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★PCゲームレビュー★

「DIABLO」の再来と期待された新作MORPG
北米バージョンの正式サービスを先行体験

「Hellgate: London」

  • ジャンル:オンラインアクションRPG
  • 開発元:Flagship Studios
  • 発売元:Electronic Arts
  • 対応OS:Windows XP/Vista
  • 価格:49.99ドル(英語版)
  • レーティング:ESRB:M(17歳以上)
  • 発売日:10月31日(発売中)



 今回紹介する新作「Hellgate: London」は、Blizzard Entertainmentの「DIABLO」と縁の深い作品だ。開発元のFlagship StudiosはBlizzardのスタッフらが独立して設立した企業で、同社を率いるBill Roper氏こそ「DIABLO」の生みの親として名高い人物である。氏による最新作「Hellgate: London」は、まさに「DIABLO」の正当なる後継として世界的に期待されてきた作品なのだ。

 Flagship Studiosの第一作となる本作は「DIABLO」で確立されたMORPGのスタイルを踏襲しながらも、完全3Dの世界で銃器によるFPSライクなプレイも可能という意欲的なゲーム性を持っている。本稿では、「DIABLO」の再来として世界的に注目を浴びてきた本作の現状を、英語版の内容を通じてお伝えしたい。


■ 基本システムはハック&スラッシュスタイル。ネットワーク特化型のMORPGとしてオンラインサービスがスタート

本作はハック&スラッシュスタイルのRPGの新化系を目指し、アクション性が非常に高い作品になっている
 「Hellgate: London」は、ソロや少人数パーティで冒険するMORPGスタイルのオンラインゲームだ。製品版に同梱されるクライアントにはオンライン用とオフライン用の二種類のバージョンがあり、オフライン用を選べばネットワークに繋がらない環境でもソロゲームを楽しむことができる。オンラインプレイでは地域毎の中央サーバーに接続し(現在は北米と欧州)、そこでパーティを組んだりアイテムを交換しながら冒険するというのが基本的な仕組みだ。

 まずはじめに読者の皆さんにご報告しなければならないのは、本作の北米・欧州版が非常に見切り発車感の強い状態でリリースされてしまったという事だ。本作の現状はユーザーから「有料ベータテスト」と揶揄されてしまうほど多数のバグ・不具合を抱えており、とても純粋に楽しめる状態ではない。

 このことは国内サービスを予定しているバンダイナムコゲームスが本作の正式リリースの無期延期を発表した経緯と関連しているかもしれない。各種バグの詳細については後段で述べることとするが、まずは本作がそういった問題を抱えている点を認識していただいた上で、本作のゲームプレイについてご紹介していきたいと思う。

・最大の特徴は「DIABLO」のDNAを色濃く継承したゲーム性

瘴気に包まれたロンドンの街は薄暗く、魔物に溢れている。そんな世界を救うため剣や銃を持って戦うというゲームだ
キャラクタの能力や装備のシステムはオーソドックスな形式。インベントリ面積が限られているのでアイテム管理に気を使う
強い敵を倒せば貴重なアイテムが沢山ドロップする。未鑑定のレアアイテムを鑑定する瞬間が楽しい
 ゲームの舞台は近未来、2038年のロンドン。世界各地に突如開いた「ヘルゲート」により地上は壊滅し、人類はバリアが施された地下鉄ステーション内でのレジスタンス活動を余儀なくされている。魔物を征伐するために与えられた手段は、古代から伝わる魔術、特殊なエンチャントを施された剣、そして現代技術を対魔物に応用した銃器である。

 完全3Dのグラフィックながら、本作のプレイ感覚は「DIABLO」に非常によく似ている。基本的なゲームスタイルは、ワラワラと向かってくる大量の敵を武器やスキルを駆使して次々に倒していくというハック&スラッシュのスタイルだ。剣を使ってプレイすれば「DIABLO」ライク、一人称視点で強力な銃を使い雑魚敵を相手にしているときの感覚は「Serious Sam」のプレイ感覚に近く、多数を一挙になぎ倒す爽快感がある。

 RPGとしての基本をなすキャラクタの成長は、経験値の蓄積によるレベルアップ、レベルアップ時に得られるステータスポイントとスキルポイントを割り振るというシステムだ。このあたりは「DIABLO」スタイルのRPGとして基本を抑えている感じで、シリーズの経験者なら全く違和感なくゲームに入れるだろう。

 ワールド構成はエリア制で、冒険エリアはすべて自動生成のランダムマップ。プレーヤーがエリアに入るたび、異なる構造のマップで冒険できるというわけだ。これも「DIABLO」から継承されたシステムではあるが、完全3Dの世界がほぼ破綻なく自動生成されるというのは相当凄いことだ。現状ではまだ調整不足の部分もあり、確率は低いが出口に到達できないようなマップが生成されることがあるのは残念なところである。

 そして本作を何よりも「DIABLO」的なものにしているのが、アイテムに付与される各種追加能力の仕組みである。本作で冒険中に手に入る武器・防具など装備可能なアイテムには、攻撃力向上やキャラクタの基本能力向上など追加能力が付いていることがある。追加能力は多様な種類があり、その強度もさまざま。アイテムがドロップするたびにランダムな追加能力が複数付与されることで、同種のアイテムでも個別の性能には無限に近い組み合わせが発生するというわけだ。

 アイテムには追加能力のない通常アイテムのほか、若干の追加能力のついた「エンハンスド」、それより強力な「レア」、さらに希少な「レジェンダリ」、そして固有の特別な能力を持つ「ユニーク」という等級がある。プレーヤーはより良いアイテムを求めて冒険エリアで戦い続け、いいアイテムを拾えば装備を更新して自身を強化していく。その可能性を目指してさらなる冒険を繰り返したくなるワクワク感、本作のゲームプレイはこの要素が根幹を成しているのだ。

登場する敵には「DIABLO」と同じくレアモンスターやエピックモンスターといった強力なバージョンも存在。雑魚敵もデカいの小さいの各種織り交ぜて大量に登場するので、どんどんなぎ倒してやろう

マップは室内・屋外と様々なテーマで自動生成されるため、冒険するたびに構造が変化。完全3Dの世界でこれを実現したことは高く評価したいところだ

強力な敵を倒したり、奥地の宝箱を開けば良いアイテムがドロップする。ゲーム中常時駆動している「ミニゲーム」という要素もあって、画面右下のアイコンで示される条件をクリアすればその場にアイテムが沸くという仕組み


■ 銃を使ってFPSライクなプレイも可能。全6種のプレーヤークラスは装備によって戦い方が変化

強力な火器で敵が近づく前に狙い撃ち。完全3Dだからこそ可能なゲームプレイを楽しめる
 前項では本作が「DIABLO」と似通っている点を挙げたが、やはり最新ゲームの使命として新機軸をふんだんに盛り込んでいる点も本作の特徴である。最大のポイントは、RPGでありながらFPS的なプレイも可能という、ゲーム性の多様化を積極的に狙ったゲームデザインにある。

 本作では武器としてRPGにありがちな剣や魔法だけではなく、銃器も主要な存在だ。使用可能な武器の分類はプレーヤークラスによってほぼ決まるシステムなので、プレイする人によって剣と魔法の古典的RPGスタイルになり、銃と手榴弾のFPSスタイルにもなるといった違いが出てくるわけだ。

 そのプレーヤークラスは全6種類。クラスは「Templar」、「Cabalist」、「Hunter」という3つの大カテゴリに分けられており、使用可能な武器はこのカテゴリによって決まる。「Templar」カテゴリのクラスならば剣と盾が主要武器となり、「Cabalist」ならば魔法を詠唱するためのフォーカスアイテムと生物を武器化した銃器など。そして「Hunter」カテゴリは現代技術の延長線上にあるライフル銃などを駆使する。

【Templar】
「Blademaster」:剣を駆使し、ダメージ重視のスキルで敵をなぎ倒す 「Guardian」:防御力がありタフなクラス。パーティプレイではタンク役になるだろう


【Cabalist】
「Evoker」:魔術を使う攻撃的なクラス。現在のところ使いこなすのが全クラス中最も難しいようだ 「Summoner」:召喚獣を駆使して戦うクラス。召喚内容の組み合わせにより万能性がある


【Hunter】
「Marksman」:銃火器の能力を最大限に引き出せるクラス。タフさはなく回避で勝負 「Engineer」:Summonerと同じペットクラスながら、相棒は各種マシーンだ


・武器特性とスキルの組み合わせで戦闘スタイル作っていく楽しみ

パラメーターが良くても攻撃を命中させなければ始まらない。MarksmanクラスはFPSと同様に照準能力がプレーヤーの強さを変える
クリティカルヒットで「リコシェット」スキル発動!大量の跳弾が敵に襲い掛かって大ダメージ
地面を火の海にするナパームランチャーで多数の敵を一挙に討ち取る。武器によるプレイの変化が顕著だ
 FPS好きの筆者は主にMarksmanクラスでプレイした。このクラスは基本的にFPS視点でプレイするため、傍からはRPGには見えないという本作ならではのプレイが楽しめる。本作は一般的なオンラインRPGにあるようなオートターゲットシステムがなく直接狙って攻撃を当てる必要があるため、MarksmanはFPSスキルの高いプレーヤーが有利に戦えるというプレーヤースキル依存の強いクラスでもあるようだ。

 本作は銃という存在があるため、選択する武器の特性によってプレイスタイルがガラリと変わる特性がある。剣が使えず基本的に遠距離射撃が基調となるMarksmanでも、一般的なFPSでは近距離でショットガン、遠距離でライフルといった選択があるように、武器の特性に応じて戦い方が変化するのである。逆に、敵の種類や状況に応じて武器を切り替えることもゲームの戦略性として非常に重要な位置づけだ。

 筆者のお気に入りの構成は、遠距離ではオーソドックスなマシンガン系の武器を使い、中距離や近距離で硬い敵を相手にする場合や多数の雑魚敵を相手にする場合は「クラスターライフル」と呼ばれる特殊な挙動をする武器を使うというもの。これにクラス固有のスキルを組み合わせて戦闘を組み立てるのがプレイの骨子だ。

 この「クラスターライフル」は弾丸が命中すると5個程度の子弾に分裂し2次ダメージを与えるという特性がある。この特性をMarksmanのスキルである「リコシェット(跳弾)」と組み合わせると、四散した子弾がさらに跳弾・2次分裂して無数の攻撃判定が発生する。これをうまいこと敵の足元に当てれば、地面と敵の体の間という狭い空間で兆弾が往復し、全部ヒットして途轍もないダメージを与えるという按配だ。適正レベルの相手ならボスキャラ級でも瞬殺が可能。武器とスキルの組み合わせで強力に戦える好例で、攻撃が完璧に決まると非常に楽しい。

 この「リコシェット」スキルはこのような使い方で非常に強力だが、マシンガンなど直接弾を当てるタイプの武器とは非常に相性が悪い。これは跳弾が主に後方に飛び散り2次ダメージをほとんど期待できないためだ。このためマシンガン系の武器を使う場合はMarksmanの強力なスキルのひとつである「ラピッドファイア(連射)」を使用する。このスキルは精度が落ちるものの連射スピードを一定時間爆発的に向上させるので、純粋にダメージ向上が期待でき、連射系の武器と相性が良い。

 筆者のMarksmanキャラクタは、この2つのスキルを重点的に育て、サポートスキルとしてクリティカルヒット率を向上させるスキルや、グレネードによる属性ダメージを与えるスキルを取得した。攻撃には物理・火炎・電撃などの攻撃属性があり、敵によっては特定の属性に耐性を持つものも多いため、常に複数の選択肢を用意しておくことがスムーズなプレイにつながる。本作では3種類の装備をホットキーで切り替える機能があるので有効活用したい。

少しだけプレイしたBlademasterクラスでは近距離に詰め寄られてから戦闘開始。殴り殴られながら攻撃スキルを使ってタフに戦うのが基本のようだ

・「MOD」パーツによる多様な武器のカスタマイズでお気に入り武器を長寿命化

装備のアップグレードは鉄クズなどアイテムを分解して得た資源を使っておこなう。基本性能が向上する
各武器にはランダム数のMODスロットがある。ここにアイコンの種類に対応したMODパーツをはめ込んで強化できる
各種MODを装着すると能力が付与され性能評価数値も向上。長く使うにはMODパーツの選択も重要だ
 筆者のように特定の武器に愛着を持つようになると、当然その武器を長く使いたくなる。レベルが上がっても古い武器をそのまま使っているのでは、いずれダメージが不足することになるから、適正に武器を強化していく手段を持つことが重要だ。本作ではこのために、武器の基本能力向上の手段と「MOD」パーツ装着による追加属性の付与というシステムが搭載されている。

 基本能力の向上は、各ステーションにある装置で行なう。装置をアクティブにするとパネルが開くので、アップグレードしたい武器と、そのために必要な資源を投入する。資源はクズ鉄や電装パーツなどで、ドロップアイテムを分解して得られるものだ。アップグレードされた武器はアイテムレベルが1向上する。拾った時点から+5のレベルがアップグレードの最大回数となるため、それ以上長く使いたければ同種の、より基本レベルの高い物を拾うしかない。

 他方、「MOD」パーツ装着によるカスタマイズはさらに柔軟なシステムだ。「MOD」は「DIABLO II」で言う宝石に近い存在で、ドロップアイテムとして手に入る小さなパーツだ。マガジン、ロケット、燃料、バッテリー、テック、ルーンの6種類がある。通常はMODひとつで属性ダメージ付与や射程距離向上、クリティカルダメージ向上などの効果をひとつかふたつ持っている。武器にはランダムで決定される数のMODスロットがあり、対応する形状のMODパーツを装着して追加能力をつけていくという仕組みだ。

 そうなると当然、同じレア武器でもMODスロットの数が多い武器のほうがより強力にカスタマイズできる、ということになる。MODスロット2個の「レジェンダリ」武器よりも、MODスロット5個のノーマル武器のほうが結果として強力になるという事も多いため、良い武器がドロップしたらまずMODスロットの数をチェックして評価することになる。しかしMODは、装備するために主に高いWillpowerステータスを要求するので、MODを多数つけたら要求ステータスが高くなりすぎて装備できなくなった、ということにもなりがち。要は後々のことまでしっかり計算した上でカスタマイズすることが重要というわけだ。

・より良いアイテムを求めてエリアを彷徨う。「DIABLO」的なゲーム性はハマリ度が高いが、きつい縛りに辟易

強力なレアモンスターとの対決は、勝利して得られるアイテムへの期待から楽しさが増す
現在、最も貴重で強力なはずのユニークアイテムに不具合がある。付与されているべき追加属性が一切消えており、通常アイテムと大差ない性能になってしまった
 やはり装備を強化するなら最初から強力なアイテムを拾えばいい、というのが本作の基本中の基本。敵を多数倒して、ドロップアイテムを拾っては鑑定して良ければ使い、合わなければ分解してパーツにする。この繰り返しだ。このゲーム性はさすがに「DIABLO」由来ということで、アイテムの付与効果の組み合わせがほぼ無限にあるというランダム性からくる未知のアイテムへの期待感が、本作のモチベーションの大半を占めている。

 ただ残念なのは、クラスカテゴリ毎に装備可能なアイテムのジャンルが決まっていることだ。筆者がプレイしたMarksmanクラスはHunterカテゴリの武器防具が使用できるが、使用不可能な他クラスの装備も滅法手に入ってしまう。たとえ貴重な「レジェンダリ」級のアイテムをゲットしたところで、自分のクラスで使えなければ分解してパーツにしてしまうしかない。他のMMORPGのようなオークションなどプレーヤー間取引の手段がほとんどない本作では、自分で使えないアイテムはほとんどゴミなのだ。

 また、装備できるアイテムであっても、レアアイテムに付与されている追加能力が、同カテゴリの別クラスのスキルを強化するようなものである確率が高い。筆者のプレイしたMarksmanで、同じHunterカテゴリのEngineerクラスの「HASTE BOT」スキルを猛烈に強化するアイテムを拾ったところで、全くありがたくない。よって、この手のレアアイテムも即分解。結果として、自分にとって本当に嬉しいアイテムがドロップする確率はとても低いのだ。

 さらに本作は強力な武器・防具を装備するために必要なステータスの要求がきつい。強い武器はStrengthやAccuracyパラメータを多量に要求し、MODはWillpowerを食い尽くす。そんな時はキャラクタの基本パラメータ向上の追加効果のついたレア防具を全身に装備したくなるものだが、その手の装備はStaminaを異常なほど必要とするため、装備できる上に強いという、本当にほしいアイテムを手に入れられる確率は、さらに低くなってしまっている。プレーヤーは、その希少な確率に遭遇するまで、怒涛の勢いでゴミアイテムを分解し続けなければならない。


■ オンラインプレイは中央サーバーに接続。肝心のマッチングロビーは、機能が貧弱。改善を求む

冒険の拠点となるステーションには、パーティ以外の他のプレーヤーもいてロビーのようになっている。ただしパーティ募集など支援機能が少なく交流しにくい
複数のクラスでパーティを組めば前衛・後衛といった役割分担が自然とでき、楽しいものである。その分自動的に敵も強力になり、手応えのある戦いに
 本作のオンラインプレイは、各地域毎に用意された中央サーバーに接続する形態をとっている。冒険エリアはMO形式でありソロや少人数パーティでのプレイが基本となるものの、冒険のスタート地点となる各ステーションはゲームロビーのような空間になっており、ここでログイン中のプレーヤーと出会うことができるわけである。

 ステーションには消費アイテムを購入できるショップや、個人用のアイテム倉庫、お金を払って「レジェンダリ」以下の等級アイテムに追加属性を付与できる装置、資源を使ってアイテムの基本性能を向上させる装置などが設置されていて、装備の調整やアイテム管理を行なえる場所になっている。

 ステーションでのパーティ結成に関して言うと、「DIABLO」の「Battle.net」のようなチャットシステムベースのロビー機能と異なり、本作はチャット機能が非常に貧弱な上、パーティ募集のための支援機能がない。唯一存在するオートパーティ機能は、アクティブにしておけば冒険エリアにソロで入るときにレベルの近いプレーヤーを自動的にマッチングしてくれるというもののようだが、ほとんど機能していない。筆者の場合、欧米と生活時間帯が違うこともあるが、ノーマルゲームを一通りクリアするまでにマッチングできたのは1回だけだ。

 必然的にパーティプレイは知り合い同士の内輪グループで申し合わせてプレイすることがメインになってしまっている。せめてパーティ募集中の意志表示のできる掲示板か、そのために区分けされた場所があればもう少しなんとかなったのだろう。このあたりを改善しなければ、本作はオンラインRPGサービスとしてほとんど成立しないのではないだろうか。

 また、アイテムのトレードは2者間の直接取引きのみが実装されており、他のオンラインRPGにあるようなオークションやマーケットシステムはない。チャット機能が貧弱すぎて誰も使っていないこともあって、誰が何のアイテムを持っているかを知る手段がほとんどなく、自分で使えないレアアイテムはNPCショップに売られるか分解されてスクラップにされるかのどちらかの運命を辿ることが多い。この点も、冒頭で述べた本作の「見切り発車感」を感じる点である。

・オプションとして月額課金サービスによる追加要素も、現状ではほとんど魅力なし

 本作のオンラインプレイの基本機能は無料で利用できるが、有料会員のオプションもある。現在月額9.95ドルの料金で利用できる有料会員サービスに登録すると、ゲーム内で各種特典が受けられるというものだ。現在のところ、有料会員が得られる特典で目立つところは以下のようになっている。

・個人倉庫の容量が拡大する
・ギルドが結成できる
・ハードコアモード(一度死ぬとキャラクタロスト)がプレイできる
・有料会員限定の特別アイテムを獲得できる

 倉庫の容量拡大は長く続けるプレーヤーにとってはありがたいところ。ギルドに関しては現在のところメンバー間のチャット機能しかなく、それが正直メリットと呼べるかどうか怪しい。「ハードコアモード」はごく一部のプレーヤーがプレイしたがるかもしれないが、「DIABLO II」にあったようなランキングシステムが稼動していない現状では魅力に欠ける。特別アイテムは複数個用意されているものの、トレジャーハンティングが本筋の本作ではあくまでオマケ的な要素に留まる。

 将来的には、有料会員限定の追加のマップや新規モンスター、追加武器に追加クエスト、あるいは新キャラクタクラスの利用が可能になるといった予定発表は行なわれている。しかしゲームに不具合の多い現状では、こういった魅力的な追加要素が味わえるのは当分先のことになることだろう。当初は有料会員だけのコンテンツとされていた高難易度の「エリートモード」は、なし崩し的に無料会員にも解放された。少なくとも現状では、月額9.95ドルを支払い有料会員になって得られるものはわずかだ。


■ バグ、バグ、バグ……どこを見てもバグまみれの現状。見切り発車感の漂う完成度の低さに疑問符

 基本のゲームシステムとして「DIABLO」スタイルを踏襲し、新しいゲーム性を取り入れる試みもふんだんに取り入れている本作を、スペックどおりに遊ぶことができれば非常に楽しいゲームであることに疑いの余地はない。しかし、正直なところ本作はリリースするのが早すぎた。明らかにバグや不具合が多すぎるのである。冒頭で指摘したことをここで詳しく述べたいと思う。

 まず、これまで筆者が実際に遭遇したバグ・不具合を列挙してみよう。思いつくメジャーバグだけで10個以上は羅列できる。しかもそのうちのいくつかは、まともなゲームであれば発売を見送るであろう致命的なものだ。特にメインクエストを進められなくなるような不具合は論評にも値しない。

・ローディングが終わらず無応答になったり、ゲーム中にクラッシュする
・エリアチェンジ後、同エリアに居るはずのパーティメンバーが見えなくなる
・銃や魔法などのヒットエフェクトなど視覚効果が頻繁に見えなくなる
・凸凹のある地形で頻繁にスタックする。ジャンプしなくても歩いているだけでスタックする場所もあり
・モンスターが地形の中にハマる。アイテムも同様の場所に出現することがあり、ターゲットできないので取れない
・全ての経路が行き止まりで、決して出口に到達できないマップが生成される
・冒険エリアでドロップしたユニークアイテムが全て追加効果無し。結果として通常アイテム並みの性能。
・ステーションなど冒険エリア以外で、重要なNPCが見えなくなりゲームが進められない
・後半のACTで、クエスト達成に必要なキャラクタやオブジェクトが出現せずクリア不可能になる
・終わったクエスト用の「捨てられない」属性のアイテムがそのまま残り、インベントリを圧迫する

とにかくいろんな場所でスタックしてしまう。動けなくなったら“/stuck”と入力してバンザイをして脱出だ
一時期、筆者の個人倉庫は無用のクエストアイテムで埋まっていた。これではプレイする意欲がなくなってしまう
 パーティプレイを楽しもうというときに、エリア内のメンバーが見えなくなる現象が頻発するという不具合はいただけない。エリアに入りなおせば回復を期待できるものの、1エリアの攻略が10分少々というゲーム性のため、相手から自分が見えているか、自分から相手が見えるか、という事を常に気にすることになる。間違いなく致命的なバグだ。

 地形にハマって動けなくなるスタック現象も、驚くほど頻発する。これからこのゲームをプレイしようとしているユーザーは、スタック状態を脱する“/stuck”コマンドを覚えておこう。知らずにプレイすれば、ゲーム開始30秒でハマってしまうかもしれない。それくらいの地点に、筆者が複数回スタックしたポイントがあるのだ。

 クエスト関係では、βテストで解放されていなかった中盤以降のバグが目に付く。メインクエストが進行できなくなるバグは本来ならば存在すら許されないが、現状では複数遭遇した。一端クエストを放棄して受けなおせばやり直すことができるが、それを多くのユーザーに強制するゲームとはいったいなんなのか。

 また筆者は「捨てられない」属性のクエストアイテムが無駄に溜まっていく不具合に手を焼いた。ただ、これはアイテムクラフト系のインターフェイスパネルを開いて、捨てたいアイテムをパネルに入れ、その状態でインベントリを満タンにしてパネルを閉じれば、行き場を失ったアイテムが地面に落ちるので解消できる。この方法に気付くまで、筆者の個人倉庫の7割はいらないクエストアイテムで埋まっていた。これもゲーム終盤のクエスト関連だ。

 このほか、終盤登場する一部のマップでは視覚効果が多すぎて最高級スペックのPCでも快適にプレイできないなど、βテストで解放されていなかった後半部分は明らかに調整不足だ。そのほかにもノーマルモードをクリアしてナイトメアモードをスタートしたら、いきなり最終ACTのステーションに出現してしまい、敵とのレベル差がありすぎてどうにもならない、といった報告もある。どうしてこのような状態で発売に踏み切ってしまったのだろう。いくらなんでもヒドすぎる。

・少なくとも正常に動けば非常に楽しめるゲームのはず。将来の改善を期待したい

バグさえなければ、パーティプレイで存分に楽しめるタイトルなのだが……
 バグ報告がやや愚痴っぽくなってしまったが、筆者が強調したいことは、本作は現状ではプレイするに値しないタイトルだということである。連日のサーバーメンテナンスとパッチで少しづつは変化しているようだが、残念ながら、バグ持ちのマイナーPCゲームに慣れきったハードコアゲーマーでなければ、本作のノーマルモードを一通りクリアするまでプレイすること自体が難しいと思われる。内容的には「DIABLO」由来のハマリ度の高いゲーム性を構築することに半ば成功しているだけに、返す返すも残念だ。

 そのゲーム性に関しては、ユニークアイテムの属性が一切ついていないというバグさえなんとかなれば、トレジャーハンティングの楽しさが一気に向上して、長く楽しむに値する状態になるかもしれない。他のバグについても、クエスト関係のバグは開発元も重く受け止めていることだろう。真っ先に修正されることを期待したいし、そうなればスムーズにプレイできるようになる。

 本作は全ての機能が正常に動作すれば、非常にポテンシャルの高いゲームである。パーティ募集やトレード関係の機能不備など、オンラインゲームとしてどうかという部分もあるにはあるが、まずはソロでも内輪パーティでもいいから、全編を通して障害なく楽しめるようにすること。これさえ満たせれば、パッケージ代を払った対価としての楽しみは存分に得られる。将来予定されている追加コンテンツの充実によっては、有料会員になるユーザーも増えてくるだろう。

 日本語版のリリースは無期延期となってしまったが、個人的にはむしろ歓迎したい事態だと思う。予定が立つ頃には良いゲームになっていることだろう。世界的に注目されてきたタイトルであるだけに、これからの開発努力と、ゲーム内容の改善に期待していきたい。

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    【Hellgate: London】
  • CPU:Pentium 4 2.4GHz以上
  • メインメモリ:2GB以上
  • HDD:14GB以上の空き容量
  • ビデオメモリ:128MB以上
  • Direct X:Direct X 9.0C以上


□Flagship Studiosのホームページ
http://www.flagshipstudios.com/
□「Hellgate: London」の公式ページ
http://www.hellgatelondon.com/
□関連情報
【10月31日】バンダイナムコゲームス、WIN「Hellgate: London」
北米・欧州版との同時発売は見送り。発売日未定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071031/hell.htm
【10月15日】韓国で「Hellgate: London」1次クローズドβテストがスタート
延期した上にボリューム不足。アジア版の年内発売は絶望的か!?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071015/korea_15.htm
【6月1日】韓国最新オンラインゲームレポート
「Hellgate: London Asia Launching Party」開催
韓国ではいよいよ7月からクローズドβテスト開始!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070601/korea_08.htm
【2006年11月13日】【G★ 2006】Flagship Studios CEO Bill Roper氏インタビュー
「Hellgate: London」マルチプレイモードの詳細に迫る
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061113/gs_bill.htm
【2006年11月11日】【G★ 2006】HanbitSoft、オンラインRPG「Hellgate: London」を全面展開
マルチプレイモードを初公開、正式サービスに向けて本格始動開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061111/gs_hell.htm
【2006年9月24日】Flagship Studios CEO Bill Roper氏特別インタビュー
マルチプレイ、ビジネスモデルなど「Hellgate: London」の気になる謎に迫る
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060924/tgs_hell.htm
【2005年9月18日】米Flagship Studios CEO:Bill Roper他インタビュー
「Hellgate: London」数々の新システムが明らかに!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050918/hellgate.htm

(2007年11月21日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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