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「セガ 3D復刻アーカイブス2」インタビュー Part2

「ぷよぷよ通」- 奥成氏の猛烈な“1ユーザー的リクエスト”で、アーケード版の移植へ

「ぷよぷよ通」- 奥成氏の猛烈な“ユーザー視点リクエスト”で、アーケード版の移植へ

【ぷよぷよ通】

 今もなおシリーズ最新作が発売されており、人気を博している「ぷよぷよ」シリーズの第2作。開発をコンパイル、発売をセガが受け持ち、1994年にアーケード向けにリリースされている。

 当時のアーケードシーンでは対戦格闘ゲームが大きなブームを巻き起こしており、「ぷよぷよ通」においても対戦がクローズアップされ、前作になかった乱入対戦が可能となった。ライトに落ちものパズルゲームを楽しむ層から、対戦で頂点を目指す層まで、幅広い層に人気を博した。

 ハードウェアとしては、メガドライブの設計をベースにした基板「C2ボード」を使用。CPUにMC68000P10を搭載し、BGは2画面、スプライトは1画面最大80枚表示可能、サウンドICとしてYM3438 (OPN2C)、SN76496(DCSG)、ADPCMとしてμPD7759を搭載している。

 コンシューマー機への移植では、歴代のありとあらゆる機種に移植されたと言っても過言ではないほどに数多く移植されているが、家庭用オリジナル要素として、ストーリーやキャラクターが追加されている点が特徴。機種ごとに異なるが、「とことんぷよぷよ(1人プレイでひたすらに遊べるモード)」、「なぞなぞぷよぷよ(詰め将棋的に出された問題を解くモード)」、「みんなでぷよぷよ(最大4人で対戦できるモード)」などのオリジナルモードが加わるなど、機種ごとに多くのアレンジや追加要素が盛り込まれている。

 反面、純粋なアーケード版の完全移植は2011年に配信されたWiiのバーチャルコンソール アーケード版でエムツーによって初めて移植されている。ニンテンドーWi-Fiコネクションによるオンライン対戦にも対応していたが、2014年5月にニンテンドーWi-Fiコネクションサービスそのものが終了したことに伴い、本作のネット対戦もプレイできなくなってしまった。

――次は「ぷよぷよ通」について伺っていきたいのですが、最初はパズルジャンルからの収録タイトルは「ぷよぷよ通」ではなかったんですよね?

下村氏:ラインナップのお話を改めてすると、「パワードリフト」に決まる前にも、いろいろと新規収録の候補はあったんですよ。「エイリアンシンドローム」にするか、「ゴールデンアックス」にするか、あとは「ターボアウトラン」、それに「コラムス」などもありました。

堀井氏:(手元のラインナップ候補資料を眺めつつ)結構攻めてるなぁー。

――「エイリアンシンドローム」はやってみたいですね。立体視化されると効果もありそうです。

堀井氏:あれはすごいですよ。実は試しにちょっとだけ作ってみたんですけど良かったです。でも、全面を作るとなると相当厳しいですねー。

――「コラムス」という案に、奥成さんから「ぷよぷよ通」の方がいいのではと提案されたと、TGSのステージで語られていましたよね。

奥成氏:「パワードリフト」をやると決まって、それを中心にラインナップを考えていくときに僕も少しいじらせてもらったんです。「パワードリフト」があれば充分とも言えるんだけど、ラインナップの拡充を考えると、「アーカイブス1」よりタイトル数を増やしたいという気持ちがあって。

 それで、いっそ新規作品をもっと足したらどうだろうと考えて、以前のインタビューで堀井さんが「パズルゲームをやりたい。3D化するのも楽だし」って言ってたのを思い出したんですよね。

堀井氏:“楽そうだと思っていた”にして!

奥成氏:(笑)。比較的手軽にできそうなパズルゲームを移植して、タイトル収録数を増やしつつ作業時間も確保したい……という話ですね。パッケージに収録するにあたって、いろんなジャンルが入っていた方がいいな、似たようなジャンルが固まるとバラエティ感がないとは前作の時から思っていたので。そこでダウンロード版のシリーズで作っていた時には選べなかったパズルゲームなら、3D立体視化も移植もしやすいでしょう、と。

 というわけで「アーカイブス2」の新規収録のもう1本には「パズルはどう?」と、下村から聞いてもらったんです。そしたら、エムツーさんから「メガドライブの『コラムス』ならできるよ?」っていう回答が来たそうで。僕はそれに対して「またメガドラの『コラムス』やるのか?」と!

堀井氏:逆にまぁ、「また」だから提案してるんですよね。3月に発売された「龍が如く0」のコンパニオンアプリ内に「コラムス」移植する際、くまなく解析していましたから。3DSにも早く移植できそうだよ、と。でも奥成さんはお客さん視点で「……でも『コラムス』ってこの前出たばっかりだよね……」となって。

奥成氏:お客さんとしては、PS Vitaと3DSという違いがあるにしたって、エムツーさんが同じ年内に出していたタイトルをもう1度入れても、それはソフトのウリにはならないでしょう?じゃあパズルゲームで、セガの資産で、1番お客さんに喜んでもらえるのはなんだろう? と考えると、それはもう……「ぷよぷよ通」だよね、初代でもなく、と。

 それをまたエムツーさんに伝えて頂いたら、「わかりました、じゃあメガドライブの『ぷよぷよ通』を移植します」って返事が来て。僕はもうね、「何を言っているんだい?」と思って!

 エムツーさんとは以前にもWiiのバーチャルコンソールでアーケード版の『ぷよぷよ通』を移植したんですが、なぜあれをやったのかと言えば、ぷよぷよファンの方から「メガドラ版とアーケード版は別なんです! アーケード版だけのプレイ感覚があるんです! そこに僕らはときめくんです!!」という意見が、細山田(※)のもとに寄せられていると、彼から聞いていたからなんです。そういう話をエムツーさんにも伝えているのにも関わらず、「君たちはメガドライブ版を移植するというのか!?」という話で。

 で、メガドライブ版の「ぷよぷよ通」はメガドライブで動いてます。アーケードの「ぷよぷよ通」はメガドライブに近いとされるC2ボードです。「エムツーさんはギガドライブができたのだから、C2ボードの3D立体視化だって、きっとできるよね?」と。

 とまぁ……、そういう話をエムツーさんに伝えるといいですよって、下村に話したんです(笑)。


※細山田水紀プロデューサー……「ぷよぷよ」シリーズ総合プロデューサー。

堀井氏:いやーーー! 入れ知恵が凄すぎでしょこれ(笑)。

下村氏:僕としてはファンの皆さんに豪華に感じてもらえるのなら……と、「エムツーさん、これでお願いできませんか」と話してね。

奥成氏:そもそも本当は、「メガドライブ版『コラムス』を入れるぐらいなら、アーケードの『ぷよぷよ』と『ぷよぷよ通』、それにアーケードの『コラムス』と『コラムス2』の4本をやった方がいいんじゃないですか?」って下村に最初は話したんですよ。

堀井氏:すごいなそれ!無茶もいいとこ!!

奥成氏:でも、「パズルをそんなにたくさん入れるのもアレだから(笑)、このうち1作品入れたらいいんじゃないか」って話して。でも、それに対してエムツーさんから返ってきたのは、メガドライブの「ぷよぷよ通」にしますっていう返答だったから……どうも会話が噛み合ってないな-!と。

堀井氏:噛み合ってないって、そんな!

――「ぷよ通」ならアーケード版にしようよ、という奥成さんの考えとは噛み合ってないですね……(笑)。

堀井氏:そこはあれなんですよ、いつもかっ飛ばしているように見えるとは思うんですけど、我々も納期を気にしながらタイトルを選んでいるつもりなんですよ!

 これでも!これでも!!

――はい(笑)。

堀井氏:ホントですよ!? ……ホントですよ!!

 「パワードリフト」をやるのなら、他の荷物は最大限軽くしておかないと、ゴールテープは切れない、息切れちゃう。そう考えての話だったのに、この仕打ち!!

奥成氏:それについては、齊藤さんが「パワードリフト」を手がけるというのは聞いていたので、それならまだ別の開発ラインは空いてるよねと思って。

堀井氏:! 空いてるとかそういう……ぶふっ!

(堀井氏、ついに吹き出す)

下村氏:まぁほら、キャパシティのギリギリよりもちょっと上をやっていかないと。面白いものはできないので!

堀井氏:……言っていることはわかる!

――それは確かにプロデューサーとしての手綱の握り方というか、ハンドリングというか(苦笑)。

堀井氏:出資者は無茶しか言わねぇですよぉ~!!

――もう「パワードリフト」に人手を使っているのに、アーケードの新規タイトルを1度別ハードでやっているとは言え、乗っけるというのは……。ギリギリよりちょっと上なのか、だいぶ上なのか(笑)。

堀井氏:もう今回は絶対に間に合わないものが出ると思っていて。「アーカイブス2」の開発チーム立ち上げの時にディレクターの松岡に内容を話したら、話した瞬間に「無理!俺は降りる!!」ってきっぱり言われて。交渉の結果、なんとかやってくれたというぐらいだったんですよ。

奥成氏:ちなみにこのラインナップ選定のくだりは、まだ納期とか予算とかが決まっていない頃だったんですけどね。

堀井氏:それでもやっぱり最終的には年末とかって言うじゃないですか~。

奥成氏:うん!(笑顔で)。

――狙っている発売時期を察するところはありますよねー。

奥成氏:僕は今は1ユーザーの立場でリクエストしているので(笑)。

堀井氏:助っ人に入ってもらうプログラマーさんも最強の人を揃えるから、とごまかしてスタートしてもらったんですけど、やっぱり間に合わないよ、と松岡は言っていましたよ。

 本当ならセガ・マークIII「ファンタジーゾーン」のFMサウンドユニットあたりが間に合わなくて未収録になりかねない状況だったんですけど、そこは新人の春日くんの活躍があり、どうにかこうにかやりきれた、という感じなんです。

――当初は想定外だった新戦力の活躍があって、なんとか間に合ったんですね(笑)。

堀井氏:うちにはサウンド以外にも新人が入って、それが前述の久保田なのですが、彼もまたかなりのセガマニアで。その人が3DSで「パワードリフト」が動いている開発現場を見て、「はっ!動いちゃったんだ……!!」ってぼそっとつぶやいていたんですよ。ユーザーさんから見たって、3DSで動くなんて思ってないようなものなんですよ「パワードリフト」って。

――確かに、そういうレベルのものですよね。セガサイドとしては、「ぷよぷよ通」を加えても、「パワードリフト」も動くし、納期にも間に合うし、大丈夫でしょうという確証みたいなものはあったんですか?それとも……ドキドキしてました?

下村氏:やっぱりドキドキはしてましたよ(笑)。

(一同笑い)

下村氏:社内の報告会で「大丈夫なの?」と聞かれたときに、「大丈夫ですよ」と答えつつも、内心は「これ、ピノキオだったら鼻伸びているな……」って思っていました。

 「間に合いますから」と言いつつも、僕の中では「間に合わせますから」って言っているつもりだった……みたいな。それでまぁ、エムツーさんには「僕は大丈夫って言っちゃったんで。後はよろしくお願いしますー」と。

堀井氏:「あとはよろしく」パターンですよね。

――奥成さんとは別のプレッシャーのかけかたですね。……聞いているこっちの胃が痛くなってきました(笑)。

【ディレクター松岡毅氏よりコメント頂きました】

エムツー ディレクター 松岡毅氏

 「セガ 3D復刻」シリーズのディレクターであり中心人物。本インタビューシリーズでもこだわりや作り込みの中で数多く名前が登場している。

――「セガ 3D復刻アーカイブス2」の開発立ち上げ時に、収録タイトルのラインナップ案を聞いて「無理!俺は降りる!!」という反応をされたと伺いました。当初の見込みや心境、制作中の苦労などをお聞かせ頂けますでしょうか?

松岡氏:もう当初のことは覚えていませんが、「無理!俺は降りる!!」って、なんかそのあとのシーンはドアの向こうでバケモノに襲われてそうですね。

 それはそうとして、本当にもう見込み通りに進まないプロジェクトでした。見込みでは収録タイトルは9本だったんです。なんで「ファンタジーゾーン」が入っているのか。あまつさえFM音源で鳴っているのか。ああ。わたくしは。

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(山村智美)