【特別企画】
開幕直前の「第3回全国高校eスポーツ選手権」決勝大会。「League of Legends」部門の決勝進出チームと見どころを紹介!
168チームの頂点が決まる。プロ顔負けのプレイに期待
2021年3月12日 00:00
- 【第3回全国高校eスポーツ選手権】
- 3月13日(「ロケットリーグ」部門決勝)
- 3月14日(「リーグ・オブ・レジェンド」部門決勝)
一般社団法人全国高等学校eスポーツ連盟と毎日新聞社が主催する「第3回全国高校eスポーツ選手権」の決勝戦の開催が目前に迫っている。本大会の競技種目は2種で、「ロケットリーグ」部門の決勝戦が3月13日に、「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド。以下、LoL)」部門の決勝戦が3月14日に開催される。
「LoL」部門では全国から168もの高校生チームが参加して予選を争い、勝ち残ったチームが決勝大会で激突する。決勝大会には進出するのは「N高等学校『KDG N1』(沖縄県)」、「N高等学校『Team No Plan』(沖縄県)」「アートカレッジ神戸『アートカレッジ神戸 A』(兵庫県)」、「ルネサンス高校『野菜鶏レモン味』(東京都)」の4チーム。どのチームも確かな実力を有しているだけでなく、そのチーム固有のカラーも確立している。
「LoL」はライアットゲームズが運営する、世界で最もプレイ人口の多いオンラインゲーム。MOBAという戦略性の高いジャンルだということに加え、5vs5のチーム戦ということもあり、選手間での連携や、事前にどれだけ作戦を練ってこられるか等が重要となる。特に本大会では、プロシーンとは違ってチーム内でも実力の異なる選手達が参加するということもあり、高校生ならではの戦略や試合の中での連携が見どころだ。
特に決勝大会では、各チームにプロ顔負けのプレイをするエースプレーヤーや、実際にプロチームに練習生として参加している選手が所属している。彼らを中心としながらも、チームとしてどのようにゲームを動かしていくのかが注目のポイントとなる。
本稿では決勝を争う4校の紹介に加え、本大会の見どころも紹介していく。なお、本誌では予選での試合の模様やチームインタビューも掲載している。そちらも目を通すことで、より深く本大会を楽しむことができるはずだ。また、「LoL」のゲームの流れは、公式がわかりやすく紹介する動画を公開しているので、是非視聴して欲しい。
【第3回全国高校eスポーツ選手権 配信チャンネル】
Twitchにて配信
https://twitter.com/ajhs_esports
ペリスコープにて配信
https://twitter.com/ajhs_esports
毎日新聞デジタル
https://mainichi.jp/ajhs-esports/
勝利の鍵は”メタ”に対応できるか否か
第3回大会ということもあって、予選決勝の時点でプロ顔負けのハイレベルな個人技や連携が見られていただけに、決勝大会での各チームのプレイにはかなり期待がかかる。予選を見ていて感じたのは、どのチームも、そのパッチで強力なチャンピオンを中心にピックしていたことだ。勿論、各選手が得意とするチャンピオンも選択されてはいたが、それもメタ(その時々で強いとされる戦略、選択)から外れたものではなかった印象だ。プロシーンで使用されるようなチャンピオンを高いレベルで使いこなしていることは、本大会のレベルが上がっていることを示しているのではないだろうか。
決勝大会で使用されるのは現行パッチ(11.5)。プロシーンでは旧パッチが使用されていることもあり、最新版での調整を加味した明確なメタは不明だ。とはいえ、予選と同じく決勝大会でも、国内プロリーグ「LJL」でもお馴染みの実況のeyes(アイズ)さんと、解説者のRevol(レボル)さんが登壇。アナリストには元プロ選手で高校生シーンにも詳しいiSeNN(アイセン)さんを招いている。現行パッチのメタや、試合内容をわかりやすく伝えてくれるはずだ。
旧パッチで強力で、本大会でもピックされる可能性があるチャンプとしては、足の速いジャングラ―である「ウディア」と「へカリム」が注目株。ジャングラーはチームの柱ともいえる存在なので、強力なこの2体のチャンピオンをピックするか、それともバン(使用不可)にするのかでチームの戦略が分かれてくる。ジャングラーでは他にも、集団戦で絶大な影響力を持つアルティメットスキルが特徴の「リリア」や、キャリー能力の高い「カーサス」等も強力なピックとなっている。
また、Botレーンでは強力なキャリーチャンプである「カイサ」とカウンターの「ザヤ」に加え、「トリスターナ」や「ジンクス」といった育てば一人で集団戦を決めることが可能なキャリーもメタになりつつあるほか、「シヴィア」や「ヴァルス」といった脅威アイテムを積みレーン線の勝利から試合を壊していくチャンプに加え、サポートアイテムを持った「セナ」と、相性のいい「タムケンチ」や「セラフィーン」といったチャンピオンを組み合わせた搦手的なピックもメタになっており、混沌とした状態にある。高校生たちがBotでどのような戦略をとるかは注目だ。
また、予選では新チャンプということもあってピック出来なかった「レル」や、実装されていなかった「ヴィエゴ」も決勝ではピックすることができる。「レル」はプロシーンでも登場している強力なサポートで、「カイサ」とのスキル相性が抜群。一方の「ヴィエゴ」は一度育てば手が付けられない代わりに、使いこなす難易度が高く、装備依存度が高いアサシンチャンプ。高校生大会ではプロシーンでは中々見られないアサシン系のチャンピオンがピックされることもあり、「ヴィエゴ」が登場する可能性も充分にある。
予選が「LoL」においてシーズン前の調整期間で極めて環境が変わりやすいプレシーズン中に行なわれ、メタがまだ決まり切っていなかったのに対し、決勝大会はメタがある程度は固まっている状態。だからこそ、どれだけメタを理解し、対応できるかが勝負を分けることになるだろう。メタに合わせたピックをするのか、それとも高校生ならではのメタ外のピックで裏をかくのか、各チームの戦略に注目だ。
なお、どのチャンピオンが強力なのか・どんなアイテムを装備しているかをチェックしておくと観戦をより楽しむことができる。チャンピオン毎の勝率やビルド(アイテムのチョイスや購入順など)を調べるなら、「OP.GG」などが「LoL」においてはメジャーなサイトとなっている。こうしたサイトを参考にしながら、観戦するといいだろう。
168チームの頂点にたつのはどのチームか
決勝まで残った4チームは、前回優勝のN高等学校「KDG N1」を筆頭に、ハイレベルな試合を勝ち抜いてきたチームばかり。予選の時点で、前回大会決勝レベルの試合が行なわれていた。
168チームが参加した熾烈な戦いを勝ち残り、中には決勝への進出が有力だった強豪チームを破ってきたチームもある。どこが優勝するかは全くわからない状態だ。以下では、決勝を争うチームを紹介していく。観戦の参考にしていただければ幸いだ。
N高等学校「KDG N1」
沖縄県のN高等学校からは決勝に「KDG N1」と「Team No Plan」の2チームが参加し、1回戦でぶつかることになる。
「KDG N1」は前回の全国高校eスポーツ選手権に加え、「STAGE:0」でもでも2019、2020共に連覇している「KDG N1」は本大会でも優勝筆頭候補のチーム。予選では圧倒的な実力を見せつけ、序盤から高い個人技と連携で有利を広げていき、僅か20分前後で試合を畳みきっていた。
チームの中でもまりも選手は「DetonatioN FocusMe」にサブADCとして所属、チームの紅一点であるShakeSpeare選手は「Rascal Jester」に練習生として所属していることもあり、注目されている選手だが、他の選手も極めて高いレベルのプレイができるチーム。どのプレーヤーからでもキャリーできるポテンシャルを秘めている。特にハイレベルな試合になるほどMidとジャングルの連携が重要になってくることもあり、ジャングルのぷりも選手とMidのrre選手の動きにも期待がかかる。
N高等学校「Team No Plan」
同じくN高の「Team No Plan」は、KDG N1とは打って変わって今年結成したばかりの新しいチーム。とはいえ、予選ではプロ選手も輩出している注目高校の岡山共生や、前回の準優勝チーム、クラーク記念国際「Yuki飯食べ隊」を破っていおり、実力は本物。高い個人技を持つTopのKαine選手とMidのけいぜる選手を軸に、圧倒的なフィジカルで予選を勝ち上がってきた。
そんなチームを支えているのがジャングラーのCalamitγ選手。前大会では横浜市立南「The Grateful Feed」の一員として参加し、N高に転入して本大会に出場している。前大会では「KDG N1」に敗北、終了後のインタビューでは悔しさを滲ませていただけに、リベンジへの思いも強いだろう。
「KDG N1」と「Team No Plan」は同校対決というだけあってお互いの手の内はわかっているはず。「だからこそ」の秘策があるのかも注目だ。
アートカレッジ神戸「アートカレッジ神戸 A」
N高同士の対決の反対側のブロックでは、アートカレッジ神戸「アートカレッジ神戸 A」とルネサンス高校「野菜鶏レモン味」が対決。どちらも「部活」としてではなく、「学科」としてeスポーツに取り組んでいる高校という共通点がある。
「アートカレッジ神戸 A」は授業で「LoL」をプレイするだけでなく、運営母体が同じ神戸学園であることから、昨年のプロリーグ優勝チーム「V3 Esports」の指導を直接受けてきたチームで、超攻撃的なプレイスタイルが特徴。予選ではデスを恐れずにキルを取りに行くプレイで決勝まで勝ち進んできた。
注目選手は攻撃の中心人物となっていたサポートのJeanne d Arc選手。予選決勝では「レオナ」を使用し、攻めの起点となっていた。キャリープレーヤーであるADCのkaeto選手の集団戦での活躍にも期待がかかる。
本誌ではアートカレッジ神戸へのインタビューも実施しているので、是非目を通してほしい。
ルネサンス高校「野菜鶏レモン味」
一方のルネサンス高校「野菜鶏レモン味」はeスポーツコースのメンバーで結成されたチーム。彼らも学校外での練習に加え、授業でも練習を行なってきたチーム。予選決勝ではリスクの少ない、冷静な判断でオブジェクト周りの駆け引きを有利に進めて勝利していた。
注目したいのはジャングルのAkagi選手とMidのごっとふぃすと選手の連携。特にオブジェクトの獲得にはジャングラーの存在が欠かせないので、Akagi選手には注目だ。また、チームに所属する3名が高校最後の大会ということで、 後輩の見本になるような戦いを見せたいと意気込みを語っていた。
未来の「LoL」シーンを担う超高校級選手たちの活躍に期待!
4チームを紹介して感じたのが、高校生LoLシーンが一段上のレベルに進化していることだ。筆者は本大会の予選の記事では、「通信制と全日制の対決」を注目ポイントとして挙げたが、決勝大会に駒を進めたチームの中には部活としてeスポーツに取り組んでいる全日制高校のチームは存在しない。N高校とルネサンス高校は通信制で、ルネサンス高校とアートカレッジ神戸はeスポーツコースとして授業でもゲームをプレイしている。また、N高にもプロチーム所属の選手がいるだけでなく、部活動の中で「プロゲーマーを中心とした特別顧問」から指導を受けられるようだ。
ここまで指導や練習の質が高い学校が登場すると、全日制で普通課程のチームが結果を残すことは難しくなってくるだろう。実際、指導体制の整った高校からいくつもチームが参加し、そうしたチームが予選を勝ち進んでいったことからも、「普通の部活」レベルでは活躍が難しくなりつつあるのは間違いない。
それには少し寂しさも感じるが、今後のeスポーツシーンの発展には若手選手の育成が重要であり、それ故高校生シーンのレベルも上昇していくことが望まれるの事実。そう考えると、今回決勝を争うチームは、野球でいう(PL学園のような)甲子園常連の強豪校のような存在ともいえるだろう。
特に「LoL」では国内2部リーグ制度が廃止されたこともあり、新たな才能の発見や若手の育成の場が必要との声もあった。高校生「LoL」シーンが、そうしたeスポーツの未来を担う選手を育てる現場になっていくのかもしれない。そう考えると本大会は未来のプロ選手の活躍を一足先にチェックできる舞台となってくるのかもしれない。各チームのエースプレーヤーのプロレベルの個人技にはより期待して観戦したい。
決勝大会は3月14日11時より行なわれる予定。予選と同じくTwitchとペリスコープにて配信されるので、高校生の熱い戦いの行く末を、その目で見届けてほしい。