【特別企画】

168チームの頂点!第3回全国高校eスポーツ選手権 LoL部門」はN高「KDG N1」が2連覇

【「LoL」部門】

3月14日 開催

 一般社団法人全国高等学校eスポーツ連盟と毎日新聞社は3月14日、第3回全国高校eスポーツ選手権「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」部門の決勝大会を開催した。第3回目にして初のオンライン開催となる本大会だが、全国から過去最多となる113校、168チームが参加。熾烈な予選を勝ち上がってきた4チームが高校「LoL」No.1チームの座を争った。

 本大会はTwitch及びペリスコープにて配信され、中継スタジオには司会としてeスポーツキャスターのOooDa氏、アナリストに元プロ選手のiSeNN(アイセン)さん、スペシャルサポーターとして自身も「LoL」をプレイしているケイン・コスギさんが登壇。また、実況・解説はLJLでお馴染みのeyes氏、Revol氏が担当した。

左から、OooDa氏、ケイン・コスギさん、iSeNN(アイセン)さん
eyes氏(左)、Revol氏(右)

 本大会の注目チームは2連覇のかかっているN高等学校「KDG N1」だ。予選を勝ち上がったチームはどれもプロ顔負けのプレイを見せてくれていたが、その中でもプロチームにサブとして所属している選手を有するN1は頭一つとびぬけたチーム。「LoL」に先んじて行なわれた「ロケットリーグ」部門でもN高「NRLG Cats」が優勝しており、N高としての2冠達成もかかっている。

 なお、本誌では決勝の舞台で戦う4チームの紹介を行なっている。そちらも参考にしていただけると幸いだ。

準決勝1試合目。N高同士の試合は序盤からハイレベル

 準決勝第一試合は「KDG N1」と「Team No Plan」のN高等学校同士の対決。普段から練習試合をしていることもあり、手の内がわかっているチーム同士の試合だ。優勝候補筆頭の「KDG N1」だが、準決勝はBO1(1本勝負)ということもあり、「Team No Plan」の対策が刺されば大番狂わせも充分にありえた。

 本大会では初の試みとしてBan/Pick中のチーム内ボイスチャットが視聴者に聞こえるようになり、両チームがどのようなコミュニケーションをしているかが配信でわかるようになった。チームのVCを聞く機会は滅多にないだけに新鮮だったが、そのVCで「KDG N1」はBan/Pick中の会話が盛んで、何をピックするかだけでなく、Ban/Pickの中で序盤どう動くかの戦略を話し合っておりレベルの高さが垣間見えた。一方の「Team No Plan」はやや緊張が見られる様子。やはり、前回王者の「KDG N1」は精神的にも余裕があるようだ。

N高「KDG N1」のメンバー。左からvann選手(TOP)、ぷりも選手(JG)、rre選手(MID)、まりも選手(ADC)、shakespeare選手(SUP)、Violet選手(TOP)
N高「Team No Plan」のメンバー。左からKαine選手(TOP)、けいぜる選手(MID)、Calamitγ選手(JG)、ezman選手(ADC)、zyunizyunia選手(SUP)

 試合は序盤から両チームともハイレベルな動きを見せた。開始直後に「KDG N1」が全員で敵ジャングルに入っていくが、その動きを察知した「Team No Plan」も赤バフを明け渡し、代わりに自陣のラプターを取るというリスクを抑えた動きをすることで被害を最小限に抑えていた。BO1でいきなり敵陣に入っていく「KDG N1」の大胆な判断も光るものがある一方で、「Team No Plan」の一見すると細かく、逃げの一手に見える判断も的確で、実戦、それも全国大会の準決勝という大舞台では中々できるものではない。両チームとも1プレイ目から日々ハイレベルな練習をしていることが伝わってきた。

 その後、両チームともにジャングルを中心に試合を動かそうとするが、Botガンクでキルを獲得した「KDG N1」がその有利を拡げていき、Bot、Midとタワーを折っていく。試合が中盤に差し掛かると「KDG N1」が「バロンに触って相手をおびき寄せ、有利な集団線を始める」というプロシーンでよく見られる動きをしっかりと決め、集団戦の勝利とバロンを獲得。これが決定打となり「KDG N1」がそのままの流れで、ミスなく試合を畳み切った。

KDG N1といえば、まりも選手とshakespeare選手の強力なBotレーンコンビ。予選でもこの2人を軸に圧倒的な強さで勝利してきた
バロンを集団戦のきっかけに使う見事なプレイはプロ顔負けだった

 敗北した「Team No Plan」だが、試合後には「もうちょっといい試合ができるはずだった」と悔しさを滲ませた。チームのリーダーであるCalamitγ選手は、プロを目指してN高に転校、本大会に挑んでいた。敗れはしたが素晴らしいプレイをした「Team No Plan」、特にプロ志望のCalamitγ選手、ezman選手の今後に注目だ。

準決勝2戦目は怒涛の逆転劇!

 続く準決勝2試合目はアートカレッジ神戸「アートカレッジ神戸 A」とルネサンス高校「野菜鶏レモン味」の試合。両者ともに部としてではなく、「学科」としてeスポーツに取り組んでいる高校のチーム。特にアートカレッジ神戸 Aは昨年国内プロリーグを制した「V3 Esports」から指導を受けているということもあり期待がかかる。

 試合前のインタビューでは両チームと緊張こそしていたが、双方とも会話の中で笑いも起きるなど、チームの雰囲気の良さを伺うことができた。

アートカレッジ神戸「アートカレッジ神戸A」のメンバー。左からmetamonn選手(TOP)、Kensou124選手(MID)、から揚げ選手(JG)、イルミん選手(SUP)、kaeto選手(ADC)
ルネサンス高等学校「野菜鶏レモン味」のメンバー。左からまじょ選手(TOP)、Akagi選手(JG)、ごっとふぃすと選手(MID)、Ruler fan選手(ADC)、tenda318選手(SUP)

 試合は「アートカレッジ神戸A」がレベル6から強力な「ノクターン」と「シェン」のグローバルアルティメットスキルのコンボが強力なピックをしたこともあり、序盤はほとんど動きがなかった。ノクターンがレベル6になると、強い時間を生かすべく「アートカレッジ神戸 A」がBotレーンで仕掛けていく。しかし、緊張からかチームで別々の敵を攻撃してしまう痛恨のミス、これに「野菜鶏レモン味」がうまく対応してカウンターを決め、仕掛けられた側でありながら有利なキル交換とする。これをきっかけに「野菜鶏レモン味」が試合を優位に進めていく。

「アートカレッジ神戸A」から揚げ選手がピックした「ノクターン」は、相手チーム全員の視界を奪いながら、指定した相手に高速で移動して襲い掛かるアルティメットスキルが強力なチャンピオン

 試合が中盤に差し掛かったタイミング、すでに「野菜鶏レモン味」はドラゴンを3つ獲得しており、このドラゴンを倒せばドラゴンソウルを獲得し、試合を決めることができるという場面。後のない「アートカレッジ神戸A」は諦めずに果敢に仕掛けていく。まず、から揚げ選手の使う「ノクターン」のウルトで敵の視界を奪いながら交戦。「野菜鶏レモン味」の判断ミスを誘い、から揚げ選手がドラゴンをスティール、さらには集団戦でも大勝したことでバロンまで獲得。次の集団戦では先程の戦いで育ったkaeto選手のエズリアルが暴れて勝利し、そのままネクサスを破壊して「アートカレッジ神戸A」が怒涛の逆転劇を見せ決勝へと進んだ。

試合を決めたドラゴンスティール。このまま集団戦にも勝利し「アートカレッジ神戸A」が逆転勝利した

 試合後、ルネサンス高等学校「野菜鶏レモン味」は試合後、「最高に楽しかった」と口にしていた。明るい雰囲気のチームだからこそ団結し、ここまで勝ち残ってこられたのだろう。

決勝1戦目、やはり「KDG N1」のBotレーンは強力!

 決勝戦はBO3(2本先取)のため、よりBan/Pickでの戦略や、集中力を維持できるかがカギとなってくる。試合前のインタビューでは「KDG N1」が「ルネサンスが勝つと思っていたから急遽作戦を練り直した」と述べた一方で、「アートカレッジ神戸A」は「先ほどの試合が波乱の展開だったので一旦落ち着いて臨みたい」と語った。

 決勝1試合目、お互い相手の構成からゲームの展開を予測しながらBan/Pickを進めていく。印象的だったのが「ヨネ」を巡る両チームのやり取り。「神戸アートカレッジA」は、相手の「ヨネ」を読んで、アサシンであるヨネがきても比較的耐えやすい「オリアナ」をピック。一方の「KDG N1」は「オリアナ」をみて「ヨネでいける!」と迷わず「ヨネ」をピックしていた。

両者のピック。ヨネを巡る両チームのVCが興味深く、実況・解説の2人も貴重な機会を楽しんでいた

 試合はまたしても「KDG N1」が開始直後から敵のジャングルに入っていく。準決勝でも行なったこの動きはジャングルで有利を獲得し、Botレーンに自分たちだけ注力できる環境を作り出す戦法だ。

 「KDG N1」は狙い通りBotを中心に試合を運び、まりも選手の「サミーラ」を育てていく。一方の「アートカレッジ神戸A」もから揚げ選手の「ノクターン」を活かし、Topのvann選手に圧をかけ続け、キルも取っていく。

 それでもサミーラが止まらず、集団戦で「KDG N1」が勝利しバロンも獲得。アートカレッジは最後まで諦めず、茂みで待ち伏せをして逆転を図るが、まりも戦選手はしっかり危険を察知しており安全にプレイ。「アートカレッジ神戸A」は最後の最後でサミーラをキルするが、時既に遅し。「ヨネ」を筆頭とした他の「KDG N1」のチャンピオンにキルされていき、そのままネクサスを破壊。2連覇に王手をかけた。

育ったまりも選手の「サミーラ」は手の付けられないキャリーに

作戦を変えたKDG N1、対する神戸アートカレッジAは3度目の「ノクターン」

 決勝2試合目、ここで勝てば優勝という「KDG N1」だが、ここでTopをViolet選手にメンバーチェンジ。さらにまりも選手はマークスマンではなくメイジの「シンドラ」をピック。Topにキャリー力の高い「イレリア」を置き、先ほどまでのBotを中心としたものとは異なる、Topキャリーの変則的な構成で勝負に出た。対する「アートカレッジ神戸A」は今日3度目となるノクターンをピック。あくまでも自分たちのスタイルを貫く姿勢だ。

Ban/Pickを終えた時点で「KDG N1」は、「ドラゴンを捨て、ヘラルドを取る」と数分後の作戦を既に決めていた。また、shakespeare選手は得意とする「ジャンナ」をピック。「(敵を)全部弾くよ!」と自信の一言

 試合は序盤、1試合目での恨みを晴らすかのように「アートカレッジ神戸A」がBotでキルを獲得。それに対し「KDG N1」はTopでアクションを起こすが、「アートカレッジ神戸A」のTop、metamon選手が何度もガンクを捌き生存する素晴らしいプレイ。「アートカレッジ神戸A」はBotの有利を広げていき、集団戦でもkaete選手の強気のプレイが「KDG N1」の陣形を崩し勝利。立て続けにドラゴンを3つ獲得して中盤までを優位に進めていく。

「KDG N1」のジャングラー、ぷりも選手が「リー・シン」で素晴らしいInsecキックを決めるが、metamon選手の「ナー」とから揚げ選手の「ノクターン」のウルトが刺さり、「アートカレッジ神戸A」がエースを獲得

 そのまま「アートカレッジ神戸A」は強力なオーシャンソウルを獲得。このまま試合を終わらせるかと思いきや、直後の集団戦で「KDG N1」が素晴らしいCCチェイン(連続で行動阻害スキルを当てること)を決めて集団戦に勝利、そのままバロンまで獲得した。

 それでも、オーシャンソウルの分だけ有利な「アートカレッジ神戸A」は浮いたrre選手を捕まえる仕掛けを行なうが、再びまりも選手を中心とした「KDG N1」の素晴らしいスキルショットに阻まれ、カウンターでキルを取られてしまう。

まりも選手のスリーマンスタンが見事に決まった

 試合は気付けばエルダードラゴンを獲得したチームが有利となる局面に。ここで「KDG N1」の冷静な判断と、チームでのコミュニケーションが光った。

 「KDG N1」の選手達はbotのミニオンを処理、タワーを破壊しながら「(ドラゴンの)裏に入ろう」とコミュニケーションをとり、チーム全員でトラップを仕掛ける動きを素早く実行。それに対し「アートカレッジ神戸A」は警戒の意識はあったものの瞬時に判断を下すことができず、「KDG N1」の罠にかかりから揚げ選手がキルされてしまう。

 「KDG N1」はこのプレイでエルダードラゴンを獲得。返す刀で「アートカレッジ神戸A」もインヒビターを破壊するが、エルダーバフを纏った「KDG N1」は素早い判断で「アートカレッジ神戸A」のメンバーを追いかけて撃破していく。そのまま敵陣まで攻め込み、「KDG N1」が相手のネクサスを破壊。まさかの逆転勝利で2連覇を決めた。

素晴らしいコミュニケーションでトラップを仕掛けたKDG N1。敵の視界がないドラゴン周辺にポジショニング
最後まで手に汗握る戦いを制しKDG N1勝利!

 優勝インタビューではまりも選手が「3年生がいっぱいチームにいるというプレッシャー、これで最後という思いが強かったですが、最後の最後に、こんな大会をやらせてくれて感謝しています」と語った。これからプロとして活動するまりも選手には、やはり相応のプレッシャーがあったようで、優勝を決めた瞬間から、インタビューを受ける時まで、どこか安堵しているようにみえた。

 また、惜しくも敗れてしまった「アートカレッジ神戸A」だが、メンバーは全員が2年生。来年からは追われる身となる。今後さらに成長し、素晴らしいプレイを魅せてくれるはずだ。

2連覇を果たした「KDG N1」のメンバー

 今年も高校生たちが青春を賭けて戦った「全国高校eスポーツ選手権」。第3回となる今回は、第1回大会に1年生として参加していた選手が卒業する節目の年となる。実際、優勝を決めた「KDG N1」も1年生のrre選手を除けば全員が3年生で、中でもまりも選手は第1回大会から参加し、今年卒業することになる。参加校の中には予選で敗退し、表舞台に上がれずに卒業していく選手も少なくないだろう。彼らには、この悔しさをバネにして、次のステップに進んでいって欲しい。

 配信の最後では、第4回大会が開催されることが発表された。次回大会では「LoL」、「ロケットリーグ」に加え、新たな種目の追加も検討されているという。世代交代の年となる第4回大会、年々チームのレベルが上がっていることもあり、高校生たちがどのようなプレイを見せてくれるのか、今から楽しみだ。