インタビュー

「SEGA AGES ぷよぷよ」インタビュー

“アーケード版だけのプレイ感覚”を求める声に応えたい……!SEGA AGES初のオンライン対戦をひっさげてついに発売!

左から順に、シニアプロデューサーの下村一誠氏、リードプロデューサー及びディレクターの小玉理恵子氏、「ぷよぷよ」シリーズ総合プロデューサーの細山田水紀氏、エムツーの堀井直樹氏、スーパーバイザーの奥成洋輔氏
3月28日 配信

価格:925円(税別)

CEROレーティング:A(全年齢対象)

プレイ人数:1~2人

 セガの名作を“こだわり満載”で復刻する「SEGA AGES」。3月28日に7タイトル目となる「SEGA AGES ぷよぷよ」の配信が開始されたので、恒例のインタビューをお届けしよう。

 今回のインタビューにご参加頂いたのは、セガゲームスより、シニアプロデューサーの下村一誠氏、リードプロデューサー及びディレクターの小玉理恵子氏、スーパーバイザーの奥成洋輔氏、開発を手がけるエムツーより堀井直樹氏。

 さらに今回はタイトルが「ぷよぷよ」ということで、セガゲームスで現在「ぷよぷよ」シリーズ総合プロデューサーを務めている細山田水紀氏にもご参加頂いた。今回も開発秘話をたっぷりとお聞きしたので、じっくり楽しんで頂ければ幸いだ。

10年以上前から寄せられ続ける“アーケード版だけのプレイ感覚”を求める声と、それに応えようと模索し続けている「ぷよぷよ」移植の取り組み

【ぷよぷよ】

 今もなおシリーズ最新作が発売されており、人気を博している「ぷよぷよ」シリーズの初代作品。開発をコンパイルが、発売をセガが受け持って、1991年にアーケード向けにリリースされた。なお、現在は「ぷよぷよ」シリーズ全体の権利をセガが取得している。

 MSX2版やファミコン版の通称“プロトタイプぷよ”を経て登場した初代アーケード版では、ゲームモードにCPU戦を楽しむ「ひとりでぷよぷよ」と、対戦プレイの「ふたりでぷよぷよ」を収録。多彩なキャラクターとの会話による通称“漫才デモ”や連鎖時のボイスを搭載、ぷよの色の種類や対戦時の仕様など、今にも引き継がれる「ぷよぷよ」の特徴と言える要素がまとまっている。

 アーケード版の「ぷよぷよ」は1レバー1ボタンという操作で、ぷよを右回転させることしかできなかったのも特徴。コンシューマー移植版では左回転が追加されているが、ルール説明のデモはアーケード版のものを移植しているため1ボタンのみの内容になっていることがあった。

 ハードウェアに、メガドライブの設計をベースにした基板「C2ボード」を使用。CPUにMC68000P10を搭載し、BGは2画面、スプライトは1画面最大80枚表示可能、サウンドICとしてYM3438 (OPN2C)、SN76496(DCSG)、ADPCMとしてμPD7759を搭載している。

 コンシューマー機への移植は、1990年代には歴代のありとあらゆる機種に移植されたと言っても過言ではないほどに数多くあり、それぞれの機種ごとに家庭用オリジナル要素が収録されていた。

 一方で、純粋なアーケード版の完全移植は2011年に配信されたWiiのバーチャルコンソール アーケードでエムツーによって移植されたのが初と言える。ニンテンドーWi-Fiコネクションを使ったオンライン対戦にも対応していたのだが、2014年5月にニンテンドーWi-Fiコネクションサービスそのものが終了し、2019年1月31日をもってWiiのタイトル配信そのものも終了となった。

お馴染みエムツーの代表取締役、堀井直樹氏
スーパーバイザーの奥成洋輔氏
リードプロデューサー及びディレクターの小玉理恵子氏(写真左)と、「ぷよぷよ」シリーズ総合プロデューサーの細山田水紀氏(写真右)
シニアプロデューサーの下村一誠氏

――「SEGA AGES ぷよぷよ」の開発状況は現在どのような状況でしょうか?(今回のインタビュー収録は2019年の1月中旬に行なった)

奥成氏:今の段階だと80%ぐらいですかね?

堀井氏:うーん、もう一歩手前の79%という感じです。もう一押しで95%ぐらいまで一気に上がるとは思うのですが……。楽しみにしてくださっている皆様をお待たせしてしまって、すみません。

小玉氏:ゲームのモードや仕様はもう固まっていて、もう遊べる状態にはなっているのですが、バグもありますが、ネットワークのラグの問題がまだ解消できていないところがあるんです。エムツーさんとしても、バグを解消しつつもう少しクオリティを高めたということでしたので、取り組んでもらっています。

下村氏:どのタイトルもそうですが「ぷよぷよ」も非常に大事なIPで。僕らも満を持して一分の隙もない完成度にして世に送り出したいという気持ちがあります。

堀井氏:「ぷよぷよ」は、今までのSEGA AGESタイトルのように「SEGA AGESだから買う」と言ってくださる人だけじゃなく、幅広い層の人に注目されるタイトルですよね。それだけに、周りの友人や家族と気楽に遊べるようなものにしたいです。いつものマニアックな方向よりはそちらを重要視していて、オンライン対戦を搭載しているのもそういった気持ちからです。

――やはり今回の難航はSEGA AGESタイトル初のオンライン対戦を実装しているというのが大きいですか?

堀井氏:オンライン対戦の実装だけで他のSEGA AGESタイトル1本を作るのと同じぐらいの手間がかかっています。ですが、きちんと作れば他のタイトルにも活かしていけますから、それだけに慎重に取り組んでいるところです。

――なるほど、今後のSEGA AGESタイトルのオンラインプレイ対応の基礎を作っているという面もあると。オンラインプレイ機能は、何かのアセットやコンポーネントを使っているのではなく、ネットコード周りからエムツー制作のものになっているのですか?

堀井氏:そうなんです。なるんですよ、これが! Wiiのバーチャルコンソールアーケードの「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」でオンライン対戦をできるようにした時も、「この時代ならオンライン対戦があって当たり前だろうし、きっとすぐにできるように便利なものがあるのだろう」という軽い気持ちから取り組んだのですが、2006年の最初から提案はしていたものの、実際に実現したのは2011年の春でして、その間5年!奧成さんに見せるまでにえらい時間がかかってしまったんです。で、今回も同じように苦労している感じですね。

――なるほど。後ほどそのあたりのお話も詳しく伺いたいと思います。

 では、あらためて基本的なところからお聞きしていきますが、「ぷよぷよ」と言えば定番タイトルですが、昨年12月のプロ大会「ぷよぷよチャンピオンシップ」で発表して3月に配信と、SEGA AGESとしては他のタイトルとは動きの異なるところがあるなと感じました。

下村氏:「ぷよぷよ」はSEGA AGESとしてというだけでなく、セガ全体としても大事にしているIPですね。なので開発中からずっと発表のタイミングを見計らっていました。今日来てもらった細山田を含む「ぷよぷよ」チームの皆さんとも相談して、「ぷよぷよチャンピオンシップで発表しよう」という運びになりました。

奥成氏:「SEGA AGES ぷよぷよ」を初めとしたタイトルラインナップそのものは、SEGA AGESのスタート時点から決まってはいるのですが、その中から「きちんと発売できそう」っていう目処がついたものからタイミングを見て発表させて頂いているんですね。

 ですが、「SEGA AGES ぷよぷよ」については“オンライン対戦を作る”という他と異なる事情もあったので、他のタイトルの発表より遅れて昨年の発表になったというところもありますね。

下村氏:最初は、「オンライン対戦ができるかどうかはわからない……」という感じだったんです。でも、「SEGA AGESでオンラインプレイに対応をする」というのはプロジェクトの当初からやりたいと考えていたチャレンジのひとつでした。

 一応、これまでもオンラインランキングとかはやっていましたけど、対戦や協力などのプレイとなると大きなチャレンジです。でも、エムツーさんも前向きに取り組んでくれて、今回なんとか目処が立ったというところですね。

堀井氏:至れり尽くせりのものにできているかは、あまり自信があるわけではないのですが、簡単に友達とオンラインで遊べるというところまでは持っていけたと思います。

 SEGA AGESはほぼ月刊のようなペースでやらせて頂いているのですが、やりたいことはいつでも、製品に盛り込まれている以上にあるんです。でも「ぷよぷよ」に関しては、「やりたかったけど時間が足りなかった」ではなく、オンライン対戦を何があっても絶対に入れようというのがありました。その気持ちで、昨年の夏の終わり頃からずっと苦労している感じでしたね。

――順序としては、「ぷよぷよ」と「ぷよぷよ通」がSEGA AGESのラインナップにまず決まっていて、「その2つにはオンライン対戦を入れたいよね」と考えた……という流れでしょうか?

奥成氏:いや、“今回のSEGA AGESではオンラインプレイを入れられるようにしたい”というのがまずあって、それなら「ぷよぷよ」で最初に実装するのを目指しましょうとなっていった感じですね。

――なるほど。ちなみに、SEGA AGESのラインナップでは同じパズルゲームの「コラムスII」を先に発表されていましたが、「ぷよぷよ」と「ぷよぷよ通」が発表されて、先に配信となったのはちょっと意外に感じました。配信順を入れ替えたりなどをしているのでしょうか?

奥成氏:特に順番を入れ替えたりはしていないですよね?

小玉氏:そうですね、「コラムスII」も同時進行で作っています。完成度で言うと「コラムスII」はまだグラフィックスが整っていないのですが、もうすでにゲームプレイの部分はだいぶできあがっているので、もう少しお待ち頂ければなというところですね。

――今回は「SEGA AGES ぷよぷよ」でオンライン対戦が実現しましたが、「コラムスII」もオンライン対戦を期待していいのでしょうか?

奥成氏:そりゃあ、「ぷよぷよ」でオンライン対戦を入れたのに「コラムスII」に入れないわけが……

小玉氏:(奥成さんを止めつつ)そこはまだ詳しくお話しできないところですけども!ご期待くださいね!(苦笑)

Wiiのバーチャルコンソールアーケードにて配信されていた、オンライン対戦搭載のアーケード版「ぷよぷよ」。だが、2014年にニンテンドーWi-Fiコネクションサービスが終了したことでオンライン対戦ができなくなり、2019年1月末でWiiのストアそのものが終了して入手もできなくなってしまった

――では、ちょっと方向を変えまして(笑)。奧成さんとエムツーさんは、Wiiのバーチャルコンソールに「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」を出されていますし、今回はその取り組みの最新版というところもあると思うのですが。細山田さんともその頃からお話し合いをされていたのでしょうか?

奥成氏:ですね。僕がセガエイジス2500やバーチャルコンソールをやっていた頃から、細山田は「ぷよぷよ」シリーズのプロデューサーをやっていて。当時、細山田のほうから「『ぷよぷよ』のアーケード版を復刻したい」っていう話をされたんですよ。

 でも、その話をされた時はすでにバーチャルコンソールにメガドライブ版の「ぷよぷよ」は出していたんです。なので、「アーケード版じゃなきゃダメなの?」と聞いたら、ファンの人から「メガドラ版とアーケード版は別なんです! アーケード版だけのプレイ感覚があるんです! そこに僕らはときめくんです!!」っていう声を頂いているんですよ、と教えてもらいまして。

 それならアーケード版「ぷよぷよ」もバーチャルコンソールに出してみようとなり、「いっそオンライン対戦もできるようにしたいよね」ってエムツーさんと話したんです。それから開発に苦心した末に、セガとしてWiiバーチャルコンソールへの取り組みの完全末期と言える最後の頃に、オンライン対戦搭載のアーケード版を出しました。

 細山田もようやく「ぷよぷよ」ファンの皆様に「出ましたよー!」とご報告できたのですが……。それから3年ぐらいでニンテンドーWi-Fiコネクションのサービスが終了してしまったという(苦笑)。

堀井氏:「できますよ」って言ってから実装できるまでに時間が滅茶苦茶かかりましたね。単純にオンライン接続して遊べるようにするまでは割とすぐにできるようになるんです。でも、そこから切断時の処理など諸々をきちんと整えたりしていくと、すごく手間がかかるんですよ。

――その時は実際どれぐらいの期間がかかったのでしょう?

奥成氏:着手してからは1年以上……、研究も含めたら約2年ぐらいやってましたね。

堀井氏:それも、奧成さんに「これで、できますよ」っていうある程度オンライン対戦が動作できているデモを見せてから2年ぐらいかかりましたから。

奥成氏:任天堂さんに「バーチャルコンソールでオンライン対戦をやってもいいですか?」と相談して快諾頂いて、それでなんとか実現できたのですが、2014年にニンテンドーWi-Fiコネクションのサービスが終わったことオンライン対戦もできなくなってしまって。それでまた細山田と「どうしよう」と話をして。その頃も、当時の現行ハードに「ぷよぷよ」と「ぷよぷよ通」を移植できないかと画策したんですけど、なかなか上手くできるタイミングがなかったんです。

――2015年に発売した「セガ 3D復刻アーカイブス2」には「ぷよぷよ通」が収録されましたが、それよりも前の話ですか?

奥成氏:あれより前ですね。PS3やWii Uあたりにアーケード版の「ぷよぷよ」と「ぷよぷよ通」を出せないかと、細山田と話していました。あとは「ぷよぷよ」シリーズの新作におまけとして収録できないかと話したこともありましたね。

細山田氏:それも、奧成を通じてエムツーさんに見積もりをお願いしたりまではしていたんですよ。でも、やはり実現は難しかったです。ちなみに僕も、旧作を移植するのが想像以上に大変なのは良く知っているんです。さらに、オンライン対戦をできるようにするのが鬼門だというのも……。

堀井氏:そうなんですよ……鬼門ですよね。

細山田氏:僕は15周年記念作のニンテンドーDS「ぷよぷよ!」でオンライン対応に取り組んだのですが、これもかなり大変でした。ゲームファンの皆さんが思う以上にオンライン周りの機能をちゃんと作りあげるのは大変なんですけど、今どきならサクッとできるでしょって思われちゃって軽く言われがちなんですよね(笑)。

堀井氏:そうなんです、そうなんですヨー……(しみじみ頷きながら)。

細山田氏:アーケード版を忠実に移植して、さらにオンライン対戦も入れるなんて、ものすごく大変なのは十分にわかっているのですが、バーチャルコンソールの頃は、それがわかっていながらも奧成に「なんとかできないですかねー」って話して。奧成からエムツーの堀井さんのところに話がいって……という感じでしたよね(笑)。

奥成氏:その後には、さっきも名前が出た「セガ 3D復刻アーカイブス2」の「ぷよぷよ通」を収録したのですが、あれは「ぷよぷよ」を3D立体視にしたら面白いんじゃないかっていう考えがありましたから、またちょっと違う取り組みでしたね。あれはバーチャルコンソールを手がけたのもあって、追加収録タイトルとして軽く移植できそうなものをやろうということだったんですけど……。

細山田氏:あれも思っていた以上に作り込んであって僕はびっくりしましたよ。「こんなにやるんだ!」って思って。全然軽くない(笑)。

奥成氏:軽くやろうしたのにやってみたら軽くなかったパターンですね(笑)。でも、あれもオンライン対戦ができるものではなかったので。やっと今回“オンライン対戦ができるアーケード版「ぷよぷよ」”を復活させられます。

細山田氏、現SEGA AGESディレクターにして元コンパイルの松岡氏、そしてファンの熱い想いが募るアーケード版「ぷよぷよ」

奥成氏:細山田は今でこそ「ぷよぷよ」シリーズの総合プロデューサーとして名を馳せていますが、その前には「ソニックメガコレクションプラス」や「ソニックジェムズコレクション」などをやっていて。

――あ、なるほど。過去のタイトルを復刻させる系のお仕事ですね。

奥成氏:そうなんです。僕もその頃は下村のもとでセガエイジス2500をやっていたので、メガドライブのタイトルをどっちのチームが復刻するのか取り合ったりして(笑)。「え、『ソニックジェムズコレクション』に『ベアナックル』シリーズを全部入れることになったの? なんで?」みたいに。

全員:(笑)。

※2002年に発売された「ソニックメガコレクション」、2004年に発売された「ソニックメガコレクションプラス」、2005年に発売された「ソニックジェムズコレクション」共に、「ソニック」シリーズ以外にも多数のメガドライブタイトルが収録されているのが特徴だった。詳しくはこちらこちらをご覧頂きたい。

奥成氏:細山田はメガドライブを初めとした昔のゲームもすごく好きで、かなり詳しいんですよ。

細山田氏:「SEGA AGES ゲイングランド」めっちゃ嬉しかったですもん(笑)。すぐ買ってプレイして、「あれ? こんなに難しいゲームだったっけ?」なんて思いながら、ステートセーブしつつやってますよ。

 ちなみに、「ソニックメガコレクションプラス」などにも本当は「ゲイングランド」を収録したかったんですよー!

――そうなんですね!……えーと、なんでですか?

全員:(笑)。

細山田氏:まぁ、そうなりますよね(笑)。当時、隠し収録タイトルは開発に関わった人のツテを辿っていって相談して決めていたんですよね。それで「ゲイングランド」もとなったのですが、断念して。他にも、「コミックスゾーン」とか「ジ・ウーズ」とかのプレミア価格になってしまっているタイトルを入れたりしましたね(笑)。

堀井氏:「ソニックジェムズコレクション」には「ベクターマン」が入っているんですよねー!「ベクターマン」はメガドライブってこういうハードだよっていうのを知ってもらうのにちょうどいいタイトルで、「ソニックジェムズコレクション」のチョイスいいなーなんて思ってました。

細山田氏:あれも価格が高かったから(笑)。いや、もちろんゲームが面白いからっていうのも理由なんですけど。

――収録するといろいろな意味で喜んでもらえるだろうという。

細山田氏:そうなんです。喜んでもらえるのを入れないとなっていうのを思ってましたね。

――細山田さんもかなりセガ復刻プロジェクト気質な人だったんですね(笑)。

奥成氏:そんなわけで、細山田は「ぷよぷよ」の復刻についていつも前向きで、よく相談されていたんです。Wiiのバーチャルコンソール アーケードでのニンテンドーWi-Fiコネクションサービスも終わってしまってどうしようかとなりましたね。

細山田氏:ニンテンドーWi-Fiコネクションのサービスが終了になってしまった時には、すごく苦情がきましたね。「なんで終わっちゃうんですか!?」とか、「任天堂を説得してください!」なんていう要望まできて、「いやいや無理だよ!」って思ったり。

堀井氏:それは無理だろうなー!

細山田氏:僕だってもちろん残念だったんですけど、どうにもできなくて。でも、もう「ぷよぷよ」用にWiiを買ってコントローラーを改造してアーケードスティックを付けられるようにしてた人もいましたし、今でもアーケード版でプレイされている熱いファンはたくさんいます。それはやっぱり、そこに思い入れがあるからなんですよね。

堀井氏:それだけ思い入れてもらえているタイトルだっていうことですよねー。責任重大ですよ。

細山田氏:今回の「SEGA AGES ぷよぷよ」が、そういう熱いファンの人達にもリーチするような仕様でできあがってくれていれば嬉しいです。

――SEGA AGESのタイトルラインナップを決めたときには、「ぷよぷよ」も最初から入っていたのですか?

小玉氏:エムツーのディレクターである松岡さんがラインナップ決めの当初から、「『ぷよぷよ』をやりたいです」と話していたんです。そこからはもうすんなりと今回のラインナップに入ったという感じでしたね。

堀井氏:実は、うちの松岡は元々コンパイルにいて「ぷよぷよSUN」のディレクターをしていたんですよ。なので「ぷよぷよ」にはひとかたならぬ思い入れがあるんです。「『ぷよぷよSUN』は『通』を越えられなかったんだ……」って事あるごとに百万回ぐらい言っているんです。やっぱり、当時から今もやりたかったことは山盛りあるみたいなんですよ。

 例えば、「ぷよぷよ」のメガドライブ版にしても、当時はカセットの容量が直接的に値段に反映されてくるので、値段重視に容量を削っていたり、メガドライブのPCMも使いこなせていないと音が……というところもあったりで、アーケード版のキレイな音を全部載せたものをあらためて出したかったみたいです。

――「ぷよぷよ」シリーズにはエムツーの松岡さんの思い入れが乗ってくるところもあるんですね。ちなみにSEGA AGESのラインナップ決めの時には、「ぷよぷよ」と「ぷよぷよ通」の両方が最初から入っていたのですか?

小玉氏:ですね、両方入ってました。

細山田氏:そこ大事です! その2つは似ているようで全然違うゲームですから!!

小玉氏:(笑)。

2018年12月に開催された「ぷよぷよチャンピオンシップ」で、「SEGA AGES ぷよぷよ」と「SEGA AGES ぷよぷよ通」の配信が発表された

細山田氏:ちなみに「ぷよぷよチャンピオンシップ」の告知で1番盛り上がったのは「SEGA AGES ぷよぷよ」と「SEGA AGES ぷよぷよ通」でしたね(笑)。他の告知もいろいろあったのにそれらは完全に飲み込まれちゃって、“SEGA AGESで「ぷよぷよ」と「ぷよぷよ通」!”“オンライン対戦搭載!”“うおーっ!どかーん!”って感じで。

堀井氏:それはすごい! そんなに盛り上がってもらえるなんて、ちょっと怖いぐらいだ!!

奥成氏:今回の新要素である「クイックターン」と「逆回転操作の追加」も、発表したら想像以上の反響がありましたね。

 「クイックターン」や「逆回転操作の追加」とかって、普通のゲームファンの人だと「あぁ、便利だね」ぐらいの感想になると思うのですが、「ぷよぷよ」ファンの人からは「クイックターンが入ったらもう別ゲーじゃない!?」という感じにテンション高く反応してもらえて。そこはもう我々の想像以上でした。

堀井氏:想像を絶しますね、まさにやって良かった系ですよ。何かの新要素を追加するときにそれを追加するには1週間かかるとなった場合によく、「その追加要素があることで、何万人もの人が1週間の間に1時間ずつ多く遊んでくれるようになったら報われるじゃん!」みたいな話をするのですが、今回の「SEGA AGES ぷよぷよ」に関しては間違いなく報われるのではないかなと思います。

奥成氏:逆回転操作の追加は、Wiiのバーチャルコンソールアーケードに「ぷよぷよ」を移植したときにはあくまでバーチャルコンソールということでアーケード版そのままにしたのですが、購入してプレイした人はみな「あれ? 逆回転のボタンはないんだっけ?」って声があったんですよね。おそらくみなさん逆回転ボタンのあるメガドライブ版やスーパーファミコン版で「ぷよぷよ」を遊んだという人が多いからだと思います。

 なので、今回はまず「逆回転ボタンの追加はやった方がいいんじゃない?」と話したんです。すると松岡さんからも、「じゃあクイックターンも追加しましょう」と提案されたんですよ。

堀井氏:松岡はSEGA AGESを月に1本ペースでリリースしていくために血反吐を吐いて取り組んでいるので、その松岡から工数が増える追加要素を提案するというのは相当な思い入れがあるからこそだと思います。正直なところオンライン対戦の実装だけでも精一杯な状況ですが、それでも細かな追加もしようというところまで意欲を伸ばしてくれるとは、正直思っていなかったですね。

こちらは奧成氏が持参した1993年5月に小学館より発売された「ぷよぷよ メガドライブ&ゲームギア公式ガイドブック(ワンダーライフスペシャル)」。当時にメガドライブ版をプレイしていた人なら、この攻略本を覚えているという人もいるのでは?

――今回の移植にあたって細山田さんからは、要望などを小玉さんに話されたりもしたのですか?

細山田氏:いやぁもう要望なんてなくて……忠実に再現してくれるのを期待してるのみです。でも、忠実に再現することがすごく難しいタイトルですし、そこに新機能を追加するなんて。すごい失礼な言い方をすると……頭がおかしいです(笑)。

堀井氏:ありがとうございます!

細山田氏:いや、本当に。普通の開発チームなら絶対やらないですよ(笑)。

――(笑)。

細山田氏:……まぁエムツーさんならなんの問題もないでしょうし、小玉さんもGDC 2019のパイオニア賞を受賞されたレジェンドですからね! 大丈夫ですよねっ(笑)。

小玉氏:ちょっとー!(笑)。

堀井氏:ハードルの上げ方がひどいっすよー!(笑)。

全員:(笑)。

小玉理恵子氏は、2019年の「Game Developers Conference(GDC)」にて、世界中のゲーム開発者が選出するゲームアワード「Game Developers Choice Awards(GDCA)」の“パイオニア賞(The Pioneer Award)”に選ばれた。日本人の受賞者は小玉氏で3人目となった。

――細山田さんは「ぷよぷよ」シリーズのプロデューサーになられて最初に手がけられたDS「ぷよぷよ!」でも、初代「ぷよぷよ」のキャラクターを大きく登場させたりと「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」を大事にしているように思えます。もちろん15周年作品だからというのもあったとは思うのですけども、そうした「初期シリーズも大事にしなきゃな!」という想いがあったりするのでしょうか?

細山田氏:僕がプロデューサーになる前の「ぷよぷよフィーバー」にもアルルやカーバンクルはいるものの、一見するといないように見えちゃうパッケージになっていたことがあって、前任の担当者がファンの皆様にボコボコに言われたということがあって……(笑)。

 まぁそんなエピソードはさておき、「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」の世界観やキャラクターが好きな人が今でもたくさんいて、そういう原作が好きな人でも本当に好きな人は新作もちゃん遊んでくれるんですよ。そう考えたときに、「新作も出します、でも旧作も現行ハードで遊べるように出していきます!」としたほうがみんな楽しめて1番いいと思うんですよね。

 今はゲームセンターがどんどん減っていて、アーケード版での対戦が気軽にできる環境はもう少ないです。アーケード版の操作感が1番好きというコアな人のためにも、オンライン対戦を搭載したアーケード版を出して欲しいっていう気持ちがずっとありますね。

――細山田さん自身は「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」のリリース当時にゲームセンターに行かれたりもされていたのですか?

細山田氏:当時は、高田馬場などの山手線圏内のゲームセンターによく行っていましたね。でも、「ぷよぷよ」シリーズのプロデューサーになってからはさすがに気軽に行くというわけにもいかなくて……(笑)。「ぷよぷよ」シリーズにアーケード版を出したのは最後が2003年の「ぷよぷよフィーバー」になってしまっているわけで、「ぷよぷよ」シリーズをゲームセンターでプレイできる場所が本当に少ないですよね。そもそもゲームセンター自体が少なくなってきているというのもありますが。

 今年は4月中旬に「ぷよぷよeスポーツ アーケード」というアーケード版をリリースします。アーケードに「ぷよぷよ」シリーズを出したいというのは10何年言い続けてきたのですが、それがやっと実現できるなぁと思っているところですね。

 でも、新作ももちろんプレイしてもらいたい一方で、“「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」のアーケード版をやりたいんです!”というのもわかりますので。そこで、最新のハードにキチッと移植して、久しぶりの人も初めての人も、もちろんぷよらーの皆さんにも、いつでもプレイできる環境を用意しておく、それをずっとやっていくというのがIPとして非常に大事だと思うんです。

堀井氏:そうですよね。好きでいてもらっているものをすぐに手を伸ばせるところに用意しておくというのは大事。

細山田氏:途絶えてしまうと2度と復活しないものもありますし。

堀井氏:種火を守り続けていく話ですよね。消えたものをもう1度火起こしするのは本当に大変なので……。

細山田氏:途絶えてから、それらしいものをまた新規で作り直そうとすると、全然違うものになってしまったなんていうのもありがちなパターンです。

――1度途絶えた時に、いろいろ失われるものがあるんですね。

細山田氏:そうなんですよ。なので、SEGA AGESもぜひこのままずっと続けていってもらいたいです。

プレイステーション 4/Nintendo Switchにて配信中のほか、4月中旬からアーケードでも稼動予定のシリーズ最新作「ぷよぷよeスポーツ アーケード」。細山田氏は、最新作と同時に過去の名作を楽しめる環境も、常に用意していきたいと考えている

今では作れない、シリーズファンの求め続ける“アーケード版だけのプレイ感覚”

――アーケード版「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」の操作感を、今の「ぷよぷよ」シリーズ最新作に取り入れていくというのは難しいのでしょうか?

細山田氏:真似しようとしても無理ですね。「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」の開発者であるご本人に聞いても、もう覚えていなかったり、見てもわからなかったりするようです。

堀井氏:そもそも動かしているデバイスが全然違うというのもありますし、今の最新作の中で当時のアーケード版の操作を再現するというのは難しいでしょうね。

細山田氏:なので、どうしてもそれを求めるのなら、アーケード版のゲーム丸ごと忠実に移植するか、実機でやるのが1番良いということになります。

――でも、そういうレガシーな仕様の固まりをオンライン対戦できるようにするというのは、レスポンス周りなども込みでかなり厳しそうに思えます。

堀井氏:ですね。でも、「ぷよぷよ」はゲーム的にはオンラインの遅延などを誤魔化しやすいタイトルではあるんですよ。お互いのプレイフィールドが別れていておじゃまぷよを送り合うだけで、相手がこちらに直接何かをしたりするわけではないので。まだオンライン対応させやすいんです。それでも取り組んでみると問題は無限に出てくるもので、泣けてくるんですよ。まぁ、泣き言ばかり言うのもあれだと思うのですが……。

奥成氏:そのあたりは、もともとオンライン対戦を前提に作っているかどうかが大きいんですよね。当然ながら「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」はそういうタイトルではないので。

堀井氏:アーケード版の操作性に話を戻すと、僕は昔に「『ぷよぷよ通』の操作性で『ぷよぷよ』を遊ばせてください!」って知人に言われたことがあったんです。回転の操作が増えたりといったことではなく「手触りが違うんです!」って解説されて。でも、その時の僕にはわからなかったという思い出が。

 その人はプログラマーなので、「『ぷよぷよ』は内部の処理がこういう順序になっているけど『ぷよぷよ通』ではこういう順序なので、こうなった時にこう反映される」というように理解されていて。その上で「『ぷよぷよ通』の処理が至高で、あれで初代の『ぷよぷよ』もやりたいんです!」っておっしゃっていたんですよ。

――その人のように内部処理から理解されている人は稀だと思うのですが、プレーヤーさんでも肌感覚で手触りの違いを理解している人はいらっしゃるわけですね。今の話は逆に捉えると、初代「ぷよぷよ」の処理もまた違っていて、操作感が独特ということですよね。

堀井氏:ですね。それを感覚的に知っているプレーヤーさんも結構いらっしゃるんだと思います。

細山田氏:そこを知っている皆さんから、“アーケード版だけのプレイ感覚”があるからアーケード版を出して! って常に要望されてきたんですよ。

――ちなみに、今の「ぷよぷよ」プレーヤーさんには初代「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」をアーケードでプレイされていた世代の人も結構いらっしゃるのでしょうか?

細山田氏:たくさんいらっしゃいますよ。プロのプレーヤーでも「くまちょむ」さんや「Kamestry」さんとかはまさにアーケード全盛の頃には中学生ぐらいだったと思うのですが、その頃からプレイしていますし、他にも1990年代にコンパイルさんが大会を運営していた頃から続けている人がいますね。

 それに新しい人も初代「ぷよぷよ」を遊んでいたりするんですよ。初代「ぷよぷよ」は決着が早く着くというところもあって独自の存在になっていますし。あと某IPのキャラクターが初代「ぷよぷよ」をプレイするという動画が盛り上がったということがあって、それで知った人が遊んでいるというのもあるんですよね。ただ、ちゃんとしたプレイ環境を整えづらいという難点がありました。

――そういうきっかけがあって再燃してもプレイ環境がないというのは辛いところですね。

奥成氏:アーケードの完全移植という点ではWiiバーチャルコンソールアーケードのみですし、メガドライブ版の移植はコンパイルさんが発売したPS「ぷよぷよBOX」に収録されていたりしたのですが、他はもうなかなか。

細山田氏:15周年の「ぷよぷよ!」や20周年の「ぷよぷよ!!」にも一応「ぷよぷよ」「ぷよぷよ通」ルールをなるべく過去作の仕様に近い形にして入れたのですが、他のシリーズ作品もカバーすることもあって、初代「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」に特化した仕様にはできないところがあって。

 それをやると他のルールやモードにも影響して、新ルールが作りにくかったり、操作性が変わってきたりしてしまうんです。それでも無理に寄せようとすると、逆に初めて触った人からしたら違和感の出る感じになっちゃったりもするんですよね。

 それに過去作やアーケード版には「これって狙って作ったわけじゃないだろうな」っていう操作感もいくつかあるんです。「ぷよぷよ!」の開発プログラマーは元コンパイルで「ぷよぷよ」の開発にも関わっていた関係者なのですが、「当時のプログラム内の関数がわからない。おそらく誰ももう覚えてない」って言われて、もうお手上げに。もはや誰にもわからないんです(苦笑)。

 そこを見よう見まねで寄せようとしても、挙動が1フレーム違ってしまったり、右下入れっぱなしで端まで運ぶ入力でも右と下の入力優先度が微妙に違ってしまったり、細かなところが違ってしまうんです。

――「ぷよぷよ」の対戦は入力スピードの勝負が前提にありますし、挙動に微妙な違いがあったらそこで崩れて集中できなくなってしまう。非常に重要ですね。

細山田氏:そうなんですよ。対戦ルールだけなら「ぷよぷよ」ルール、「ぷよぷよ通」ルール、「ぷよぷよフィーバー」ルールというものを基本で用意することはできますが、操作性の部分は特に難しいです。

奥成氏:そんなわけで本物の操作性を求めるのなら、最終的には本物が1番という話に。ただ、本物を下手に移植すると、入力遅延があったりと別の問題が出るので、エムツーさんはそこもしっかりケアして手間をかけて移植しなきゃいけなくなるんです(笑)。

細山田氏:ですね。特に初代アーケード版に逆回転の操作を追加するのとかは不具合の温床になるので、がんばってくださいとしか……!(笑)。

堀井氏:そうなんですよねー!

全員:(笑)。

細山田氏:回転の2ボタンを交互に押すと「昇竜ぷよ」っていう、ぷよが上に昇っていく動きができちゃったり、そのタイミング次第ではさらに変な挙動を起こしてしまったりするんです。他にも「ちぎりキャンセル」っていうテクニックもあったりして、それら全部をちゃんとチェックして整えるとなると、大変な目に合います(笑)。

堀井氏:「何フレーム単位でこの入力をすると不具合が起きる」とかもわりと良くある話で。松岡はそういう不具合が出ることも踏まえて追加仕様を考えていて、いわば慎重派なのですが、今回はオンライン対戦を作りつつ追加要素を自分から入れたいと言っているので。「ぷよぷよ」への怨念を感じますね。

細山田氏:それらの不具合はオンラインが絡むとより複雑になりますからね。そこもわかっていながら挑むということで、すごいと思いますよ、本当に。

※「昇竜ぷよ」とは、文字通りぷよを上に昇らせるテクニックで、方向入力を入れながら左右回転を素早く繰り返すとぷよが上に移動していく。

※「ちぎりキャンセル」とは、ぷよの設置直前に入力操作を入れることで設置モーションをキャンセルするテクニックがあり、その応用で段差がある場所にぷよを置いたときのちぎれて落ちていくモーションをキャンセルするテクニックのこと

新要素の「オンライン対戦」、「クイックターン」、「逆回転操作の追加」、「海外版の収録」は

――今回の新要素についてですが、やはり大きいのはSEGA AGES初の「オンライン対戦」ですよね。どのような仕様になっているのでしょう?

小玉氏:「ランダム対戦」と、ルームを作って4桁の番号でマッチングする方式を用意しました。マッチングの範囲としては全世界で対戦が楽しめるようにしているのですが、そこがやっぱり大変でしたね。

細山田氏:全世界対戦を可能にすると本当に大変ですよね。

堀井氏:オンライン周りにはやってみないとわからないところがあって、特に遠距離でpingが高いときの処理などは大変です。

――地域別のマッチングにはしなかったんですね。ランクマッチ的なレーティングをつけての実力の近い人同士がマッチングされるようなものも、入れてはいないんですね。

小玉氏:全世界とのランダムですね。ランクマッチも入れていないです。

――かなり手軽に楽しむという仕様ですね。……それにしてもオンライン周りに触れると、いつものSEGA AGESの話とは全然違う、今のゲームの話になってきますね(笑)。

堀井氏:そうですよねー。オンライン周りに関しては今どきのゲームの仕様の話になってくるんですよ。

細山田氏:「ぷよぷよテトリス」のときにも全世界オンライン対戦を可能にしたのですが、「SEGA AGES ぷよぷよ」と同じようにpingの高い状態での処理の問題などがあって、開発はかなり大変でした。でも、状況が違うんですよね。うちらはソースコードを好きにいじれるけども、「SEGA AGES ぷよぷよ」はあくまでアーケード版そのものを動かしているから不用意にいじるとおかしくなったりするでしょうし。

堀井氏:ブラックボックスの中に手を突っ込んで、なんとかしているみたいな感じなので、新作とはだいぶ違いますよね。

細山田氏:ですよね。なので旧作を復刻させることや、そこにオンライン対戦を付けるというのは、ユーザーさんからすると簡単そうに見えるかもしれないのですが、実はすごく難しいんです。

――やはり話のポイントは、「1から作っているゲームをオンライン対応タイトルにする」のと、「過去に開発されたゲームを新たにオンライン対応させる」ことの違いになるんですね。

細山田氏:ですね。そこの難易度は大きな違いがあって、トライしたことのある開発者はみな理解されていると思いますよ。

――「SEGA AGES ぷよぷよ」のオンライン周りの開発はいつ頃から取り組まれていたのでしょう?

堀井氏:昨年の夏頃から手をつけていて。ディレクターの松岡に「どうなの、オンライン対戦を実装するのは絶対しんどいでしょ?」って聞くと、「粛々とやってるけど死にそう」みたいな話ばっかりだったので、絶望視していたというか。いずれはできると思うけどスケジュールは読めないなぁという感じがありました。

 とはいえプロジェクトなので。オンライン対戦がないと出しづらいタイトルというのがあるわけで、「ぷよぷよ」はまさにそれ。なので、なんとか完成させるほかなく、スタッフには「なんとかやってくれ!」としか言えないんですよね。

「ぷよぷよ通」から加わった「クイックターン」を実装。スペースのないところでも回転させられる
アーケード版では右回転しかできなかったが、左回転の操作が追加された

――操作面の追加では「クイックターン」と「逆回転の搭載」があります。細山田さんからは先ほど賞賛のツッコミがありましたけども(笑)。

堀井氏:「頭がおかしい」という言葉が心地良く耳に響きますねっ!

細山田氏:(笑)。

堀井氏:どんなタイトルでもそうですが、仕様を追加すること自体が「どんなバグが出るかわからない」というリスクを抱えることになるんですよね。先ほど細山田さんがおっしゃっていた「このタイミングでこれをやると……」みたいな現象とかね。そこにさらに、不安要素の塊であるオンライン対戦を実装しているので、わりと狂気の沙汰みたいなことになっちゃってるんですよね。

――どれかひとつずつならまだしも、今回は開発リスクがかけ算のように。

堀井氏:そうなんです。でも、ディレクターの松岡もそうですし、ここにいる全員もそうだと思うのですが、考え方がプレーヤーに近いというか、まだプレーヤーなんですよね。ちゃんとゲームを遊ぶ人だから「俺が遊びたくなるこの仕様を入れさせてくれよ!」ってなる。

 でも、それをやるにはもちろん苦労します。松岡がよく「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」って言ってて、それは多分モロボシ・ダンが元ネタなんですけど。そんな心境でも、やっぱりプレーヤーとしての気持ちが勝ってくるところがあるわけで。SEGA AGESを支持頂いているのは、そういうところに共感してもらえているのではないかなと思っているので、なるべくぶっこんでいきたいですよね。

――ゲームコレクターなのかゲームプレーヤーなのかというのには大きな違いがあると思えます。プレーヤー気質な開発チームにとって、「どうせやるのなら苦労するのはわかってるけど、これをやりたい!」っていうのを咎められてしまうと、モチベーションが下がってしまうかもしれないですね。

堀井氏:そうそう! その情熱がないとやれないんです。

――「クイックターン」や「逆回転操作」を追加するときに、いずれかの他移植を参考にされるのかなと思うのですが、どれから持ってきているのでしょう?

堀井氏:メガドライブ版のシリーズを参考にしていますね。メガドライブ版はアーケード版を拡張しているのですが、同じようにアーケード版にメガドライブ版の拡張を入れているというやり方ですね。アーケード版とメガドライブ版とでは操作感覚が違うという人もいるのですが、コードの上ではほとんど共通していて、コードの差異は5%もないぐらいです。

――コード的に違いはないけど操作感覚が微妙に違うということになると、それはもうデバイスの違いなどの動作環境の違いになりますね。

堀井氏:ですね。筐体のブラウン感とジョイスティックのI/Oを直結している環境と比べてしまうと、かなり厳しいのはあると思うのですが。でもガチのプレーヤーさんであればあるほど、そこもわかってもらえているとは思うので、割り引いて見てもらえればと思います。あと、自分なりのベストな環境を整えられていると思いますので、そこで違和感なく遊んでもらえるものにはなっていると思います。

――そうしたプレイ環境の違いを考慮しての遅延の調整というのはされているのでしょうか?

堀井氏:実は、こっそりやっています! ただ、それはやり過ぎると「これ、アーケードよりも速くない?」って言われてしまうので、慎重に調整しているところですね。

――なるほど。でもそこにオンライン対戦も考慮することになるので、調整の加減がより難しいところですね。

堀井氏:オンライン対戦でプレイしている上では、オンラインの処理による遅延と内部的な遅延調整とで相殺されてちょうど良くなるという感じを狙って調節しているので、アーケードよりも感触が速いという感じにはならないと思います。

――なるほど。オンライン対戦も、クイックターンや逆回転の搭載も、ユーザーさんからみるとさらっと受け取ってしまうかもしれないですが、どれも一筋縄ではいかないものだというのが感じられます。

堀井氏:ですね、どれも苦労しています。でも、購入頂いた皆さんには、何の不思議もなく、我々が血反吐を吐いている感もなく、普通にお楽しみ頂ければいいと思いますし、そうあるべきだと思っています。普通に、「『ぷよぷよ』が出たね」、「オンライン対戦できるね」、「クイックターンできるようになってるね」って言ってもらえれば十分です。

 特に驚いてもらう必要はなくて、気持ちよく遊べると言ってもらえれば……僕らの勝ちです!

奥成氏:「クイックターン」や「逆回転の追加」は、もちろんオプションでオン/オフを変更できますし、オンライン対戦のマッチングルールでもオン/オフを選択できるようにしています。日本版と海外版のバージョンも選択できますね。アーケードそのままでの対戦も可能です。

※オンラインマッチング補足:ネットワーク対戦時のゲームバージョンは1P側プレーヤーのバージョンが選ばれる。ランダム対戦では無作為に1P側が決定するが、ルーム対戦ではルームを作ったプレーヤーが1P側になる。また、ランダムマッチでは「左回転&クイックターン」の設定が異なるプレーヤーとはマッチングしない。

奥成氏:それと、今回も「ヘルパーモード」を搭載しています。

堀井氏:「ヘルパーモード」は、アーケード版の難易度設定よりもさらに難易度を低くできる機能になっています。ぷよの落下速度がかなりゆっくりになります。

初代アーケード版の海外版を収録! ボイスやキャラクターの名前、外観など、国内版とはいろいろな違いがある

――もうひとつの新要素としては、アーケードの海外版「ぷよぷよ」が収録されていますね。

奥成氏:SEGA AGESとして「ぷよぷよ」を移植しようという話になったときに、「じゃあ海外版も入れるんですよね!」って話したら、誰も知らなくて(笑)。「英語の『ぷよぷよ』って存在するんですよ!」って僕が話してもなかなか信じてもらえず。結局、セガの倉庫にもなかったんですよね。

小玉氏:探したんですけどね、なかったんですよ。

奥成氏:見つからないっていう話で、「あれ、僕が知っている英語版は幻?」なんて思ったりしたんですけど……、そこで基板コレクターとして著名な、アーケード用システム基板「exA-Arcadia」を手がけるShowMeHoldings代表のEric Chungさんに連絡をして、「エリックさん持ってる?」って聞いたら「あるある!」って返事で(笑)。

――さらっと(笑)。

堀井氏:そういう人が「exA-Arcadia」を作ってるのがすごいですよね。

奥成氏:で、「すいませんが貸してもらえませんか?」ってお願いしてお借りし、無事に海外版「ぷよぷよ」を収録することができました!

堀井氏:当時にコンパイルに在籍していた松岡も、「海外版? どうだろう、あったかなぁ?」って話していて存在を疑っていたのですが、ある日、奧成さんが海外版「ぷよぷよ」のROMを手に仁王立ちしていましたってコメントしていますね。

――「どうだ! 見つけてきたぞー!」っていう(笑)。

奥成氏:やってやった的なオーラが(笑)。

堀井氏:そうそう(笑)。

奥成氏:海外版がどういうところに流通していたかというのは資料も何もなくて、わからなかったですね。元々「ぷよぷよ」は、MSXやファミコンの時代には日本にしか出ていなくて、アーケード版が登場することで海外でも知られるようになるのですが。

 その後、海外では当時に放送中だった「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のアニメのキャラクターに載せ替えたメガドライブ版の「Dr.エッグマンのミーンビーンマシーン」というものがあったり、「Kirby's Avalanche」という「星のカービィ」のキャラクターに差し替えられたものがあったりして、純粋な初代「ぷよぷよ」の海外版は、このアーケード版だけだったんですよ。

――初代「ぷよぷよ」の海外版は相当に希少な感じがしますね。テキスト周りが英語になっている以外にも違いはあるのでしょうか?

奥成氏:1番大きなポイントは、タイトル画面から連鎖ボイスまで、ボイス周りが全然違っているところですね。連鎖時は「ファイヤー!」じゃなくていきなり「ぷよぷよー!」って言ったりするんですよ。ちょっと海外版で実際にプレイしてみてください。

(『SEGA AGES ぷよぷよ』をオプションで海外版にしてプレイ)

――では、ちょっと海外版をプレイしてみます。タイトル画面もしっかり「PUYO PUYO」表記ですね。(連鎖すると)え、なんだかものすごくネイティブ発音風なボイスが!(勝利時ボイスが再生されて)……今のはなんて言ったんだろう(笑)。

全員:(笑)。

奥成氏:他にも、キャラクターの名前や見た目が変わっていたり、ストーリーも手が加えられていたりするんですよ。

――結構いろんなところに違いがあるんですね。となると、この海外版を当時どこが手がけていたのかが気になるところですが……?

堀井氏:差し替えられてる英語ボイスの感じとかは、当時のコンパイルのノリですよね。

奥成氏:おそらく、コンパイルさんでやられたのだと思いますよ。ちなみに「Dr.エッグマンのミーンビーンマシーン」は、セガとの共同開発です。

PS4/Nintendo Switch/Xbox Oneで配信されている「ソニックマニア」には、「ドクターエッグマンのミーンビーンマシーン」をオマージュしたボス戦も登場した

――なるほど。それにしてもこれは日本の「ぷよぷよ」ファンの人もほとんど見たことのない希少なものでしょうね。

奥成氏:「ぷよぷよ通」は海外にはアーケードもメガドライブも出ていなかったので、純粋な海外版の初代「ぷよぷよ」は希少で、おそらく海外のファンの人でも知らない人がほとんどなのではないかなと思いますね。

細山田氏:そんな海外版を収録するのもそうですけど、そもそも調達してこれるのがすごいですよね。

堀井氏:「版元に全部残っているとは限らないからな!」っていう。

細山田氏:「ソニック ジェムズコレクション」でも手元にある欧米版のパッケージや取扱説明書などがボロボロで資料としては不適だったこともあり、eBayから買ったのも2本ぐらいありました。また、当時の社長にお願いして「ソニック・ザ・ファイターズ」の基板と筐体を全国の施設や倉庫から集めて、そこから移植と実機の相互チェックをしたり。復刻するのは、そういうところから苦労するんですよね。

 ちなみに「ソニック ジェムズコレクション」に収録していた「ベクターマン」は特定のROMには多額の賞金が当たるキャンペーン画面のデータが入っているものがあったので、それを収録しちゃうとみんなに賞金を配らないといけなくなるので、そのキャンペーン当選ROMでないかを確認してから収録するっていう謎の作業が発生して……(笑)。

全員:(笑)。

※「ベクターマン」は発売当時、賞金や賞品が当たるチャンスがソフト内に埋め込まれていることでも話題に。ベクターマンのカートリッジにはランダムで、クリア時の最後の画面に“You Win!”と表示されるものがあり、ヒミツの電話番号と住所が表示されるようになっていた。賞金、賞品はセガサターン本体やゲームソフト、賞金などで、なんと大賞は25,000米ドル(日本円にして約250万円)を受け取ることができた。

――アーケード版の基板はメガドライブに近いとされるC2ボードですが、今回のSEGA AGESでNintendo Switchに初めてC2ボード作品を出すことになります。「ぷよぷよ」自体の移植を含め、基本部分となる移植作業についてはそこまで大きな問題はありませんでしたか?。

堀井氏:ですね。C2ボードの地盤を固めるところから入って、そこからそこそこに移植の精度を高める作業もありますが、オンライン対戦の実装はそれらとは桁違いに苦労していますね。

――今回はもう、オンライン対戦に労力の大部分を費やしている感じですね。

堀井氏:そうですね。ただC2ボードはメガドライブとは音源周りが全然違っていて、PCMも専用のチップが載っていてめっちゃキレイな音なんですよ。「SEGA AGES ぷよぷよ」でもサウンドの再現をこだわっていますので、堪能して頂けたらいいですね。

――SEGA AGESの発表済みのラインナップには、同じC/C2ボードの「サンダーフォースAC」や「コラムスII」もありますし、それらも並行して開発を進められていると思いますが、今回の「SEGA AGES ぷよぷよ」が完成したことで、それら他のC/C2ボードタイトルも仕上がってくるところがあるのでしょうか?

堀井氏:環境が整うというところがありますね。ただ、それってあくまで元のゲームをそのまま動かすというところにしか過ぎなくて、機能も全部のゲームが同じように使っているわけではなく、例えば「サンダーフォースAC」が変わった機能の使い方をしていたりとかするかもしれませんので。それらをクリアにしてから追加仕様などを入れていったりするので、動けば勝利というわけではないんです。とはいえ、C/C2ボードの土台部分がまとまるというひとつの区切りにはなりますね。

同じC/C2ボードのタイトルでSEGA AGESのラインナップに入っている「サンダーフォースAC」と「コラムスII」

「ぷよぷよ通」はまた別の要素を検討して進行中! 2019年は“こっそり作っていた”が飛び出す?

――いろいろお話を伺ってきましたが、「SEGA AGES ぷよぷよ」で大会なども開催されたら面白いなと思います。細山田さんとしてはいかがでしょう?

細山田氏:いいですよね! 公式的には今のところ予定は全くないですけど、ユーザーコミュニティで自発的に大会をやってくれたりするのではないかな……と期待しています。そういうことをするのにもオンライン対戦があるかないかはすごく重要で、それがあれば大会的な楽しみ方をしやすいんですよね。

――なるほど。ちなみに今もアーケードの「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」の対戦が盛んなゲームセンターというのもあるのでしょうか?

細山田氏:ありますね。松戸や津田沼、それに名古屋などにも盛んなことで有名なゲームセンターがあります。そのゲームセンターの常連なプレーヤーさんが、今の大会に参加してくれたりもしていますね。僕はおじゃまぷよ的な存在なので、現地にはなかなか行けないんですけど、配信とかがあればこっそり見てるんですよ(笑)。

 そうした「ぷよぷよ」コミュニティの皆さんがたくさんいらっしゃいますので。彼らによる「SEGA AGES ぷよぷよ」のオンライン大会も、きっと行なわれるんじゃないかなって思います。

――オンライン対戦を入れたことで、これまでのSEGA AGESタイトルにはあまりなかったような楽しみ方もしてもらえそうですね。

堀井氏:そうですね、そういうこともしてもらえたら……本当に嬉しいですよ!

――「SEGA AGES ぷよぷよ」と同時に「SEGA AGES ぷよぷよ通」も発表されていましたが、「SEGA AGES ぷよぷよ通」も近いスケジュールに登場するのでしょうか?

堀井氏:いえ、「SEGA AGES ぷよぷよ通」はまた別で進めていて、もう少しお待ち頂きたいです。「SEGA AGES ぷよぷよ」とはまた別にやりたいこともいうのもあるんですよ。

――なるほど。イメージとしては、シリーズものですし2作品を同時進行で進めてポンポンとリリースしていくのかなって思うところがあったのですが。そうではなく、それぞれあくまで別の作品として捉えるべき?

堀井氏:そうですね。シリーズ作2つの移植を同時に発表したのでセットに思えるところがあるのはわかるのですが、この2つをまとめてやれるのは基板であるC2の部分だけで、その上で動いているゲームとしては全く別のものなんですよ。

「SEGA AGES ぷよぷよ」と同時に発表された「SEGA AGES ぷよぷよ通」。シリーズものであるとは言えども、内部的にはかなりの違いのあるゲームなので、しっかりと手をかけていくという。また、こちらはまた違った新要素を検討しているそうだ

――「ぷよぷよ」と「ぷよぷよ通」の違いというのはかなり大きいのでしょうか?

堀井氏:大きいですね。開発チームからすれば「ぷよぷよ」と「ぷよぷよ通」は全然違うゲームなんですよ。

奥成氏:そもそも、「ぷよぷよ」と「ぷよぷよ通」はプログラマーさんも違ってますよね。

堀井氏:そうなんです。「ぷよぷよ通」のプログラマーはじぇみに広野さんという「ザナック」などを作った方なのですが、そのじぇみに広野さんが作ったルーチンで初代「ぷよぷよ」を遊びたいということを、僕に話していた人がいたんですよね。

細山田氏:当時のコンパイルさんは各タイトルごとに作っている人が全員違うっていう感じだったと元コンパイル社員さんから聞きました。

奥成氏:「ぷよぷよ」単体にしても中身を見れば、ソースをそのままコンバートしているはずのメガドライブ版もちょっと違っていたり、スーパーファミコン版だと全然違う、PCエンジン版に至っては完全に別物というところがありますよね。

 そんなわけで、「SEGA AGES ぷよぷよ通」もゆっくりお待ち頂ければ。

――わかりました。それでは最後に一言ずつ頂けますでしょうか。今回は今期の終わりということもありますので、来期の展望などもお聞かせ頂けたらありがたいです。

下村氏:「SEGA AGES ゲイングランド」は“技術的な折り返し地点”というような存在で、恐らくニーズは小さいながらもチャレンジしたタイトルだったのですが、今回の「SEGA AGES ぷよぷよ」はこれまで支えて頂いたファンの皆様とは違うユーザーさんにも楽しんでもらえるタイトルだと思っていまして、SEGA AGESがさらに大きく発展していくために必要なタイトルと考えています

 「SEGA AGES ゲイングランド」は僕も個人的に“やらなければならない!”っていうタイトルでしたが、「SEGA AGES ぷよぷよ」をオンライン対戦つきで出すのは“SEGA AGESとしてやらなければならない”っていうタイトルだったのかなと。スタッフ一同がんばって作り上げましたので、ユーザーの皆さんにはぷよををきっかけにSEGA AGESを知ってもらって、他の作品にも注目してもらえたら嬉しいなと思います。

――オンラインプレイ対応は、今後のタイトルへの搭載を期待してもいいのでしょうか?

下村氏:今回の「SEGA AGES ぷよぷよ」のようにオンライン機能が必要だと思えるタイトルについては随分と可能性は高まると思います。ただ、オンライン機能に対応させるためのリソースがどれぐらい必要なのかが、今回見えてきましたので、この「SEGA AGES ぷよぷよ」にオンライン対戦を入れたことによる成果を見て、それが良い結果になってくれていれば、他でも前向きに考えていくことになると思います。

――わかりました。続いて小玉さんお願い致します。オンラインプレイ対応の苦労は小玉さんも強く実感されているところと思うのですが。

小玉氏:苦労しました(笑)。でも、エムツーさんには意欲的に取り組んでもらっていますし、細山田にも言ってもらえましたが、“元があるものに新しい機能を追加する大変さ”というのは、どのSEGA AGESタイトルでも難しいものです。

 今回は追加要素が山ほどあるというわけではないですが、オンライン対戦はそれひとつ入れるだけでも大変な苦労がありました。でも、今回はオンライン対戦対応を発表したときにユーザーさんからも多くの反響をもらえましたので、なんとかがんばりきれました。

 いつもよりもお待たせしてしまいましたが、そのぶんもお楽しみ頂ければと思います。

――続いて堀井さんから、2019年の取り組みや展望はいかがでしょうか。

堀井氏:そうですね……。そろそろ、こっそり作っているものをセガさんに見せて驚いてもらって、「これ出しませんか?」って言ったりしたいですね!

――おっと?

堀井氏:まぁ、これまでたくさん見せているので、あんまり驚いてもらえないかもしれないですが!

下村氏:いやいや、今でも驚きますよ!

堀井氏:(笑)。今、作っているものを粛々と出しながら、ユーザーの皆様のご支持が続くと信じて、この先に出していくものを密かに仕込んでいきたいなと思います。「ゲイングランド」や「バーチャレーシング」のように、これまで手がけていない新規のタイトルを準備しておきたいですね。

――奧成さんの今年の展望はいかがでしょうか。

奥成氏:僕はスーパーバイザーという口だし役ですので、主に後方支援なのですが。ラインナップの各タイトルに対して、お客さんに喜んでもらえそうな新要素のアイデアを最初にいっぱい出させていただいたので、それがどう料理されているのか味見して、味が薄かったら最初に文句を言う係でもあります。まぁ、それで苦労することになるディレクターの松岡さんには煙たがられてると思うのですが、仲良くやっていきたいなと思います(笑)。

 あとは、「3月末に行われるセガフェスを楽しみにしていてください!」とだけお伝えしておきます。

――わかりました。それでは、細山田さんからも「ぷよぷよ」シリーズのお話など含めて、一言頂けますでしょうか。

細山田氏:私の方では今「ぷよぷよeスポーツ」を展開していますが、これまでずっと初代「ぷよぷよ」や「ぷよぷよ通」を出して欲しいという要望がありました。その要望にエムツーさんはそれ以上の追加要素も入れて応えてくれました(そして、これからも答えてくれるはずな)ので、すごく嬉しいです。「ぷよぷよ」ファンの声を代行するとすれば、今回の発売は「やったー!」っていう感じだと思うんですよね。

 ちなみに昨年の発表時から思っていたんですけど、普通は「『ぷよぷよ』が売れたら「ぷよぷよ通」もやれるかもしれませんよ」って言うのが商売っ気だと思うんですよね。でも、同時に発表したのがすごいなって思って(笑)。アーケード版「ぷよぷよ」ファンの皆様はぜひ今回の「SEGA AGES ぷよぷよ」を購入頂いて、「SEGA AGES ぷよぷよ通」への期待値を盛り上げてくれたらいいなと思います。

 ……あと個人的には、良いゲームだからと「ソニック メガコレクションプラス」に収録した、「ジ・ウーズ」とか「コミックスゾーン」などもぜひSEGA AGESに出して欲しいです(笑)。

――最後に新たな要望が(笑)。

奥成氏:(笑)。

堀井氏:……来期もがんばります! いろいろ!

――ありがとうございました!