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コーエー執行役員松原健二氏インタビュー(前編)
同社オンラインゲーム事業のキーマンに今後の戦略を聞く

3月30日収録

 いま日本国内のオンラインゲームビジネスにおいてもっとも活気のあるメーカーといえばコーエーだろう。その牽引役を担っているのが、ご存じコーエー オンラインビジネス担当執行役員 松原健二氏である。最近では、ゲームプロデューサーとしてだけでなく、オンラインゲームに関する講演や研究など、多彩な舞台で頭角を現しつつあるオンラインゲーム分野のキーマンのひとりである。

 松原氏が担当しているタイトルは、3月末現在で公表されているだけでも、「信長の野望 Online」、「大航海時代 Online」、「真・三國無双 BB(2006年正式サービス予定)」、「三國志 Online(2007年正式サービス予定)」と4タイトルあり、のみならず携帯コンテンツも担当し、さらに11月に設立されたシンガポールの開発スタジオの取締役を兼ねている。まさに八面六臂の活躍である。

 今回は、ユーザーからは“マツ”の愛称で親しまれている松原氏に、同社のオンラインゲーム戦略を伺った。質問内容は、松原氏の経歴から、現在正式サービスを展開している「信長の野望 Online」と「大航海時代 Online」の現状と今後の展望、そして2007年の「三國志 Online」までと広範囲に渡り、2時間超のロングインタビューになったため前後編に分けてお伝えしていく。


■ ハードウェアエンジニア出身のゲームプロデューサー

オンラインゲーム担当執行役員 松原 健二氏
編: まず最初に松原さん自身のお話を聞かせてください。ゲームのプロデューサーというと、通常、過去の代表作がズラズラ出てくるようなイメージがありますが、松原さんの場合、これがまったくないという点で異色の存在だと思います。過去にどういうお仕事を経て現在があるのか聞かせて頂けますか。

松原氏: 私は社会人として19年目ですが、コーエーに入社してからは3年と数カ月ですね。19年前、私は大学で情報工学を学んだ後、国産ハードベンダーでハードウェアのエンジニアをやっていました。メインフレームという冷蔵庫のようなハードウェア向けのマイクロプロセッサというか、CPUを作っていて、この会社に11年いました。

 そこから今度はアメリカのデーターベースソフトウェアの会社に入社しました。その日本の支社にいて今度はビジネスソフトウェアの、主にローカライズを行ないました。その会社には5年ほど、データベース関連の仕事の他には2000年問題や新規事業立ち上げなどをやっていました。

 そしてコーエーになりますが、なぜ外資系からコーエーかと言えば、やっぱり開発の仕事をしたかったんですね。外資系に入ったときは、アメリカで開発の仕事をやりたいと考えていて、結論から言うとそれは叶わなかった。それならば日本でソフトウェアを開発する会社にということで、1つの方向としてエンタテイメントのソフトってのは面白いだろうな、というところで紹介をしてもらったんです。この時点までゲームプロデュース経験はまったくのゼロということです。

編: とすると、ゲームやネットワークに関してまったくノウハウがないところからのスタートなのですか?

松原氏: ゲームはないですけど、ビジネスソフトウェア会社の新規事業の1つとしてインターネットアプリケーションの、今で言うナレッジマネジメントのツールをインターネット上で作っていました。インターネットのサービスという点では以前にやっていた仕事と、コーエーで今やってる仕事は全然変わらないですね。

編: 担当していたのは企画なのでしょうか? それとも実際にコードを書くこともなさっていたんですか?

松原氏: 主にマネジメントですね。ビジネスプロデューサーです。ナレッジマネジメントを企画し、お客様にコンサルティングして、システム構築するということをやっていました。インターネット上のアプリケーションを作って売る、という点では今と変わらないですね。

編: コーエーに入社してからオンラインゲーム担当になったきっかけを教えてください。

松原氏: 入社するときから聞いていたのは「オンラインゲームをやるよ」ということだったので、私のバックグラウンド的にインターネット上のシステムというのがありますのでそれをアサインされたということですね。結局オンラインゲームってパッケージと違ってシステムじゃないですか。サーバーはコーエーにあって、お客さんはインターネットを通じてアクセスしてくる。ゲームを作るという部分では勉強をする必要がありますが、一方のインターネット上のクライアントサーバーシステムとしては、これまでの仕事と非常に近かったですね。エンターテイメントとビジネスの違いはありますけど。

編: コーエーでエンターテイメントコンテンツを展開する事業に携わって丸3年とのことですが、これまでとの違いは大きかったと思うのですが、これまでにどのような驚きがありましたか?

松原氏: 一番は開発するときの考え方ですね。ビジネスソフトというのはスペックを決めることに非常に重きをおいて、それをいつまでに実現できればみなさんにある程度使ってもらえる。ゲームの場合は一生懸命仕様を考えて作っても、それが面白いものになるかはできてみないとわからない部分がたくさんある。もちろんビジネスソフトにも使いやすさなど不確定要素はありますが、エンタテイメントに比べて遙かに少ないですね。企画が一生懸命に面白いゲームを考えてもそれが市場に受けるのか? というユーザーを相手にするという仕事で、大きな違いがありましたね。

編: コーエーでのこれまでの取り組みを教えてください。

松原氏: オンラインゲーム事業を皆と相談しながら、新しいビジネスを立ち上げていくのを、初めての会社で、慣れていないゲームの部分と経験として持っているシステムの部分を組み合わせながらいま、4つめの新しいゲームを立ち上げています。3年間で4つのゲームを手がけることになっているわけですが、デコボコの道という感じでしたね。

編: これは私がいたからできた、というような自負はありますか?

松原氏: 他の人がいなかったから私がやっただけで、私がいたから、というのは……私からは言うのはおこがましいですね(笑)。この会社には優秀なマネージャーがたくさんいますので、私がやらなくても誰かオンライン事業をある程度進められたとは思います。

 1つ違うのは、パッケージゲームって区切りが明確じゃないですか。そうじゃなくてオンラインゲームはずっと続けるサービス事業ですから、これに関しての経験が他のマネージャーに比べて多少あったかなと思っています。

編: 逆に失敗談などはありますか?

松原氏: もちろん(笑)。ゲームはもちろん私もプレイしますけど、経験的なツボで押さえる、経験の中でしか得られないところ、こういう部分が抜けているからゲームが面白くなくなるなど、内容に対する助言はいろいろ勉強になりましたね。

 今回、「信長の野望 Online」でちょっと“屋敷”の実装に関してトラブルがあったのですが、これはどこまでテストをするのかという問題で、ビジネスソフトでの経験をふまえた上でやってみたのですが、3月の頭のリリースでうまくいかずサーバーダウンしてしまって、テストの方向付けで失敗しました。

 ビジネスソフトは徹底的に検証をしますが、例えば銀行で使うソフトなどはユーザーがやる操作というのはある程度決まっているんですよ。ゲームはユーザーができることが非常に多くて。コーエーの今までの経験なども活かしてテストをしていたつもりだったのですが、結果として不十分だったんですね。

編: なるほど、コーエーさんはたぶん日本では初めてになる、パブリックのテストサーバーを運営なさっていて、ここを私は非常に評価しているんですけどこれは松原さんが推進したことなんですか?

松原氏: そうですね。アイデア自体は「ウルティマオンライン」などでありますが、ただ、弊社の場合、結果的にあまりにぎわっていないのが現状です。他のサーバーにはプレーヤーは3,000~4,000人というユーザーが来ているのにテストサーバーには100人とか1,000人とか負荷のテストができていないという状態です。新要素などでユーザーの反応を得るには非常にいい場所ですが、負荷的なテストをするというところまで人が集められていません。「ウルティマオンライン」ではテストサーバーだけでプレイをしているユーザーもいたとのことですが、これはやりようがあるとも思うんですけどね。データのコピーをやりやすくするとか、まだまだ理想には届いていませんね。

編: 「大航海時代 Online」でもテストサーバーの設置の予定はありますか?

松原氏: 現在検討中です。まず「信長の野望 Online」でどうするか、将来的にはあるかもしれませんね。

編: プロデューサーとして松原氏はゲームの面白さに関してどこにこだわっているのでしょうか?

松原氏: 新しいゲームの企画を考えるとき、アイデアを練りますが、一番私が嫌いなのが「寄せ集め」です。あっちのゲームのおいしいところ、こっちのゲームのおいしいところ。“すき焼き”と“ふぐちり”を一緒にして「さぁ食え」のようなゲームというのはたぶんユーザーにもウケないし、私も嫌いです。そのコンセプトの方向付けに気をつけています。

 ディレクタや企画者からでてきたアイデアでそれが面白いかを判断する部分で一番注意することは、過去のアイデアをふまえた上で、自分の新しいアイデアも出して、全体として首尾一貫していることですね。その後は面白いかどうかということですが、まず企画のコンセプトがしっかりしているか、他のゲームをよく知った上で自分のオリジナリティーを出しているかですね。

 ディレクタや企画者の中には、開発歴10年とかの経歴を持つとか私より遙かにゲームに長く関わっていて、そういうメンバーのドキュメントを見るわけじゃないですか。そのときに一番注意して見るのはコンセプト、セールスポイントともに揺るぎのない筋が一本通っているか、過去の経験と新しいアイデアとのバランスがとれているかどうかを見ます。これってモノ作りの基本だと思うんですよ。ハードやビジネスソフトでも変わらない、開発者にとって一番の拠り所じゃないかと。その上でこれが面白くなるかどうかは、みんなでよってたかって意見を闘わせます。良いメンバーに恵まれていると思います。


■ 「職業バランスはゲームの局面で異なってくる」 ~「信長の野望 Online」について

編: 「信長の野望 Online ~飛龍の章~」に関してはオリジナリティーよりもMMORPGのトレンドを優先させた仕様になっているように感じましたが、内部的にはどのようなスタンスだったのでしょうか?

松原氏: 「飛龍の章」に関しては、これまでアップデートは、国の追加とかボリューム面での拡充を行なっていたのですが、今後はシステム面での変更に重点を置き、システム面での新しさを出していこうというのが一番でした。ちょっとベクトルを変えるというような。

 そのきっかけとなったのが去年の6月にバランスを修正して、その結果非常にユーザーの評判がよかったことです。ずっとユーザーも増加してくれて。必ずしも衣装や3Dのものをつけることよりも、基本的なシステムを追加して「飛龍の章」以降も発展できるならば、国や職業を追加しなくても、まだまだ面白さが実現できるだろうと思いました。これがトレンドと一致するならば、それは結果かな、と思いますね。

 とはいえまあ、屋敷なんかは、「ウルティマオンライン」の家と同じだといわれればそうかもしれませんけど、いままでのフィールド、街、ダンジョンと決まっていた場所と違って、ユーザーが行きたいと思った時に現れる、それが屋敷でありトライアルダンジョンです。後はいないときでも時間がないときでもゲームを進められるのが“知行”ですね。これらはメイン企画からでてきたアイデアを揉んでやったんですけれども。まだまだ拡張性はあります。知行や屋敷はまだまだ公開していない発展性がたくさんありますよ。

編: 3月は屋敷導入の際にトラブルがありましたが、これはどういった原因だったのでしょうか?

松原氏: 武家屋敷やトライアルダンジョンは12月から準備されていたシステムをベースにしているのですが、実は12月にも何度かサーバーダウンを経験しています。あのときに十分な試験と対策をしていたつもりだったのですが、結果としてご迷惑をかけてしまいました。

 ユーザーが家を建てる、ユーザーが集まったらトライアルダンジョンが生まれる、これらのメモリ割り当て作業は、「飛龍の章」導入以前にはまったくやっていなかったんですけれども、その導入の時に見通しが甘かったんですね。社内のテストは通ったけれども、実装したらダメだった。こちらのテストが不十分だったんですよね。申し訳ございませんでした。ここで実装を2週間遅らせて、対策を練りました。テストの環境と方法も相当見直しました。

編: 今後、開発は「飛龍の章」の次なるアップデート作業に入ってくると思うのですが、すでにスケジュールが遅れていますよね?

松原氏: 屋敷が遅れた影響で、玉突き的に遅れていますね。これをやはり取り戻さなきゃいけないと言うのはありますけど、しっかり遊んでいただく形に、不具合のでないように安定した形でリリースをするのが私たちのしなくてはならないことかなと考えています。流派などの仕様の追加を告知していますが、一方、ゲームバランスについてのお問い合わせも多くいただいています。もういちどバランスについてもきちっと調整をしていかなくてはいけないですね。

編: ゲームバランスについて今一番寄せられる意見が多いのはなんでしょううか。

松原氏: 今一番というか、常にあるんですけれども(笑)、職業間の強さのバランスですね。ひとつの職業を強くすると、必ず他の職業の人は不満に思うところが出てくる。ここをどう計りながらやるかということです。まず修正すべきポイントはあるのでこれを調整していく、すると今まで活躍できていたのに活躍できなくなってしまう職業が生まれてしまいます。

 方向としてはですね、できるだけ“ムチ”は与えたくないんです。ムチがある場合にはちゃんとアメをくっつけようと。ムチだけだったら誰だっていやじゃないですか。ムチがあるときにはアメも出して、アメの方が大きいように見せる。見せるという言い方も語弊がありますが、バランスの上で不利になってしまう人にはアメも用意して、それをちゃんと整えてリリースしていこうと思っています。

編: ジョブバランスというものはどうあるべきだと考えていますか?

松原氏: 常に変化するものだと思いますね。ユーザーさんの意見には真剣に耳を傾けますが、そこに流されてしまうとかえってユーザーさんを混乱させてしまう。私たちは予測と期待を持ってやっていて、ゲームの中で調査をして、調整をしていますが、問題の方向性を明確にして実現できたかどうか、満たせなければ繰り返す。基本的には変わり続けるもので、職業バランスはゲームの局面ごとに異なってくるものだと思います。

 各職業の強弱のバランスが出てくるかもしれませんが、イコールの楽しみ方というか、どの職業でも同じくらいの大きさの楽しさがあるようにしていきたいです。

編: トライアルダンジョンの拡張予定を教えてください。

松原氏: 4月に追加されます。2カ月に一回新しいマップと試練を追加していきます。現在ダンジョンに挑戦できるのは7人すべてPCでパーティーを組まなければならないのですが、NPCとの組み合わせも考えています。ただ、発想としては「信長の野望 Online」はコミュニケーションを重視していますので、プレーヤー1人で6人NPCというのは避けたいですね。

 これを検討しているのは、プレーヤーが冒険に出発するために7人のメンバーを集めるのに時間がかかる場合もありますし、例えば、仲のよい3人の仲間だけで冒険を楽しみたいといったように、少人数のグループで遊びたいという要望に応えられるかなと。

編: 松原さんは発表時に最終的には全国マップをゲーム内に登場させたいとおっしゃっていましたが、この基本戦略はどうなったでしょうか?

松原氏: よく覚えていますね(笑)。今の段階では国を増やすことで、コストの問題や、ゲーム世界でプレーヤーが散らばりすぎてしまうのではないかという問題があります。1ワールド5,000人というのが「信長の野望 Online」での想定値ですが、これで47カ国を実装してしまうと、1つの国に何人、ということになってしまって、現行システムではちょっと矛盾が生じてしまいます。ユーザーの要望が強ければそちらにシフトすることもありますが、現時点ではシステムへの要望が強いですね。

 オンラインゲームのいいところなんですが、お客さんの反応がダイレクトにわかる。6月のアップデートの反響で、「飛龍の章」の方向性がお客さんが望んでいる方向性に近いのではないかと。屋敷に近い要望もかなりありましたし、限られたリソースで現状ではシステム面の充実を図っていこうというベクトルが強いですね。

編: となると、次の拡張ディスクでも国の追加はなくて、システム面の拡充ということになるのでしょうか。

松原氏: 今はもう少し様子を見たいなと思っていますね。屋敷のこともそうですけど、我々が考えている「飛龍の章」の追加要素はまだ全部入れていないので、それを入れてフィードバックを得て、バランスを調整した上でプレーヤーが望んでいる方向を見極めたいですね。半年に一回は大きなものを追加しつつ、拡張ディスクは1年半に一回というくらいのペースで出していきたいと思っています。

編: 職業の追加に関してはいかがでしょうか?

松原氏: 「飛龍の章」の間でも取り組んでいこうとは思っていますが、現在7つの職業がありますが、これを8にしたり9にしたりというよりも、現在の職業の中でさらに特徴を出していく、というのをやっていきたいです。各職業の鎧などのCGを新規に追加して、同じ職業でも見た目のバリエーションを多く持たせたいと思っています。

編: レベルキャップについてはいかがですか?

松原氏: 現在60でカンストしている人もいます。新しい拡張パックが発売されたときは上限を引き上げることはやっていきたいと思っています。ゲームの仕様ではかなりの上のレベルまで想定してデザインしています。しかし、レベルキャップの解放に伴い、信長を初めとした武将のレベルの再調整も必要になります。

 それにレベルの上の人ばかりを見ていくと、低いレベルの人はどうなるんだ、という問題も出てくると思います。こちらもかなり考えて、全体的なプレーヤーが楽しめるバランスを考慮して調整していくのがポイントかなと。

編: なるほど。例えばスクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXI」では、マップにレベル制限を設けることでゲームバランスをとっていますがそういった構想はありますか?

松原氏: 一時アイデアが出たのですが、現在の合戦のシステムを大幅に見直さなくてはならないので、もし「信長の野望 Online」で取り入れるならば違った形になるでしょうね。

編: 「飛龍の章」で予定されている最終的な仕様が導入されるのはいつぐらいになるでしょうか?

松原氏: 屋敷、流派、官位、ここまでは今年6月の運営2周年記念までにはなんとかしたいと考えています。その後はまだアナウンスしていない要素なども順次盛り込んでいきたいと思っています。

編: 「信長の野望 Online」は台湾、中国でも展開していきますが、実はこれにマンパワーが割かれているということはあるのでしょうか?

松原氏: 弊社は天津に子会社があって、最終的なコントロールは日本がしますが、翻訳など具体的な作業はすべて向こうでやっています。認証システムなどサーバーのコアな部分に関してはこちらでやっていますが、負担としてはそれほどではありません。

編: いわゆる“カルチャライズ”のような作業は行なっていますか?

松原氏: 日本と天津で協力して行なっています。天津の中にも開発スタジオがあって、CGもプログラムも開発作業も可能です。

 それから音声も吹き替えを行ないます。日本語の勝ちどきなどは変えていきたいと思います。ただ、台湾では「日本語のままがいい」という声もあるんですよ。これは台湾で「信長の野望」のパッケージゲームの人気も高いことも影響していると思っています。

編: 中国や台湾から日本のサーバーに接続してプレイしている人もいるようですね?

松原氏: 正式には国内のみへのサービスだけを行なっているのですが、海外からアクセスされている方もいるようですね。ただ、おそらくは中国、台湾でサービスする場合、プレイ料金は日本の価格より少し安くなるんのではないかと思います。他のMMOもおそらく同じでしょう。もちろん日本のサーバーにいるキャラクタに愛着を持っていて、日本語版をプレイなさっている人もいるでしょうけど、新しくプレイする人は現地のサーバーでプレイして頂きたいと思います。


■ 「日本までは行けるようにしたいですよね」 ~「大航海時代 Online」

編: 「大航海時代 Online」のことをお聞きしたいと思います。反響はいかがだったでしょうか?

松原氏: おかげさまで、予想を超える好調でした。有料会員が3万1,000人を超えました(3月末で3万5,000人超)。プレオープンの時の登録会員が11万でしたので、このうちの2割程度が有料会員になってくれるだろう、2万5,000人行けばよし、と思っていたのですが、初日に3万超えましたので、滑り出しとしては上々ですね。

編: 発表会の時にワールドワイドで75万人集めたいとおっしゃっていましたが、この戦略はまだ維持しているのでしょうか。

松原氏: あの時は自社展開というのを考えていたのですが、台湾、中国、韓国とパートナーシップ戦略をとることになったので、パートナーさんのプロモーション次第だな、というところもありますね。75万という数字にはこだわらずに、それに近くなるように一緒にやっていきたいですね。

編: 「大航海時代 Online」で、松原さんは“人と争う”ことよりも、“人と楽しむ”ということを提案したいとおっしゃっていましたが、この試みは成功したと言えるのでしょうか。

松原氏: いまのところうまくいっていると感じていますね。私自身もプレオープンの時に、今日は1つクエストやろうかという感じで短いところなら30分くらい、たまに遠くの港を目指すという遊び方をしていました。成長するために必ずモンスターと戦って勝たなくてはならない、「信長の野望 Online」もこういうシステムですが、これとはかなり違うシステムになったんじゃないかと。

 好評をいただいているというのは、「戦いだけじゃない」という要素が受け入れられているのではないかと思いますね。分析してみるとユーザーのプレイ年齢層は、「大航海時代 Online」の方が「信長の野望 Online」よりも1歳ぐらい高いんですよ。時間のないはずの社会人の方に多くプレイしてくれているのではないかと思っています。女性比率も10パーセント程度ありますね。ここもまた、今までにないMMORPGとして評価されているポイントだと思います。

編: こういったユーザー層のプロファイルも今後のアップデート計画などの参考になっていくのでしょうか?

松原氏: 「信長の野望 Online」もそうですけど、ユーザープロファイルは非常に重要です。年齢層、プレイ時間、性別といったデータは我々にとって重要な要素です。今後「真・三國無双BB」などもやっていきますが、どこをターゲットにしているか、つかまえているかというのはオンラインゲームでは一層重要な要素だと思います。

編: まず開発をする段階でターゲットを想定しますよね、サービスがスタートしたときに実際のユーザー層と想定ターゲットにギャップがあった場合は、どちらを重視するのでしょうか。

松原氏: 結果的には現実的な路線をとります。ただ、これまではあまり外れていないように思います。だいたい25才は超えると想定していて、これが30だったら「おっ」と思うんでしょうけど、27と28という1才の違いは25と30に比べると小さいですよね。「大航海時代 Online」ならではの要素が出ているから「信長の野望 Online」と少しユーザー層が違うというのは狙ったとおりなので、それならばその要素をふくらましていきたいといいんじゃないかなと。

編: 内容的にはむしろ「信長の野望」のほうが年齢層が高くてもおかしくないように思いますが、なぜ「信長の野望 Online」に比べて「大航海時代 Online」の方が年齢層が高くなったんでしょうか?

松原氏: オンラインゲームをやろうとしたときに、社会人だとできなくなっていく人も出てくると思うんですよ。集まるのに30分、どこかいって戦って帰ろうかというと夜の2時とか3時、これを毎日だと少しつらいかなと。私、他の会社で言われましたよ。「最近部下が昼間寝るようになった、話聞くとおまえが作ったゲームやってる」。悪者扱いされてしまいましたね(笑)。

 「大航海時代 Online」は短いクエストや、小さな交易でお金を貯めておくということがやりやすい。慣れてくれば時間のやりくりをすぐにつかめる。これがいいのではないかなと見ています。時間がなくてもオンラインゲームをやりたいという20代後半の社会人や、誘われてプレイをしてみたという女性の方に受けているのかなと。

 戦う、戦わない、ということも含めた選択肢の多さがこのゲームの魅力だと思っています。戦闘が好きならば今日は海賊倒すか、というプレイもできるし、「信長の野望 Online」のダンジョンに潜って数時間戦ってボスやっつける、というようなヘビーなプレイがしたければ、艦隊を組んで遠くまで出てワザと危険な海域を通ってアフリカまでいって、上陸して山賊を倒したりというプレイも可能です。

編: 「大航海時代 Online」は最終的な展望というのはまだ発表されていませんが、現時点ではどのくらいまで考えられているのでしょうか?

松原氏: 世界中やるって宣言すると、先ほどの「信長の野望 Online」と同じになってしまうかな(笑)。ただまあ、せっかく日本人が開発しているのですから、日本までは行けるようにしたいですよね。

編: 拡張ディスクは予定しているのですか?

松原氏: そうですね、1年から1年半の間には出したいかなと。現状ではインドからカリブまでの範囲をカバーしていきますが、今後も新たな街を追加して、ゲームの楽しみも増やしていく予定です。秋までにはネーデルランド、フランス、ヴェネツィアの3国を追加します。拡張ディスクでは、さらに範囲を大きく広げたいですね。

編: 現時点ではもうどのくらい開拓されているんでしょうか?

松原氏: ゲーム進行の早い人ではもうインド、カリブに行っているプレーヤーもいますね。新しいプレーヤーも続々加わり、地中海からようやく外洋へ出始めたという人もたくさんいますので、これからの航海を楽しんで貰いたいと思います。

編: 今後のアップデートはどうなるのでしょう、まず次の予定は?

松原氏: もうじきアナウンスをすると思いますが、ひと月に1回は新しい要素やイベントをやっていこうと思っています。イベントと新しい要素はできるだけ交互にやるようにして、それから半年に1回は街の追加などの大きなアップデートをしていこうと。「大海戦」のイベントも定期的に行なっていこうと思っています。アップデート計画に関してはユーザーの反応を見て細かく決めていくつもりです。

編: ちなみに「大航海時代 Online」がはじまったときに、「信長の野望 Online」のユーザーは増えましたか、減りましたか?

松原氏: 減りましたね。現在ようやく落ち着いたかなという感じです。ただ、正直、予想したよりは減りませんでした。予想では10%ほどもっていかれるかもしれないと思っていたのですが、そこまでいきませんでした。プレオープン時のアンケートで「信長の野望 Online」やっていますかという質問に、1/4くらいは一緒にやっていますという答えが返ってきたんですね。アンケートに答えていただけるのは結構コアなコーエーファンが多いと思うのですが、もしそのユーザーがぜんぶ動いたとしたら大問題でしたね。2つの作品をあわせて9万人以上のユーザーがいるという感じですね。

編: 「大航海時代 Online」は過去にどんなゲームをプレイしていたユーザーが多いんでしょうか?

松原氏: 「オンラインゲームは初めて」というユーザーが凄く多いですね。知り合いでも家族でやっているという話も聞きました。なぜ「信長の野望 Online」の時にやってくれなかったんだ、とも思いますけど(笑)。オンラインゲームってまだまだこれからじゃないですか。同じパイを食い合ってもしょうがないですよね。まずはユーザー層を広げましょうというところがあります。

編: 松原さんとしては「大航海時代 Online」をどのように仕上げていきたいと思っていらっしゃいますか。

松原氏: 「大航海時代 Online」の特徴である、今までにない、戦うだけではなく、プレイすること自体が楽しいMMORPGという路線をしっかり発展させていこうと思っています。酒場にちょっと寄り道して看板娘と話をしたくなる、こんなまったりした雰囲気も大切にしていきたいですね。

 携帯電話を使ったゲーム要素もアナウンスしていますが、ゲームの外からサーバーを介してコミュニケーションができるなど、PCの前で何時間といった従来のMMORPGから、携帯も含めたいろんなところでオンラインゲームが楽しめるというのを広げていきたいですね。

□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□関連情報
【3月1日】コーエー松原健二氏が日本の対アジア戦略を講演
中国市場の凄まじい実態とその対抗策とは!?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050301/aogc_ko.htm

(2005年4月4日)

[Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]


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