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コーエー執行役員 松原健二氏特別インタビュー(後編)
マルチコンテンツ戦略のゆくえと、RMT問題の新たな潮流

1月22日収録

会場:コーエー本社

 松原健二氏インタビューの後編では、新作MMORPG「三國志 Online」、GAME CITY事業部へのオンラインゲーム運営事業の移管、そしてリアルマネートレードなどを通じて、コーエーが現在推進するマルチコンテンツ戦略の今後の行く末を語っていただいた。

 なお「三國志 Online」については、同作プロデューサー上野彰三氏のインタビューとは質問が重複しないように、プロジェクトのきっかけやビジネスモデル、海外展開など、大枠の部分を伺っている。ゲーム内容については上野氏のインタビューを参照いただきたい。


■ 「三國志 Online」プロジェクトの経緯と、コーエーのマルチコンテンツ戦略のゆくえ

コーエー オンラインゲーム担当執行役員 松原健二氏。松原氏によれば「三國志 Online」はコーエーのチャレンジ精神が生み出したプロダクトだという
「三國志 Online」のクローズドβテストは2月7日を持って終了。次はオープンテストなのか、再度クローズドテストなのか、今後の展開に注目である
編: 「三國志 Online」についてですが、そもそもプロジェクトはいつから始まったのでしょうか?

松原氏: 上野(彰三氏。「三國志 Online」プロデューサー)達がシンガポールに行ったのが2年半前ですが、その1年近く前、約3年前ですね。

編: それはシンガポールの学生をコーエーに迎え入れたときからプロジェクトが始まったわけでしょうか。

松原氏: いえ、それは2002年ぐらいの話です。「三國志 Online」に絞り込んだのはもう少し後ですね。彼らが行ったのが2004年の11月。プロジェクトがスタートしたのが2003年になってからですね。

編: 元々どのようなきっかけでスタートしたのでしょうか。

松原氏: まず、シンガポールオフィス設立がトップの判断で決められました。シンガポールで開発をしていこうということが先行して、どういう人間を募集できるか、どういう市場に展開できるかを検討した結果、「三國志 Online」が一番だろうということになりました。シンガポールで募集をかけた際に集まった人たちは皆オンラインゲームをすごくプレイしていて、そういう状況でタイトルを絞っていきました。そのころ日本では「大航海時代Online」の開発が佳境に入っていて、「真・三國無双BB」のプロジェクトもスタートしていました。

編: 日本のオンラインゲーム市場でこれだけマルチコンテンツ戦略を採るメーカーはコーエーさんくらいだと思います。率直にお伺いしますが、なぜここまでタイトルを広げるのでしょうか?

松原氏: 昨年も「信長の野望 Online」を始めて4年経たずに「もう4タイトル目ですね」と言われました(笑)。正直なところ、気がつけばそうなっていたというところです。「真・三國無双BB」と「三國志 Online」は同じ「三国志」を題材にしたもので、全然テーマが違うものを両方同時に立ち上げて、シンガポールと日本で作るというのは、非常に大変でした。

 「真・三國無双BB」はテクニカルなチャレンジがありましたが、「三國志 Online」の方は、「三國志」の世界観をゲームの中にどう活かすかということと、日本とシンガポールで共同して作っていくところでチャレンジングな要素がありました。そういうものにチャレンジしていくことに開発陣が前向きなのですよね。世界初というものにチャレンジする姿勢がある程度会社に浸透していて、もちろん失敗するリスクもありますが、難しいことにチャレンジすることで花開くこともあるという社風なんですね。

 「真・三國無双」も“真”がつく前に「三國無双」を出して、その経験をふまえて、あの爽快感を生み出し大ヒット作へと成長しました。当時、実際にあれだけの表現力を出せると考えていた人はいないと思います。それをやってできた、次のビジネスが開けたということで、会社の中では新しいチャレンジへの理解が大きいんですよ。

 オンラインゲームに関しても「信長の野望 Online」が開発から5年以上経っています。今ではビジネスとして十分になりたっていますが、3年4年前の段階ではこのビジネスってまだわからなかったわけです。でもチャレンジしたらビジネスのチャンスもあり、それ以外にも何かそこで生まれるでしょうというのがありました。「信長の野望 Online」があったから「大航海時代Online」があって、それがあったから「真・三國無双BB」と「三國志 Online」へという流れができているのです。

編: 今後予想されるシナリオとしてはコーエーさんの有力フランチャイズのフルオンライン化になります。

松原氏: 「無双」という一番のフランチャイズをオンライン化しましたからね。これは海外の引き合いも非常に多いですし、国内でもこれからきちっとビジネスになっていくでしょう。ただ、コーエーも色々なフランチャイズを持っていますが、「昔からコーエーのファンです」という方に会って話を聞くと、最近出していないタイトルの続編を希望されるケースがが多いです(笑)。

 オンライン化に関してMMOという意味ではなくて、オンライン対応ということであれば、コーエーだけではなく他社さんもそういう流れになっていくでしょう。また、オンライン化といっても色々な意味があると思いますし、ゲームの中にオンライン要素を取り入れるといってもいろいろなレベルがある。それは最終的にどのタイトルでもやることだと思います。

編: 「三國志 Online」は、海外展開が見えない部分があります。コーエーシンガポールを拠点に展開するシナリオはまだ生きているのでしょうか?

松原氏: シンガポールを拠点にサービス展開するのは十分ありえるストーリーです。しかしシンガポールは人口400万人の国です。そこだけでは市場にならない。シンガポールは可処分所得も大きい国なのですが、所詮400万人というとゲームの人口は推して知るべしです。日本の30分の1ですから。そこだけでは成り立たないので周辺のマレーシアやインドネシアといったところに目を向けることになるのですが、その辺のビジネスに関して市場調査などこれからやっていかなければいけません。

 「三國志 Online」が、なぜ日本から始めるのかというと、日本にはすでにサービス開始しているインフラ、組織が整っているからです。例えば中国だとサーバーを中国の中に置かなければいけなくて、海外から運営することができません。シンガポールにサーバーを置くのであれば地の利がある周辺地域になってくる。シンガポールで運営するのは当然構想の中にあります。もし帯域の広い回線が安定的に提供されてコスト的にも安く済むのであればシンガポールから日本ということも検討の余地はあります。それは運営コスト全体のバランスで判断することになると思います。

編: 以前、「三國志 Online」に関しては、日本以外の韓国、台湾、東南アジア地域に関してできるだけ時差なく展開したいということでしたが。

松原氏: そうですね。ローカライズについては基本的に同時並行して進めています。今回のクローズドβを機に、海外パートナーとの話が進むことと思います。シンガポールの開発者は英語も中国語もできますし、それを活かしてタイムラグの少ない展開を目指したいと思います。

編: 現地に子会社を置いて、すべて自社で展開する考えはないのでしょうか。

松原氏: 検討もしたことがありますし、実際その方向で動いたこともあります。結論を言うとパブリッシャーさんのほうが現地での運営能力は上回っている。オンラインゲームに関して、中国、韓国、台湾は日本よりも市場があります。そこで経験されているパブリッシャーさんがいて、ノウハウも溜まっている。よってパブリッシャーさんとの提携を選択しました。

編: パブリッシャーが異なると、どうしてもユーザーに対するサービスが同質化できなくなってしまいます。最近では、それが場合によっては特定エリアのユーザーさんの不信感に繋がる動きもあります。

松原氏: ご意見がたまにくることはあります。アップデートのタイムラグがある地域では「リリースはまだですか」という内容だったりします。ユーザーさんの要望がコーエーまでまったく届かないとか、コーエーが提供したものがスムーズに流れてこないとかはあってはならないし、そういうことは起きていません。

 リリースタイミングのずれに関しては、ローカライズを挟むのでどうしても時間差が出てしまいますが、サービスレベルに関して著しく劣ることはあってはならないですし、今はそういうことにはなっていないと思います。海外のパートナーは、私たちが安心して運営を委託できるパブリッシャーにお願いしています。実際、各社とも非常に熱心かつ丁寧です。台湾は2社、中国は1社、韓国は1社ですが、いずれもコーエーのことをよく理解していただいていまして、なおかつ現地のユーザーさんの立場にたってこうしてくださいと言って下さいます。

編: 「三國志 Online」のビジネスモデルはどのように考えていますか。

松原氏: 私も「三國志 Online」プロデューサーの上野同様、個人的な意見になりますが、定額の方向です。定額で遊んでいただけるシステムで「無双BB」とは違いますし、「信長の野望 Online」、「大航海時代Online」で培ってきたMMOの正統派の形ですからその形の方がマッチするのではと考えています。

編: 海外についてはいかがでしょう。

松原氏: 全面的なアイテム課金は現在は考えていません。部分的なアイテム課金、従量課金は技術的に実現可能ですが、市場のニーズとパートナーさんとの話し合いで決めていくことになると思います。


■ 新しいビジネストレンド「Second Life」にどう向き合っていくべきか

松原氏は「Second Life」のUser Generated Contents的なアプローチを、日本のオンラインゲームで実現するのは難しいという
「Second Life」の3D クリエイションツールによって生み出されるオブジェクトは、現実世界の物理法則の制約を受けない。時として得たいのしれない“何か”が生み出されたりする
編: 2006年はワールドワイドで魅力的なタイトルがたくさん出てきました。しかしフタを明けてみると「World of Warcraft」一人勝ちの構図でした。2007年もこの状態は続きそうな雰囲気です。こうした流れをどのように眺め、また今年はどのような年になると見ていますか?

松原氏: 非常に難しい年になったというのが正直なところです。新世代機も出てきましたので、コンソールのオンラインゲームも取り組まなければいけない年でもあるし、パソコンのオンライン市場も世界でこれだけ広くなった時に新しい動きは絶えず出てきますよね。「World of Warcraft」は確固たる地位を築いており、それ以外に出てきた新しい流れがあるとすると、やはりUser Generated Contentsの「Second Life」が挙げられます。

 あれはゲームではないという人もいますが、マーケットエクスチェンジを絡めた交流の場が出てくると、オンラインゲーム特有のコミュニティの楽しさがその中で生まれるのは確かだと思います。私は「Second Life」をやったときにMMOの要素は感じませんでした。自由な空間があって、MODツールがあって、アメリカで流行っていて、実際に企業がそこに対してアンテナショップを設けたりしている。

 そういう状況を見るとビジネスのあり方が変わってきているのを感じます。いままでオンラインゲームの中に参加するといえば、ゲームに参加するということでした。欧米ではMODの文化があったから、自分の作ったものを他の人にも見せてあげるレベルまで比較的スムーズにいったのだろうと思います。その流れはどこまで受け入れられるのだろうと。日本にそのまま持ってきて、SDKがあるから自分の好きなものを作ってくれというものが流行るかなと言えば、まずツールとかSDKという言葉は辞めて、簡単に作れるようにハードルを下げなければならないと思いますね。

編: 「Second Life」について肯定的な捉え方をしているようですね。

松原氏: ビジネスモデルとしての可能性はありますけれども、全体としてはいまのところ肯定でも否定でもないです。我々の提供しているゲームとの基本的な発想の違いがあるので、どういう風に進展するのか、作り手がデベロッパーが提供したものを楽しんでいただくことと、ユーザーが作ったものを楽しむのでは違います。これに関して日本でユーザーさんの好みがどちらなのかなということはあります。

編: アメリカではユーザーが自作したものをUser Created Contents(UCC)、User Generated Contents(UGC)という言い方をされることがあります。ユーザーが作ったものを世界に配置して、それで楽しむだけでなく、売ってもいいし買ってもいいと。これについてはどのように評価しますか。ご自身のプロジェクトに対してどのように活かすつもりですか。

松原氏: ユーザーの皆さんにとって、コンテンツを制作できるツールがあって、ゲームの中で自分の作ったものを他のプレーヤーに見てもらう。これは非常に喜びがあると思います。それを売るか売らないかは別で。この点は活かしたいところです。これからの新しいゲームの中で取り入れられる要素ではないか。ユーザーさん同士がビジネスするかどうかは違う話かなと。自分が作ったものを評価してくれる喜びには可能性を感じます。

編: たとえば、「三國志 Online」で、「当然、村ぐらい作らせてくれるよね?」という話になってきたとします。コーエーさんはこのニーズにどう答えるのでしょうか。

松原氏: そういうご希望は、うーん。難しいです、現状では(笑)。

編: あくまで仮の話です(笑)。現在は、家が欲しいという希望があってもシステム的な制限から、パブリックエリア内ではなく、プライベートエリアになってしまいます。しかしこれでは、パブリックな活動の場にはなりにくい。「Second Life」的な試みを「三國志 Online」に適用するとすると、やはりそれは自治できる村ということになってくるのではないかと思います。

松原氏: 色々な可能性と問題があると思います。「信長の野望 Online」の屋敷であれ、「大航海時代Online」のアパルタメントであれ、街中にある建物ではなくて、プライベートなエリアに切り替える必要があります。ですから、「信長の野望 Online」の城下町の中にユーザーの作った家があって、そこにユーザーが住んで誰しもが見られるという環境を実現しようとすると、システムの基本設計から直さなくてはなりません。これは現状から大きく隔たっているので考えていません。

 「三國志 Online」も同様です。「Second Life」のようなシステムにするには、逆にいろいろなゲームの楽しむ要素を削って、ここにツールがあってなんでも作れますよ、場所代で月々いくらください、ユーザーさん同士のやりとりでお金を得ることを認めますよ、著作権も認めますよとする必要がある。しかし現状では一気にそこまでやるのは難しいですね。


■ RMTを取り巻く状況の変化と今後の対策展望について

松原氏は、「Second Life」を引き合いに出して、既存のRMTと同作のトレードは違うものと定義。コーエーとして回答を出すのはまだ先の話になりそうだ
編: 「Second Life」の特徴としてRMTを完全に是認していることが挙げられます。

松原氏: 定義についてのお話なのですが、私は「Second Life」で行なわれる取引をこれまでRMTは禁止とお伝えしてきた内容とは区別しようと思っています。ユーザーが自分のクリエイティビティを持って、発想して開発したものをやりとりするのは本当の販売です。RMTだろうがVMTだろうが別のトレーディングだと思います。

 私がRMTと呼んできたのは、我々があらかじめ用意したものを、他人と現実のお金を使ってやり取りしている。「Second Life」の場合はその人が作らなければそれはシステム上には無かった。付加価値を作ったものを運営会社が著作権を認めている。それはRMTなどではなく本当のトレードでしょう。それを何で売ろうが本当のトレーディング、交易だと思います。私が「Second Life」のUGCで本当にいいなと思ったのは、ユーザーが作りたいと思ったものを、自分自身が生み出して他の人に見てもらえる、そういう要素です。こういう動きは私は肯定します。

 RMTのようなシステム的に我々が予想していない、犯罪として規定する法律も無い、そのため裏でビジネスが成立してしまうものについて、私は反対します。私の頭の中で明確に区別できているつもりです。なんでもかんでもRMTという言葉を使ってしまうと、否定することと肯定することが曖昧になってしまう。それが私の懸念していることです。トレードとRMTをどういうときに使いますかというときに、私はトレードというものは自分の付加価値があるものを例えば10円で買ってきてクリエイトしたものを20円で買ってくれといっているのはトレードですよね。

編: まったくその通りだと思います。そういったトレードは今後コーエーのタイトルの中で許容していくのでしょうか?

松原氏: 現時点では何も決まっていません。どういうゲームを作っていくかにも依存しますし、そういうゲームの中で許容するかどうかについてはまったく別の問題です。そういう新しい動きがビジネスとして生まれてきた。今後ビジネスも拡大していくかもしれない。我々としてはどういう対応をしていくか考えなければならない。繰り返しになりますが「Second Life」には私が本当にいいなと思った、ユーザーさんが望む要素が入っている。それは活かしていきたいと思います。

編: 今年のAOGCでは、IGDAの新さんがRMTに関して講演されるということですが、必ずや「Second Life」が話のコアとして出てくるはずです。

松原氏: 楽しみにしています。RMTという言葉を使い始めた頃には、「Second Life」のモデルは、まだ出てきていなかった。オンラインゲームの発展のスピードの速さを感じますね。一方、オンラインゲームに詳しくない人にとっては、RMTの内容や実態はまだ浸透していない。オンラインゲームの発展のためには、プレイしていない人たちにも、理解できる言葉で伝えないといけないと思うんです。そのためには、わかりやすい表現と言うことになりますが、それは中村さんの専門なのでおまかせしましょう。

編: 私が口にするRMTの定義とは、あくまでオンラインゲームにおいて現金が絡む取引の総称ですから、本来はそれそのものに善悪の観念を付けた言葉ではないと思っています。松原さんの分け方は、「UCCの販売」と定義づけたほうがいいでしょう。

松原氏: UCCの販売はRMTとは違うぞということですね。RMTはイメージが独り歩きしている感がありますね。

編: あとは業者が野放しになっていることが挙げられますね。南米の麻薬業者ではありませんが、一種の治外法権的な存在になりつつあります。米国のTVドラマ「24」ではありませんが、根を絶たないことにはRMTはなくならない。

松原氏: 規制する法律や、担当の行政部門もないという状況では、事実上野放しなので海外系はノーコントロールだと思います。まもなくデジタルゲーム学会の初めての学会誌が出ますが、私は寄稿の中でRMTは社会問題化していると書きました。RMTというのはゲーム業界に閉じた話ではなくなっている。RMTに絡んだ刑事事件も起きていますし。またそのお金が海外に流出している。新聞を読んでいる人ならなんとなく感じているのではないですか。これはもうれっきとした社会問題なのですよね。

 社会問題とはゲーム業界だけではなく、他の業界も絡んで、もちろん行政も含んで解決していかなければいけない問題だと思います。バーチャルなアイテムは、何もゲームだけの専売特許ではありませんから。社会問題とは、たとえが大きく聞こえるかもしれませんが、公害や交通事故などと同列です。RMTはゲーム業界だけでなく色々なところと一緒に取り組まなければ、健全な方向にいかない状況になってきているのではないでしょうか。

編: コーエーさんの2007年のRMT対策はどうなるのでしょうか。

松原氏: 運営を行なっているGAMECITYと開発の両方で続けていきます。システム的にRMTが防げるように粛々と修正を加え、RMT行為を摘発して処罰していくという2本立てのスタイルは変わりません。いたちごっこを続けていくことになると思います。

編: 昨年末にCESAのオンラインゲーム委員会が設立されました。私はこの委員会の活動に期待しています。

松原氏: 委員長は小松(コーエー取締役社長)で、委員にはGAMECITYの林(コーエー執行役員)がおり、コーエーは積極的に参加しています。現時点において法律化とか行政の明確な規範が無い以上、どうしても各運営会社の判断に委ねられるところが大きいのが事実ですよね。場合によっては、「RMT全然OKよ」という会社が出てくる可能性もあります。そういう状況ではあるけれども、スクウェア・エニックスさん、ガンホーさんをはじめこの委員会に参加している各社は、合意できる部分に関しては提言などを発表していこうという形なのです。

 しかしそれがすぐ法律だとか行政の指導だとかに結びつくかはわからないし、結局今のままでは開発、パブリッシャーとも我々でできることには限界があります。その中で精一杯活動を続けてた結果が年末の発表です。スクウェア・エニックスさんはスペシャルタスクチームがあるそうですね。我々は特に名称はないですが、運営チームの中でRMTの摘発と対策をやっています。

編: この点「三國志 Online」ではどうなるのでしょう?

松原氏: システム的にすべて防ぐことはできません。アカウントを貸して成長の代行をするということまで含めると、残念ながら100%防ぐことはできないと思います。

編: すべての方にお伺いしていますが、理想型とはどういう形だと考えていますか?

松原氏: インターネットの自由度と便利さを妨げたくはないのですが、ある場所では特性を認めずに個人が特定されることがあっても良いのでは、と思います。ユーザーさんの利益と、社会の健全性がトータルでプラスになるという条件で。たとえば、プレーヤー同士は相手が誰だかわからない、運営会社も個人情報は持たない、でもISPがこのプレーヤーの個人を特定できる情報を把握できている、ということです。この構図であれば、RMTを行なう個人を摘発することが技術的に可能なので、不正な行為を抑止する効果も働くでしょう。ただし、このためには、ユーザーさんの個人情報を安全に管理し、絶対に悪用されることがないという信頼が必要なので、まさに社会的な問題ですね。

 ただし、個人情報をあらゆるサービスから参照できるとなると皆さんが危惧すると思うので、すべての方向ではなく、心地よいサービスを得られるための範囲内に限り、だと思います。まだまだ曖昧ですけど、ある種の形でインターネットの匿名性がシステムレベルでは実は特定の個人を見つけられるものがあれば、安心して遊べる環境を提供できるのではないかと思います。それが理想型の1つだとは思っています。


■ 今年も拡張ディスクをリリース予定。開発と運営を分けた新体制から何が生まれるのか?

その他の動きも「期待しておいてください」という松原氏。拡張ディスクを含め今年も何かまた新しい動きがありそうだ
編: 2007年のコーエーのオンライン事業戦略を教えてください。

松原氏: 今は4つ目のMMO「三國志 Online」をリリースする段階になってきて、揃ってきたタイトルを充実させるのが今年の一番の目標です。「信長の野望 Online」も「大航海時代Online」もまた次の拡張パックを見据えて動いていきたいと思います。「真。三國無双BB」も海外展開を含めた新しい展開をしていきたいです。「三國志 Online」はまずはしっかりサービスインするということですね。

編: まだ見えていない部分で、今年何か大きな動きは期待していいのでしょうか?

松原氏: 「期待しておいてください」くらいにしておきましょうか(笑)。

編: 昨年、開発と運営を完全に切り離し、運営はGAMECITY事業部として独立しました。これに関連して、一種のポータルビジネスといいますか、今後のコミュニティ事業はどのように展開されていくのでしょうか。

松原氏: うーん、オンラインゲームの開発に伴うところだけではないので、私が答えるには余りますね。

編: それでは、オンラインゲームに関連する部分だけお願いします。やはりユーザーさんにとっては、コミュニティサービスがどうなるのかは気になると思います。

松原氏: オンラインゲームのコミュニティサービスに関しては、すごく大きなリニューアルは考えていません。むしろゲームコンテンツの方での中身の充実を計りたいと思います。コーエーは他の会社さんに比べるとオフラインのイベントはやらない、というご意見がありますが、オフラインイベント以外のコミュニティ支援として、ゲーム内イベントを強化していきます。

編: オンラインゲームにおけるGAMECITY事業部の事業内容を教えてください。

松原氏: オンラインゲーム事業にデベロッパー、パブリッシャーの機能がありますが、パブリッシング機能という部分に関しては全部GAMECITYです。サーバーの運営や管理もしていますし、GMもそうですし、運営に対する企画や広報活動のオーナーシップももっています。

編: 開発と完全に切り分けた理由は何でしょう。

松原氏: きっかけは「三國志 Online」です。シンガポールがメインで開発をして、日本でも海外でも運営を行なっていきます。これまでは開発も運営も国内で閉じていたので、両者の境目が曖昧でもうまくやってこれた。でも「三國志 Online」では、そうはいかないので、組織と役割を明確にしたということです。運営と開発は両輪でありながら刺激してビジネスをしなければいけません。例えば24時間安定したサービス提供のことを考えるのは運営です。一方、開発はこれからリリースする機能の開発に責任を負って、期日通りに終えることが仕事です。

 開発はエマージェンシーのとき以外は開発に集中してもらい、次に何を作っていくかに集中しなければいけません。この役割と、24時間きちっとサービスする運営の両方がなければ、やはりサービスビジネスは動かせない。インターネットのサービスはみな同じだと思うのですよ。特にオンラインゲームのようにコンテンツを次から次へとつくらなければいけない場合、開発と運営の両輪をきちっと組織としておかないと、働く人間が参っちゃうし、引いてはお客さんにいいものを届けられない。

編: わけてよかったなと思うことは多いですか?

松原氏: 思います。分けたことで仕事のプロセスに対して2つの組織の中で、初めは軋轢がなかったわけではありません。ただ、運営と開発を分けることで仕事のプロセスが整理できてくるんですね。極端に言うと社内のドキュメントだってクオリティが上がるのですよ。みんなが使えるようにしようということですね。

編: 今後ユーザーさんに対して、どのようなメリットが生まれてくるでしょうか?

松原氏: 最終的にはいいコンテンツ、いいサービスとしてご提供できると思います。社内でのやり取りはユーザーさんの目には直接は入りません。それがうまくいくことがユーザーの皆様が見て安定したサービスであったり良いコンテンツであったりするのではないでしょうか。

 開発、運営にとって良い組織になってきたと思うので、これをもっと充実させていきたい。ともすると開発と運営では、開発がイニシアチブを持って作ったコンテンツを、運営は淡々とお届けすることになりかねません。運営はお客様の一番近いところにいる、お客さんを一番知っているのは俺たちだ、開発に足りないのは何かと考え、ときに開発をリードすることがあって欲しいと思います。かといって無条件に開発に投げるのではなくて、開発にできる形で投げる、ということが非常に重要なことだと思います。

 こうしたオンラインゲームのサービス全体の流れを育てることが、コーエーが次のステップに進むことになるのではないかと思っています。MMOだけではなくて色々なサービスでお客さんに楽しんでいただくという、それがコーエーの財産だと思います。

編: コーエーのファン、オンラインゲームのファンに対して一言お願いします。

松原氏: 2006年、コーエーは色々なチャレンジをして、拡張パックや新しいサービスをお届けすることができ、自分たちで満足の行く仕事ができました。至らないところはたくさんあると思いますが頑張ってきたつもりです。2007年はまだまだ飛躍させていかなければならないなと思っています。最高のオンラインゲームを作り、最高のサービスを提供することに真剣に取り組んでいきますので、これからもぜひお楽しみいただきたいと思います。よろしくお願いします。

編: ありがとうございました。

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□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□「信長の野望 Online」のページ
http://www.gamecity.ne.jp/nol/
□「大航海時代 Online」のページ
http://www.gamecity.ne.jp/dol/
□「真・三國無双BB」のページ
http://www.musou-bb.jp/
□関連情報
【2月14日】コーエー執行役員 松原健二氏特別インタビュー(前編)
次世代機戦略は仕切り直し、今年はPCプラットフォームに注力
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070214/koei_01.htm
【2006年5月18日】コーエー執行役員松原健二氏特別インタビュー
次世代機時代のコーエーのオンラインゲーム戦略を聞く
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060518/koeiint.htm
【2006年2月2日】コーエー執行役員松原健二氏インタビュー(後編)
「信長」、「大航海」の拡張ディスクの中身、新規タイトルの開発状況を聞く
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060202/koei_02.htm
【2006年2月1日】コーエー執行役員松原健二氏インタビュー(前編)
2006年以降のコーエーのオンラインゲーム戦略を追う
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060201/koei_01.htm
【2005年4月5日】コーエー執行役員松原健二氏インタビュー(後編)
「真・三國無双 BB」と「三國志 Online」の展開プランについて
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050404/koei_01.htm
【2005年4月4日】コーエー執行役員松原健二氏インタビュー(前編)
同社オンラインゲーム事業のキーマンに今後の戦略を聞く
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050404/koei_01.htm

(2007年2月15日)

[Reported by 中村聖司]



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