インタビュー

「セガ3D復刻アーカイブス」インタビュー第3弾!

「環境音」発案の並木学氏に聞く、サウンド面での進化とは?

12月18日 発売

価格:3,980円(税別:パッケージ版/DL版)

CEROレーティング:B(12歳以上対象)

 ダウンロードソフトとして展開されてきた「セガ 3D復刻プロジェクト」のメモリアル的パッケージタイトル「セガ3D復刻アーカイブス」。12月18日よりついに発売となる。インタビュー第3弾は、エムツーのチーフサウンドクリエイター・並木 学氏をメインに、セガの奥成洋輔プロデューサー、そしてエムツーの堀井直樹社長に続けてお話を伺った。

 実はこれまでのシリーズインタビューで、「環境音」の導入話に関しては、「並木さんが発案者」ということは伺っていたものの、実際にどのようないきさつで導入されていったのか、といったあたりまでは細かく聞けずにいた。そして「セガ3D復刻アーカイブス」で「Ver.2」に生まれ変わった「スペースハリアー」のサウンド面の話など、興味深くお話が伺えたので、ここからご紹介していこう。

□「セガ3D復刻アーカイブス」インタビュー
・第1弾
・第2弾

「3D スペースハリアー」で導入された環境音は「実装するまで誰にもわかってもらえなかった」

2012年12月26日に配信開始となった「3D スペースハリアー」のムービング筐体モードはこれまでの移植作にないインパクトがあった

―― 「セガ3D復刻アーカイブス」に「スペースハリアー Ver.2」が収録されたこともありますので、並木さんには、「3D スペースハリアー」で導入されて話題の1つになった「環境音」の発案者ということで、その当時のエピソードからお伺いしたいな、と思っていたんです。これまでのインタビューでは並木さん発案、というお話を伺っていたところなので。

並木氏: あれは、2012年の1月にエムツーに入社してすぐ、開発中の「3D スペースハリアー」を見せてもらったんですよ。すでにもう画面がムービングしていて、立体視対応もできていたんですが、まだ色々なところが未完成の状態でした。サウンドはもう鳴っていたかな。で、「ほう、これはすごいな……」と。

 それを見てすぐの頃に、「筐体のモーター音などを入れたらいいんじゃないか」という提案をした記憶があります。その時は提案レベルだったんですけれども、その場にいたメンバーからは「ハァ?」という反応でピンと来なかったようで。あくまで雑談レベルの、ギャグかなんかだと思われていたんじゃないかと(一同笑)。

堀井氏: だってそうじゃないですか……やるまでわからないって。すごく不甲斐ない話なんですけれども。

並木氏: あれは実装するまで誰にもわかってもらえなかったですね。

堀井氏: 実機の筐体音もそうだし、自分も傾くはずなのに、何でゲームの中の画面が傾くのが面白いのか、というのも、実際に見てもらうまでわかってもらえる人が少なくて。環境音も、実際に入ってみて初めて「おおー!」ってみんながびっくりする、ということがありましたね。

奥成氏: 流れとしては、最初に、ゲーム内に筐体を再現して、それを動かすというのは、齊藤さんのアイデアだったんですけれども、齊藤さんは周りの承諾を得る前に画面が動くところを作っちゃってたんですよね。うちに提出されたバージョンにはすでにそれが入っていて。

 僕はそれを最初に見たとき、正直あまりピンと来なかったんですけれども、会社の周囲や他部署の何人かに見せてみたら、こういうゲームに関心のない人も含めてとても好評だったんです。それで「これは柱の1つになるかもしれない」と思っていたんですが、そこに松岡さんから、「筐体音も入れるんです」って話をされて。「なんでそれを入れるの?」って聞いたら、「並木がどうしても入れたいって言ってるんです」って……。

並木氏: それで、筐体音を録音してもらったんです。最初の録音の現場に自分は同行できなかったんですが、うちのChibi-Techに録音エンジニアとして参加してもらって。で、話をもどしますと、パッドの操作にあわせて画面が傾く開発途中のバージョンを触った時に、当時の体感筐体のように動くというところはものすごくいいな、と思ったんです。なおかつ欲張ったというか……「これに何があったらいいか、何が足りないのか」を考えていて……たしか社長が最初に僕へ見せてくれた時は、「こんなの作っているんだ、すごいでしょ」ってニュアンスでしたよね?

堀井氏: 見せた見せた。今で言えばドヤ顔ですよ。

並木氏: 本当は社会人として、会社員としては「社長! すごいですね!」って言えばよかったんでしょうけど(一同笑)、それを見て割とプロモードというか、スイッチが入っちゃって、考えこんで割と反応が薄くなっちゃって(一同笑)。なおかつ、環境音というか「筐体の駆動音、モーターの音を入れるんですよ!」って、いきなりボールを投げ返しちゃったんですけれども。

堀井氏: こちらからしたら「え?」って感じの。

並木氏: そうしたら、せっかく見せたのにそれほど驚いてもいない様子だし、さらにまた変なことを言っているし……というニュアンスでその場にいたメンバーには受け取られたと思うんですけれども、それが始まりですかね。

 僕の入社前から開発が進んでいたものだし、松岡さんや、画面を傾けるように作った齊藤君本人ですら、最初は説明してもピンと来ないような状態だったんですよね。「これはもう、実際に録音して組み込んで判断してもらうしかないな」って思ったんですけれども、自分としては、「画面が傾くんだったら筐体の駆動音を入れればバッチリだ」と頭の中の3DSでスピーカーから鳴っている様子までシミュレートできていたので……。すごく手応えや説得力が増すし、当時遊んだことのある人なら、「ニヤリ」と喜んでもらえるんじゃないか、という確信があったので、筐体音を録音してもらいました。

環境音収録は何度も行なわれている

 録音してもらったデータを送ってもらって、こちらでちょいちょいっと編集したものを齊藤君に「組み込んでみてよ」ってお願いして。たぶん、齊藤君たちも半信半疑だったと思うんですけれども、組み込まれたものをプレイしたときの最初の反応は、僕は直接見ていないんですが、「松岡さんがゲラゲラ笑いながら社長のところに見せに行った」って話を聞きました。

堀井氏: うん、そんな感じ。だって笑うしかないんですよ。本当に。

並木氏: 「これはバカだな」って。

奥成氏: 収録に行ったときも、発案者の並木さんがいない状態で録ったので、どの音を録るのか、というのが僕にも正確な所がわからなくて。「レバーを傾けたときとセンターへ戻るときは音が違うね」とか、「前後も違うけれども、斜めに動かすところはどうするんだ?」とか。「斜めは左斜め前なら左と前の音をMIXするから大丈夫だ」とか……現場で「この音は違うから別に録ったほうがいいね」と言いながら……「ボタンも全部音が違うから、録っとこう」とか、そんな感じで試行錯誤で録音した覚えがあります。

並木氏: 自分も現場にいられればよかったんですけれども、事情で難しかったので……。現場に居合わせた方々の判断で録音してもらった素材をとりあえず入れ込めればいいかな、という感覚だったんですよ。今でこそいろんな体感タイトルのリリースの時には普通に入れていますけれども、まずは割とおまけとか、そんな感覚だったんですかね。ただ、あるとないとではすごく違うんじゃないか、ということで、可能性を感じていたので、最初は試行錯誤だったと振り返ります。

 ただ、当時を知っているお客さんには「これだよ、これ!」って言ってもらえる確信だけはあったんですよね。ナゾの確信が(一同笑)。妙な説得力があって。実際、自分もその波形を入れたROMを自分の仕事部屋でプレイしたときに、「これだ!」と思ったので(笑)。あとは調整すればOKだと。

 最初は社内でもいろんな意見があって。ゲラゲラ笑って「いいね!」と言う人もいれば、筐体が軋むときのミシミシ音が入っていたので、それが製品イメージとして“ポンコツ感”というか、「古臭い感じがするのはよくないのでは?」という意見とか、賛否両論いろいろありました。

堀井氏: そうだねー。

並木氏: 軋み音に関してはちょっと調整したりして、そういった印象を持たれないように、なおかつ筐体音から逸脱しないように入れ込んだのが「3D スペースハリアー」でしたね。

 1回それが世の中に出て、プレーヤーの皆さんに「こういう音が入るのも意外といいものだね」と受け入れられると、あとは通しやすいというか(笑)。

奥成氏: だから、「3D スペースハリアー」から開発期間的にそれほど開いていない「3D スーパーハングオン」では、筐体音を入れていないんですね。もちろんモーター駆動ではない筐体だったということが大きかったんですが……今だったら「ガコンガコン」って筐体を動かした時の音を入れていたかもしれませんね。

並木氏: 多分、これから「『スーパーハングオン』をリニューアルするぞ」ってなったら、録音に行きますけれどもね(笑)。アクセルやブレーキの音とかも。

―― ブレーキレバーを放したときの「パチン」って音とかも入れちゃいますよね。

奥成氏: そのくらい、試行錯誤でスタートしたもので、しかもギリギリに入れたものだったので(一同笑)。開発の大半は、フレーム落ちや処理落ちだって最後の最後まで苦労していたものですから。

並木氏: だから「3D スペースハリアー」は本当にプログラム的にもがんばって3DSを当時の限界に迫るレベルで使い切っていましたし、環境音なんてアホなこと、それまで誰もやったことのないようなことをこう、入れ込んでいった感じだったので、本当によくやったなと思いますね。

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(佐伯憲司)