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「セガ 3D復刻アーカイブス2」インタビュー Part2

単体ダウンロード配信からの収録作は、サウンドドライバが最新のものになり、サウンドの再現度アップ

単体ダウンロード配信からの収録作は、サウンドドライバが更新されサウンドの再現度アップ!

奥成氏:今回の単体ダウンロード配信からの収録タイトルについてですが、エミュレーターのサウンドドライバが最新のものに更新されています。並木さんいわく、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のサウンドの再現度も単体版より向上したそうです。

 サウンドドライバは、「獣王記」のときに1度更新されていて、その後も少しずつ再現度が上がっていたんですよね。

 その最新のサウンドエミュレーターで今回は再収録されているので、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」は特に再現度が上がっているということです。「獣王記」ももしかしたら少し上がっているのかもしれないです。

 ただ、この話は並木さんはそうおっしゃっているんですけど、僕にはもはや違いのわからない領域の話です(笑)。

堀井氏:どれだけサウンドにリソースを割けるのかも少しずつ変わっていますから。各タイトルの音量を揃えたりといった、単体だけのときにはない作業も「アーカイブス1」に続いて行なっています。


【チーフサウンドクリエイター並木学氏よりコメント頂きました】

――サウンドドライバーが今回最新版に更新されたとお伺いしました。「3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のサウンドがさらに向上したとのことで、ローパスフィルターの適用などがあったかと思いますが、具体的な音質向上点などアピールしていただけますか?

並木氏:本シリーズは長期に渡る一大プロジェクトですから、新タイトルを開発する度に技術的チャレンジを積み重ね、結果としてその品質も向上してゆくわけです。

 「3D ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のリリースから二年半の歳月をむかえた今作において、鍛えられた技術を再びこの名作へとフィードバックできる機会を得られることは我々開発者にとってもまた、とても喜ばしいことでありました。

 一体どんなふうに向上しているのか?…については、それはもうぜひ、遊んでいただける皆さまのお耳でご判断をいただきたい、と思います。興味をお持ちの方は、ダウンロード版と聴きくらべつつお楽しみいただくのも、それはそれで一興かと存じます。


――他には何か単体ダウンロード配信からの収録作に変更点はあるのでしょうか?

奥成氏:「ファンタジーゾーンIIダブル」のエンドレスモードである「リンク・ループ・ランド」に、発売後しばらくして永久パターンが見つかっていたのですが、せっかくなのでそれは潰しました(笑)。

堀井氏:潰しましたねー。

奥成氏:開発が始まってからはエムツーさんも忘れていて。リベンジするチャンスができて良かったです。

――永久パターンは二度見つかっているんですよね。わりと初期に見つかった無敵技と、2、3カ月後にランキング登録もできる永久パターンが見つかったんでしたっけ。

堀井氏:そうなんですよね。無敵になるのはバグで、プレイを終了できなかったのでランキングにはスコアを残せなかったんです。こちらは不具合でしたので、一度修正版を配信させていただきました。その後数か月経ってから見つかった永久パターンの方はカンストスコアをランキングに載せられるので……。

 でも、こういう目に遭うのはすごく不思議な気持ちですよね。僕らも昔は永久パターンを使ってやっていたゲームもあったし、それを防止するキャラも目にしてきたので。それから時が経って、ミイラ取りがミイラになったような、作り手側の気持ちを味わえるのはある意味すごく嬉しいです! 「あぁ、なるほど! すっげぇ悔しい!!」っていう感じです(笑)。

――(笑)。昔のゲーム作りっぽい話ですよね。

奥成氏:まぁ、昔のゲームですからね(笑)。

――これは、単体ダウンロード版の「3DファンタジーゾーンII ダブル」のほうも更新されたりはしないんですか?

下村氏:単体ダウンロード版についても、来年にも更新予定です。

セガ・マークIII版「ファンタジーゾーン」のFMサウンドは「ファンタジーゾーンII」と同じドライバで鳴っている!

――音源の再現が大変というお話は毎回ありますが、今回サウンドドライバがアップデートされているという話で。どのへんをどう改良されたのかは、お話できる範囲でしょうか?

堀井氏:OPLL(※)の音色は耳コピでやっていますね。FM音源のロジックから考えて、「おそらくこうだろう」という実装の仕方で。音色のパラメーターを春日、並木、齊藤の3人でいじって、あーでもない、こーでもないと、揉めながら、一歩一歩、近づけている感じですね。

奥成氏:今回は相当に再現度が上がったんじゃないかな。

堀井氏:そろそろ僕らはわからない領域でこだわっていますね。


※OPLL(YM2413)……マークIIIのFM音源ユニットおよびマスターシステムに搭載されているFM音源。基本的にプリセットされている音色とユーザーが定義する音色1音を組み合わせて使用するため、FM音源部やプリセット音の解析(=各パラメーターの値や分解能などを含む)が音の再現の鍵を握る。

【チーフサウンドクリエイター並木学氏よりコメント頂きました】

――「3Dリマスターシステム(マーク3D)について、前作から引き続いて音質再現など苦労されたとお伺いしましたが、OPLLの再現性の向上点など、エピソードなどありましたらぜひ教えてください。

並木氏:こちらは今作でデビューを飾る、弊社期待の新人サウンドデザイナー春日の回答をどうぞ。

「まず、OPLLの特徴としてプリセット音色のパラメータが固定されているというものがあります。これによって独特の「OPLLらしさ」のある音が生まれます。

 つまり、プリセット音色の再現性がOPLLそのものの再現性を大きく左右してしまうので、このプリセット音色のパラメータに関して、選定には多くの時間を掛けました。

 また、選定する際には出来る限り実機の音に近づくように、マスターシステム実機上で動作する検証用のプログラムを作成するなどして、詳しく確認しました。

 ここからは個人的な意見になりますが、メインプログラマの斎藤が作成した元々のOPLLコアの再現度が高いこともあって、パラメータの変更がそのまま実機のOPLLに近い音で鳴ってくれたので、とても楽しい作業でした。」

……今後のプロジェクトにおける春日の活躍にご期待ください!(上司より)。

【メインプログラマ齊藤彰良氏よりコメント頂きました】

齊藤氏:今回春日さんの協力もあり再現度を高くすることが出来ました。彼は僕より若いこともあって、僕の聞こえない音が聞こえるんですよね。違いの指摘に僕がハテナ顔したりでゴメンナサイデス。

――マスターシステムでのFM音源と、セガ・マークIII+FMサウンドユニットの組み合わせとでは、音が違うという話もあるようなのですが、そのへんはどうでしょう?

堀井氏:僕は詳しくはないのですが、マスターシステムでは起こらないセガ・マークIII+FMサウンドユニット独自の現象として、FM音源とPSG(※)を同時に鳴らそうとすると、ノイズが乗りやすいというのがありますね。なので、同時に鳴らしているタイトルがほぼないんだと思うんですよ。

奥成氏:もしかしたら、同時に鳴らすのはNGにしていたかもしれないですね。

堀井氏:うーん、ダメって言っていたのかも。そもそもそこまで手間をかけていられなかったんだろうな、とも思いますね。処理時間も足りないですし。


※正確には「DCSG」。詳しくは「アーカイブス1」のインタビューを参照頂きたい。

――インタビューPart1を読んだ人からの反応には、「FMサウンドユニット対応はすごく豪華だけど、実機なりの音も聴きたかったなー」というようなものもありましたね。

奥成氏:あれは誤解されてしまったところもあるのかな……と思うのですが、今回の追加要素として取り入れているセガ・マークIII「ファンタジーゾーン」のFMサウンドユニット対応は、あくまで「ファンタジーゾーンII」のサウンドドライバを使って鳴らしているので、実機でもあの音は鳴らせるんですよ。

堀井氏:それをご理解頂いている人からの意見となると、“譜面に装飾のない曲が聴きたかった”ということなんでしょうね。ノスタルジー重視というか。

――セガ・マークIII「ファンタジーゾーン」のFMサウンドユニット対応はあくまで当時は存在しなかった架空のものですが、今回収録されている“すごくがんばっているバージョン”の曲ではなく、“アレンジ曲をそのままプリセット音色や譜面をベースに鳴らすレベル”だと、どんな聞こえ方になっていたのかな?、ということだと解釈しています。

奥成氏:それもわかるんですけど、セガ・マークIII「ファンタジーゾーン」のオリジナルアレンジ曲はFMサウンドユニットを前提にはしていないので、それをそのまま持っていっても、ちゃんと鳴らない可能性もあるんですよね。どこにアサインしても変な音になってしまうような。

 それを無理矢理にやっても、もともとのサウンドアレンジをしたBo.(上保徳彦)さんの想定にない鳴らし方になってしまうかもしれなくて。それはどうだろう……という気持ちがありますね。

――なるほど、落としどころの難しい話ですね。専用に作るのなら手は入れたくなるでしょうし、音色やパラメーターのアサインもちゃんとやりたいでしょうし。割り込みをいっぱい使って厚みのある音を作りたいともなりますよね。

堀井氏:その音源で何ができるのか、どこまでドライバを把握して作り始めるのかというので違ってくるところがありますし、当時の納期がないなか、あのサウンドドライバで作る曲として考えると、あれほど豪華にならないというのはわかるんですよ。

 そのあたりは結局のところ、誰か1人、新入社員の人とかがものすごく音源を叩きたがって作り込んだら、ガラッと変わっていた……というような話だとは思うんですけどね。

 当時は本当によくあれだけ回したと思いますよ。だって、1タイトル作るごとに曲を倍作っている計算なんですよね。「ファンタジーゾーンII」だって、セガ・マークIIIで遊ぶとPSG音源にも切り替えられていいなぁって当時の僕は思ってましたけど。今考えると「ちょっと待て」と。倍作っているんだ、大変だ、と。

 ちなみに今回のFMサウンドユニット対応でも容量は結構大きくなってまして。「ファンタジーゾーンII」もサウンドのデータは倍以上になっていますし、FM音源対応した「ファンタジーゾーン」もめでたく、計算上1メガカートリッジには収まらなくなりまして。実機に焼いて遊ぶとしたら2メガ必要になります(笑)。

――なるほどー。誤解されているかもしれないというところの再確認ですが、今回の「ファンタジーゾーン」のFMサウンドは、全く別物のサウンドドライバを持ってきて鳴らしているということではない、ということですよね。「ファンタジーゾーンII」のサウンドドライバを使って、「ファンタジーゾーン」とFMサウンドユニットとで可能な音を鳴らしている、と。

奥成氏:そうです。1番の誤解はその「FMサウンドユニットで鳴ってない」というように思われているところですよね。そんなことはないんですよ(笑)。

堀井氏:それはねー、春日くんが悪いんですよ。OPLLであんな音を鳴らしちゃうから……(笑)。

――信じがたい、という。

堀井氏:それは僕もそう思います。ただ、いくつかそういう音を鳴らしているOPLLのゲームはあるので、理解はできるんですけどね。

奥成氏:Chibi-Techさん(エムツー所属のサウンドコンポーザー)の作ったPSG音源のファミコンサウンド曲がFM音源にしか聞こえない、みたいな状態ですよね。普通に聞くと、「FM音源で鳴らしているんでしょ?」と錯覚されて、逆に凄さがわからなくなってしまうような。

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(山村智美)