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会場:横浜クリエイティブセンター
Bill Roper氏:Blizzardに在籍していた頃はゲームの開発だけに集中できたけど、やはり今は違う。元々が開発出身ということもあり、もっともっと現場に携わりたいという気持ちはある。しかし今の役職に伴う責任やチャレンジ要素も、やりがいを感じているよ。 編:今回同席されているDavid Brevik氏は、肩書は“Chief Visionary Officer”とのことですが、具体的にどのような業務を行なわれていますか? David Brevik氏:基本的にはゲームの方向性を決める作業全般。他にはプログラムやレベルデザイン、それにシステム構築とか、いわゆる社内の何でも屋だね。 編:ということは開発サイドから少し離れたBill Roper氏を補うようなポジションなのでしょうか?
David Brevik氏:そうだね。私は彼とは違って開発に専念できるから嬉しいよ(笑)。
■ 歴史的なイベントが多発したロンドンが「Hellgate」のイメージにもっとも近い 編:「Hellgate: London」の舞台に、ロンドンという実在する都市を選んだ理由を聞かせて下さい Flagship Studios:元々ロンドンという都市は歴史的に見てイベントが数多く起こっているんだ。戦争、大火災、伝染病、黒魔術等々、不気味な伝説も含めてたくさんある。更には広大な地下街もあり、これはダンジョンへのイメージを結びつけやすい。これらの要素が、我々の考えるHellgateに一番マッチしていると思った。それと、国際的な都市でありながら、今まではゲームでほとんど取り上げられていないことも理由のひとつだね。 編:「Diablo」の頃から感じていましたが、ファンタジーの世界観をそのままの形で持ってくるのではなく、独自性を持たせるのがすごく上手い。世界観の構築面について、どういったこだわりを持って作っていますか? Flagship Studios:今までの経験を生かすのはもちろん、自分達ならではの世界を新たに作り出さねばならない、という事は常々考えてるよ。Hellgateでは、例えばテンプル騎士団のなりたちといった、古いものと新しいものの融合が新鮮で気に入っている。 編:個人的には「コンスタンティン」(キアヌ・リーブス主演の映画)を観た際に、Hellgateに通じるものを感じ取りました。「Hellgate」の世界観を構築する際に、特に強い影響を受けた映画や本などはありますか? Flagship Studios:これといって特に意識したタイトルは無いかな。ただコンスタンティンに関しては、以前とあるPCゲーム雑誌が「Hellgate」を表紙にしたいと言ってきたときに、そのイメージとして指定されたことがある。結果として凄く良い表紙になったけど、もしかすると同じように考える人は多いのかもしれないね。 編:ロンドン以外にもユニークな歴史を持つ都市は世界中にありますよね。いきなり気の早い話ですが、拡張版で「Hellgate: Tokyo」や「Hellgate: SanFrancisco」といった展開は考えられますか?
Flagship Studios:「Hellgate: London」のゲーム目的は、ロンドンに開いてしまったヘルゲートを閉じることにあるけど、他の都市が一体どうなっているのかは意図的に明らかにしていない。他にもユニークな都市は沢山あるから、ロンドン以外の場所でヘルゲートが開くといった展開は、可能性としてはあるよ。ただし今は、まだ本編の制作で手一杯だけどね(笑)。
■ キャラクタ育成の幅を無限に広げる、いつでも脱着可能なスキル群 編:現在公開されているクラスは、Templar(テンプル騎士団所属の戦士)の一種類のみです。他のクラス構成はどのようになっていますか? Flagship Studios:現時点では確定しているのはTemplarのみだけど、数自体は一般的なRPGと比べ極端に多くはならないだろう。しかし「Hellgate」は同じクラスのキャラクタでも、様々な方向性での育成可能となっている。とてもカスタマイズ性が高いんだ。 編:一般的なRPGのカスタマイズでは、ステータスポイントの割り振りやスキルツリーが多いですね。Hellgateならではのシステムは何かありますか? Flagship Studios:「Hellgate」ではスキル面におけるカスタマイズ性が非常に高い。スキルの習得は方法は、店で購入したり、モンスターを倒してドロップするものがメイン。しかし中にはレアドロップのスキルもある。 編:スキルを無尽蔵に冒険へと持ち出せると問題がありそうですが、例えばGuild Warsのように、一度の習得数に制限は設けますか?
Flagship Studios:「Hellgate」では“Concentration(集中力)”というステータス項目があり、これによってスキル習得のキャパシティが決められる。各スキルにはConcentrationの一時的な消費量が決まっていて、キャパシティに達するまでは好きな組み合わせで追加したり外したりできる。レベルアップ時のステータスポイントをConcentrationに割り振ったり、装備品でブーストすることもできるから、スキル関連は人によってかなり個性が出るだろうね。
編:このシステムは「Hellgate」の目玉になりそうですね。スキル数は合計で幾つくらいになりますか? Flagship Studios:例えば同じ系統の攻撃スキルでもアップグレード版があったりして、それらを全部含めると膨大な数になりそう。それらを除いた基本的な種類だけでも数百といった単位だね。Templarだけでも現時点で40種類はある。 編:ステータスに関連した話ですが、画面中に表示されている“Shield”の役割について教えてください。 Flagship Studios:敵から攻撃を受けると、Healthよりも先に“Shield”が減ってゆく。そしてShieldがゼロになったらそれ以降はHealthが減る。ただしShieldは自然回復速度が早いので、あまり無茶な冒険を行わなければ、マイキャラが即死といった状況は少ない。 編:格下の敵と戦う際は、Shieldで吸収される分だけで十分になりそうですね。乱獲やFarmingといった行為が横行することに対して問題はないのですか? Flagship Studios:Farmingはやろうと思えば出来るけど、格下のモンスターは大したアイテムを持っていない。だから格上のモンスターと戦う方が効率が良いだろうね。 編:画面内のパラメータについてもう一つ、“Vengeance(復讐)”の役割について教えて下さい。 Flagship Studios:敵からダメージを受けたり、囲まれたりするとVengeanceが次第に貯まってゆく。そしてこのVengeanceを消費してスキルを使うんだ。(画面を指しつつ)今は、“Haste”というVengeance消費系のスキルを使っているところだよ。 編:Vengeanceを消費するタイプのスキルは、一般的なRPGにおける魔法に近いものを感じますね。これはTemplarだけの概念なのですか?
Flagship Studios:他クラスの場合は、Vengeanceの代わりに別のパラメータが置き換わる。ただしパラメータの貯め方が違ってはいても、位置づけとしてはVengeanceと同様魔法に近いものになっている。
■ 敢えて一人称と三人称でのプレイスタイルにこだわった理由 編:プレイ時の視点は一人称または三人称となっています。「Diablo」のような、バードビューを採用しなかった理由について聞かせて下さい。 Flagship Studios:そもそもの「Hellgate」の企画は、RPGとFPSの両立という所から始まったんだ。FPSの一人称視点は臨場感が高く、是非ともこの要素をRPGに取り入れたかった。角を曲がった瞬間にモンスターが襲ってきたりとか、エキサイティングな仕掛けをふんだんに盛り込めるからね。一方、これが「Diablo」のように大幅にズームアウトしてしまうと、例えば巨大なモンスターと戦う際の臨場感はやや損なわれてしまう。一度に広範囲を見渡せるのは便利だけど、プレーヤーの没入感という意味では一人称にやや劣るね。 編:RPGは大好きだけどFPSが苦手という人に対して、「Hellgate」をどのようにアピールしていきますか。 Flagship Studios:自分後方からの三人称視点で遊べば、FPSが苦手というプレーヤーでも問題なく遊べるはずだよ。また銃器の中には敵を自動的にホーミングするような、FPSの技術をそれほど必要としないタイプもある。 編:使用する武器を近接武器と銃器とでチェンジした際、自動的にカメラアングルが切り替わっていますね。武器に応じてこれらは完全に決まっているのですか。 Flagship Studios:銃器を選択すると自動的に一人称視点、また近接武器を選択すると三人称視点となる。ただし銃器は三人称視点に切り替えられるけど、近接攻撃を一人称では行なえない。近接攻撃が三人称視点のみという理由は、その方が演出効果が優れているのと、一人称視点では扱いにくいスキルが多いからだよ。 編:三人称視点ならばどちらの武器種別も遊べるわけですね。ではもう一方の、FPSのプレーヤー視点での質問ですが、オートロックやホーミングといった補正が掛けられてしまうことで、例えばAiming(照準合わせ)といったFPS面の面白さは失われないですか? Flagship Studios:その点については社内でもよく検討している。E3等でFPSのコアプレーヤーに触って貰った反応を見る限りでは、それほど悪い印象は受けていないようだ。例えば、ロックオン機能を封じる代わりに、命中させると大ダメージを与えられるようなスキルは導入したいね。RPGとFPSの、両方のプレーヤーが満足できるものを作り上げるよう努力しているよ。
■ マルチプレイ時は最大50名によるRaidコンテンツも用意 編:キャラクタデータは、サーバー側とクライアント側のどちらの保存になりますか Flagship Studios:「Diablo2」と同様、サーバーとクライアントの両方に保存されるタイプを別々に用意する。ただしLAN等の、サーバーを介さずに行なうマルチプレイは今回は無い。つまりオンラインでのプレイはサーバー保存のキャラクタのみ、ということになるね。 編:それはMod対策という意味合いも含まれていそうですね。次にオンラインでゲームを遊ぶまでの流れについて教えて下さい。“Battle.net”のようにチャットルームで待ち合わせた後、プライベートゲームを作成するのですか? Flagship Studios:いや、サーバーにログインした時点で、拠点となる地下街エリアにキャラクタが出現する。 編:それは「Guild Wars」に近いシステムですね。ひとつのロビーに参加できるキャラクタ数はどれくらいでしょう。 Flagship Studios:今のところは50人。それを超えた分については、「Guild Wars」の“District(地区)”と同様、新しいロビーが自動的に作られる。 編:仮に地下街エリア参加した50人が、同じエリアで共に冒険を行うことはできますか? Flagship Studios:全部ではないけど、中にはそういった冒険ができるエリアも用意するよ。 編:MOタイプのアクションRPGで同時参加数が50人というのは、従来では想像すらできない規模です。いったい50人ものプレーヤーを集めて、どういったプレイスタイルで遊ぶのですか。 Flagship Studios:MMORPGでいうところのRaidに近いスタイルは候補のひとつかな。 編:「Diablo」シリーズのマルチプレイは、仲間と共に突き進む面白さはあるものの、一方で仲間をサポートするシステムは多くありませんでした。仮にRaid系のコンテンツが導入された場合、プレーヤー間の協力要素はどこまで高められるのでしょうか。 Flagship Studios:その点は「Diablo」シリーズとは違って、サポート関連のスキルを豊富に用意している。先に説明したスキルの組み合わせによっては、完全にサポート用に特化したキャラクタも作れるから安心してほしい。 編:Raid以外に50人規模でのプレイスタイルはありますか。例えば「Battlefield2」のような大規模な対人戦はどうでしょう。 Flagship Studios:対人戦の可能性としては、様々な人数規模でのアリーナを予定している。「Battlefield2」のような大規模な対人戦は、現時点ではあまり考えていない。基本的に「Hellgate」は、仲間と協力してモンスターを倒すという部分に主眼を置いているんだ。 編:現在主流のMMOタイプではなく、MOのタイプで大人数のプレイを実現させているのがユニークですね。シングルプレイ・マルチプレイ・サーバー関連、それぞれの分野での現在の開発進行度をパーセンテージで教えて下さい。 Flagship Studios:シングルとマルチは共通する要素が多いこともあって、現在40%といったところかな。サーバー関連はまだまだこれからで、10~15%程度だろう。 編:今こうやって見ている限りでは、シングル部分は大分遊べそうな印象です。この部分だけを抜き出したβテストを先行で行なう予定はありますか? Flagship Studios:グラフィックは出来上がりつつあるけど、それ以外のゲームバランス等はまだまだこれからかな。βテストの予定を立てる段階ですらない、というのが正直なところだよ。 編:インベントリーの画面を見ると情報がぎっしりと詰まっていて、高解像度がデフォルトのように思えます。動作環境はどの辺りを目安に考えていますか。 Flagship Studios:動作環境が必要以上に高くはならないだろうね。インベントリーのレイアウトに関しては、低解像度用のパターンも用意するつもりだよ。 編:いま隣で動かしている、このデモ用PCのスペックはどれくらいですか。 David:え、これ? 実はあまりよくわからないんだよね(笑)。少なくともE3のデモで動かしたマシンよりはかなり低いスペックだと思う。 Bill:(画面のプロパティを見ながら)えーと、とりあえずビデオカードはGeForce 5600と書いてあるな。 編:Blizzard系のタイトルは、低スペックのPCでも動くというポリシーがあり、これが幅広いユーザー層から支持を受けたひとつの理由だと思っています。しかし逆に、例えば「EverQuest2」のようにハイスペックを突き詰める方向性には、興味はまったくないのですか。 Flagship Studios:世界は広いし、中にはそういうのがあってもいいんじゃないかな。でも我々は、最新技術を駆使するよりも、一人でも多くの人に遊んで貰いたいんだ。 編:「World of Warcraft」や「Guild Wars」の成功を見るにつけ、いわば「Diablo」の遺伝子が世界中のRPGジャンルを制覇している様に思えてきます。ここまで巨大な存在になることについてどう思っていますか。 Bill:当時のメンバーは、常にその時代の頂点に立つものを作ることを心がけていた。それが間違っていなかったと実感すると共に、今後も良いタイトルを作っていかねばと身が引き締まる思いだよ。年月が過ぎ多くのメンバーはBlizzardを離れてしまったけど、彼等が今でも様々な場で活躍しているのは嬉しい。 編:日本国内にも「Diablo」や「Stacraft」、そして「Warcraft」といったシリーズを、たとえ英語版でも熱心にプレイし続けている人は今でも沢山います。彼等に向けてメッセージをお願いします。 Bill:昔に作ったタイトルが、今でも熱心に遊んでもらえるという話を聞くのはとても感動する。今回の「Hellgate」に関しても、どういったゲームを作れば何年間も遊んで貰えるのかを、常に考えながら作っているよ。スタッフ一同頑張っている最中なので、期待して待っていて欲しい。
編:今日はありがとうございました。
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□ナムコのホームページ (2005年9月18日) [Reported by 川崎 政一郎:kawasaki@ln3.jp]
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