【特別企画】

全国高校eスポーツ選手権「ロケットリーグ」部門観戦ガイド

全4チームとも優勝未経験。運命の決勝大会は13日12時より配信開始

3月13日オンライン開催

 今週末、全国高校eスポーツ選手権の決勝大会が開催される。今回で第3回目の開催となる本大会は、eスポーツに打ち込む高校生たちの晴れ舞台として、これまで数々の熱い戦いを届けてきた。決勝大会は熾烈な予選トーナメントを勝ち抜いた強豪校4校による戦いで、プロに負けないハイレベルなものになると予想される。実際過去に本大会に出場した生徒の中には現在プロとして活躍している選手もおり、全国高校eスポーツ選手権は年を追うごとにハイレベルな大会になってきているのだ。

 また本大会は、大会史上初のオンライン開催となる点でも注目されている。昨今は時節柄スポーツ大会を開催しづらいのが実情ではあるが、eスポーツの利点はオンラインでも大会が開催できることにもある。本大会出場を目指してeスポーツに励んでいた生徒も多く、彼らが全身全霊をかけて戦うさまを、我々としてもしっかり見届けたいところだ。

 例年通り、本大会は世界的MOBAタイトル「League of Legends」と、新感覚サッカーゲーム「ロケットリーグ」の2種目で開催されるのだが、本稿では「ロケットリーグ」に焦点を当ててその見どころを解説していく。本大会は回を重ねるごとに様々なドラマが生まれており、各チームの選手たちと前年までのドラマを知ることでより試合が面白く観戦できるはずだ。本稿を参考にして是非お気に入りのチーム・選手を見つけてほしい。

【第3回全国高校eスポーツ選手権 配信チャンネル】
Twitchにて配信
https://twitter.com/ajhs_esports

ペリスコープにて配信
https://twitter.com/ajhs_esports

毎日新聞デジタル
https://mainichi.jp/ajhs-esports/

【前大会「ロケットリーグ」部門フィナーレの様子】
第2回大会覇者の鶴崎工業(大分)の雷切

車×サッカー!世界的eスポーツタイトル「ロケットリーグ」

 まず簡単に「ロケットリーグ」そのものについて解説すると、これは「車を操作してサッカーをする」ゲームである。2015年にアメリカのPsyonix社から発売された本ゲームだが、発売から5年以上経った今でも人気は根強く、昨年9月にはゲームが無料化されたこともあり、14万人を超えるピークプレーヤー数を記録している。また本タイトルはプロeスポーツシーンの活動も盛んで、しばしば引用されるThe Esports ObserverのeスポーツタイトルTierリストでは安定してTier3に位置している印象だ。

ロケットリーグ ロゴ

 さて肝心のゲーム性についてだが、車でサッカーをするという明快なコンセプトとは裏腹に、本タイトルは高い操作精度を要求する実力主義のゲームといえる。運やキャラクター相性などが勝敗に関係する他の多くのゲームとは違い、本タイトルは皆が同じ性能の車を操作し、ジャンプやブーストといったアクションを駆使しながらいかにボールに食らいつけるかが勝負のカギになる。パスやシュートといったコマンドがあるわけでもなく、プレーヤーたちは物理演算の中で車の入射角やスピードからボールの軌道を計算し、相手のゴールにボールをけり込まなければならない。

車を操作してボールをシュート

 初心者がプレイするとまともにボールにぶつかることすら困難な本タイトルだが、決勝に進出するチームの選手たちとなるとゲーム内の物理法則を完全に理解しており、意のままにボールを操ることができる。数あるテクニックの中でも注目なのはブーストを使って車を宙に浮かせるアクロバットで、出場選手の中にはフィールドの天井からセンタリングボールに突っ込んでシュートを決めるような技術を持つ者もいる。これは「シーリングショット」と言われる大技だが、決勝で見かけた際には是非賞賛のコメントを送ってあげて欲しい。

天井からボールめがけて落下

 「ロケットリーグ」はeスポーツ初心者が観戦するのにうってつけの単純明快なタイトルだが、選手たちの繰り出す技の数々は決して一朝一夕で身に付くものではない。もし本タイトルの難しさを直に感じたいということであれば、せっかく無料なので是非一度ゲームを遊んで見てほしい。一度プレイしてから観戦すれば、本大会のレベルの高さが身に染みて分かるだろう。

TOP4は過去大会経験の手練れ揃い!

 次に決勝へ駒を進めた4チームを紹介する。本大会「ロケットリーグ」部門の出場チーム数は過去最多の178チームで、これから紹介する4チームは数ある出場校の中から予選を勝ち抜いた強豪校ぞろいだ。予選通しての印象としては大きな番狂わせはなく、過去の大会でも結果を残している高校が今年も順当に勝ち上がってきていると言って良いだろう。

決勝大会トーナメント表

N高等学校「NRLG Cats」

 まず紹介したいのは何といってもN高等学校の「NRLG Cats」だ。N高等学校は、2019年度の第2回大会「League of Legends」部門で優勝するなど、全国高校eスポーツ選手権の顔と言える高校だが、「ロケットリーグ」も強い。

 前回大会でも「Cat A Pult」がTOP4入りを果たしており、これで2年連続の決勝大会進出になる。そんな中で今年の「NRLG Cats」の仕上がりは以前にも増して凄まじく、その実力は他の3チームが口をそろえて「当たりたくない」と評すほどだ。彼らはまさに優勝候補筆頭と呼ぶにふさわしいチームだろう。

「NRLG Cats」チーム紹介

 そんな「NRLG Cats」の大黒柱となっているのは3年生のTetu選手だ。彼は第1回大会から3回連続で本大会に出場しているベテラン選手で、「Cat A Pult」時代にはオフライン決勝の舞台も経験している。前回大会は惜しくも優勝を逃したが、その分今大会に対する想いも強いはず。そして大舞台での経験の豊富な選手が居ることは、チームにとって大きな精神的な支えになっていることだろう。

Tetu選手

 そしてTetu選手を支えるように居るのがArinko選手とsk:D選手の新鋭1年生コンビだ。大会経験は少ないものの彼らの実力はTetu選手に負けずとも劣らないものがあり、予選ではこの両名が得点を決めていることが多い印象だった。特にsk:D選手は中学生のころから本大会出場を目指して「ロケットリーグ」をプレイしていたそうで、彼の攻撃的なプレイは1年生とは思えないほどの練度を見せていた。

sk:D選手予選決勝でのゴール

 3年生のTetu選手にとっては最後の全国高校eスポーツ選手権となる本大会。Tetu選手は昨年までの雪辱を晴らし、3度目の正直で優勝を掴むことができるのか。そして大型ルーキー二人は他校のベテラン選手たち相手にどのようなプレイを見せてくれるのか、要注目だ。

釧路工業高等専門学校「mirage virtual Calimba」

 そんな強豪「NRLG Cats」と準決勝で対戦するのが釧路高専の「mirage virtual Calimba」だ。本校も前回大会TOP4の「Vtuberすこすこ隊Ver2」を排出した強豪校であり、惜しくも優勝は逃しているものの、実力と経験のあるプレーヤーが揃ったチームと言えよう。

「mirage virtual Calimba」チーム紹介

 本チームの注目選手はやはりYotsubq選手とLambchan選手のコンビだ。彼らは前回大会でも「Vtuberすこすこ隊Ver2」を率いて戦った名コンビであり、この二人の織り成すチームプレイこそ釧路高専の魅力と言って相違ない。華麗なパス回しで相手ディフェンスをかいくぐるさまや、アクロバティックな動きで空中から果敢にボールを狙っていく二人の攻撃は非常に鮮やかで、決勝でもきっと大技を見せてくれるに違いない。

yotsubq選手のエリアルショット

 そしてもう一人のスタメンNano選手も素晴らしいプレーヤーで、痒い所に手が届く絶妙なディフェンスやセンタリングで常にチームを支えている。初戦の相手「NRLG Cats」は決して一筋縄では倒せないチームだが、「mirage virtual Calimba」のチームワークをもってすればあるいは勝利することもできるかもしれない。

OooDa氏(左)とLambchan選手(右)

大阪府立大学工業高等専門学校「hogehoge」

 次に紹介するのは大阪高専の「hogehoge」だ。このチームは昨年も同名・同メンバーで大会に出場していたが、決勝進出に一歩届かずのTOP8で敗退を期していた。メンバーは全員3年生のため同じ面子での参戦は今大会が最後となるが、そんな土壇場で初の決勝進出を決めており、その勢いのままに優勝することも十分あり得るチームといえよう。

「hogehoge」チーム紹介

 「hogehoge」の最も注目すべき選手はKazuryu選手だ。このチームはもともと「ロケットリーグ」をプレイしていたKazuryu選手が本大会出場への強い想いから仲間を誘い集めて結成されたチームであり、Kazuryu選手はチームのリーダーともいえる存在だ。白いハットがトレードマークのKazuryu選手は、常に冷静にフィールドを見極める才能の持ち主で、相手陣に隙あらばすかさずスナイパーのようにロングシュートを決めてくる。

Kazuryu選手が予選決勝で決めたダブルタッチ

 そしてこのチームの応援したくなってしまう魅力といえば、彼ら三人の仲の良さそうな雰囲気だ。三人並んでカメラに写っているだけで、日頃楽しく練習をしている風景が容易に想像できてしまう。「hogehoge」にとって最後の全国高校eスポーツ選手権、彼らは青春を有終の美で終えることができるのか、要注目だ。

OooDa氏のインタビューに答える「hogehoge」の面々

東海大学付属札幌高等学校「FSC」

 最後に紹介するのは「FSC」、準決勝で「hogehoge」の相手となるチームだ。東海大付属札幌は学校全体がeスポーツに力を入れており、eスポーツ部は「ぷよぷよ」や「League of Legends」など「ロケットリーグ」以外のタイトルでも活動していたり、クラス対抗のeスポーツ大会が開催されていたりと、強豪チームを排出するのに十分な環境が整っている高校だ。

「FSC」チーム紹介

 本校も第1回から全国高校eスポーツ選手権に参戦しているものの、今までTOP4への進出経験は無かった。第3回大会にして初の決勝大会進出は、彼らにとって念願であるというわけだ。そんな「FSC」の注目選手は唯一の3年生であるジェネシス選手だ。彼は第1回、第2回と戦った先輩たちの背中を見て育ったプレーヤーであり、今ではチームのリーダーとして後輩たちを率いている。

OooDa氏のインタビューに答えるジェネシス選手

 ジェネシス選手はチームの司令塔として自陣にどっしりと構えるスタイルが印象的なプレーヤーで、リーダーとして責任をもってゴールを守ろうという気概が感じられる。そしてジェネシス選手の指示のもとで前衛を務めるのはSukegin選手とYUUGAKUNN選手で、彼らのテクニカルなボール捌きも目を見張るものがある。手練れの「hogehoge」は簡単な相手ではないが、「FSC」には是非eスポーツ強豪校としての意地を見せてほしい。

YUUGAKUNN選手のエリアルシュート

 以上が決勝大会に進出した4チームだ。どのチームも過去の大会を経験したチームでありながら、4チームとも優勝経験はまだない。今大会が最後となる3年生が多くいる中で、悲願の優勝を手にするのはどのチームになるのか。全国高校eスポーツ選手権決勝大会は3月13日12時からTwitchやペリスコープなどで配信される。eスポーツに青春をささげた高校生たちの雄姿を、是非リアルタイムで見届けてほしい。