インタビュー

M2 Shot Triggers「魔法大作戦」インタビュー後編

エムツーでは“様々なプラットフォームを研究中”! 読者の皆様へのご意見募集も

配信日:11月2日

価格:3,700円(税別・ダウンロード専用ソフト)

プレイ人数:1~2人

CEROレーティング:A(全年齢対象)

 往年の名作をこだわり満載で蘇らせるエムツーのSTGブランド「M2 Shot Triggers」第3弾、プレイステーション 4用シューティング「魔法大作戦」。2P同時プレイをヒントに新たに制作された「DUAL」モードや、オーケストラサウンドを加えたアレンジ楽曲など、今作も単なる移植に留まらない盛りだくさんな仕様になっている。それでは、インタビュー後編をお届けすることにしよう。

□インタビュー前編
https://game.watch.impress.co.jp/docs/interview/1089519.html

インタビューにご参加頂いた皆様
堀井直樹氏(写真左)……有限会社エムツーの社長としておなじみ。
福井将之氏(写真中央)……追加仕様などの企画&プログラムとM2ガジェット(左側)の企画を担当。アレンジBGMのサウンドディレクションも担当している。
久保田和樹氏(写真右)……「魔法大作戦」ディレクター。今回は企画だけでなく、M2ガジェット(左側)やこまごましたビジュアルデザインも担当。
長野敦也氏(写真右)……M2 Shot Triggers シリーズディレクター。
冬野灰馬氏(写真左)……デザイナー。M2ガジェット(右側)のマップビジュアルやカードのデザインなどを主に担当。

【魔法大作戦】

 1993年にアーケードでリリースされた縦スクロールシューティングゲーム(STG)。ファンタジーとスチームパンクの要素を組み合わせ、4人のプレーヤーキャラがメカに乗り込んだり自身の体を使って敵陣に乗り込み、メカやモンスターと戦う独特の世界観、ステージの演出や大小のドットキャラクターたちの緻密な動きによりダイナミックに語られるストーリーなど、家庭用ゲーム制作の経験を経て培われたスタッフたちの熱量が反映され注目を集めた一作。エイティングの処女作であり、今回家庭用ゲーム機への初移植となる。移植版としてはX68000版とFM TOWNS版がある。

 システム的には、操作は1レバー+ショットと「超魔法ボンバー」の2ボタン。ショットはメインとサブの2種類が個別にパワーアップ、ボムはボタンを押下後にボムが炸裂してから無敵状態になるという特徴がある。ステージは6まで用意されており、2周エンドの設定となっている。

【「魔法大作戦」PV】

M2STGでもお約束になりつつある、オリジナル制作な「オープニングアニメーション」

――オープニングアニメーションも左右にオリジナルの演出が入っていますね

久保田氏:両サイドに流れるオープニングアニメーションですが、「弾銃フィーバロン」のM2ガジェットや、「セガ 3D復刻アーカイブス3」のオープニングアニメーションを担当していただいた齋藤久典さんに作っていただきました。曲の展開に合わせてアニメーションしています。

冬野氏:「僕はマップの作業でいっぱいいっぱいになるのがわかってるから齋藤さんに頼んでおいて!」ってお願いしたんです。

長野氏:基本のコンテは冬野が作ったんですけどね。

冬野氏:コンテは作ったものの、作業する時間が全く取れなくなるのがわかっていたので。あと、最後のキャラ絵は松下に書いてもらっています。

堀井氏:ボムの絨毯爆撃の演出とかもゲームのタイミングにばっちり合っていて。最初に見たときはびっくりしたんですよ。

冬野氏:オープニングアニメーションの作り込みは、「セガ 3D復刻アーカイブス」シリーズから引き続き、M2STGでもやらないわけにはいかない……となってる仕様ですね(笑)。

原作のオープニングデモに両サイドの表示領域を組み合わせているオリジナルのオープニングアニメーション

DUALコントロールと武器チェンジがキモ!? 稼げる「DUAL」モード

――DUALモードに関して、まだまだお話が伺えそうなので、お聞きしてよろしいですか?

久保田氏:「SUPER EASY」や「DUAL」モードに入っているオートボンバーについての細かい話なんですけど、オートボンバーが発動するのは“ショット中”になっています。今作は標準で秒間15発の連射設定がしてあるのですが、この連射設定はゲーム内部で秒間15回ショットを押したり離したりする処理を行なっているため、「ショットボタンを押している間だけ発動」だとゲーム内部側でショットボタンを離した処理になっている瞬間に敵や敵弾に接触するとオートボンバーが発動せずにやられてしまうんです。なので今作では受付時間にちょっとバッファを持たせて、オートボンバーがちゃんと発動するようにしてあります。

長野氏:ようするに、ショットボタンを押しながら戦っていればいいということだけ覚えていてもらえれば。

 それから、「DUAL」モードではボスや固い敵を倒すとアイテムがドロップされます。「バトルガレッガ Rev.2016」のPREMIUMモードにもありましたが、1UPする妖精が出ますね。

――コンパイルっぽい(笑)。妖精といえば「ザナック」ですよね。

福井氏:敵は全滅しませんが(笑)。1UPします。

久保田氏:「DUAL」モードでは稼ぎの要素をさらに追加しています。マップのあちこちに“隠し妖精”がいます。これが前編でお話していたマップガジェットに表示されているものですね。

 出し方は、その場所に自機なり組み合わせた2Pのキャラを一定時間重ねることで出現します。「弾銃フィーバロン」のタイムアタック出てきた“ソル的なもの”に近いですね。出現させると光る魔導書が降ってきて、それを取ると一定時間スコアが稼げる「ミラクル(miracle)」状態になります(残り時間は画面上部、スコアの下に表示される)。

 原作をプレイした方がびっくりするようなスコアの上がり方をするんですよ。ちょっと実際にプレイして解説しましょうか。

(久保田氏、「DUAL」モードの実演プレイを開始)

マップガジェットの表示を頼りに隠れ妖精を出現させると、ミラクル状態に!
隠れ妖精出現後に現われる「光る魔導書」。これを取るとスコアが一定時間稼げる「ミラクル」状態に。ステージによっては取らずにキープしてタイミングを計ることもできる

福井氏:「DUAL」モードには妖精が2種類いますね。1UPの妖精と、ミラクルに入るための隠し妖精です。

久保田氏:「ミラクル」は最初「フィーバー」って名前だったんですけど、「魔法大作戦」の世界観に合わないということで「ミラクル」という名前になりました。まさにミラクルな感じにスコアが稼げます。

堀井氏:稼げる代わりのリスクはないの?

福井氏:そうですね、「ミラクル」状態だと敵がめっちゃたくさん出ます。

久保田氏:福井がこの状態で敵がどんどん出るようにしました。早回し(敵編隊を早く撃墜することで次々と敵編隊を出現させて稼ぐ手法)ができるようにしているんですね。

福井氏:「DUAL」モードだと画面上右に「BONUS」という表示が出るのですが、敵の波(編隊)をいくつ出したかで、どんどんボーナスが加算されていくようになっています。つまり早回しすればどんどんボーナスが入ります。そして、そのボーナスは敵に撃ち込む点数に反映されるという仕組みなんです。

久保田氏:敵に1発弾を当てるごとにボーナスの点が入るので、固い敵に撃ち込めばかなりの点が入ることになりますね。

冬野氏:STAGE1で100万超えちゃう。アーケードじゃ“おかしい”スコアだよね(笑)。

長野氏:原作はクリアしても点差が大きく広がるタイプのゲームではなかったので、「DUAL」では大きく差が出るような調整にしています。

福井氏:差別化ですね。過激と言えるまで敵を出しちゃおうというコンセプトです。

長野氏:「DUAL」モードの初期のコンセプトは「魔法大戦争」だからね(一同笑)。

――なるほど。ただ、「魔法大戦争」ってフレーズを聞くと、プレーヤーキャラ4人が同時に出撃する絵も見てみたかった気がします(笑)。

福井氏:それも最初に考えていたんですけど……、基板の制約がありまして。

堀井氏:ぶっちゃけちゃうと、原作の基板のリソースにそういったものがないんですよね。

長野氏:「DUAL」モードは原作にもあった2P同時プレイのリソースをうまく使って、実現しているというものなんですよ。

福井氏:そうなんです。なので、4機出すとなるとプログラムの改修も大規模になってしまうんですね。なので今回は元からある2P同時プレイを活かすことでできる「DUAL」モードという形になりました。

 2P同時プレイから発展させたことで課題になったことに、「敵のターゲットを1Pに向けるか、2Pに向けるか」という問題がありました。原作での2P同時プレイだと、1Pと2Pに適度に敵の攻撃がばらけるようになっているんです。

 「DUAL」モードでは、それをできるだけ1Pに集中させるように変更しました。「2Pにターゲットさせてデコイのように使う」といったことも考えたのですが、このモードの場合、1Pにターゲットを集中させた方が素直に遊べるし、1Pがプレーヤーで2Pをオプション的に扱うことで面白くなるということから現在の仕様に落ち着きました。時々2Pにターゲットが行く場面もありますが、そこはぜひ攻略していただきたいですね。

2Pキャラクタの動きのタイプはオプションで組み替えることも可能だ

――「DUAL」モードのおすすめの遊び方はありますか?

福井氏:まずはガイン(FRONT)やミヤモト(HOMING)の初期設定である“2Pがオートで動く系”で遊ぶと入りやすいかなと思います。この2キャラはL1/R1のDUALコントロールを使わなくてもある程度遊べる2キャラですね。特にミヤモトの場合はサブショット切り替えも使わなくても「HOMING」とデフォルトの前方集中サブショットの組み合わせになるので、いろんな武器を使わなくても敵に密着して集中攻撃できます。稼ぎを意識していくと、DUALコントロールと武器チェンジを使っていくことになっていくと思います。

久保田氏:2Pキャラの動きとキャラの組み合わせはOPTIONで変更できますので、お気に入りのものにすることもできますよ。

福井氏:1Pキャラも移動速度の違いがありますので、どの組み合わせが最強なのか、ランキングの上位がどうなっていくのかは興味深いですね。武器の使い分けもどこで何を使うのかを考えて遊べます。サブショットの火力もこのモード用に調整してありますので、いろいろ試して探っていただければと思います。

長野氏:「バトルガレッガ Rev.2016」も今はカスタムモードでのスコアアタックがアツいんですよ。稼げるセッティングを見つけてからのランキング上位は、すごいスコアになってます。

福井氏:長く遊んでいただけて幸いです。

今回もある「裏」モード!そしてさらにスコアが伸びまくる「裏ミラクル」状態も!

久保田氏:(引き続き「DUAL」モードの実演プレイをしながら)あっ……「裏」に入っちゃった。妖精全部取っちゃいました(笑)。

――これは……。一定時間スコアが稼げる「ミラクル」の他に、さらに「裏」もあるんですね!

久保田氏:隠し妖精を全部取ると、次のステージから「裏」に入ります。そこでさらに隠し妖精を出して「ミラクル」になると「裏ミラクル」状態に! これが爆発的にスコアが上がるんですよ。

福井氏:「裏」だと、ランクゲージが100%のやばい光を放ってますね(笑)。「DUAL」モードでは敵弾の速さなどをチューニングしているんですけど、裏に入るとアーケードの2周目より難しくなる場面もあります。

 「裏」状態のリスクは、ランクが100%固定になって敵がさらにたくさん出るということですね。ただ、ランク100固定といっても、アーケード原作のランク100よりは優しいところもあるようにチューニングしてありますが。

久保田氏:今回はマップガジェットに隠し妖精の場所を書いていたりとヒントも多いので、「バトルガレッガ Rev.2016」の裏モード突入条件よりはわかりやすいかなと思いますねー。

福井氏:「裏」のままボスの体力を減らすとすごく稼げるようになるのですが、そのぶんボスの攻撃が激しくなりますね。ランク100ですから。ただ、今回の裏に関しては、プレーヤーに選択権を持ってもらえるようにということをコンセプトにしているんですよ。あまり無理して死んでしまうということも防止したい。その調整は毎回気を使っているところです。

――STGでありながらゲームプレイ中にモードが選べるようなインタラクティブなところは、個人的に気に入っているところなんです。ゲームを理解して、仕組みを理解した上で、自分で裏へと入っていける。

久保田氏:理解した上で、やるかやらないかをプレーヤーが動き方で選択できるギミックにしていますね。

福井氏:「魔法大作戦」では「裏」に入っても、オートボンバーが発動したら表に出るようになっていますので。知らずに「裏」に入っても、すぐに出られるようにもなっていますね。

――なるほど。「裏」を維持するのは大変ということですね。

福井氏:だいぶマニアックな話になりますが、「裏」を維持したい人には維持できる操作も入れてあります。

「裏」でプレイ中にミスしてオートボンバーが出ると、「裏」を維持するための操作が表示される
「裏」を維持するにはボンバーボタンを長押し。「!」マークが並んで裏が継続される

久保田氏:「裏」プレイ中でオートボンバーが発動した瞬間、画面上に「HOLD BOMBER BUTTON」と表示されるんです。そこでボンバーボタンを押しっぱなしにしてもらえれば「裏」が続くようになっています。ボンバーボタンを押しっぱなしにすると「!!!!!!!!」のように表示されますので。「裏」に入りたくないという人はそのままプレイしていれば通常になります。

福井氏:ナチュラルにプレイしていて知らずに「裏」に入っても、オートボンバーで「表」へと自然に出られる……という形になっています。プレイが上手くなっていけば「裏」で生き残る時間も増えるでしょうし、ずっと「裏」で行きたいという人がオートボンバーしちゃってもコマンドを入れれば維持できます。稼ぎを狙ってる時って凡ミスで「表」に戻っちゃうと悔しいんですよね。そこで「ボンバーストックがある限りミスしても常時ワンチャンあるよ!」というものを用意したんです。

久保田氏:前2作に比べて、稼ぎの敷居は低くなったかなと思いますよ。

福井氏:「表」と「裏」のどちらも、稼ぎ方の方針は共通するものにしてあります。裏の方が稼ぎ方が難しいという点が違いですね。

 「DUAL」モードの場合は、道中は敵を早く倒して早回しすることで新たな敵をどんどん倒してボーナスを稼いでいきます。そしてボスには「BOSS QUICK BONUS」という要素を用意しました。ボスの体力が瀕死になると画面左上に表示されるもので、この時間内は稼げるのですが、終わってしまうと一部の点が入らなくなります。時間内に倒さないと稼げなくなりますね。

久保田氏:今回はこれまでの2作と比べると、そういった要素をすべて画面に表示しているので、わかりやすくなったと思うんですよね。

長野氏:人のリソースを使って「俺ゲー」を作ってる(笑)。まぁ、面白ければいいんだけどね。

福井氏:原作のスタッフの方々にお叱りを受けるかもしれません(笑)。

――原作をちゃんと解析して、面白さの本質をつかんでから、こうしたオリジナルモードを作っているからこそ、許される部分があるんじゃないかなと。そこが大事ですよね。

福井氏:自分が大事にしているところは、原作へのリスペクトと、原作の面白さを別な方法で味わって頂くというところですね。リスペクトしつつも、違う味を出すために違う方向にしているというところがあって、そこが悩みどころでもあり、セールスポイントでもあり。素材の味も活かしてありますし、違う味でもあると。両立に毎回苦心しています。

長野氏:STGでこれだけいろんなものが詰め込まれているのってそうそうないよね。

福井氏:稼ぎにこだわるようになると複雑になっていきますね。

長野氏:普通に遊ぶだけでも楽しめるけれども、稼ぎたい人にはさらにいろいろ用意されていると。

久保田氏:システム的にはM2STGで1番複雑になっていますね。

福井氏:ただ、複雑とは言っても今作のコンセプトは「早く倒せ」が共通しています。早く倒すといいことがあって、「表」だとボムのドロップチャンスも増えます。「裏」のアイテムはランダムドロップではなく固定です。

曲数がオリジナルより増加した「オーケストラアレンジ」サウンド

【魔法大作戦 BGM比較試聴】

――サウンドの話もお伺いしたいのですが、今回は「ARCADE」、「PC Version」、「Orchestral Arrange」の3タイプが用意されていますね。

福井氏:サウンドに関して、原曲の作曲者である本山さんに曲データを提供いただきました。アレンジでも参考にさせて頂いています。このインタビュー上からもお礼申し上げたいです。

堀井氏:本山さんはいろんなゲームを手掛けられていて、「海腹川背」とか、うちでいうと「でじこミュニケーション」(発売はブロッコリー)にも関わってもらいました。

福井氏:素敵なメロディかつ個性的な音を作られる方ですね。

――なるほど。「ARCADE」サウンドは内蔵音源なんですか? それともストリーミングですか?

福井氏:内蔵音源ですね。春日がサウンドディレクションを頑張りました。「バトルガレッガ Rev.2016」の時と同じですが、あの時より苦労していましたね。サウンド制御用のZ80の解析が大変でした。BGMとSEのボリュームを付けている関係上、Z80がどう使われているのか、隅々まで解析しないといけなかったんですね。

堀井氏:そのあたりはコメントで春日に語っていただきましょうか。

【サウンド解析担当の春日達彦氏よりコメントを頂きました】

こんにちは。サウンドの春日です。

今回の「魔法大作戦」では主にサウンド系の解析を担当しました。

苦心した点としては、意外に思われるかもしれませんが BGMとSEの音量を別々に調整するしくみの実装なんです。

今回も含め、我々の手がける作品は一昔前のものが多いため、どうしても低レイヤーな作業が必要になってきます。

それはサウンド部分も同様で、それが特に顕著だったのがBGMとSEの音量だったわけです。FM音源等の1CH1音という音源では、音数をうまくやりくりする必要があるため、BGMを鳴らしているパートにSEが割り込んで入ってくることがあります。その場合、同一CHで役割の違う音が再生されることになるため、動的な音量の制御が必要になってきます。そこで必要になってくるのが、サウンドドライバが使用しているRAMのワークエリアです。サウンドドライバの多くは、曲の進行度合いや演奏情報などをRAMのワークエリアに記録しながら動作します。

従って、SEの割り込むべきCHや、SEが再生し終わった後に復帰するべき BGM のトラック情報などもワークエリアに記録されていることが多いわけです。

そこで、今回はサウンドドライバのワークエリアの情報をうまく参照することで、処理を実現しています。

ワークエリアは場所ごとに役割が違います。バイト単位の場所もあれば、ビット単位で意味を持たせている部分もあります。その意味を把握するために解析が必要になってくる、ということになります。

ゲーム本編にはあまり関わってこない部分ですが、ごはんを食べる時に成分表を見ると美味しさが増すように、実は裏で面白い仕組みが動いているんだな、と思いを馳せてもらうことで少しでも楽しく感じていただければ幸いです。

久保田氏:「PC Version」サウンドは、FM TOWNS版「魔法大作戦」の楽曲を再集録しています。

堀井氏:元はX68000版のMIDI演奏を収録したものですね。細かいところはリファインされていますが。

福井氏:懐かしい音源で鳴っていたものですね。

久保田氏:「Orchestral Arrange」サウンドは、今回は溝口哲也さんにアレンジをお願いしました。その結果……曲数がアーケードよりも何割か増えました(笑)。人選も含めてアレンジの方向性などは福井が担当しています。

堀井氏:溝口さんは「PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD」(バンダイナムコエンターテインメント)などに楽曲を提供されている方ですね。

福井氏:いろいろ溝口さんの楽曲を聴く機会がありまして、今回の「魔法大作戦」にピッタリじゃないかということで、「ぜひ」とお願いさせていただいたところ、快諾いただきました。依頼した前後に入院されたりといろいろドラマがあったんですが、無事復帰されて。それからハイペースで楽曲を作っていただきました。

久保田氏:こちらの開発ペースよりもずっと早かったです。

堀井氏:正式に「お願いします」となる前からガンガン作っていただいていたようで。

福井氏:溝口さんが参加されていたCD「Free Music Cluster Vol.3」の曲に、ファンタジーかつロックな「Leben Sie wohl...」という曲がありまして「これだ!」と。「その曲のベースコンセプトで『魔法大作戦』のアレンジも行きましょう!」とお話しました。

 曲の方向性がそこで決まったので、そこからはスムーズでしたね。オーケストラが得意でありつつ、ギターサウンドやエレクトリカルな楽曲も得意とされていて、その兼ね合いがピッタリだなと。そして何より「ゲームが大好き」で。

堀井氏:すんごいゲーム好きな方なんですよ!

福井氏:ゲーセンでバイトもされていたんじゃなかったでしたっけ。

久保田氏:溝口さんは実は、セガ3D復刻プロジェクトの「3D ファンタジーゾーンIIダブル」の「リンク・ループ・ランド」で僕とスコアを競ってたんですよ。溝口さんが弊社に打ち合わせに来社されて、初めて自分と顔合わせしたときの第一声が「クボタさん、『リンク・ループ・ランド』でなんであんなスコアが出るんですか?」でしたからね(一同笑)。いろいろご存じ頂いていたようで。

堀井氏:M2STGのサイトを作ってくださっているさとう(けいいち)さんが、「『魔法大作戦』かー。アレンジするならみなもさん(溝口氏のペンネーム)がいいなあ」って思っていたら、サイトを開けたら「みなもさんじゃん!」ってなってた(笑)。

長野氏:さとうさんは、みなもさん=溝口さんって知らなかったんだよね。サイト公開の後、溝口さんが「自分が担当しました」ってつぶやいたので「そうだったんだ!」って一致したという。

福井氏:普段はおくゆかしくTwitterでは語られている方なんですが、打ち合わせにいらして話を伺っているとアツいものを持っている方で。食事をしつつSTG談義をしたりしましたよ。

――なるほど、エムツーさんと波長の合う人なんですね。ちなみに「Orchestral Arrange」サウンドはどういった形でゲームに収録されたんですか?

福井氏:溝口さんの方でDTMで作られたものを納品していただいて、ストリーミングで流す形にしています。さすがに生ではないですが、生演奏に迫るクオリティで音を作られる方ですので。ギターにしろ、サックスにしろ、オーケストラにしろ、ゴージャスな音を作っていただきました。

 アレンジについてもいろいろと提案いただいて。「原曲のこの音をこうアレンジしようと思うんだけど、実際の生楽器で出せる音域を外れてしまう。こういうアレンジでいったらどうか?」というお話を頂いたりしましたね。こだわりのある臨場感抜群なアレンジをしていただきました。

久保田氏:すごくモチベーション高く制作を続けられていて、「ステージの展開に合わせて、曲調を変えてみたらどうでしょう?」と溝口さんから提案いただいたりしましたね。

堀井氏:そういうことを自分から提案してくださる方で。知らん間に曲数が増えてるんだよね(笑)。

溝口さんの楽曲をかねてから聴いていて「魔法大作戦」のアレンジサウンドにピッタリだと思ったという福井氏。溝口氏もまた、福井氏からの要望以上にこだわりをみせて制作されたようだ

福井氏:キャラクターセレクトとステージ6で流れる「INSPIRE」という曲があるのですが、このアレンジを最初に溝口さんに仕上げて頂いたのですが……、その時の溝口さんは「INSPIRE」をステージ6のバトルのイメージでバトル系の曲として仕上げてくれたんですよね。ただ、キャラクターセレクト時にも使う曲だったので実際にそっちでもそのアレンジを流してみると「キャラクターセレクト用のアレンジも欲しいな」って思えて。

 それで「別のアレンジも作ってもらえないでしょうか? 遊園地に行って『これからどんなアトラクションに乗ろうか?』というような、わくわく感のある曲を……」みたいなお願いをして。

 それから数日のうちにそのアレンジが上がってきて。わくわくする感じのキャラクターセレクト曲になったんですよ!

長野氏:こういったステージとかボスなどのバリエーションが違うものを用意してくださった関係で、曲数が増えているんです。

福井氏:溝口さんは途中からノリノリでどんどん曲を増やしていったんですけれども、曲が増えたことで自分の作業量が増えたことにめっちゃ青ざめたとおっしゃってましたけどね。

――溝口さんもエムツーさんのノリになっちゃってますねー。

福井氏:そうですね(笑)。

長野氏:でも結構、自分から飛び込んでいったよ!?

全員:(笑)。

久保田氏:それで……最終的に「ARCADE」は16曲なのですが、「Orchestral Arrange」は28曲に……。

――倍近い増えっぷり(笑)。

長野氏:それが、どこでどう流れているのかはプレイして頂ければ。

堀井氏:Heyでのフィールドテストでプレイされた方も「Orchestral Arrange」に関してもつぶやいてくださっていて。ありがたいです。

長野氏:PVも「Orchestral Arrange」にしたんですが、おおむね皆さんに気に入って頂けたようで、安心しました。

福井氏:アレンジの方向性としては、アーケードの良さを活かしつつ、別方向に……原曲をリスペクトしつつ、新たな切り口で出していきたいというところがありました。そういう意味でも音楽のジャンルをガラッと変えています。原曲はロックやポップス、プログレ的な方向だと思うのですが、アレンジではオケ+ロック、オケ+エレクトリックみたいなところがあります。

 やっぱり「魔法大作戦」の魔法=ファンタジーのイメージからオーケストラを入れたかった。原作がファンタジーとスチームパンクの融合なので、アレンジするなら魔法=ファンタジーのイメージを強くしていくと面白いのかなと。スチームパンクの方はギターやシンセなどでカラーを出していこうということですね。

堀井氏:今回はやりたいことがはっきりしてましたからね。だからこそ溝口さんじゃなきゃいやだと言うし、溝口さんもそれに乗ってくれて。あとは二人三脚でどこまでも走っていくという。姿が見えなくなるまで(笑)。

長野氏:納品まですごく早かったよね。

福井氏:「今苦戦しています」ってメールが来るんですけれども、なぜか納期に間に合ってるんですよ。例えばステージ5の曲なんですけれども、原曲がひょうひょうとした曲なんですよね。そのままオケに落とし込むのはすごく難しくて、ディレクションとして「むしろアツいアレンジで行ってみよう」と。元の音符は活かすけれども、サウンドの雰囲気としてはアツい方向にすると。ステージ5はゲーム内容的に「敵の兵器工場で大暴れ」、「敵の兵器をぶっ壊してぶっ壊しまくれ!」という感じなので、わりと熱血なイメージも合うと思うんです。

 そこで、静かに始まるけど最終的にめちゃくちゃに盛り上がるという展開で行こうという相談をしましたね。そういった意味で、いろいろ揉んでいった結果、作業量が増えたという意味で苦戦はされていましたけれど、やりがいにつながっていたのかもしれません。

【「Orchestral Arrange」を手がけた溝口哲也氏よりコメント頂きました】

初めまして、今回『魔法大作戦』でBGMのアレンジを担当させていただきました溝口と申します。

普段、18歳以上の皆様に向けたテキストアドベンチャーゲームでの作曲や編曲のお仕事ばかりしているので、シューティングゲームのお仕事をご依頼いただくのは初めての経験でした。

子供の頃からゲームとゲーム音楽が3度の食事より好きな人間でしたので、そんな私が、かつて学生の頃にゲーセンで稼働していたゲームの移植に関わらせていただく、ましてその音楽のアレンジのご依頼をいただくというのは、遠くに感じていた世界がある日いきなりすぐ隣にやってきたような信じられないような感覚でした。と同時に、今までの音楽制作とは違う意味での緊張を感じ、かなりの覚悟を決めてお引き受けいたしました。

今回まず最初にエムツー福井さんから、オーケストラ的なアコースティック楽器メインの音楽という提案がされました。私は普段の同人等の創作ではオーケストラ風のアレンジをする事が多いのですが、商業作品でも時々その方向で作っておりまして、そんな過去の作品の1曲を福井さんはとても気に入って下さいました。その作品の作風が上記のような方向性で、「あの曲のような感じでお願いできますか」という風な発端でした。

ただ、引き受けてから暫く原曲を聴きながらアレンジの構想を練っていましたが、原曲の作風はどちらかというとバンドサウンド寄りな感じだったのでオーケストラ風だともしかしたらかなり原曲から離れるのではと心配になり、その辺をもう1度福井さんと相談しました。結果「オーケストラを基調に、場面の変化で柔軟な方向性で」となりました。
純粋なオーケストラではなくギターやシンセが鳴っていたり、4面でサックスが入ったりするのもこのためです。

方向性の決定の時に最後に福井さんから「結果的にオケ以外になっても良いです、信頼して依頼しましたので」というお言葉を頂いた時は感激しました、こうなったら全身全霊で頑張ろうという気になりました。

今回、最も苦労したのは原曲の長さと速度、細かく言うと「ステージの長さに合わせた原曲の長さと速度」でしょうか。

実は、今回のこだわりと苦労した点ですが、この2つが同じ箇所でして、「苦労したところを乗り越えたら、そのままこだわりになった」という感じでした。

オ―ケストラ風のアレンジですから当然、原曲と曲調が大きく変わる事になります。
ところが「魔法大作戦」というゲームは最初に予想していた以上に、原曲の速度や長さがゲームの進行速度に沿っていて原曲を大きく変更するとおかしなことになる、という難問がいきなり現われました。

サントラで曲だけを聴いているとちょっとわかりにくいですが、実際にゲームを遊びながら曲を聴いていると、曲のタイミングや長さがゲーム画面の流れに綺麗に合わせてある曲がほとんどだったと気付かされました。

タイトル曲などは絵の変化に合わせてありますし、1面はパッと聴くと普通にループしているだけに聴こえますが実は曲が2周したらボス出現という長さにしてあったり、とにかく曲の速度や長さが原曲と変えにくくなっています。

それなら曲の速度や長さなど一切変えずにオーケストラ風にすれば良いのでは? と思われそうですが、実はそう簡単に楽器だけ置き換える事はできないんです。

ちょっとマニアックな話になってしまって恐縮ですが、オーケストラのようなアコースティック楽器というのはソフトウェア音源であっても生楽器であっても、電子楽器に比べると音のオンオフが遅い楽器ばかりなんです。どれだけ頑張って立ち上がりの速い音を出しても、電子楽器のように音の立ち上がりを垂直にする事はできません。また同様に、演奏自体をピタっと止めても楽器の音がすぐにオフになって綺麗に消えるわけではありません。

……まぁどちらもサンプラーを使えばできますが、それはまた別の話でして。

そんなわけで「オケ風のアレンジで」という前提でオケ楽器をメインに使ってアレンジする以上、速すぎる曲は少し速度を落とさないと、全体的に輪郭のぼやけたキレの悪い曲になってしまいます。しかし先ほど述べました通り、今回は原曲の速度を変えない方がゲームとして当て嵌まる、と。これは本当に悩みました。ハッキリ言うと製作期間の最初から最後まで、この点は悩みの種として存在し続けました。

身も蓋も無い言い方をすると、つまりは全曲苦労したという事になってしまいます。

逆に、こうして苦労した点を全て、ありとあらゆる手段を使ってゲーム内に破綻なく収めた今回の編曲の全てが、最初に申しましたようにそのまま今回の私にとっての「こだわり」にもなっています。

細かいジングルなども含めた全曲にわたり、ストップウォッチを片手にゲーム画面を見ながら、背景やボスまでのタイミング、ステージの長さなどをメモしつつ編曲していきました。

「何秒まで遅くできる」、「何秒以降ワーニング。曲が最後まで鳴らない」、「削りすぎ。背景の変化に合わない」等々。

ステージによっては後半のわずか数秒の曲の長さを変える為に、曲全体をアレンジし直した、なんて曲もあります。

他にも最初からステージ長を無視してまず原曲を思うようにアレンジし、その後に、福井さんと相談してどの部分を削ってゲーム内に収めるかを決めて、後からゲームバージョンとしてもう1度作り直した物もあります。

その一部はゲーム中のサウンドモードで聴いていただけますので、フルバージョンと聴き比べながらゲーム内ではどこが削られたのか確認していただくのも楽しいかもですね。

取り止めなくなってきましたので、最後に今回のアレンジに対する感想を……。

外注で音楽制作を請けるようになってから今まで多くのお仕事をさせていただいてまいりましたが、これほどまでゲームの仕様の部分にまで密接に関わらせていただいたのは初めてのことでした。

またこれら細かい調整の多くは、大体は私から「こうしたいのですが!」とワガママを言った結果でした。にも拘わらずこんな面倒な提案に、快く具体的な実装に向けて相談に乗って下さったエムツーの皆様には本当に感謝しかありません。

そんな風に出来上がった「魔法大作戦」のアレンジバージョンです。私の力で期間内にできる事は全て盛り込みました。

どうかオリジナルの音楽ともどもご愛聴いただけましたらと思います。

初の試み! 「イラストコンテスト」の作品も収録

――今回、ユーザーの方々からイラストを募集する施策をコンテストという形で行なっていましたが、これも企画の早い段階から出てきたんでしょうか?

長野氏:夏前のアイデア出しの時に「何か新しい試みをやろう」ということで出てきたアイデアですね。

久保田氏:冬野か松下(佳靖氏)のアイデアでしたね。

堀井氏:CEROのチェックを通したあとにコンテストの絵を組み込んで……規定外のものがあったらレーティングを変えなきゃならないですからね(笑)。なんとかなったからいいけど。「やろう」って決まったのはいいけど、それ以外はその時何も考えてなかったんですから。どんなイラストが来るかわからなかったのに。

福井氏:その結果、一部の受賞者の方にレーティングに合わせた絵を再提出していただくことになりました。お手数をおかけしました。

久保田氏:大賞はじめ入選作はもちろん、ご応募いただいたイラストはすべてゲーム内のギャラリーに収録されていますので、ぜひご覧ください。

作っていくことでわかった「魔法大作戦」の凄さ

――今回も盛りだくさんなエピソードの数々をお話頂いて、ありがとうございます。ゲームの方も盛り盛りな仕様になってますね。

福井氏:うちはみんな、ブレーキを掛けたり掛けなかったりするところがあるんですよね。

堀井氏:各人、自分にとって譲れないところはブレーキをかけないだよねー。

全員:(笑)。

冬野氏:最初の方は、「『魔法大作戦』はいいゲームなんだけど、押しがちょっと弱いよね」って話をしてたんです。

 稼ぎの要素もそこまで強くないし、ビジュアルも含めすごく緻密に作られているけれども、派手ではないなと。全体的に優等生というか、うまくまとまっているんだけれども、「これをどうやって押し出して行ったら皆さんに喜んでもらえるだろう?」という話をすごくしましたよね。

 結果、途中から素材の良さが出てきたので、PS4版は徐々にオーバーキル気味になってきた感じがあります。最初は、もっと盛らないと過去作(『バトルガレッガ Rev.2016』や『弾銃フィーバロン』)に比べて派手さが足りないんじゃないか? というところから始まっている。だけど、やっていったら「魔法大作戦」のポテンシャルもすごく高いことがわかっていったので、だんだんやり過ぎな感じになっていったのかなと。

――「魔法大作戦」のすごさは、あの当時であの人数で作られていたということなど、いろいろなところに滲み出ていますよね。PS4への移植に当たってエムツーの皆さんがそれに触れて、それをさらにパワーアップしている感じはすごく伝わってきました。

長野氏:「8畳の部屋で4人で作っていた」という。すごく少ないですよね。

堀井氏:僕らがこうしてリリースすると、当時の開発者の皆さんがTwitterにこぼれ話を書いてくださったりしているんですよ。

福井氏:企画のバックボーンに面白いエピソードがたくさんある方々なんですよね。「魔法大作戦」の場合、TRPGのいろんなところを吸収してこのゲームに昇華しているとか。そういう内に秘められた熱量をさらに今回で表に見せていきたい、という強い思いがありました。バックボーンの深さがとてもポテンシャルを持っている作品になっていて、今回の作業でそれをどんどん暴いた結果、どんどんオーバーキルな作業になっていったという話で(笑)。

冬野氏:スコアラーさんにヒアリングした時の話なのですが、全国1位のスコアラーさんたちとコンタクトが取れたので、集まって頂いてファミレスで「『魔法大作戦』のよかったところ」をヒアリングさせて頂いたんですよ。

 そうしたら、「絵と曲の雰囲気が好きで遊んでいた」という話がすごく印象に残って……。バックボーンの良さが、刺さる人にはきちんと刺さっていたんだなと。そこから、今回は素直にそこをプッシュしていけばいいんじゃないかと思いました。

久保田氏:その結果できあがったのが今回のPS4版です。オーバーキルですけどね(笑)。

長野氏:遊びやすい作品だと思います。ランクシステムもありますが、「バトルガレッガ」ほどランクを気にしなくてもいいですし。1周目はあくまで目安ですね。

福井氏:細かい話ですけど、2周目はランク調整したほうがいいですね。パワーアップを控えめにして、ボスのランクを下げめに進めるという攻略法があります。

久保田氏:メインショットのランクをMAXにしないようにするという。

福井氏:MAXにするとランクが上がっちゃいますからね。

長野氏:5で止めてたね。

久保田氏:5で止めるのと6以上に上げるのでは相当ランクが変わっちゃいますからね。

福井氏:ランクを上げすぎると、2周目のステージ2のボスの攻撃がやばいことになるので(笑)。今作のランクグラフガジェットは、2周目の攻略に役立てて頂けるといいかもしれません。

久保田氏:これまではプレーヤーさんも肌感覚でランク調整されていたと思いますが、このランクグラフで明らかになったので、参考にして頂ければ嬉しいです。

福井氏:ランク周りのこぼれ話をすると、「魔法大作戦」ってDIPスイッチでEASYを選ぶとランクがかなり下がるんですね。ゲームセンターというロケーションに設置されることを考えると、かなりランクを下げた調整があるのはちょっと面白かったですね。コンシューマー開発からアーケードへ挑戦した初めてのタイトルだったからかもしれませんが、「DIPで難易度設定を下げたら、本当に簡単にしてしまっていいんじゃないか」というポリシーがあったのかもしれません。

久保田氏:「バトルガレッガ」なんてDIPでEASYにしても「どこがEASYなんだ?」って難易度ですからね。

長野氏:ランクゼロでも難しかったもんね。

堀井氏:「バトルガレッガ」の時は、最初「ランクをゼロにしたらなんとかなるだろう」って思ってたのに、そんなことは全くなかったもんね。

久保田氏:それと比べると、「魔法大作戦」はランクがゼロになると本当に楽に遊べます。

堀井氏:そこはそれぞれのプログラマーさんの考え方の違いなんだろうね。

――本来あるべき数値イメージで設計されたというか……。ただ、当時のアーケード的にはそこまでの低難易度は必要なかったかもしれないですよね。

長野氏:オペレーターからすれば誰でも長時間プレイできる難易度なので、「なんてものを用意してくれたんだ!」となる(笑)。コンシューマー的な感覚だよね。

堀井氏:当時だと、それまではだいたいアーケードからコンシューマーに移って……という方が多かったと思いますが、原作スタッフの方たちは逆にパソコンからコンシューマー、そしてアーケードという流れですからね。珍しかったんじゃないかな。

長野氏:順当に上がってきている。それまで積み上げてきたものが受け継がれている。

福井氏:パソコン時代のノウハウ、コンシューマー時代のノウハウがアーケードで活きているというところはあると思いますね。

堀井氏:個人的に、原作のスタッフの方たちは“ゲーム好きがゲーム制作にプロとして参加した世代”だと思っているんだよね。その作りこみが「魔法大作戦」に反映されているというのはすごく納得がいくんですよ。こだわってマニアックで……というところが。

長野氏:まあ、当人がいないところで勝手に言ってますけど(一同笑)。

全員:(笑)。

これからのエムツー、今後のM2 Shot Triggersは?

――M2STGはエムツーさんで脈々と受け継がれている「どんどん仕様を盛る方向」になってますね。

堀井氏:そうなんですよね。作業フローが洗練されてきているので、そのぶん仕様を盛ることができるようになってきてます。だから最近、長野に話をしたんですが、「『バトルガレッガ Rev.2016』を持っているお客さんが『魔法大作戦』を買っていただいたら、『バトルガレッガ』で『魔法大作戦』のキャラを使ってプレイしたら、掛け合いが表示されるようにしたらどう?」っていう話をしていたぐらいなんですよ。

――それはシリーズを買っている人からしたら嬉しいですよね。

堀井氏:ですよね! でも、「誰も望んでねーよ!」って即座に却下されました(笑)。

――うーん、残念。そういう展開は、SEGA AGES 2500シリーズ(複数のタイトルのサウンドを再生できる「SST」というサウンド再生機能がおまけで楽しめた)とか、「セガ 3D復刻アーカイブス」のおまけタイトルとかを思い出しますね。リリースされた後からもそういうことができちゃうんですよね。ダウンロードタイトルだから。

堀井氏:無限に仕事ができてしまうという。

――こうしてオリジナルモードも作りこめるようになってくると、どこかでM2STGオールスターズみたいなゲームも見てみたくなります

久保田氏:原作のゲーム会社がバラバラということがやはりネックになりますかね……。

――M2STGタイトルを複数買うと遊べるおまけモードとか。キャラバンゲームモードみたいな。

堀井氏:M2STGの横につなぐようなものが欲しいなとは考えているんですよ。作る人がいないだけで。模索はしています。模索は。

――M2STGとしては、現在「ケツイ」と「フィーバロン学園」の2タイトルが発表済みですが、こちらの進行具合はいかがでしょうか?

長野氏:「ケツイ」はこれから本格的に取り掛かるという感じですね。福井が入れ込んでいるゲームなので、どれだけ時間を費やせるか、という感じですね。

堀井氏:「フィーバロン学園」はノベルゲームということで、松下が担当しています。開発はかなり進んでいて、弊社のE-moteを活用していて、すごいことになっていますよ。

 ちなみに、そのほかにも研究しているものとかもあります。ご覧になりますか?

――ぜひ、お願いいたします。

※編集部注:写真は、M2がいろいろなタイトルやプラットフォームを研究中であることを伝えるものであり、リリース予定等は一切決まっていないものです。画面等にはモザイク処理をしています

堀井氏:どれもあくまで研究中のものなので、画面を直接お見せすることもできないのですが。リリース予定とかも全くお伝えできないものなので、インタビューをご覧の皆様には、くれぐれも過剰な期待をなされませんよう、ご理解頂きたいです。

 結局、世に出ないままになる可能性もかなりあり得るものですから!

――これまでもいろいろと話に出てきたエムツー内部で研究中というものですね。今日は特別にいくつか見せて頂きましたが、意外なタイトルも含め、いろいろと研究されているのがわかりました。ありがとうございます。

堀井氏:いろいろと実現できるようがんばっています……というのが伝われば。

 それで、そのなかでも具体的にお話したいのがこちら。ニンテンドー3DSなんですけど、「アレスタ」を立体視に対応させたものを作っているんです。

 ベースとなっているのはセガ・マークIII版なんですが、それを立体視化してます。作りながら、元がそこまで立体視に対応できる作りになっていないので、パレットを増やして背景を新たに立体化して……なんて話をしている最中です。

テスト中というニンテンドー3DS「アレスタ」。エムツーが注力してきた3D立体視の技術で遊べるハードと言えば3DSなわけだが、この方向の展開にまだ需要はあるのかを、読者の皆様に聞きたいとのことだ

長野氏:また怪しいハードが作られるという……(笑)。

冬野氏:新規で「アレスタ」のイラストとか描きたいですね。

堀井氏:立体化を担当しているのは、「3D ガンスターヒーローズ」や「3D復刻アーカイブス3」の「サンダーフォースIII」などを手掛けた澤井(寛之氏)です。立体視に関してはまだまだこれから作業するところが多いのですが。

――これは……この時点でもSTAGE1から手が入ってますね。マークIIIの立体視化って想像していたんですが、それ以上にもうなってませんか?

堀井氏:さらにこれから、こってりと立体化していく予定です。この記事を読まれた方にお伺いしたいのですが、やっぱり皆さん遊びたいでしょうか?M2ショットトリガーズTwitter公式アカウントあてにご意見を頂けると助かります。

 それ以外にも、「バトルガレッガ Rev.2016」もXbox One版をリリースできましたので、今後も僕らが手の届く範囲でいろんなハードで少しずつ、いろんなタイトルを遊べる状況にしていきたいと考えています。海外からも要望が届いていますので、北米以外の地域にもお届けできるようにしたいなと。

長野氏:アーケードSTGの移植タイトルも候補はいくつも挙がっているんですよ。その中で話がまとまったものからリリースできるようになると思います。パソコンのタイトルからもリリースしたいものもありますし。ぜひ続報をお待ちください。

――長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。