2人の息子がいるんですが、長男には自作PCキットをサンタさんしようかなと。パーツは敢えて低スペックで、グラボはオンボードで、メモリもストレージも最小。OSはLinux。そこから自分なりにで手を入れてPCとはどういうものか、追求してくれたらなと思っています。で、次男にはリクガメが良いかなと思ったんですが……ペットって人からもらったら世話をする責任が甘くなる。やっぱり自分で飼うことを決めて欲しい。……ここから『ESO』に繋がります。私はDMMで、どうしても『ESO』をサービスしたくて、何よりも自分が日本語でプレイしたくて、まさに自分から話を持って行ったんです。リクガメは長生きします。『ESO』も長いサービスになる意気込みと、覚悟で私は向き合っています。『ESO』は簡単に終わりませんし、これからずっと続きます。だからこそ、ぜひ今からでも『ESO』をプレイしてください。……次男のプレゼントはまだ決まっていませんが……」。
松本氏ならではの語り口ではあるのだが、最後の「『ESO』はずっと続く」という言葉は、実は深い。思えば、多くの欧米型MMORPGはサービスするメーカーそのものがどこか腰がひけていて、コンテンツのハードルの高さも相まって、ユーザーに“安心感”を与えられなかった。正直、サービスする前のDMMもそういった不安があった。
しかし、課金システムを新しく準備し、コンテンツを音声を含むフルローカライズを行ない、継続的なサービスをきちんと宣言するという今回の松本氏の言葉は注目したいところだ。欲を言えば、アップデート情報やコンテンツなど、公式ページの情報をもっとアナウンスして欲しいし、こういったインタビューでの運営の姿勢ももっと明確にして欲しい。「長く続く」ということをもっと確信したい。
「ESO」は素晴らしいMMORPGであり、サービススタートしたばかりのMMORPGとは比べものにならないコンテンツ量があり、オンゲーの楽しさも深い。しかし、認知度、ユーザー数はまだまだである。運営がどうがんばりユーザーに認知されていくか、今後も注目していきたい。
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