【特別企画】
第3回全国高校eスポーツ選手権、「LoL」部門決勝戦直前インタビュー
「LJL2020」覇者 V3 Esportsの息吹宿るアートカレッジ神戸! 次なる常勝校の誕生なるか!?
2021年3月12日 00:00
- 【第3回全国高校eスポーツ選手権】
- 決勝:2021年3月13日、14日
3月13日と14日の開催が迫ってきた高校生のeスポーツ大会「第3回全国高校eスポーツ選手権」の決勝戦。今回は、「リーグ・オブ・レジェンド」部門に出場するアートカレッジ神戸へのインタビューをお伝えする。
アートカレッジ神戸が他の高校と違うのは、eスポーツに「部」としてではなく「学科」として取り組んでいることだ。同校にはeスポーツに特化した「ゲームコース」というカリキュラムがあり、一般科目と並んでeスポーツを単位取得可能な正規の授業として受けることができる。
アートカレッジ神戸では目下「LoL」に取り組んでいる真っ最中だが、その授業の最大の特徴はプロチーム「V3 Esports」の指導を直接受けられることだ。V3 Esportsといえば「LoL」の世界大会「Worlds 2020」にも出場したトップ中のトッププロ。その教えのもと、ついに頭角を現した高校といえる。さっそく、インタビューの模様をお伝えしたい。
アートカレッジ神戸 高等課程 総合アート学科 ゲームコース
発足:2019年4月~
人数:37名
競技種目:リーグ・オブ・レジェンド
Aチームリーダー:永井俊次さん(2年生)
主な実績:
全国高校対抗eスポーツ大会「STAGE:0 2019」関西ブロック準優勝
全国高校対抗eスポーツ大会「STAGE:0 2020」関西ブロック準優勝
第1回全国高校eスポーツ選手権出場
第2回全国高校eスポーツ選手権3回戦進出
将来のオリンピック選手を出す! 専門学科設置の狙い
アートカレッジ神戸では、ゲームコースのほかに芸能コース、芸術コース、動物コースの4つのコースが学べる。ゲームコースでは実際にゲームをプレイしながら、プロゲーマーやゲームアナリスト、イベント管理、ゲーム解説などのスキルを学んでいく。
アートカレッジ神戸にゲームコースが設置されたのは、2019年4月から。設置の理由のひとつには、人材が不足しているIT業界に優秀な人材を送りたいとの狙いがある。あくまでeスポーツはeスポーツだが、ゲームを入り口として授業にはプログラミングやPC関連スキルをテーマにしたものもある。カリキュラムの中で、ゲームのプレイから開発に至るまでを総合的に学べるようになっている。
そしてもうひとつの理由が、「ゲームコースからオリンピック選手を輩出したい」という思いだ。現時点ではeスポーツは正式なオリンピック競技にはなっていないが、その土台を作る意味でもより早い段階でeスポーツに注目したという。そして、世界を目指すゲームとして「LoL」を授業でプレイするタイトルに決めた。
毎日ゲームに関する授業がある中で、最大の特徴はV3 Esportsのメンバーが直接指導に入っている点だ。2018年7月、アートカレッジ神戸の運営元である神戸学園がV3 Esportsの全株式と、経営・運営権を取得している。オーナー企業の強みが、高校生へのeスポーツ指導という形で大きく役立っているわけだ。
登校日は日に3~4時間、学校常駐のV3 Esportsメンバーによる授業が行なわれている。講義形式と合わせて、実際にプレイする中でアドバイスをしたり、疑問点に答えるなどして日々実力を高めていく。「LoL」競技シーンのオフシーズンになればV3のエースメンバーも指導に入り、特別講義などが実施される。「LoL」日本チャンピオンを独占できる機会は間違いなく生徒の成長に役立つし、「LoL」教育としては他の場所と合わせても日本トップクラスのクオリティだろう。
現在ゲームコースには、1年生が22名、2年生が15名の合計37名が在籍している。今回は2年生のエースチームであるAチームが決勝に上っているが、ベスト8となる予選決勝にもBチームが残っている(奇しくもAチームとBチームが予選決勝で当たり、Aチームが勝利した)。
ゲームコースの新規設置から2年目にして確実に実力が上がり、いよいよ成果が出てきたことを感じさせるが、生徒のほとんどは入学時点で「LoL」初心者ばかりだったという。しかし授業がスタートするとV3 Esportsによる指導や、もともとプレイしていた生徒が周りを引っ張ってくれたことにより、ゲームコース全体の担任を務める井坂周平先生が「吸収力がすごい」と話すほどぐんぐん成長していったという。
井坂先生は、特に生徒たちの「勝負どころでキリッ切り替わる表情」がとても印象深いと話す。その表情によって、生徒たちが「LoL」にいかに真剣に取り組んでいるかがわかるそうだ。本気で何かに打ち込んだ時間は生徒の将来にきっと役立つはずで、「ゲームコースをやっててよかったと思える瞬間」と語ってくれた。
ゲームコース目下の課題は、現2年生の進路相談だ。3年生の活動は夏の「STAGE:0」までを一区切りとし、その後は生徒の要望に合わせてプロやそれ以外の道を目指していく。進路に合わせて、アートカレッジ神戸としてのサポートは最大限するとのこと。大会で結果を出すこととあわせて、ゲームコースはまた新たな局面を迎えることとなる。
戦略から技術まで。V3の指導が高校生を急成長させる
使用するゲーミングPCは学校が所有するものと、サードウェーブによるGALLERIAの無料レンタルプログラム「高校eスポーツ部支援プログラム」で導入したものがある。
レンタルしている台数は、姉妹校の協力も得て合計10台。その性能の高さから、エースの2チームだけが利用できる特別なPCとして校内に設置されている。
今回、Aチームメンバーの中からリーダーでジャングラーの永井俊次さんと、ミッドレーンを務める宮下健聖さんに話を聞けた。2人によると、やはりV3の存在は大きいという。
特にアドバイスをもらう面でそれを実感しており、「『LoL』は正解が見えにくいゲームだが、プロの目線で『これが正解』と思える選択肢をパッと答えてくれる」と永井さん。「厳しいことを言われるときもあるが、年齢が近いこともあっていつも気さくに話せる。授業以外の時間でも面倒を見てくれる」(宮下さん)と、様々な面で頼れるコーチ陣だそうだ。
ほかにも、ドラフトのコツ、チャンピオン同士の相性、レーニングの立ち回り、ワードを置くタイミングなど、戦略から細かい技術に至るまで習ってきたことは数限りない。永井さんは小学生時から「LoL」をプレイしているが、「直感でやっていた部分のひとつひとつの意味を改めて考えて、論理的に動けるようになってきた」と自身の成長を振り返りる。
一方の宮下さんは入学時点でまったくの初心者だったが、日々努力を重ねたことで、2年弱でプラチナまでランクを上げることができた。チーム全体ではプレイ中のコミュニケーションや、緊張する場面での動きなど、まだまだ課題もある。決勝では最高のパフォーマンスを出せるよう、プレイを続けている。
話を聞いていると、まさにV3と生徒が一丸となって上のレベルを目指していることがよくわかる。この体制はV3側にも影響を与えていて、「身近に教え子ができたことで、日々の活動により気合が入るようになった」(井坂先生)とのこと。いい影響を与え合うことで、双方が今後ますます強くなっていくのではと予感させるエピソードだ。
決勝に向けて永井さんは、「アートカレッジ神戸としてはこれが初めての晴れ舞台。今できることをしっかりやり切りたい」とした。
また抽選会の相手がルネサンス高校に決まったことについては「対戦相手が決まるまでは正直ドキドキでした。もちろん優勝したいと思っていますが、常勝のN高さんはやっぱり強いので、できれば初戦で当たりたくないなと。その気持ちが届いたのか、N高さんとは逆ブロックになり、おぉ! と思いました。しかし、N高さんだけでなく、ルネサンス高校さんも強豪校なので、今まで通り、自分たちのチカラを発揮するだけです!」と話す。日本チャンピオンのサポートが行き渡ったアートカレッジ神戸が新たな常勝校となるのか。決勝の行方に注目だ。