インタビュー
3DS「3D ザ・スーパー忍II」インタビュー
MD後期の工夫あふれるタイトルがどう3D立体視化されたのか?
(2013/8/7 00:00)
ニンテンドー3DS「3D復刻プロジェクト」第7弾は、「3D ザ・スーパー忍II」。8月7日より配信され、価格は600円。
今回も、セガのプロデューサー・奥成洋輔氏と開発を担当したエムツー(M2)の堀井直樹氏にインタビューにお応えいただいた。
「ギガドライブ」(※)構想4タイトル目の本作の制作はどう進められたのか? なぜ「II」が選ばれたのか? そのあたりからお話を伺っていこう。今回も細かい話が盛りだくさんなので、最後までゆっくりご覧頂きたい。
※「ギガドライブ」……「3D復刻プロジェクト」において「3Dに対応した仮想メガドライブ」として仮想設計されたニューハード構想。詳しくは「3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のインタビューをお読みいただきたい。本稿では「3D復刻プロジェクト」における移植タイトルは「ギガドライブ」タイトルと呼称している。
【ザ・スーパー忍II】
1993年7月23日に発売。7ラウンド21ステージ構成のメガドライブでの「忍」シリーズ第2作目。前作「ザ・スーパー忍」から4年を経て発売された続編。
この世を破壊と暴力で支配しようともくろむ狂気の集団“NEO ZEED(ネオ ズィード)”は、数年前、“ジョー・ムサシ”の活躍によって完膚なきまでに打ち砕かれたはずだった。
しかし、当時の統領は影武者に過ぎず、一見、壊滅したかに見えた“NEO ZEED”は、現在までその命脈を保ちつづけていたのだ!
姿を現わした真の支配者“シャドーマスター”のもと、以前にも増して力をつけた“NEO ZEED”は、ジョー・ムサシ抹殺計画を発動する……。
ムサシ対NEO ZEED……光と闇の闘いが、今また始まろうとしていた。
二段ジャンプからの八双手裏剣はもちろん、ダッシュ移動、三角跳び、ぶら下がりといった新アクションや、ダッシュ斬りと飛び蹴りの新たな攻撃アクションが加わっているのが特徴。
「『こんなことはできないんじゃないか』というようなものが、平然と動いているというゲーム」
――今回もよろしくお願いいたします。まずは、「ギガドライブ」タイトルとして「3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ」、「3D 獣王記」、「3D エコー・ザ・ドルフィン」とリリースされてきましたが、セガのアクションゲームの代表作の1つである「忍 -Shinobi-」シリーズから「ザ・スーパー忍II」をセレクトされた理由からお伺いしたいと思います。「ザ・スーパー忍」は初代のインパクトも強かったと思いますので。
奥成氏:メジャーなのはもちろん「ザ・スーパー忍」かなと思ってるんですが、去年、プレイステーション 3/Xbox 360「SEGA AGES ONLINE」で初代「ザ・スーパー忍」をラインナップの1本に入れた際に「ザ・スーパー忍II」の復活を望む声をけっこう頂いたんですね。
また、3DSでは過去、「Shinobi 3D」というシリーズの新作タイトルも発売させていただいていて、このゲームが「ザ・スーパー忍II」をかなりリスペクトしているタイトルだったので、「Shinobi 3D」で「忍 -Shinobi-」というタイトルを知っていただいた方にも、できるアクションが初代よりも断然多彩な「ザ・スーパー忍II」は親和性もあっていいんじゃないか、ということもありました。
セガの人気シリーズは「3D復刻プロジェクト」のラインナップとしてもなるべく押さえていきたいというところもありましたので、「忍 -Shinobi-」シリーズから1本入れたかったですし、「3D ギャラクシーフォースII」を見ていただければおわかりの通り、スプライトの立体視化という面白さは、「Shinobi 3D」のようなポリゴンの立体視とは別にあるだろうと思っていたので、それを見てみたかったということもあります。
堀井氏:立体視化のしどころはいっぱいありますしね。
――「3D ソニック」からの流れでいうと、「ギガドライブ」タイトルは基本的にサイドビューのゲームが続いて4タイトル目ということになりますが、3D立体視にしたときの効果を狙って「ザ・スーパー忍II」がセレクトされているのかな? と思っていました。
奥成氏:例えば、3Dシューティングゲームを3D立体視にするのであれば、アーケードタイトルの方が効果的なんですよね。メガドライブは拡大縮小機能がハードウェアではサポートされていませんでしたから。逆に、サイドビューのゲームを選んでいくのであれば、メガドライブのゲームに名作がたくさんあったから、ということですね。
あとは、技術的蓄積としても、同じジャンルのものを続けていければ、だんだん作り手の腕も上がってくるだろう、という予想ももちろんありました。
――なるほど。
奥成氏:「ギガドライブ」も「ザ・スーパー忍II」で4タイトル目ですし、開発もスムーズに行くだろう、と思ったら……自分たちの計画の浅はかさを知ることになりました。
堀井氏:メガドライブのゲーム自身も進化していたからです。「ザ・スーパー忍II」のころは、同じメガドライブのタイトルでもこなれてきて、スプライトとBGの使い方が極まっていて、背景をラスター処理でパカスカ動かしていたかと思ったら、スプライトのプライオリティ(表示優先度:複数が重なった際にどちらを上に表示させるかなど)を細かく変えてみたり、1枚の背景が背景が2~3枚あるようにうまく見せるとったことを平然とやってるんですね。
奥成氏:「3D エコー」までの3タイトルを歴史的におさらいすると、まずは「獣王記」が1988年のロンチタイトルで、「ソニック」が1991年で、「エコー」と「ザ・スーパー忍II」は1993年に発売されています。「エコー」は主にビジュアル面での技巧テクニックが進化していましたが、「ザ・スーパー忍II」は主にビジュアルを見せるプログラムテクニックが進化していました。ハードがリリースされてから5年目で、メガドライブの機能を駆使どころか、本来メガドライブでは「こんなことはできないんじゃないか」というようなものが、平然と動いているというゲームなんですよね。
堀井氏:そこに対して立体視を付けていくと、手間はかかるけれども、やっぱり「おおっ!」というものになるんじゃないかということです。
奥成氏:僕もエムツーさんとメガドライブのラインナップを決める中で、「ザ・スーパー忍II」は立体視に対応させたら面白いだろうな、と思ってラインナップに入れたんですが、「ラスター処理がたくさんあったなあ……」と思いながらも、ゲームとしては素直なサイドビューアクションなので、「ソニック」のように目立つところを立体にしていけばいいだろう、ぐらいに思っていたんですよ。そこはエムツーさんも同意されていて。「そこは後期タイトルなので、多少手はかかるだろうけれども……」というぐらいの話でした。
……ところが、実際にやってみるとこれがハンパなく大変だった。まず、ステージ数がそれまでのタイトルと比べて断然多い。
堀井氏:そうなんだよねー。
奥成氏:油断していたんですけれども、7ラウンドで各ラウンドに3ステージあるんですよね。だから、計21ステージあって。「獣王記」は全5面。「エコー」の場合はマップの広さはあったけれども、基本的にゲームの展開は、アリの巣を横から見ているような形で、ゲームデザインとしては同じイメージのところが続いていくので、手法自体は変わらなかった。
堀井氏:ひたすら手間をかけて同じ作業を続けていけばよかった。
奥成氏:ところが、「ザ・スーパー忍II」は、ステージごとに場面が一変するんですよね。まるっきり違う風景、違う世界が展開していくんですが、その絵を3Dにしていく時の手法を1つ1つ変えていかなければならなかったんですよ……。
そのために、例えば「3D ソニック」でやったこと……「ラスタースクロールに奥行きを与える」、「グラフィックスで3D的な描画をしていた背景の小物をチョイスして、手を加えて立体視化する」、そして「獣王記」や「エコー」でやった「1枚絵だった背景に手を加えて立体視化する」ということを最初に手を付けてみたんですが、それでは全然足りなかったんですよ。
――「足りない」というのは、そこまでやってもまだ何か不足しているということなんですか?
堀井氏:要素としては相変わらず「BG面が2枚でスプライトがあるゲーム機」というところは変わらないので、やれることもそう変わらないんですけれども、あの当時ならではの手法で、あたかもBGが3枚、4枚とあるように見せるための絵の書き換えの手法が出てきて……。なので、「BG面2枚に深度を付ける」、「ラスターでレイヤーが変わっていたらそこでプライオリティを変える」というようなことをやっていても、それだけでは破綻するというか、おかしくなるんですね。それらを駆使して、さらにもっと奥行きがあるように見せている表現を加えているんですよ。
1枚の背景に遠近感がつけてある絵を多重スクロールされてしまうと、これまでの「ギガドライブ」の手法では手も足も出ないので、新たに深度を付け直すというような話がいっぱいありました。
――デカキャラも大きくなってますもんね。この頃のタイトルだと。
堀井氏:そうですね。
――そうなると、元の絵は1枚かもしれないけれども、パースによっては手足に深度を別に割り振ったりしたくなるという。
堀井氏:パーツに分かれていたら立体感が欲しい、という話も出てきますから。シーンごとに見え方が本当にガラッと変わってしまうステージが多いので。