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コーエー執行役員松原健二氏特別インタビュー
次世代機時代のコーエーのオンラインゲーム戦略を聞く

5月12日(現地時間)収録

会場:Los Angeles Convention Center

 今年のE3では、オンラインゲームは、特にMMOスタイルのオンラインゲームは、ジャンル的にマイナーな位置づけにあった。もっとも過去のE3で、オンラインゲームがメジャーな年があったかというと、1度もない。ただ、次世代機では、全機とも標準でオンライン対応が謳われ、描画性能も向上している。オンラインゲーム開発には最良の体制が整いつつある。その意味で、今年のE3では、ここ数年の東京ゲームショウのようにオンラインゲームの出展が急増する光景を多少期待していた。

 しかし、次世代機のラインナップを見てもわかるように、MMORPGはひとつもなかった。対応しているタイトルもわずかに「ファイナルファンタジー XI」のみという状態。この壊滅的な状態は、Microsoft以外のプラットフォームのオンラインサービスの内容が不明確なことに起因するものと見られるが、いずれにしても次世代のサービスレベルを実現した多人数同時参加型のオンラインゲームが登場するにはまだしばらく時間が掛かりそう、というのが今回のE3での正直な感想である。

 さて、そんな次世代機まっさかりの今年のE3で、コーエーは次期主力オンラインゲーム「真・三國無双BB」を、日本に先駆けて世界のメディアに公開していた。その内容については、すでに報じたとおりだが、今回は、同作プロデューサーであり、同社のオンラインゲームの舵取りを行なう松原健二氏に、次世代機時代のオンラインゲーム戦略について話を伺った。


■ E3 2006の感想 「生き残りのために次世代機への展開は重要」

次世代機の感想を述べるコーエー執行役員ソフトウェア4部長 松原健二氏。インタビューはE3最終日の12日に行なったので、E3をネタに話をふくらませることができた
松原氏が今年のE3のトピックとして取り上げたWindows VistaとXbox Live!の連携
編: 今年のE3では次世代機が一通り公開され、多数の次世代ゲームが出展されました。今回は一足先に次世代機時代のオンラインゲーム戦略についてお伺いしたいと思うのですが、まずE3の感想を聞かせてください。

松原氏: 今回得た情報の中では、オンラインゲームの分野ですごく新しいなと感じるものは特にないですね。ただ、Windows Vistaは、WindowsからXbox Live!に繋がるのはなかなかおもしろい。今回の発表の中でオンラインゲーム分野では、大きな出来事だと思いましたね。

 ハードウェアに依存しないプラットフォームを提供するという試みは、当社もGAMECITYで展開しています。ただ、GAMECITYもXbox Live!と機能が被っているんですよ。ユーザーの方々から見ると似たようなものがあちこちであるように見えますよね。Vistaの出現で、ユーザーと我々のようなデベロッパーの双方にとってメリットがあれば、PCにおいてはスタンダードになっていくシナリオは考えられると思います。

編: 確かにその可能性はありますよね。

松原氏: Windowsは、ほぼすべてのPCに最初から搭載されていますから、Microsoftさんは強いですよね。開発だけに特化したいデベロッパーからしてみれば、後はVistaにお任せしたい、というところもでてくるでしょう。当社では、GAMECITYというIDサービスがあって課金システムを持っていますし、オンライン物販もやっています。このような状況で、Microsoftさんから課金決済はこのやり方しかだめよ、というようにしないでほしいですよね。ユーザーの利便性、デベロッパーの発想の自由度を考えて柔軟なオプションを用意して欲しい。それを許容してくれるのであれば、Windows VistaはPCゲームのプラットフォームとしての魅力を持っていると思いますね。

編: デベロッパーの見解としては、基本的に歓迎できると?

松原氏: いいと思いますよ。Microsoftさんがユーザーとデベロッパーどちらにもメリットがある仕様にしてくれることを期待しています。あとは利用料金ですね。

編: 今回プレスブリーフィングでビル・ゲイツ会長から「Live Anywhere」という構想が発表されました。モバイルに対するコミュニティサービスというのはコーエーさんもやられてきていますが、どのような感想をお持ちですか。

松原氏: モバイルについては、ゲーム端末の性能としては端末によってかなり差があるので、どうしても同じレベルとしてひとくくりでは扱えません。連携という部分での楽しさを増すというか、そういった部分での楽しさはもっともっと増えると思うんですよ。

 PCと家庭用ゲーム機と携帯で、同じレベルでゲームが楽しめるようになるかというと、まだそれは難しいでしょうね。PSPやDSがどこまで来るかというのはありますけど、携帯電話まで含めるとやっぱり携帯機器というのは、PCと連携していくものじゃないかと。

編: Live Anywhereは、携帯から、PCやXbox 360で遊んでるフレンドの情報がわかったりとか、外部ツールとしての落としどころはいいと思います。

松原氏: そうするとオンラインはコミュニティの方が強くなっていくんじゃないんですか。北米ではSony Online Entertainment(SOE)さんが「Station」で実施されていますけど、1つのコミュニティに入ってそこで存分に楽しんでくださいというサービスをやっていますよね。SOEさんが展開しているのはMMOだけども、カジュアルゲームも含めたサービスがあってもいいでしょう。ひとつの大きなコミュニティに参加すると、コミュニティサービスを通じていろいろなゲームを一緒に楽しむというプレイスタイルが今後当たり前になってくると思いますね。

編: PS3についてもお伺いしたいんですけど、以前、松原さんが次世代機に必要な要素として挙げていた機能について、ほぼ満額解答が出たんじゃないですか。

松原氏: そうですね。私はAOGCではプラットフォームには2つ求めたつもりです。まずは課金システムなどオンラインゲームに必要なプラットフォーム機能を持ってくださいと。それは大丈夫そうです。もうひとつは普及の速度ですが、こちらは市場の反応しだいですね。

編: 高いということですか?

松原氏: うーん、SCEの久夛良木社長が、PS2が出たときも高いと言われたけど、考えられないような売れ行きになったとお話されているので、最初はこのくらいのものかなとも思いますね。PSXのようにレコーダーの機能も持たせてくれるといいんですけどね。

編: コーエーのオンラインゲームを今後、PS3に供給するというシナリオはあるのでしょうか?

松原氏: 可能性としては十分にあります。ただ、オンラインゲームが盛んなアジアの地域を考えたときに、日本以外にはまだ家庭用ゲーム機は十分普及していないのが現状です。中国、台湾、韓国と考えるとWindowsで提供するというのは外せないなと。

編: しかし、その一方で欧米は家庭用ゲーム機が強い。

松原氏: そうですね。欧米のオンラインゲームは、私がAOGCでお話ししたように家庭用ゲーム機に期待ですね。欧米でやはり家庭用ゲーム機でのオンラインゲームは身近になっていくんじゃないでしょうか。

編: スクウェア・エニックスさんがXbox 360に対応したのは、ヨーロッパ市場を意識しての戦略だと伺いました。欧米市場をとるためにコンシューマ対応は必要とのことだったんですが、コーエーさんはいかがですか?

松原氏: 今後の欧米を考えると家庭用ゲーム機への展開は重要だと思います。日本では「信長の野望 Online」の課金ユーザー数は約6万人ですが、半数がプレイステーション 2で遊んでいます。3年前にサービスを開始して以来、ずっと遊び続けてくれている方がすごく多いんです。

 3年前と比べるとオンラインゲームのタイトル数が多くなり、競争が激しくなってきたでしょう。そうすると、日本の市場でも、欧米でもオンラインゲームのサービスが生き残っていくためには家庭用ゲーム機は重要だと考えています。


■ コミュニティサービスについて 「オープンな環境の提供に期待」

ここでは主にコンソール機でのコミュニティサービスについて語っているが、今回のE3で出た話としては、Xbox Live!関連の話が一番充実していた。画面はWindows Vista上でXbox Live!を起動し、「Shadowrun」のマッチングを行なっているシーン。右側には新しくなったMSNメッセンジャーが起動している
編: コミュニティサービスについてお伺いしたいのですが、次世代のオンラインゲームコミュニティについてどのような構想をお持ちですか?

松原氏: コーエーではGAMECITYがそれに当たります。インターネット全体ではコミュニティサービスはどんどん進化しているので、GAMECITYもますます機能を充実させていかなければならないなと思いますね。

編: GAMECITYの窓口としては今後もPCのみとなるのでしょうか?

松原氏: 「信長の野望 Online」向けのサービスが中心ですが、PS2にもサービスしていますよ。

編: 次世代機がすべてオンラインに繋がり、ゲームの合間にコミュニケーションを取る、メールもやるということになると、家庭用ゲーム機で全部やってしまいたくなりませんか?

松原氏: そうですね。Windows、家庭用ゲーム機どちらでも同じプラットフォームで全てできればユーザーさんにとって便利ですね。

編: 私はコミュニティという点だけを割り切って考えると、プラットフォームへのゲームの提供は、コミュニティサービス提供の必然条件ではない気がします。

松原氏: 現在の家庭用ゲーム機ではユーザーインターフェイスや、TVモニタの解像度などの点で、コミュニティにはあまり向いていないと思います。次世代機ではこの辺は相当改善されるでしょう。

編: 私の場合、PS2でオンラインゲームやってても、DSでオンラインゲームやってても、コミュニティの核になるのはやっぱりPCです。これは私がPCありきの人間だからですが、次世代機のゲームシーンでは、今度はそれが逆になるユーザーが増えてくるのではないか。PCでオンラインゲームもやったりするけど、コミュニティのコアになるのはSCEさんや任天堂さんやMSさんのコミュニティサービス、というような時代が来るんじゃないかと。

松原氏: うーん、やはり最終的にはユーザーさんのチョイスですかね。

編: 松原さんはあくまでPCプラットフォームをコアにしたコミュニティサービスを推し進めていく感じですか。

松原氏: それは家庭用ゲーム機のコミュニティサービスがどういう形で提供されるか、次第だと思います。それがWebブラウザのようにユーザーさんが簡単に使えて、デベロッパーが様々な付加サービスを追加できるような、自由な柔軟さを提供してほしいと思います。プロプライエティに閉じたものではなくて、PCのオープンさに負けないものを。あと無料か有料かも大きな要因ですね。

編: PS3は機能としては、ほぼPCといっていいと思いますが。

松原氏: Linuxも動くようですので、オープンな環境を提供してくれるものと期待しています。オープンであることが普及を進め、市場に受け入れられることと思います。

編: コミュニティプラットフォームとしてオープンであれば展開されることもやぶさかではないと?

松原氏: はい、それはユーザーさんにメリットがあると思いますから。ユーザーさんが家庭用ゲーム機でプレイはするけど、PCでコミュニケーション。逆もそうで、PCでプレイしてるけど家庭用ゲーム機でコミュニケーションサービスを利用するといった選択肢はあってもいいですよね。

編: 現在コーエーさんでは、パブリッシャーもプラットフォームも複数にまたがって展開されていますが、タイトルごとにコミュニティが独立してしまっていますよね。それをひとつの傘の元に統合するような考えはないのでしょうか?

松原氏: それはやりたいですよね。コーエーのGAMECITYでもやりたい。一方、Microsoftさんも、SCEさんもみんな似たようなことをやろうとしているところで、そこが難しいところだなと思うんですよね。ユーザーさんが混乱してしまうような事態は避けなくてはいけない。誰がどういう形でやればユーザーさんに受け入れて頂けるのか、今後の課題ですね。

編: 私はコミュニティのコアになるのは、いわゆるフレンドリストだと思っています。20世紀にゲーマーにとって一番大事なのはセーブデータだといわれてましたけど、21世紀のゲームシーンのコアになるのはフレンドリストじゃないかと。特定のゲームに依存しない、新しい形での囲い込みが必要になるんじゃないでしょうか。

松原氏: 同感ですね。GAMECITYでは市民IDというのを持っていますが、市民の知り合いがいわばフレンドリストですよね。今はできていませんが、ゲームの垣根を越えて共有するような機能を持たせていきたいと考えています。


■ インターフェイス論 「次のステップはまだ見えない」

写真は、EAがWii向けに開発している「Madden NFL 07」のデモシーン。コントローラを手前にクイッと振り上げると、豪快なゴールキックが放てる。気分爽快である
編: 次に次世代のオンラインゲームのインターフェイスについてお伺いしたいのですが、マウスとキーボードのほかにどのようなものをお考えですか。

松原氏: 私はゲームとしてはやはりゲームコントローラーが一番良いかなと思ってるんです。ただ今回「真・三國無双BB」のインタビューで、海外のメディアさんにお聞きしても、みんな「キーボードでできるんですか?」って聞くんですよね。日本人の感覚から言うと、「これをキーボードでやるの?」という感じですが、特にアジアの人はキーボードがいいみたいです。

編: それで「真・三國無双BB」は、キーボードに対応するのですか?

松原氏: 対応します。マウスとキーボードだけでもプレイできます。

編: PCゲームもVista時代になりますと、Xbox 360のコントローラをはじめゲーム専用コントローラがどっと対応してきます。

松原氏: はい。私はゲームコントローラというか、よりゲームを遊ぶに相応しいインターフェイスが将来は主流になると思いますけど。キーボードだけだと“仕事”の感覚にとらわれませんか? 私だけかもしれないけど(笑)。

編: インターフェイスは特にこだわりは無い感じですね。デベロッパーとしてはユーザーニーズに従うという感じでしょうか?

松原氏: ユーザーインターフェイスは、純粋に家庭用ゲーム機系のほうが進んでると思うんですよ。ただ、任天堂さんのWiiなどを見てみますと、新しいコントローラが支持されるかどうかというのはユーザーさんが実際に使ってみて決めることですよね。

 PCのオンラインゲームのインターフェイスは、それに比べるとまだまだ後追いという感じがあります。キーボードはテキストチャットに必要なので、当面はキーボードとマウス、そしてゲームコントローラという3点セットが標準になるでしょうね。

 ソフトウェアキーボードなんてできれば使いたくないでしょうし、テキストチャットはまだ必要です。という意味では、オンラインゲームのインターフェイスで大きく変わるステップはまだ見えてこないと思います。でも、Wiiでオンラインゲームというのはおもしろいですよね。

編: ほうほう、Wiiで何かアイデアがあるのですか?

松原氏: いやいや、インターフェイスに関連したところで、Wiiから新しい形のオンラインゲームが生まれる可能性はあるよね、という妄想レベルの雑談です(笑)


■ アカデミックとの連携 「宮本さん、パワーポイントの資料作ってください」

欧米はゲームの説明に各種資料を作り、わかりやすく説明するのがうまい。画面は、Activisionのプレスブリーフィングで公開された「Tony Hawk's Project 8」のパワーポイント資料
Wiiの無線コントローラをタクトに見立てて、「ゼルダの伝説」のメインテーマを演奏し、大喝采を浴びた任天堂代表取締役専務 宮本茂氏。松原氏が指摘するように、確かに宮本氏は実演型のクリエイターといえる
編: 最近の松原さんの社外での動きを見ていますと、「松原健二の脳トレ」といったタイトルが生まれてきても、私は驚かないですね(笑)

松原氏: 最近、アカデミックとの連携という作業が始まってきているのは事実ですね。ゲームの社会的位置づけをきちんと評価してもらおうと。たとえば、「ゲーム脳」みたいな報道が世間に伝わってしまうことに対して、ゲームに係わる者として取り組む必要があると考えています。

 ゲームっていうのはひとつのメディアですので、良いものも悪いものもあると、ただそれだけです。良い側面とは何かというのを解き明かしてそこをもっと伸ばし、悪い面は改めていけばいいじゃないかと。テレビ、映画、ビデオだって、ダークサイドがあるわけじゃないですか。それが社会に普及していく中で、様々な評価を経て今日の位置づけがあるのでしょう。ゲームがメディアとして持つ特性を客観的に明らかにし、判りやすく社会に公開することは、アカデミックの重要な役割だと思うんですよ。

編: すでに具体的な形で動き出しているようですね。

松原氏: そうですね。昨年、独立行政法人である科学技術振興機構(JST)にてオンラインゲームの教育的効果を研究するプロジェクトが始まりました。オンラインゲームをプレイした前後でどう変わるかというものを社会学的、心理学的な見地などから、オンラインゲームの教育的効果を調べようというものです。6月にはデジタルコンテンツシンポジウムという場所で、「信長の野望 Online」を題材にした研究の発表も行なわれる予定です。

 もうひとつアカデミックと産業界とで取組めれば良いなと考えていることは、日本のゲームの作り方というのをもっと力強いものにできればということです。今でも世界一だと思っていますが、その優位性は昔に比べると薄れてきているでしょう? もっともっと日本のゲームの作り方をよくする手段はあると思うんですよ。

 例えばGDCなどの開発者向けセミナーにいくと北米ではゲームクリエイターが開発者のための資料を公開しますが、日本人からはあまりそういう資料は出てこないでしょう。日本人はあまり書かないんですよね。経験を積んできたことを、整理し体系化して書いて残すよりも、むしろカラダで覚えているから。

編: 資料を書かない、体系化しないというのは、ゲーム業界うんぬんより、日本人の特質に根ざした構造的な弱みでもありますよね。

松原氏: 日本人のすごい長所だと思うんですが、仕事に線引きをせずに周囲の人の仕事だってアメーバ的になんでもフレキシブルにやってしまう。世話好きなんですよね。一方では何かを体系化して誰かに渡そうというときになって頭の中がこんがらがっていたりすることがあるというかね。

 一方、アメリカはファーストフード文化ということで、マニュアル化が進んでいる。だから、今日来たアルバイトでも数時間トレーニングすればすぐ仕事ができるわけです。日本の徒弟制度的なものもそれはそれでいいところだと思うんですけど、あまりに美化しすぎるとシステマティックなやり方に負けてしまいますよね。

 情報をシステマティックに伝達して、ある段階までの成長をマスプロダクション化する、これが世界に通用する産業で築かれてきたやりかたでしょう。ゲーム作りの体系化が進めば、それを研究して発展させることができ、アカデミックと有機的な連携が生まれる、人材育成へも役立つということに繋がると考えています。日本の良さを引継ぎながら、欧米に負けないために、日の丸頑張れという思いです。ちょっと肩に力が入りすぎかもしれませんが(笑)。

編: 松原さんが言わんとしていることは、要するに「宮本さん、パワーポイントの資料作ってください」ということですよね(笑)

松原氏: それはとってもありがたいですね (笑)。宮本さんはすごいです。お話もとても判りやすく、ゲーム開発者にとって神様みたいな人でしょう。私が言うのも大変におこがましいことですが、ぜひその経験と思いを若い人達にもっと広く伝えて頂ければありがたいと思います。


■ 次世代のオンラインゲームにおける課題 「コミュニティマネジメントはISPが鍵」

編: ジャーナリストとしての立場から申しますと、むしろシリアスゲーム以前の問題として、オンラインゲームにおけるユーザーのコモンセンスをメディア活動を通じてしっかり確立させたい。コミュニティそのものが負のスパイラルに陥りがちなところ、あとは無記名によるコミュニティのカオス化。まだまだいろいろありますけども。

松原氏: それは同感ですね。掲示板で使われる言葉や表現を見ると首をかしげてしまうことがあります。そのような状況が一般的になってしまうことには、不安を感じます。言葉の刺激って言うんでしょうかね。間違いを指摘した上で諌めるための言葉ならいいんですが、そういう使われ方ではなく荒れる雰囲気を作ってしまいますよね。インターネットの文化が未熟であるといわれるのはそういうところじゃないですか。

編: 現状だとちょっと負の部分が前面に出すぎている印象があります。その点、DSはうまくその部分をシャットアウトして、安全なオンラインエンターテインメントを成立させていますよね。

松原氏: その負の部分は何かというと、みんなが言うのはボーダーレスと匿名性。どう思います?

編: DSを見れば、必ずしもボーダーレスと匿名性そのものは悪ではないと思いますね。

松原氏: Wi-Fiコネクションは「あんしん」できるサービス内容ですからね。見知らぬ人とはチャットができません。親にとっては子供が遊んでも大丈夫。しかし、それだけで良いのかという気持ちもあります。インターネット上のコミュニティを広げて様々な人と交流したいというときには、今のWi-Fiコネクションでは物足りないかもしれない。任天堂さんが、Wi-Fiコネクションをどう発展させ、より充実したコミュニティサービスを実現するのか、おそらくアイデアは既にでき上がっているのじゃないでしょうか。この匿名性とボーダーレスの問題点は、相手がどこにいる誰なのかがわからないところですよね。

編: なるほど。つまり、個人が特定可能であればいいのではないかと?

松原氏: インターネットがこれからも発展していく上で、ボーダーレスと匿名性という特徴が必要なのだとすると、健全なコミュニティに入るための条件を別の方法でつくったほうがいいかなと。しかも、それをユーザーにネガティブに意識させないものが必要でしょう。

 今回、国内において「真・三國無双BB」のサービスをYahoo!BBユーザーさんだけに限定したのはもちろんソフトバンクさんのインターネット回線を活用することが最大の理由ですけれども、その副次的な効果として、ユーザーさんが安心できるんですよ。参加する人は、他のユーザーもYahoo!BB加入者であることが判っています。これって今までのオンラインゲームのサービスと違いますよね。相手が誰だか知らない場合でも、安心してコミュニティに参加できると思うんです。

 運営サービスをしっかりと行ないますが、それでも残念ながらハラスメントや迷惑行為は起きるかもしれない。ただ、匿名だから何やっても相手にはバレないという雰囲気は抑えられると考えています。この見込みが正しければ、今後、インターネットサービスプロバイダ(以下、ISP)と連携したコミュニティサービスにも期待できるでしょう。「あんしん」してコミュニティを活性化させるような取り組みとしては、ISPと組むのがひとつの方法ではないかと。

編: ISPで縛ることによってコミュニティのクオリティを保つというのはとてもユニークな考え方ですね。ようやく最大手ISPのYahooと組んだのがちょっとわかった気がします。

松原氏: いや、いま話しているのはかなり後付の理論です(笑)

編: しかし、オンラインゲームのコミュニティマネジメントは、インフラの供給元であるISPがカギを握っているという考え方はとてもおもしろい。

松原氏: 私はインターネットの文化というのは、インターネットがインフラになり、パブリックサービスと呼ばれるようになることだと思っています。インターネットを利用しようとするユーザーさんやその両親の方が安心するためには、パブリックサービスを行なうプロバイダというものが中心になっていいんじゃないのかなと思います。

 ガス会社や電力会社に個人の名前と住所と銀行口座を入力してハンコ押すことにはあまり大きな抵抗を感じませんよね。そうしないと生活できないわけですから。インターネットでもそうなればいいわけじゃないですか。インターネットに不安があるというのはシステム的な面とサービス的な面があるわけで、それを取っ払えればいいかなと。中村さんが言ったインターネットカルチャーの問題を消す方向にだいぶ近づくんじゃないかと。

編: 現場のコミュニケーションそのものというのは匿名でもいいわけですね。

松原氏: はい。システムとして、サービスに参加する人のプロファイルを把握していて、個人情報の管理がきちんとされていれば良いのではないかと思います。匿名性があるから他の人にいやな思いをさせるような振る舞いをしてもばれない、ということは問題でしょう。匿名性があったってルールは守らなければいけませんと。

編: インターネットサービスプロバイダは初めから民間のビジネスですけど、公共機関に近いしっかりした枠組みを民間企業に求めたいという考えでしょうか。

松原氏: ガス会社や電力会社も民間企業ですから、パブリックセクターといわれている民間企業にISPを位置づけていいんじゃないかなと。将来行政の手続きや、BtoBでのサービスなどがどんどんインターネット経由になったとしたら、ISPの役割は大きくなってくわけで、おのずとパブリックセクターになって行くんじゃないでしょうか。

編: コミュニティマネジメントも含めて、ISPさんにはもう一踏ん張りしてほしいと?

松原氏: ISPさんが枠組みを作り、コミュニティサービスそのものを提供するのは別の会社という形もあると思います。

編: ISPさんが、このインタビューを見たら、さぞかしプレッシャーを感じると思いますね。次世代機の次はISPが松原さんのターゲットかと(笑)。

松原氏: いや、ISPさんも既に検討をされていることだと思いますよ。高速で低価格なインターネットサービスでは日本がトップですから、ここでも世界を目指すチャンスがあると思います。

編: それでは最後にコーエーのオンラインゲームファンに一言お願いします。

松原氏: 「信長の野望 Online」のサービスを始めて、今年6月で3年を迎えます。昨年は「大航海時代 Online」のサービスも始まり、これまでに大変多くのユーザーさんにプレイして頂きました。さらに海外への展開も進み、ここまで育てて頂いたファンの皆様に、心から感謝申し上げます。

 現在「真・三國無双BB」、「三國志Online(仮称)」の開発も進めています。私はインターネットとエンターテインメントが大好きで、オンラインゲームの仕事をすることを喜びに感じています。これからも、もっとユーザーさんに楽しんで頂けるサービスを目指して参りますので、今後もぜひともよろしくお願いします。

編: ありがとうございました。

□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□Electronic Entertainment Expoのホームページ(英語)
http://www.e3expo.com/
□関連情報
【5月13日】コーエー、MMOアクション「真・三國無双BB」プレビュー
サーバーごとに別シナリオを用意、サーバーは定期リセット
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060513/e3_musou.htm
【5月10日】Electronic Entertainment Expo 2006 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060510/e3link.htm

(2006年5月18日)

[Reported by 中村聖司]



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