インタビュー
M2 Shot Triggers「魔法大作戦」インタビュー前編
2人プレイ要素を1人で楽しめる“DUALモード”など、原作の“芸細っ!”を引き出す工夫が満載!
2017年11月2日 00:00
往年の名作をこだわり満載で蘇らせるエムツーのSTGブランド「M2 Shot Triggers」。その第3弾となるプレイステーション 4用シューティング「魔法大作戦」の配信が11月2日より開始された。
配信に合わせ、第1弾「バトルガレッガ Rev.2016」、第2弾「弾銃フィーバロン」同様に、今回もエムツーにてインタビューを行なわせて頂いた。今回も“移植への苦労話や裏話”、“こだわりのエピソード”が満載となったので、インタビューを前編後編にわけてお送りしよう。
【魔法大作戦】
1993年にアーケードでリリースされた縦スクロールシューティングゲーム(STG)。ファンタジーとスチームパンクの要素を組み合わせ、4人のプレーヤーキャラがメカに乗り込んだり自身の体を使って敵陣に乗り込み、メカやモンスターと戦う独特の世界観、ステージの演出や大小のドットキャラクターたちの緻密な動きによりダイナミックに語られるストーリーなど、家庭用ゲーム制作の経験を経て培われたスタッフたちの熱量が反映され注目を集めた一作。エイティングの処女作であり、今回家庭用ゲーム機への初移植となる。移植版としてはX68000版とFM TOWNS版がある。
システム的には、操作は1レバー+ショットと「超魔法ボンバー」の2ボタン。ショットはメインとサブの2種類が個別にパワーアップ、ボムはボタンを押下後にボムが炸裂してから無敵状態になるという特徴がある。ステージは6まで用意されており、2周エンドの設定となっている。
M2STG版では、以下のゲームモードが用意される。
「アーケードモード」……アーケード版を忠実に移植。縦画面モード・スキャンライン、スプライトのちらつきの再現など、細かな設定をオプションでカスタマイズできる。
「SUPER EASYモード」……敵弾や敵に接触すると発動するオートボム、原作を徹底的に解析し、多くのプレーヤーにラストまで楽しめるようバランスを再調整。
「DUALモード」……エムツー独自のアレンジモード。1Pと2Pのキャラクターが同時出撃し、メインショットは1P、サブショットは2Pのものを使う。2Pキャラはあらかじめ設定された動作と、プレーヤーによるコントロールを併用して戦う。
ゲーム内の情報を画面左右に設定された「M2ガジェット」で表示。プレーヤーの攻略の助けになるだけでなく、今作ではゲーム内にちりばめられた見どころを紹介し、ゲームをより一層楽しめるような作りを目指して開発されている。
1.【プレーヤー情報】
ステージで獲得したスコアと残機、残ボム数を表示。ボムを9個以上持った時の所持数もわかる。
2.【敵体力】
ショットを当てた敵の残り体力とボスとの戦闘残り時間を表示。ボスはパーツごとの体力もわかる。
3.【ランクグラフ】
プレーヤーの行動によって変化する難易度をランク形式で表示。
4.【メインショット】
現在のメインショットレベルと次のレベルまでの必要コイン数を表示。
5.【サブショット】
現在のサブショットレベルを表示。
6.【プレイ評価】
ステージ中の道中・ボス戦でのプレイを評価し、キャラに応じたアイテム(金・銀・銅)を表示。
7.【ライバル一覧】
現在のステージで倒された直近3体の敵を表示。プレーヤーが苦手な敵がわかるかも?
8.【ドラマチックマップガジェット】
現在のステージのマップと敵などの情報をカードで表示。ステージごとのボスキャラも上に表示されている。
9.【BGM情報】
現在演奏中のBGM情報を表示。アーケード版、PC版、本作オリジナルのアレンジ版のどれかもわかる。
「外山さんシューが家でできるんだよ!」……「バトルガレッガ Rev.2016」が切り開いたエイティングSTGの原点「魔法大作戦」のM2STGへの移植
――「魔法大作戦」が「M2 Shot Triggers」(M2STG)第3弾として選ばれた理由からお話をお伺いできますか?
長野氏: 「M2STG」第1弾としてエイティングさんの「バトルガレッガ」を「Rev.2016」としてリリースさせて頂いたのですが、それがうまくいったことがありますね。そこから、エイティングさんの別の作品をやるとしたら次は? と考え、原点に戻る形で「魔法大作戦」をやりたいと。
堀井氏: エイティングさん、ライジングさんの最初の勢いが感じられるのが「魔法大作戦」だと感じていて。すごくコンパイル色が感じられるんですよ。「メガドライブの『武者アレスタ』のアーケード版みたいな作り」と、原作のプログラマーである外山(雄一)さんもおっしゃってました。コンシューマからアーケードに挑戦した第1作ですしね。
――「魔法大作戦」に始まる「魔法」シリーズの他にも、エイティングさんのSTGはかなりありますが、候補の中からすんなりと「魔法大作戦」に決まったのでしょうか?
長野氏: 「魔法」シリーズは3作ありますが、もし順番にリリースできるとしたらやっぱり最初の「魔法大作戦」からやっていかないとって思います。それに「バトルガレッガ」の次に、さらにエイティングさんの新しいタイトルを続けていってからだと、それ以前のタイトルへと先祖返りするのはやりにくくなりますよね?
堀井氏: まるで「商売上の理由」って言ってるようなものじゃん!
全員:(笑)
――タイトルラインナップの選定に売り方を考慮するのは当然だと思います。
長野氏: 昔、自分たちが遊んでいて好きだったということも大きいんですよ。
堀井氏: 長野は外山さんシュー(ティング)が好きなんですよ。外山さんが手掛けられていた「武者アレスタ」や「精霊戦士スプリガン」などの流れが色濃く出ているタイトルだから、という点もありますね。
それと、「バトルガレッガ」以降のタイトルに関して当然「M2STG」で手掛けたいとは思っているのですが、例えば、僕たちもぜひやりたいと思っている「蒼穹紅蓮隊」のST-V(セガサターン互換のアーケードシステム基板)など、新しいハードウェアの解析にはやはり時間がかかるんです。そういう事情もありますので、できるものはやる、時間がかかるものはコツコツ準備をしていく。なので、「蒼穹紅蓮隊」などはどうしてもリリース順としては後ろになる……という形で決まっていくところがありますね。
「バトルガレッガ」の場合は20周年記念ということもありましたから、それがなかったらあれが最初ということはなかったと思います。
長野氏: 「魔法大作戦」は「バトルガレッガ」と同じ基板で動作していたというのもあります。外山さんには「バトルガレッガ」を実現する際、かなり尽力していただきましたし、今度はぜひ外山さんの作品をやりたいという気持ちもありましたね。
堀井氏: 外山さんには本当に骨を折っていただきました。「蒼穹紅蓮隊」も長野は今でもやりたいって言ってますし。技術的なめどが立てば。
長野氏: 今でも「早くやりたい!」と社内で言っています(笑)。
――逆に、「バトルガレッガ」をやったことでエイティングさんのタイトルを手掛けやすくなった、ということはあるのでしょうか?
長野氏: ありますね。
堀井氏: エイティングさんも、20年も前のゲームが今ここまで広く受け入れられるとはあまり思ってらっしゃらなかったようなんですよね。外山さんや横尾(憲一)さんあたりは「俺たちはやりたいんだ!」って何年もこのプロジェクトを含め付き合ってくださっていたんですけど。「バトルガレッガ」が盛り上がったことで、話が進めやすくなりましたね。
――それはシリーズの今後にも心強いお話ですね。個人的には、「魔法大作戦」はX68000とFM TOWNSで移植版がリリース(エレクトロニック・アーツより)されていて、家庭用ゲーム機にはなかなか来てくれなかった、という印象が強いタイトルなので。そういった意味でも今回のPS4版はうれしいなと思っていたのですが。
堀井氏: パソコン版はかなり無茶な……というか苦労して作られてましたよね。
――しかも、X68000の市販ゲームタイトルがそろそろ終わろうかというときに燦然と登場したというイメージが(笑)。
長野氏: すぐに買って、喜んでやってましたよ!当時はみんな文句を言ってたけど、自分的には「ゲーセン版が家に来た!」って思ってました。
だって、外山さんシューが家でできるんだよ!?
全員: (笑)
堀井氏: なんか盲目的になってる気がする(笑)。いつも辛口の長野がここまで言うなんて。
――珍しいことが起こっている気がしますね(笑)。
長野氏: あの当時、アーケードゲームがわりとすぐに家で遊べるようになったということが珍しかったんですよ。だってグラフィックスとか、ほぼそのままだったし。確かに処理落ちしまくったりとか、内蔵音源では音が足りないとかありましたけど、やっぱりうれしかったですから。
堀井氏: その当時の長野のX68000のクロックとかを聞きたくなる話ですね。脱線するけど。
長野氏: 初代を15MHzにクロックアップしてたね(一同笑)(編注:クロックアップは自己責任です)。だから何とか動いていた。当たりの本体だったんだよねー。
堀井氏: XVIならわかるんだけど……って、そういう話をする場じゃないから(笑)。古い話でいきなりこのインタビューを読む方をふるいにかけてどうする(一同笑)。
――アーケードでプレイされた方以外だと、やっぱりX68000版、それとFM TOWNS版の印象はあると思うんですよね。
長野氏: そうですね。実は今回のM2STG「魔法大作戦」にも、PCバージョンとしてMIDI版の音源を収録しています。
原作の狙いどころを探っていく制作の短くて深い旅
――制作自体はいつぐらいから着手されたんですか?
長野氏: 「弾銃フィーバロン」が終わってからですね。
堀井氏: ゲーム本体を動かすのはもっと前に実現できていましたけれどね。いわゆる勝手移植と言って動かしているタイトルは山のようにあって、そこから「魔法大作戦」をピックアップして、「よし磨くぞ!」という感じです。
長野氏: 動いているだけじゃ売り物にはなりませんからね。そこから詰めていく作業を「弾銃フィーバロン」が終わってからスタートしました。
久保田氏: 福井が5月ぐらいから解析を始めてましたね。そのころ、「バトルガレッガ Rev.2016」のバージョンアップと海外版、それにXbox One版の作業があって、それが……夏ぐらいまで。その後の7月ぐらいから、こちらに本格的に取り掛かれたという感じです。
冬野氏: 7月だったよね。もう暑かった。
久保田氏: 二足の草鞋状態でしたね。
――けっこうカツカツなスケジュールだったんですね。福井さんは今回もプログラムだけでなく企画にがっつり絡んでいたとお伺いしているのですが、追加モードやガジェットの内容などは開発のどの段階で決まっていったんですか?
福井氏: 基本的には最初の方ですね。最初に企画をどんどん揉んで、企画書の形に落とし込んでからになります。
久保田氏: ゴールデンウィーク明けにメンバー全員で集まって、ガジェットや企画のアイデア出しの会議をしました。その時に現在入っているガジェットの、ある程度のプランは出てきていましたね。そのネタ出しをしてから、「実際に解析できるのか?」とか「ここを福井が頑張る」とか。そういう作業の割り振りをしていきました。
――3作目ともなると、かなり作業にもこなれた感じがしますね。
長野氏: そうですね、UI周りも固まっていますし。あとは外側を作ることを一所懸命に頑張ればいいので。
―― エムツーさん側で「魔法大作戦」というタイトルをどう捉えて、ユーザーさんにどう遊んでもらおうかと考えたのでしょう?
福井氏: そうですね、どこからお話すればよいか…(笑)。まず、今回も「アーケード」、「SUPER EASY」、そして「DUAL」と3つの大きなモードを柱として用意しています。
長野氏: まずは「SUPER EASYモード」ですね。やっぱりSTGが苦手な方にも、最後まで遊んでいただけるような作りにしていきました。
堀井氏: そこはチューニングの部分だよね。
福井氏: 「SUPER EASYモード」を作り上げていく過程は、同時に企画にも絡んでくる話で、このモードを作るにあたって、元のゲームはどうなっているのか、どこが難しいのか、というゲームの仕組みの分析、理解をしていきます。そうして見えてきたものを追加モードに落とし込んでいくと。これが第1工程になっていきますね。
【SUPER EASYモード】
初心者向けに調整された本作ならではのモードその1。
プレーヤーがショットボタンを押している間、敵弾や敵などに接触した場合、オートボンバーが発動する。本作の連射は基本で秒間15連射が設定されているので、基本的に押しっぱなしで戦えば、オートボンバーが発動する。ただし、オートボンバーはボンバーを2個以上ストックしている場合、2つ消費してしまうので注意。残ボムが1の場合もオートボンバーは発生するので、最後まで諦めずに利用していこう。
このモードのランク(難易度)はゼロ。アイテムの落下時間は遅めに設定され、8万点エブリ(8万点獲得で残機が1つ増える)なので、稼がなくても残機が増えやすい。敵の弾速は、アーケード版設定のランクゼロよりさらに優しい設定にチューニングされている。また、中型キャラなどは打ち込みの楽しさを味わってもらえるよう、一部ランクゼロよりやや体力を上げているものもある。
アーケード版で「弱い」とされているガインは、「SUPER EASYモード」と「DUALモード」では武器を強化し、火力を増す方向で調整されている。ガイン以外の武器にも調整が加えられている。
キャラクター同士の掛け合いにスポットを当てた「DUALモード」
堀井氏: 今回チームの皆が考えていたことの中に、「『魔法大作戦』って、これだけいろんなものが作りこまれているのに、気が付いてもらえていないだろうなっていうネタがいろいろあるよね」というのがあって。「それを1人で遊んでいても堪能できるようにしたい」と言っていたよね。
福井氏: そうですね。ゲームにはルールとフレーバーの部分があると思うんですが、今回の場合、フレーバーの部分をもっと面白くしていくと、ルールの部分を楽しく遊んでいただけるのではないかということで、「フレーバー推し」の要素をいろいろ考えてみました。
久保田氏: 最初の企画会議の段階から「元のゲームが結構“芸細”な部分が多くあるから、そういった部分にスポットを当てたい」という思いがありましたね。このゲームをチェックしていった中で、その部分を推せるような内容になればいいなと。
堀井氏: 例えば、2人同時プレイの時に会話シーンでキャラクター同士が掛け合いをするんですが、その内容が「どっちが1Pなのかによっても変わる」というのもあるんですね。こういうところをちゃんと見ている人ってあまりいなかったんじゃないかなと。僕も「入れ替えるとセリフが変わるんだ」っていうことを知らなかったし。
――公式サイトでも最後の方にすっと書いてありましたけど、今回改めて見直して気づきました。
福井氏: 「魔法大作戦」のプレーヤーキャラはキャラクター性が強く出ているので、しゃべりだとかそういったところをどんどん見せていくと、もっとゲームの方にも熱中できるし、面白くなっていくんじゃないかと。
堀井氏: よりバックボーンがわかりやすくなるんだよね。そのためのゲームモードを福井が考えました。それが「DUALモード」です。
――キャラクター推しということであれば、もし「魔法大作戦」が家庭用ゲームだったら、カットシーンなどが入って、もっと幕間でキャラクターをクローズアップしたり、ストーリーを演出するような作りだったかもしれないですよね。でもアーケードゲームだから、インカムのことやプレイ時間を考えて、そういったところは抑えた作りになっていたのかもしれないと思えます。
堀井氏: そうですね。回転率のことをよく考えているのかな、というのは2面の途中とかでよくわかるんですけどね(笑)。そのあたりは、当時の開発スタッフの皆様が、家庭用ゲームを手掛けてから東亜プランさんよりご教示頂きつつ4人でアーケードゲームを作っていったという経緯もあるのではないでしょうか。
――キャラ同士の掛け合いがヒントになって生まれたのが、1人で2キャラを操作するという「DUALモード」と。
長野氏: 当時は2人同時プレイでも、スコア調整などは1人プレイ前提でしかやらないという作りになっていたじゃない。「バトルガレッガ」も「弾銃フィーバロン」も。「魔法大作戦」は、セリフの掛け合いといった細かいところをわかってもらいたいから、逆転の発想で「DUALモード」を作ったんだよね?
堀井氏: 逆転の発想で1人で2キャラ同時プレイモードを付けようという感じで。
長野氏: 今度は2Pも巻き込んで1人でできるモードにしてしまえと。
堀井氏: 先日まで秋葉原のHeyさんで「バトルガレッガ Rev.2016」のフィールドテストを再びやっていたんですが、1人で両手で遊んでいるダブルプレイをされている方がいらして。あれは感じ入るものがあったんですが、「DUALモード」はそれに比べると手軽に遊べますよ。
長野氏: 「魔法大作戦」でもダブルプレイをするお客さんがいるかもしれない。
久保田氏: あれは大変かもしれませんよ。
福井氏: ランクが2人分上がりますからね。
久保田氏: そうなんだ(笑)。
――いわゆるダブルプレイとは違うということで、具体的に「DUAL」モードについて解説していただきましょうか。
【DUALモード】
1Pと2Pで2キャラが同時に出撃するが、操作は1人で行う本作のオリジナルモード。1Pキャラのメインショット、2Pキャラのサブショットが発射される。プレーヤーのレバー操作は1Pに反映される。2P側のキャラはあらかじめ設定された行動パターン通りに動き、プレーヤーの介入も可能。
このモードでは、ショットボタンと「超魔法ボンバー」の2ボタンに加え、「DUALコントロール」と「サブショット切り替え」の4ボタン仕様になる。メインショット、サブショットともにパワーMAXの状態でスタートするので、パワーアップアイテムを慌てて集める必要はない。サブショットは「サブショット切り替え」ボタンを押すごとに切り替わるため、魔導書でのサブショット変更は行わない。
【2Pキャラの基本的な動きと「DUALコントロール」時の動き】
2Pキャラクター | 通常時 | 「DUALコントロール」時 |
---|---|---|
ガイン | 「フロントタイプ」 1Pの前(上)に位置し続ける | ボタン押しの時点からゆっくり画面上に上昇/ボタンを離すと下降 |
チッタ | 「シャドウタイプ」 1Pの動きを追いかける | ボタン押しの時点からプレーヤー機の動きをまねる |
ミヤモト | 「ホーミングタイプ」 体力のある敵に突っ込んでいく | ボタン押しの時点でその場で停止 |
ボーンナム | 「リバースタイプ」 1Pの移動入力と逆方向に継続移動 | ボタン押しの時点でその場で停止 |
福井氏: 「DUALモード」は最初の企画段階で候補の1つとして出てきていましたが、その先で実際に企画として落とし込んでいけるのか、というところでいろいろ考えました。結果「いける」となったんですが、それにはいろんな条件が絡んできました。
例えば、ゲームの細かいところなんですが、画面の左右スクロール。「バトルガレッガ」などは自機の移動に合わせて左右にスクロールするんですが、それはDUALモードにおいて引っかかる要素の1つなんですね。具体的には片方が左、残りが右に同時に移動しようとすると、移動できる範囲が狭くなったり。「魔法大作戦」は左右スクロールする部分がなく、わりと「DUALモード」実現に向いていたというところが大きいですね。
「魔法大作戦」はファンタジーRPGらしさもあり、操作キャラが人型なのも協力して戦うという構図がしっくりきやすいです。例えばガインとチッタなら、ガインが剣でチッタが魔法で戦うところがイメージしやすいので、そういうところからも「DUALモード」はいけそうだと。
――オンラインゲームでも2アカ(ウント)を1人でプレイされる方がいらっしゃったり、音ゲーを1人で2人プレイされたりする人がいますが、STGのダブルプレイもなかなか変態的な遊び方ですよね。それをモードに落とし込むというのはなかなかアグレッシブな企画と思います。
堀井氏: 僕が「雷電」の基板を買ったときに真っ先にやったのが、1Pと2Pのジョイスティックを同期して同時プレイして、弾が倍に出るようにするということだったんですけど、あれが弾がバリバリ出て気持ち良かったのを思い出しました。「DUALモード」は弾は倍出ませんが、気持ちいい仕上がりになってます。
福井氏: 「DUALモード」では結果的に火力は1機分になっています。さすがに2機分にするとバランスを取るのが大変なので。
冬野氏: 最初の頃に僕が「『キングスナイト』みたいにしてよ」って言ったら、福井が「DUALモード」を作ってきて、「これはすごい! 発明だ」って思いましたね。僕は前にいた会社で「ゲームセンターCX 有野の挑戦状」に関わっていたんですが、あの中で有野さんとAIプレーヤーが同時に遊べるというモードがあって、それが初心者にかなりウケていたんですね。STGを購入されるお客さんって、1人で遊ぶ方が多いんじゃないかと思うんですが、そこで「2人プレイにも飢えているのかなあ」って思っていたので。「DUALモード」の“1人で2人プレイはウケる”って思いましたね。
福井氏: そういう話をしていましたね。自分のイメージでもかなり「キングスナイト」へのロマンというのはあって、「何人ものパーティで同時に戦うのは面白い」と。それと、2人同時プレイでいうと、私は「オトメディウス」が大好きで、特にXbox 360の「オトメディウスG」で遊べた通信協力プレイ(マルチプレーヤーLIVEモード)で、私も野良でいろんな人と遊んで楽しんでいたんですね。あの面白さをほかのゲームでもやってみると面白いんじゃないかという思いはありましたね。
あのモードでは、1人で倒せない固い敵や、2つに敵が分かれたりするようなとき、一緒に戦う連携プレイが楽しめたんです。そこから派生して、「誰かが困っていると助けてあげる」という遊び方がすごく気持ちよかった。オンラインRPGで言うところの「辻ヒーラー」ですね。
堀井氏: 「オトメディウスG」では通信プレイが荒れることがなくて、初心者っぽい動きをしているプレーヤーを見つけたら進んで助けてあげるプレイが流行ってましたね。「ああ、平和な世界だ」と思ったことがあります。
福井氏: それを1人でも自分が2Pを助けてあげたり、2Pが自分を助けたりといったところがあるといいんじゃないか、とイメージして「DUALモード」をゲームに落とし込んでいきました。実際に作業を始めてみると、「2Pを助けるのは難しくね?」ってなっていったんですが(一同笑)。現状だと難しいことでしたが、この「DUALモード」を作ったことで得られたノウハウは、今後なにかの布石になるといいかなと思っています。実際、今回実装するにあたって、究極はやはり「オトメディウスG」のような通信プレイだと思ったんですが、それってほかに遊ぶ人がいないととか、通信プレイ自体にコストがかかるといった現実面の話もあるんですよね。
――「天神怪戦」だとか、「キングスナイト」など、STGにRPG的要素を感じさせる作品はこれまでもありましたけど、その進化のひとつに思えますね。今後は2PがAIになったりしていく流れなんですかね?
福井氏:自分も元々AI化には興味がありますね。ゲームとしても、対戦相手としても、仲間としても、AIを取り入れていくのは面白いんじゃないかと思っていました。
――STGの2Pモードって、なかなかプレイする機会に恵まれないというか。家で2人で遊ぶって、年齢的なものなどいろいろあって「2Pモードあるけど、触ったことないな」っていう人は多いと思います。
堀井氏: 2Pモードの成り立ちも原作のクリエイターの方たちに聞きこんでいくと、「ゲームセンター側で2P同時プレイができないならインカムが上がらないじゃん」って言われて「付けろ」って言われちゃうことが多いという話でしたね。だからそこまで作りこめているものもあまりないという。
――1P←→2Pの交代制だったところから、2P同時プレイになってからの発展って、対戦になったりオンライン化したりという流れはありましたけれども、劇的に発展したイメージはそれまであまりなくて「オトメディウスG」はインパクトありました。
堀井氏: それにしても、「DUALモード」は君らやりすぎでしょ(笑)。「魔法大作戦」のリソースを使って別ゲーを作ってるんじゃねえよ(笑)。
長野氏: 最初このモードが動き出したとき、何が起こってるのかわからなかった(笑)。
福井氏: このモードは初期の頃に長野と相談して、しれっと作って入れてましたね。遊んでもらってブラッシュアップしていきました。
ゲームの魅力の名所ガイド!? 「ドラマチックマップガジェット」
福井氏: 今回の大きな柱のもう1つ、元のゲームのビジュアルの面白いところをM2ガジェットの「ドラマチックマップガジェット」で見せていこうというものです。マップの見せ方もいろいろもみましたよね。「大きなマップで見せていこうか?」とか、「もっと範囲を狭めてクローズアップしていったらどうか?」とか。
長野氏: あと、「高速スクロールするところをどうしよう?」とか。可変スクロールなので……いろいろ試行錯誤しましたね。そのあたりは苦肉の策でいろいろ解決しているので。
堀井氏: 見ている人が「苦肉の策だな」と思うだろうなって思いましたけど、それは意図通りです。
久保田氏: マップガジェット、何回も直しましたよね。
冬野氏: 直した直した。デザインも含めて。
長野氏: 情報初出時のモザイクがかかっていた時期からは別物になってます。
冬野氏: あの当時はどうなるかわからなかったから(笑)。
長野氏: できるかどうかわからなかったし(笑)。「これから作ります」という。
冬野氏: カードの表示もあって、物量的にも膨大なものになるのがわかっていたので、できるかどうかはわからなかったんですよ。
長野氏: 結局、敵の情報カードって何枚ぐらいになったの?
冬野氏: 100枚ぐらいですね。
福井氏: ものすごい勢いで増えていきましたからね。社内ネットワークにどんどん冬野の絵が上がってきて「おおー! すごい!」って。
――話だけ伺っていても、敵の情報をカードで表示するって割とシャレにならない仕様だと思ったんですが。
冬野氏: 最初のアイデア出しの段階で、ネタを出したときに「これは大変だから、やらないよね?」って言ったんですよ。それが通っちゃった(一同笑)。
堀井氏: 個人的にはどんどんその方向に突き進んでいっていたような気がするんだけどなあ(笑)。
冬野氏: ネタ出しの段階で工数的なものが僕の中に見えてたから、僕が死ぬことになるのはわかるじゃないですか?
長野氏: これは、冬野の原作スタッフへのリスペクト愛が作らせたものですね。
冬野氏: 「できたらいいよね」という話だったんですけど。
久保田氏: 「俺が欲しい(ガジェット)」だったってことじゃないんですか?
冬野氏: いやいやいや、それよりも「やるとなったら大変だ」が上回ってました(笑)。
堀井氏: 「バトルガレッガ」の時は冬野から「ゲームをクリアしてもらいたい」という考えからの企画が出ていたんですけども、今回はデザイナーらしい視点からの企画になっていますね。
――「バトルガレッガ」の時は機能面でのガジェットの提案でしたよね。今回はビジュアルで本作の世界を紹介していくという。画面左に並ぶガジェットは従来の機能面を重視したもので、右側はビジュアルを推すという新しいガジェットになっているんですね。
冬野氏: この画面で言うと、中央にあるのが「倒れた石像」だっていうのを横尾さんに伺ったりしましたね。
久保田氏:最初は冬野が「石柱」って書いていて、横尾さんに監修していただいたら「これは倒れた石像です」って。
福井氏: 原作スタッフの皆様から、いい話がいろいろ聞けましたね。
久保田氏: ゲーム中に登場する敵の情報を表示するということで、こちらで一度すべてまとめてピックアップして、ビジュアルを冬野にリファインしてもらったものにデータを入れていったんですね。それを原作スタッフの方々に監修していただくという工程でした。
長野氏:敵キャラとか、オブジェクトとか、細々したものをカード化していきました。
久保田氏: 「おじいさん」とかね。1面に出てくるんですよ。子供たちと一緒に敵に追われてる演出で。これも冬野がカードにする際起こしてくれました。
堀井氏: 原作スタッフが凝りに凝った演出をしていたので、「こちらも凝り返してやろう」と冬野は勝手に思っていたんじゃないかと。そうでなければこのカード化の道は突き進んでいかないんじゃないかと。
長野氏: 原作リスペクトだよね。
――しかしこのマップにしろカードにしろ、これは前2作とは違った労力がかかってますね。このビジュアルは全部描き起こしなんですか?
福井氏: 原作の企画書の段階でビジュアルとして存在していたものです。
長野氏: それを冬野がリファインしています。
久保田氏: そこになかったものも冬野が……。
冬野氏: ドット絵を基にリファインしてますね。
福井氏: 元はゲームを制作するための資料として存在していたので、鉛筆書きだったりするんですよね。
――それってゲームの攻略本を作るときに慌てて描きなおして収録されるやつですね(笑)。
久保田氏: そうですね。その資料をゲーム内に収録しちゃったと。
長野氏: 最後までプレイしていただければ、一通りコレクションできると思います。ゲーム進行で出現しない敵などはいないので。1回最後までプレイしていただければ。
久保田氏: 「SUPER EASYモード」でもプレイしていただければ解禁されますので。
冬野氏: 事情ですべて実現できなかったんですが、最初の段階では敵の攻撃などもすべてカード化しようとしていて……バシネットのビットとか……(一同笑)。
堀井氏: それって結局自分で自分の仕事を増やしてるじゃないですか(笑)。
――トレーディングカードゲームが日本でも流行った時代につながるような仕様ですね。これでカードゲームができそうな。「魔法大作戦」っていろんな要素が入ったSTGだなと改めて思わされますね。
冬野氏: リアルカードを作ってプレゼントしたらウケるんじゃないかなー。
久保田氏: そうですね。物として作りたくなっちゃうような。
冬野氏: プレイしていると表示もめまぐるしく変わるので、リプレイやギャラリーでじっくり見てもらいたいですね。最初は「ハリー・ポッター」の映画のスタッフロールで、魔法の書が自動書記みたいな動きをしたり、写真の絵が動いたりとか、紙なんだけれど動いている、というテクノロジを感じる演出を見て「『魔法大作戦』の世界だとこういう感じじゃないかな」って想像していたところから始まっているんですよ。なので、その時はもっと動的に絵が動いて変化していたりといったイメージだったんですが、「いやいやそんなことはできないから」って(笑)。
久保田氏: イメージするのはいいけど、最終的に作るのは自分になっちゃいますからね。
冬野氏: 画面中に起こる小ネタも、最初はマップ上に描きこまれていくとか……紙にダガーが刺さって……とか、いろいろネタを出したんですが、実現可能性を考えた結果、情報をカードに集約していったらいいんじゃないかと。そのカードをコレクションしてもらうのはどうか? と。そこまで落とし込んでいったんですが、それでも大変だったと(笑)。
――それでも物量がすごいことになっていったと。
長野氏: でも最後の方、自分でカードを増やしてたよね? 「これなかったんであと1枚増やせませんか?」とか(一同笑)。
冬野氏: 原作のドット絵がものすごいこだわりで作ってあるんですね。だから、原作者の皆さんに「これはなんですか?」と質問するとすぐに答えが返ってくるんですよ。4面でバシネットが出てくるシーンの背景に、宇宙ステーションみたいなものが流れてくるんですね。「あれってもしかして次のステージの舞台の工場なんですか?」って横尾さんに聞いたら、「そうです!」って即答されて(一同笑)。そういった風にだいたい理屈が通ってるんですよ。
堀井氏: よく覚えてらっしゃる。「魔法大作戦」はそこにこだわるスタッフがそろって作っていたんですよね。1作目の熱量というものもある。
冬野氏: そうですね。
長野氏: コンシューマー出身のスタッフだから、開発初期段階からそういった演出のアイデアが設計されている。そういった発想がもう根底にあるんですよ。
冬野氏: Heyのフィールドテストのニコ生を見ていると、コメントに2面の戦艦や、宇宙シーンに登場するバシネットがダズル迷彩(※)だって書かれてて。「そこカードの情報でも拾いたかったんだけどなー!」って(一同笑)。
※「ダズル迷彩」……第一次世界大戦中に艦船に多く用いられた迷彩の一種。明確な配色で塗装された複雑な幾何学模様で構成されている
――このカード自体、ゲームの中の名所ガイド状態になっているんですね。ゲームを遊んでいるときは忙しくて気づかなかったことを、こうして紹介してくださっている。
長野氏: そこを拾い上げるのが今回の冬野の仕事でしたね。
――ガジェットの効果は、今回は機能だけでなく、画面からの世界観や演出といった情報にフィーチャーしているんですね。リプレイを見るのも楽しそうだ。
長野氏: ガジェットはやはりリプレイや配信で生きるって感じなので……。
久保田氏: プレイしている間はなかなか見られないと思うので。特に画面右側のガジェットはリプレイ向きですね。マップにも注目ポイントなどを冬野が書き記してくれたので。そういうところを見ながら遊べば……。
長野氏: 余裕があれば攻略にもちゃんと役に立つ情報がマップに描きこまれてますから。
冬野氏: 「DUALモード」では役立ちますよ。
長野氏: 福井が仕込んだ隠し要素があって、それを冬野がちゃんとマップに目印を仕込んでいますから。
福井氏: これには元ネタがあって、ニンテンドーDSの「ナムコミュージアムDS」の「ゼビウス」の「プレイナビ」ですね。スペシャルフラッグやソルの位置がわかるあれです。あれをガジェットでやれるといいなと。
久保田氏: 最初は隠し要素は入れてなかったですよね。でも「覚えきれない」って言って。
長野氏: 「じゃ、マップに入れたらいいんじゃないの?」って。
堀井氏: 10代の頃なら覚えてられるかもしれないけれども。
冬野氏: でも一旦マスターアップしてから入れてましたよね(一同笑)。
堀井氏: ……というわけで、配信日のバージョンがもう1.01になっています。
長野氏:予定では次期パッチに盛り込む予定だったのですが、マスターがすんなり通ってしまったので「これはDay1パッチに盛り込みたい」ということで1.01になったと(笑)。
久保田氏: M2STGではソフトのデータサイズが1番大きくなりましたね。グラフィックスもサウンドもデータ量が多くなったので。特にアレンジの曲数が多くなったので、ギリギリ1Gぐらいです。
福井氏: 曲数が何割か増えています。
久保田氏:アレンジでも曲数が増えているっておかしいんですけれどね。
※サウンドに関する話題は後日掲載予定のインタビュー後編にてお伝えしていきます
ガジェットの顔アニメーションだけでも100枚以上描き起こし!
――ガジェットに表示されているキャラクターがアニメーションしてますが……。これは描き起こしですか?
久保田氏: 元の絵は1枚しかないです。それをうん百枚と描き起こしてアニメーションさせています。
――これは……やろうという話になったのはいつ頃なんでしょう?
福井氏: 最初の打ち合わせの時に、キャラクターを表示する案が出まして。
久保田氏: その時は「動かせたらいいね」という話で終わっていたんですが、ドット絵かつアニメーション的な動きができる方がいらっしゃいましてですね……。「ぜる太」さんという方で、「弾銃フィーバロン」のガジェット左下のサイボーグ兵士をダンスさせるアニメーションをやっていただいた方です。その方にちょっと話をしてみたら、快諾いただきまして。
福井氏: 最初は「5~6コマのアニメで表情が変わるといいね」なんて言っていたんですね。……気が付くとだんだんアニメが増えていって。
久保田氏: 「アイテムを取ったらニコっと表情が変わるぐらいでいいんじゃないかな」って言っていたはずのものが、最終的にはこうなってるんです。
――これはプログラム的な追加仕様が必要だったりしませんでした?
福井氏: 解析で得られたプレーヤーのステートをガジェットに伝えて「今この状況だよ」というのをアニメーションで表現しているという。
久保田氏: 「怒り」や「驚き」など表情パターン番号がいくつか用意できていて、それに対してガジェット側でアニメーションを呼び出していると。
――今見ているのはボーンナムのアニメーションパターンですが、多いですねー。
久保田氏: 本当に多くて、チッタはもっと多いんですよ。通常のアニメパターンだけで60コマとかあります。しかも何か口パクで喋ってる動きをしてるんですよね。
福井氏: 今回、オリジナルでアニメーションを起こしてもらいましたが、原作のデザイナーである横尾さんに監修していただいたら「もっと、はっちゃけてもいいですよ」とお言葉をいただきまして(笑)。
久保田氏:最初に提出するときはドキドキだったんですけれども。「最高です」って言っていただいたのはうれしかったですね。
福井氏: うれしかったですね。最初の頃はもっと固くやっていこうと考えていたんですが……。
久保田氏: ミヤモトだけ、専用のアニメーションがあるんですよ。ストーリー的にツムジ丸に師匠が殺されているということもあって、ツムジ丸に会ったときだけ専用のアニメーションが入るようになっているんですね。これも横尾さんに喜んでいただけました。でも、これで終わりかな……と思っていたころからチッタのアニメの枚数がさらに増えていって(笑)。
全員:(笑)。
久保田氏: 顔の下のガジェットにある敵のヒットポイントのデータ、これも大変でした。全部の敵のデータを表示するようにしているんですが……。
長野氏: 「ファイナルファイト」みたいにね。
久保田氏: 残りの体力がゲージで表示されていて、となりは敵がやられたら「×」が表示されるとか、点滅して敵の表示が消えるといったあたりはそんなイメージですね。一通りそんな話をしていて「敵の表示どうするの?」と。
福井氏: 敵の表示画像を用意しなければならないんですよ。この絵を100枚近く用意する作業が待っていたという(笑)。
久保田氏: ボスキャラの場合、本体とパーツで体力を別計算しているものがいますよね。最初は「ボスの絵だけあればいいよね」って言っていたんですが、最終的にはパーツ別に絵を用意しました。同じボスの絵なのに、本体とパーツを撃っていると体力ゲージが行ったり来たりすることになってわかりづらいということで。
福井氏: これを久保田が担当して地獄を見てました。絵をキャプチャしてレタッチして……。デザイナーの仕事じゃないですか。
久保田氏: 冬野にも手伝ってもらいました。基本、自分が絵を抜いて、それを冬野がレタッチして。ほぼ共同作業でしたね。
冬野氏: でもボスのパーツを別にしたのは知らなかった。気が付いたら増えてた。大変だったね(笑)。
久保田氏: ボスなど大きなキャラは、BGとスプライトとに分かれてたりするんですよね。福井にスプライトだけ表示するバージョンなどを作ってもらって参考にしていたんですが、パーツが重なって構成されているボスなどはガジェット表示用のパーツの絵を作るのが難しかったですね。とりあえず取り込んでから、ドットを拡大して削って修正していくという作業をいくつかやりましたね。
福井氏: そのおかげで、あの体力ゲージの横には、面白いパーツやレアな絵が出てくることも……。
長野氏: Heyでのフィールドテストの配信で盛り上がってたよ。最後のところで……(一同笑)。
久保田氏: 体力が設定されているのは敵だけじゃなくて、例えば1面の給水塔とかにも設定されているんですね。でも敵じゃないから「ENEMYじゃないよな」って……そういったものは「OBJECT」って表記したり。あとはやっぱり1番最後に体力を持っているやつがボス以外にもいるんですよね。あれを「表示したいね。面白いから」って最後の最後に入れたんですよ。フィールドテストでも盛り上がっていただけているのは入れてよかった(笑)。
福井氏: ガジェットの話で言うと、今回左側にこれまでのタイトルにない2つの新しいものが入ってます。「プレイ評価」と「ライバル一覧」ですね。
久保田氏: 「プレイ評価」は大きくステージ道中とボスキャラの2つに分かれて評価します。それぞれのシーンでプレーヤーがミス(自機を1機失う)をしたかを判断して、ノーミスでクリアすると金色のアイテムがもらえます。アイテムはキャラクター別に用意してあって、例えばボーンナムは骨集めをしている骨マニアなので、アイテムも骨ですね。
――ゲーム内でもらえる実績のコレクションって感じですね。
福井氏: もともとはアイテムをドロップさせたい、というところからスタートしています。宝箱が結構登場するゲームでもありますし。それとゲーム内実績と結び付けたら面白いかもしれないということで。
久保田氏: これはステージごと、キャラクターごと、ゲームモードごとと分かれていて、ゲームスタート時に左右にリストが表示されるようになっています。これをコンプリートするのはなかなかのやりこみになると思います。特に「アーケードモード」でガインの金色のアイテムを集めるのが手強いかと。
福井氏: でも、アイテムはコンティニューを併用してもらってでもクリアすれば全種類手に入ります。色はさておき。そして、時間をかけてプレイしていただければ、より上位の色のアイテムも手に入るようになっています。
久保田氏: 銀のアイテム5個で金のアイテム1つと交換、みたいになっています。
長野氏: チョコボールのマークじゃん!(一同笑)。
福井氏: プレイしていただければハズレはないという。最終的にはコンティニューでクリアし続けても、オール金のアイテムが手に入ります。
長野氏: うまいプレーヤーさんなら最初から金をどんどん集めることもできると。
福井氏: そうですね。これで、うまくなっていくと新しいステージでいきなり金のアイテムがもらえるようになったりするわけです。
久保田氏: 最初は銅しかもらえなかった人でも、銀になって金になって……と。
――上達を報酬という形でわかりやすく表現されているんですね。これは、PS4のトロフィーとからんでいるんですか?
久保田氏: 2つは独立した要素になっています。PSNのトロフィーの方は、これまでも「取りやすい」と好評でしたので、その路線は変えていません。実績的な話で言いますと、今回もプレイ履歴は充実していますよ。
――キャラクター同士の掛け合いを見たかどうかが記録されてますね。
久保田氏: 「DUALモード」がありますので、組み合わせ別にカウントしてます。ステージごとに掛け合いも変わりますので、かなりの組み合わせがありますね(笑)。
福井氏: 左下のもう1つの新しいガジェット「ライバル一覧」もデータ記録ネタですね。
久保田氏: これは、ミスした時、どの敵に攻撃されたのかを直近3つまで表示してくれるというものです。
福井氏: FPSで言うところのキルカメラみたいなものを3枚並べているイメージです。
久保田氏:繰り返しプレイしていたり、リプレイを見ているときにここを見てもらえば、どの敵に注意したらいいのかがわかるという。やりこんでいくと、6面のここがツムジ丸だらけになっていくんじゃないかなと(笑)。
冬野氏: なるよね。ぐるぐる回るよね(一同笑)。
久保田氏: 敵弾に当たってミスになるだけでなく、このゲームの場合壁に潰されてミスとなることもありますから、ここに表示されるものとして壁も用意してあります。壁に潰されてやられちゃったりしますからね。
福井氏: 敵の弾に当たってミスになったとき、どの敵が撃ったのかを探るための解析は大変でした。
――今回のガジェットは「見て楽しい」ものが多いですね。
福井氏: 最初はテキストを表示したりといったプランもあったんですが、それを洗練していった結果、直感的に見てわかる絵にしていこう、ということでこうなりました。
――個人的には音でもこういった仕掛けがあるといいなと。視野には限りがあるので、現状でもガジェットを見ながらプレイするのはなかなか難しいなと思いますし。ナレーションとか。
久保田氏: 「バトルガレッガ」の時から堀井が「ガジェットに音を入れたい」って言ってるんですが、それはアーケード版とは別に自分たちで作った音を出すことになるので、「アーケードモード」などで鳴らしてしまうと「違う!」って言われちゃうでしょうし。
堀井氏: 「バトルガレッガ」で勲章を落としちゃった時の音とか、欲しいじゃん!
久保田氏: テレビ番組の観客の声みたいに「ああ~」って感じですか?
――実況的な追加要素みたいな感じですかね。
福井氏: 「実況おしゃべり魔法大作戦」みたいな。「ああーここでパワーアップを取ってしまった! ランクがあがって攻撃がキツくなった」とか。
――そこまでインタラクティブなものにすると大変かと思うのですが、副音声的な、その場面ごとにオーディオコメンタリーが流れるとかも面白いですよね。
冬野氏: 外山さんにしゃべってもらうとか? 副音声モードね。
堀井氏: こうして行くと無尽蔵に仕事ができますね(笑)。俺は西住さんに「魔法大作戦、開始です!」って言われたい。
久保田氏: ボス戦で「がんばれ! がんばれ!」って……。
――「ここで上から敵が降ってくるから注意!」といったナビ的な要素でもいいですね。それにしても、順調にエムツーさんらしく「盛っていく」話ばかりになってますね(笑)。
(後編に続く)
……というわけで、前編ですでに盛りだくさん過ぎるインタビュー、近日公開の後編に続きます。お約束の「裏」モードの話や、M2STGの新情報が公開できるかも!? お楽しみに。
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