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全国高校eスポーツ選手権「ロケットリーグ」部門、全校106チームの頂点に立ったのは「雷切」!
前回大会のリベンジマッチを制し、1年越しの優勝を果たす
2019年12月28日 22:08
- 12月28日、29日開催
- 会場:EBiS303
今回で2回目の開催となった全国高校eスポーツ選手権、その「ロケットリーグ」部門には全国から106ものチームが参戦した。1度負けたら終わりのシングルエリミネーションという厳しいルールの中、オンライン予選を勝ち抜いた4チームが決勝大会の地に集った。
熾烈な予選を勝ち抜いた4チームは、鹿島高等学校「OLPiXと愉快な仲間たち」(佐賀)、N高等学校「Cat A Pult」(沖縄)、鶴崎工業高等学校「雷切」(大分)、釧路工業高等専門学校「VTuberすこすこ隊ver2」(北海道)の4チームだ。
ここまで勝ち抜いてきていることが彼らの実力の何よりの証明なのだが、「OLPiXと愉快な仲間たち」は前回大会優勝チーム、「雷切」は前回準優勝チームと、実績を見てもまさに国内最強クラスのチームが集まっていることが解る。また「Cat A Pult」、「VTuberすこすこ隊ver2」にしても実力者揃いのチームだ。
どのチームが勝ってもおかしくない中、この決勝大会で全国の高校生の「ロケットリーグ」王者が決まる。緊張感に包まれた全国高校eスポーツ選手権を、会場からレポートする。
釧路工業リベンジなるか?因縁の準決勝第1試合
準決勝第1試合は、鶴崎工業「雷切」対釧路工業「VTuberすこすこ隊ver2」の対戦となった。実は両者が相見えるのは初めてではなく、このカードは前回大会のオンライン予選ブロック決勝からのリマッチだ。前回は「VTuberすこすこ隊ver2」が惜しくも負け、決勝大会出場まであと一歩のところで敗退している。雪辱を晴らしたい「VTuberすこすこ隊ver2」だが、雷切は前回準優勝の実力チームだ。予選では前回大会TOP4の阿南高専「Kamase Dogs」を撃破するなど、その実力は健在のようだ。
試合が始まると、まず「VTuberすこすこ隊ver2」が攻める。リーダーのLambchan選手が自陣から放ったロングシュートが「雷切」のディフェンスの穴を突き得点となる。しかしこのゴールが「雷切」の選手たちに火を付けたか、ここから彼らの猛攻が始まる。
まずキャプテンのAroDra選手が1点を返しチームを勢いづけると、それに続くようにGORIRA選手が2得点を決める。イソR選手はディフェンスを徹底し、ところどころで巧みなセンタリングを上げていく。チームメンバーそれぞれが役割を果たしながら点を重ねいった印象だ。第1ゲームは「雷切」の勝利となった。
続く第2ゲーム、「雷切」の攻めが更に切れ味を増す。開始30秒でイソR選手が得点をすると、その20秒後にはGORIRA選手が再びゴール。「VTuberすこすこ隊ver2」も必死にディフェンスをするが、ボールを自陣からクリアすることもままならない様子だった。第2ゲームは一方的な展開が続き、最終的には5-0で「雷切」の勝利となる。
後がなくなった「VTuberすこすこ隊ver2」、第3ゲームでなんとしても一矢報いたいところ。そんな気持ちが表れたか、前2試合より積極的に高いボールにも働きかける姿勢が見える。試合開始1分ごろ、ついにLambchan選手が得点し、再びチームに流れをもたらす。ゴール上部の壁に球を跳ね返らせてからの、見事なダブルタッチだ。
その後Yotsubq選手が右サイドからの見事なパワーショットを決め、2-1で「VTuberすこすこ隊ver2」がリードする展開に。流れが逆転したかと思われたが、ここで「雷切」が前回大会準優勝者の意地を見せる。イソR選手が上げた絶妙なセンタリングに対し、AroDora選手が天井からアプローチし、超高難度のシーリングショット(天井を使ったシュート)を見事決めてみせたのだ。こういった動きは選手間の信頼関係があってこそだ。
この得点が勢いづけたが、再び「雷切」優勢な展開に。その後2点の得点を重ね、第3ゲームは「雷切」が勝利、準決勝第1試合は「雷切」のストレート勝ちとなった。試合を振り返った「VTuberすこすこ隊ver2」は、「フォーメーションを崩され、終始普段通りのローテーションができませんでした。雷切は圧倒的でした。」とコメントした。
情熱のN高VS実力の鹿島、勝つのは?
準決勝第2試合は、N高校「Cat A Pult」対鹿島高校「OLPiXと愉快な仲間たち」の対戦となった。「OLPiXと愉快な仲間たち」は前回大会覇者で、中でもエースのOLPiX選手は決勝チームの中でも1番と言っていいほどの個人技を持ったスキルフルなプレイヤーだ。試合前コメントを求められると、「頑張ります」と一言。淡々と語ったその陰には前回優勝者の余裕が見える。
そんな彼らに立ち向かう「Cat A Pult」だが、委縮するどころか試合前コメントではリーダーのTetu選手が「僕らはここに来るためではなく、優勝するために練習してきたので、負けません」と述べ、気合十分な姿勢を見せる。Tetu選手はeスポーツ界隈には珍しい熱血漢のようで、試合前から味方を鼓舞している様子が多々見られた。
試合が始まると、「Cat A Pult」がチーム力を見せる展開に。試合開始1分20秒ごろにYayo選手が先制点を決めると、その40秒後にはClockei選手がさらに得点を重ねる。さらにその5秒後にはチャンスボールを見逃さないClockei選手が再びゴールを決め、カウントは早々に3-0になる。ドリブルなどの派手な個人技は見られないものの、前衛・後衛のローテーションが上手く回っているような印象で、「Cat A Pult」のチーム力の高さが伺える。
その後「OLPiXと愉快な仲間たち」も3-2まで追い上げるも同点とはいかず、第1ゲームは「Cat A Pult」の勝利に。インターバルではTetu選手が「勝てるよ!」とチームメイトの士気を上げている様子が印象的だった。
第2ゲーム、勢いにのった「Cat A Pult」の攻撃が続くか思いきや、今度は「OLPiXと愉快な仲間たち」の個人技が光る。ゲーム開始1分10秒ごろにはRon-nex選手が華麗なエアリアルショットを決め、また3分ごろにはRon-nex選手がドリブルからのフリップでボールごと相手選手をかわす高等テクニックも見せつけ、得点につなげる。さらに「OLPiXと愉快な仲間たち」はディフェンスにも抜かりがない。各選手ポジショニングが上手く、攻撃に参加していたかと思えば、ピンチの時には必ずゴール前にいる。「Cat A Pult」は反撃の機会を見出せず、第2ゲームは3-0で「OLPiXと愉快な仲間たち」の勝利となる。
この試合で委縮してしまったか、続く第3ゲームは「OLPiXと愉快な仲間たち」主体の展開になっていく。なんと開始20秒でOLPiX選手、Ron-nex選手がそれぞれ得点を決め、早々に2点リードにしていく。その後も「OLPiXと愉快な仲間たち」が卓越した個人技を見せ、第3ゲームは4-0の大差で勝利する。
第4ゲーム、「Cat A Pult」は後がない状況だ。先ほどの大敗を受けて、彼らは守りに重きを置いた戦術に移る。「OLPiXと愉快な仲間たち」は先ほどまでと同様に華麗な個人技で「Cat A Pult」のディフェンスを脅かそうとするが、「Cat A Pult」はチーム一丸となって必死に食らい付く。その結果、試合は残り時間1分を切ってもお互いに無得点という展開に。刻一刻と試合終了が迫る中、1得点の重みがどんどんと増していく。そんな時、長い静寂を破って得点したのはOLPiX選手だった。残り時間34秒、Ron-nex選手がパスを出し、そのままClockei選手をバンプ、がら空きになったゴールにOLPiX選手がシュートを叩きこむ、見事なプレイイングだった。この1点が決定打となり、準決勝第2試合は「OLPiXと愉快な仲間たち」が勝利する。
試合後のコメントでTetu選手は「もの凄い喪失感を感じています」とその悔しさを露わにした。Tetu選手とClockei選手は今回の大会を境にロケットリーグの前線から一足引かなければならないとのことで、最後の大会で優勝できなかったことからくる悔しさだっただろう。檀上では毅然とした様子を見せていた選手たちも、バックヤードに戻ってからは涙をこらえきれなかったとのこと。ロケットリーグに青春を捧げた彼らの健闘を称えたい。
前回大会からのリマッチ!2連覇か、それともリベンジか!
熾烈な準決勝を経て、決勝戦のカードは鶴崎工業「雷切」対鹿島高校「OLPiXと愉快な仲間たち」となった。奇しくもこのカードは前回大会決勝戦と全く同じ組み合わせだ。両者の因縁がお互いを引き寄せ合う形になったか、確実なのは2大会連続で決勝進出を決めている両チームの実力は本物ということだ。
決勝第1ゲームは「雷切」が強さを見せる展開になった。開始7秒でAroDora選手がゴールを決めると、「OLPiXと愉快な仲間たち」から次々と点を奪っていく。このゲームで特に光ったのはイソR選手とAroDoraの連携プレイだろう。両選手空中制御のテクニックが高いのはもちろんのこと、コミュニケーションがとれた以心伝心のポジショニングで、センタリングとアプローチが巧みに噛み合っている印象だ。「OLPiXと愉快な仲間たち」も負けじと攻めるが、第1ゲームは4-2で「雷切」の勝利となる。
続く第2ゲーム、両者相手の手のうちが分かり始めジリジリとした展開になる。1-1同点のまま試合は終了し、決着は延長戦へ。サドンデスの緊迫した状況、お互いの選手たちからも焦りが見える中、mcRento選手が落ち着いたグラウンドショットを決める。第2ゲームは「雷切」の勝利、優勝に王手をかけた。
早々に後がなくなってしまった「OLPiXと愉快な仲間たち」だったが、ここから彼らが前回優勝チームの意地を見せる。第3ゲーム、「雷切」はディフェンスに重きを置いた戦術を取り、ミスなく「OLPiXと愉快な仲間たち」を討ち取ろうとしたが、そこにOLPiX選手の個人技が再び炸裂する。自陣のボールをクリアしてからのシュートや、ディフェンダーをもろともしないドリブルで、たちまちハットトリックを決め、第3ゲームは3-0で「OLPiXと愉快な仲間たち」の勝利となる。さらに続く第4ゲームも、OLPiX選手・Ron-nex選手の2トップが強さを見せる。各選手巧みな球さばきで2点得点し、「雷切」もなんとか2点返すも、第4ゲームは4-2で「OLPiXと愉快な仲間たち」が勝利。決勝戦はフルセットまでもつれた。
全てが決まる第5ゲーム、泣いても笑っても勝ったチームの優勝だ。試合が始まると、まずは「雷切」が再び相手を圧倒し、試合開始から1分の間に立て続けに3得点を決める。特に2得点目、mcRento選手のゴール上部への壁当てから、イソR選手のエアリアルショットは、連携がとれた素晴らしいプレイだった。
しかし「OLPiXと愉快な仲間たち」はここで折れなかった。イソR選手・AroDra選手の波状攻撃をなんとか凌ぎながら、カウンターのチャンスを虎視眈々と狙い、徐々に攻撃に転じていく。そんな中まずRon-nex選手が得点し、それに続くようにOLPiX選手もゴール。3-2で「雷切」1点リードの状況で、残り時間は1分を切る。
このまま守り切りたい「雷切」と、1点が欲しい「OLPiXと愉快な仲間たち」。全員でボールに群がる様子を見るに、両チームともに冷静さを欠いてきているか。そんな残り時間42秒、Ron-nex選手が再びドリブルシュートを決め、同点になる。
試合終了間際のこの展開に、決勝戦最終ゲームは延長戦に持ち込まれるかと思われた。しかし、最後の1秒まで諦めなかったのが「雷切」だ。後にこの瞬間を振り返ったAroDra選手は、「ここで決めないと勝てないと思った」と語った。残り時間が1秒の時点で、イソR選手が絶妙なセンタリングを決めると、絶対に外せないこのシーンで、キャプテンのAroDra選手が最高の角度からこのボールにミート。ボールは見事相手ゴールを揺らし、このブザービートが決勝点となり、全国高校eスポーツ選手権「ロケットリーグ」部門は、「雷切」の優勝となった。
試合後にコメントを求められるとAroDra選手は、「実感がわかず、メンタルがふわふわしています」とコメントし、イソR選手は「最高の仲間とここまでこれてよかったです」と喜びの言葉を述べた。負けてしまった「OLPiXと愉快な仲間たち」のOLPiX選手は、「雷切は前回より格段に強くなっていました」とコメントし、対戦相手の健闘を称えた。
優勝した「雷切」には、優勝メダル・トロフィー、そして副賞としてGALLERIAのゲーミングノート、さらにカップヌードル1年分が贈呈された。今回の決勝大会では、4チーム全てが熱い試合を見せてくれた。青春をかけてゲームをする彼らの雄姿に感化されて、今後も高校eスポーツ文化が広まっていくことを祈りたい。