インタビュー

「リネージュM」プロジェクトプロデューサー大河内氏インタビュー

「『リネージュM』はMMORPG黎明期の混沌と面白さを内包している」

2019年春 配信予定

 エヌシージャパンは、Android/iOS用MMORPG「リネージュM」を2019年春に配信する。

 「リネージュM」は同社のPC版MMORPG「リネージュ」を基にしたモバイル向けMMORPGで、現在は事前登録を受付中。受付開始から160時間で登録数は10万人を突破しており、その勢いを感じさせる。

【【リネージュM】シネマティックムービー】

 実は「リネージュM」は韓国と台湾の2カ国にて既に配信が行なわれており、新旧の「リネージュ」プレーヤーから絶大な人気を集めている。ところが海外での配信開始以降日本での展開の話は一向に出てこず、感度の高いファンからは「もう日本では『リネージュM』は出ないんじゃないか」などという諦めに似た声も聞かれ始めていたのだ。

 そこに来て2月に行なわれた電撃的な配信告知と事前登録。弊誌では早速「リネージュM」のプロデューサーを務める大河内卓哉氏にインタビューを行ない、「リネージュM」の日本展開や本作にかける想いを聞いてきた。

 なお、大河内氏はMMORPGが最も盛り上がっていた2000年台初頭よりMMORPGに親しみ、現在でも1ユーザーとして韓国版「リネージュM」をはじめ、様々なゲームをバリバリ楽しんでいるとのこと。氏の口からは繰り返し濃厚なMMORPG論や「リネージュ」というIPへのリスペクトが語られた。早速その内容をお伝えしよう。

「リネージュM」プロジェクトプロデューサーを務めるエヌシージャパンの大河内卓哉氏

「リネージュM」は"再構築"した新しい「リネージュ」に

――本日はよろしくお願いいたします。ファンにとっては待ちに待ったと言ってもいい、「リネージュM」の日本展開が行なわれるということですが、改めて本作のポイントをご紹介いただけますか。

大河内氏:ポイントはモバイル向けのタイトルでありながらしっかりと「リネージュ」の世界が構築されていて、ゲームの自由度や"深み"が再現されていることです。ちなみにグラフィックスもPC版「リネージュ」に準拠したものになっていまして、懐かしい方もいらっしゃると思います。また、海外では大ヒット中で、その面白さは折り紙付きです。是非1度ダウンロードして遊んでいただきたいと思います。

――「リネージュM」はPC版「リネージュ」をモバイルで再現することを目指したタイトルなのでしょうか?

大河内氏:PC版「リネージュ」の面白さをスマホで体験してもらうというところからスタートしていますが、配信開始から1年ほど経過した海外版では既に独自路線を進み始めています。「リネージュ」の系譜を継ぐ新たなゲームとして、例えば「銃士」といった新職業の実装などターニングポイントを迎えつつありまして、PC版「リネージュ」の良さを引き継ぎつつ、1から再構築しているというイメージです。最初から1年や2年で終わらないような長期のロードマップが敷かれているので、「リネージュM」ならではの進化も待っています。

 また、PC版「リネージュ」を経験しているプレーヤーは、知識の面でのアドバンテージもあります。そしてファンの方に「これは『リネージュ』ではない」とは思われないような出来になっています。あくまで「外伝」や「移植」作などではなく、「リネージュM」という新しい「リネージュ」がスマホで出ます、と受け取っていただくのがよろしいかと思います。

――時代背景や舞台は「リネージュ」と同じなのでしょうか?

大河内氏:ベースになる世界観は同じです。アップデートはPC版「リネージュ」とは違ってエピソード制ではありませんが、「リネージュM」も順々にアップデートを予定しております。公式ページで「ダークエルフ」の存在も公表しているので、このあたりの情報をPC版「リネージュ」の年表に照らし合わせると、時期としては……という感じですね。PC版「リネージュ」の初期は4クラスでしたし。色々と想像しながらお待ちいただけると嬉しいです。

 システム的には実はPC版「リネージュ」の新しめの仕様が入っていたりもしますので、システム的な時系列は違いますね。必要な最適化が行なわれていると受け取っていただければと思います。

公式ページの「職業紹介」には既にダークエルフが存在している

――当時のPC版「リネージュ」は率直に言ってレベリングが比較的"マゾい"バランスだったかと思いますが、「リネ―ジュM」ではどうなりますか?

大河内氏:まず、ゲームスタート直後から中頃はレベルアップする楽しみが感じられるように調整が行なわれています。なので新しく「リネージュ」をはじめる方は安心して頂ければと思います。もちろん「リネージュ」らしさという点で、徐々にレベル上げに悩みはじめるところもあると思いますし、経験値のバランスについては上のほうは"しっかり"厳しいバランスになっています。「リネージュM」においてレベリングはコンテンツの深みの1つです。自分の能力と比べてバランスの良い狩場やダンジョンを見つけ、利用しながらより早いレベルアップを目指すのも楽しんで頂ければと思います。

 「リネージュ」はレベルを上げた分だけ強くなれるゲームなので、頑張れば頑張っただけ強くなれるという意味では上限なくいくらでも遊べるようになっています。ちなみに、私自身もしこの立場でなければ仕事を辞めて狩場に張り付いてずーーーっと狩りをしていたいと思うくらいです(笑)。そのあたりはPC版「リネージュ」と全く変わりません。

 ただ、時代の流れとして手動よりも経験値効率が落ちるもののオート機能を実装していたり、デスペナルティに関する救済措置もあったりします。当時のPC版「リネージュ」プレーヤーにとって、「当時これがあると良かった」というものが入っていると思っていただければと思います。

――PC版「リネージュ」でお馴染みのPKはどうなりますか?

大河内氏:まず、PKという機能はあります。ただ、「リネージュM」ではPKの心配なく楽しめるセーフゾーンと呼ばれる狩場や、PvPを行なっても経験値が下落しない仕組みなども準備を進めております。また、経験値が減ってしまっても復旧できるなどの救済システムも用意していますので、安心して頂ければと思います。

 「リネージュ」のように"生きている"世界には人がいて、人がいれば争いが発生することもありますし、時にそれは武力でないと解決できないこともあります。そしてその争いの分だけ協力が発生して、仲間ができて、世界ができて、自分だけの物語ができていくことを楽しんでいただければと思います。

――ある意味時代に逆行するようなハードコアなシステムですね。

大河内氏:そうですね、なので特に1990年代後半から2005年くらいにMMORPGを楽しんでいたユーザーさんは絶対に楽しめますし、「やっぱりMMORPGってこうだよな!」と言いながら遊んでもらえると嬉しいです。「リネージュM」はこのころの面白さや混沌というか、人と人の関係とはどういうものなのか、というものを映し出す鏡のようなタイトルです。きっとPC版「リネージュ」のように真剣に、人生をかけた、後の世に語り継がれるような物語がユーザーさんの間で沢山出てくると思いますし、私自身それをとても楽しみにしています。

――その頃のMMORPGは黎明期ということもあって、「リネージュ」や「リネージュ2」にドップリハマっていたユーザーさんも多いと思います。

大河内氏:そうだと嬉しいですね。当時の体験を求めているプレーヤーさんたちの期待を裏切らないサービス……「リネージュ」はある意味もう1つの人生です。ですから敢えて"ゲーム"とは言いたくないのです。そんな熱いサービス、世界を提供して、長く維持していきたいと思っています。

 そういう意味で、PC版「リネージュ」を経験したプレーヤーさんたちに是非「リネージュM」をプレイしていただきたいですね。PC版「リネージュ」と比べていただいても結構です。PC版のほうが肌に合う、という方もいらっしゃると思います。「リネージュM」が出たからといってPC版「リネージュ」が終わってしまう、ということはありませんので、そういった方は安心してPC版「リネージュ」を遊んで頂けますと幸いです。

 また、昔「リネージュ」をプレイしていたけれど今は辞めてしまっている、という方にも是非触ってもらいたいと思います。全員がフラットなところからのスタートなので、あの1番楽しかったころの体験をもう1度味わえるチャンスだと思っていただけると嬉しいです。ぜひ昔の仲間と連絡を取って待っていてください。これは心からのお願いです。皆さんに最高の体験をして頂くために、私達は日々全力で準備しています。

インタビューを行なったエヌシージャパンの会議室の壁には、タイトル年表が掲示されていた。「リネージュ」の正式サービス開始は2002年と、まさに日本におけるMMORPG黎明期

――では一方で、当時のMMORPGや「リネージュ」を知らないプレーヤーさんにはどのように訴求していきますか?

大河内氏:私はユーザーさんがゲームを始める条件は3つあると思っています。まず1つ目は「友達と話せること」です。それはゲーム内に限らず、どこまでタイトルを一般化できるかという話ですね。なので「リネージュM」ではまだ時期はお話できませんが、TVCMなども用意して大々的に告知を行なっていく方針です。知名度を上げていくことで、逆に「『リネージュM』やってないの!?」というところまでもっていけるといいですね。「リネージュM」のプレーヤーが誇りを持って人に勧められるようにしたいですし、PC版「リネージュ」を愛してくれているプレーヤーが感じていたであろう「『リネージュ』はもっと流行っていいゲームなのに!」という積年の悲願を達成したいと思います。

――「リネージュM」より遥かに歴史の長いPC版「リネージュ」プレーヤーが尊敬の眼差しで見られるようになるといいですね。

大河内氏:まさに仰る通り!「リネージュ」をプレイしている、またはしていたということをカッコいいことにしたいんですよ。皆さんが遊んでいた時間をしっかり昇華したい。そういう風に歴史を持っていきたいと考えています。そのためにエヌシージャパンはいま全力を尽くしています。

 続いて条件の2つ目ですが、これは「無駄にならないこと」です。どれだけ時間やお金を費やしても、ゲームがクローズしてしまったその時点でゼロです。プレイした思い出は残るかもしれませんが、プレイするからにはサービスが続いて欲しいじゃないですか。その点エヌシージャパンは「リネージュ」のサービスを2002年の開始から17年間続けてきた実績がありますし、「リネージュM」もずっと続けていく想定で取り組んでいます。安心して「リネージュM」をスタートして欲しいと思います。

 そして最後の条件は「自分だけの体験ができる」ということです。プレイしたその時々の時代の"うねり"といいますか、現実世界では歴史が変わる事件があっても、大半のケースで自分はその当事者ではありません。その点「リネージュM」では違います。自分で歴史の流れを変えることもできますし、なんなら自分で歴史を作り上げることだってできます。そういう体験を10年経っても20年経っても忘れない思い出にしてほしいと思います。

 私が思う条件はこの3つですが、「リネージュM」にはその全てが入っています。ぜひ楽しみにお待ちください。

――熱いコメントをありがとうございます。話は変わりますが、既に配信が行なわれている海外での人気はいかがですか?

大河内氏:韓国では爆発的な人気ですね。2017年の夏からAndroidのランキングで圧倒的な1位をキープし続けています。台湾でも同じような感じで、2019年2月時点でAndroidのランキングで53週連続1位だったとのことです。韓国も台湾もAndroidの比率が高いので、ナンバーワンの人気と言っても過言ではないです。

――韓国はNCSOFTのお膝元ということもあるかと思いますが、台湾ももともと「リネージュ」の人気が高い国なんでしょうか。

大河内氏:韓国ほどではありませんが台湾にもその土壌がありますし、世界レベルで「リネージュ」の知名度は非常に高いと感じています。

 なので今回は、「『リネージュ』は一般的なMMORPGではなくて『リネージュ』というオンリーワンに魅力のあるゲームだ」ということを「リネージュM」を通じて皆さんに知っていただきたいですね。「リネージュ」でなければ体験できない楽しさは確実にありますし、海外での実績は「リネージュM」の楽しさを保証するひとつの指標だと思います。

――ではそんな「リネージュM」のローカライズについて、日本向けに調整を行なう部分はありますか?

大河内氏:もちろんありますが、その前提として"日本のユーザーの傾向がこうだからこうします"という変更は極力行なわない方針です。これは先程も申し上げました通り、「リネージュ」は「リネージュ」なので、私は下手な調整を行なうことでゲームバランスが崩れたり、ローカライズのせいで別のゲームになってしまうことを1番危惧しています。海外で熱狂されている「リネージュM」がそのまま来るので、逆に安心して欲しいですね。

 ……ただし、1点だけ。海外版では遊びはじめる人々への「リネージュ」というタイトルの浸透度がとても高い分、"リネージュの常識"が詳細な説明がなく当たり前のように出てくるので、既存プレーヤーさんは大丈夫かもしれませんが、日本の新しいプレーヤーさんが入りにくいような形になってしまっています。なのでそこを補完すべく特にチュートリアルの部分は日本向けに大規模な改修を行なっていまして、正直今お待ちいただいているのはそのあたりが関係しています。

 ちなみに、日本で顕著なユーザー行動パターンとして例えば「リセマラ」などがありますが、1度決めたらこのまま今後10年以上プレイするかもしれない名前とサーバー選択を大切にしていただきたいと考えています。そういうことを大事にするプレーヤーさんが損をするようなことはやりたくないと考えていますので、「リネージュM」ではスタートしたら振り返らずにプレイを継続することが大多数の正解であるようにしてほしいと開発・運営にオーダーしています。基本的にはそういう考え方で、リセマラは不要です。

――今後はβテストなどを行なう予定はありますか?

大河内氏:オープンのβテストを行なう予定はありません。基本的にこれらのテストはサーバーの安定度などを検証するために⾏なうのですが、「リネージュM」に関しては本社NCSOFTとエヌシージャパンの技術職の全体で取り組んでおりますので、そこはご安心いただければと思います。

 また、βテストにはいい側面と悪い側面があって、いい側面としてはプレーヤーさんにプレイフィールを先行して拡散してもらえるというところがあります。一方でテストに参加した人としていない人の間で情報量に差が出てしまうのが良くないところで、MMORPGは「せーの!」で一斉にスタートするのがある意味醍醐味の1つなので、「リネージュM」において事前のテストは行ないません。

 ただ、サービス開始までに様々な施策を用意していますし、公式Twitterをフォローの上、今しばらくお待ちください。ちなみに、PC版「リネージュ」の経験は必ず生きるようになっているので、そちらを楽しくプレイしてお待ちいただくのはアリだと思います。

――最後に、楽しみにしているユーザーに向けてコメントをお願いします。

大河内氏:「リネージュ」ファンのみなさま、大変お待たせ致しました。2019年春、ついに日本でサービスを開始いたしますので、その時を楽しみにお待ち下さい。

 また、「リネージュ」を知らないみなさま、世界を震撼させ続けている超大型タイトルが日本に今回来ることになりました。「リネージュM」では骨太なゲーム体験が味わえますので、「ゲームが好き」という方には是非1度触っていただけると嬉しいなと思います。

――配信を楽しみにしています!本日はありがとうございました。

「2019年に『リネージュM』を書き足して欲しい!」と語る大河内氏