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会場:コーエー本社
■ グラフィックス面で大きな変化が? 2006年の「信長の野望Online」 編: 「信長の野望Online」についてお聞きします。今日はこんな写真を持ってきたのですが(笑)、2002年4月の発表から足かけ4年間の感想をお願いします。
当初始めたときに、3ワールドでスタートして、同時接続で1万人を突破して、目に見えないけどもあのサーバーには1万人以上の人たちがプレイしているんだ、というのを実感したときとか、みんなで「ウォー!」みたいな感じで、あの感動は忘れられないですね。あれも3年前の6月ですか……。 苦労話で言えば正直βテストをβ1とβ2とやったのですが、β1の評判が芳しくなくて、ディレクターとかなりミーティングを重ねて、どう特徴を出せばいいかと色々変えていきました。生産系の使用を強化するなど大きな修正を行なった上で、β2をやったら非常に手応えがよくて、ゴールデンウィークの最後にイベントをやったらものすごく盛り上がりました。お店もすごく引きがよかったし、当社の営業を担当しているコーエーネットからも「評判良いですよ」といわれて、嬉しかったですね。 「信長の野望Online」はコーエーで初めのMMORPGということで、1からすべてを解決していきながら走ってきました。去年は「飛龍の章」も出して、あっという間でしたね。谷、谷、谷を育ててくれたのはお客様だとつくづく思います。 編: 「信長の野望Online」で評価するところは、やはりなんと言っても勢力が滅亡したり、お家を再興したりというようなリアルなドラマ性ですよね。当事者にとっては天国だったり地獄だったりするわけですが、このドラマは他のオンラインゲームでは味わえない。 松原氏: 「信長の野望」ですから、歴史シミュレーション要素を入れるというのは最初から言っていて、それをどう入れようかは考えました。様々検討しましたが、ユーザーは仕官したからにはその勢力への思い入れがあるということで、滅亡しても再興できる仕様になりました。 編: ただ、去年1年の動きを見ていくと、合戦の仕様についてずっとドラスティックな変化が続いていて、「まだ固まっていないのかな」というイメージもありますね。 松原氏: 変えることでより良いサービスをと思って、「進化し続ける」という感じですかね。ひとつは「時間」というものがありますね。時間を短くして前哨戦を入れたというのがありますけど、これにも賛否両論あります。賛成意見には、1つ1つが区切れてメリハリがついたという意見があって、反対にとにかく合戦を長くやりたい、という風に物足りないと言う意見もありました。「飛龍の章」で兵種というのを入れたんですが、兵種の更なる強化などを実装していくことを考えると、やはり合戦の仕組みは今後も成長を続けていくのかなと。 編: 合戦を含む今後の「信長の野望Online」の基本方針はどのようなものになるのでしょうか。 松原氏: 「飛龍の章」を出して1年たって、そろそろ次の段階を考えたいと思います。その中の1つとしては戦闘の仕組みも合戦やその他の戦闘にも新しい要素が入ってくるんじゃないのかなあと……これくらいで(笑)。 編: それは、拡張ディスク的な展開なのでしょうか。数々の新要素に加えて、合戦のありようもまた変化するかもしれないと? 松原氏: そうですね。合戦は常にバージョンアップの中で見直しをしているので、どちらかといえば拡張パックを出した後かもしれませんね。ただ、ユーザーさんの要望にお応えするためにも、ある程度は変えていくと思いますよ。 編: 拡張ディスクは今年出るのでしょうか。 松原氏: できれば今年中にサービスを開始したいと考えています。 編: MMOのバージョンアップで人気が高いのは「新しい職業」だと思うのですが、この辺はいかがでしょうか。 松原氏: 良い質問ですね、と書いておいてください(笑)。 編: ユーザーさんからは、職業のバランスがおかしくてそこで合戦の勝敗が決まってる、というような声もあるようですが。 松原氏: 職業バランスはよく質問をされることなのですが、すべてのお客様に満足頂くことはとても難しいと考えています。ただ、少しでもそれに近づけるように改善を続けていきます。 去年の8月に新装備を増やしたら、多くの人が増えたり戻ってきてくれたのです。去年の12月に「帰参者キャンペーン」というのをやったのですが、結構多くのお客様が戻ってきてくれました。キャンペーンでは8月末までの人を対象にしたのですが、9月に新装備品などを強化したので、それを見ていない人に変化をぜひ楽しんで頂きたいと考えて実施したところ、好評でしたね。 編: 新装備がウケるとなると、“次の章”でも一層の視覚的な進化を期待したいところですよね? 松原氏: ビジュアル要素も重要な要素のひとつと考えています。いまはそれぐらいでお願いします(笑)。
■ 拡張パックにより新たな海域に乗り出す「大航海時代Online」 編: 次に「大航海時代Online」についてお聞きします。運営して丸1年ですが、どのような感想をお持ちでしょうか。
現状では、戦いばかりではなく、「信長」に比べて華やかな世界で、まったりと航海を楽しめるというのが好評をいただいているのではないかと。女性ユーザーも多いですし。戦いを好む人は軍人になって大海戦を楽しんで欲しいと。 大海戦では、レベルの上達の早い人は、重ガレオン船でババババーン! と、初心者にとっては難易度が高すぎる状況となっていたのですが、「クラス別大海戦」を新たに取り入れることで、初めての人でも大海戦を楽しめるように改善しました。「信長の野望Online」とはまた違ったゲーム性を持っているので、それに対してユーザーの意見を取り入れていくことができたかなあと。 編: 公式ページで発表されていたアンケートを見ましたが、意外とユーザーさんは「海賊行為」に対してポジティブにとらえられていますね。 松原氏: 実は海賊って全体の2%ぐらいしかいないんですよ。海賊をするプレーヤーさんはすごく少ないんです。ところが海賊行為を好まないプレーヤーさんにとって、海賊行為にあった場合、ものすごいネガティブな印象を抱かれるということが稀にあるようです。我々としては、今後、世界観を維持すべく海賊というものを入れていますということを、判りやすく伝え続けたいと思います。 東地中海というのは時々イベントで安全海域にするんですが、ここを安全海域にしてしまったら簡単にゲーム内通貨を稼ぐことが出来てしまい、遠くに行くメリットが薄くなってしまう。世界全体を楽しむというゲーム性とバランスが崩れると思うんですよ。そうすると東地中海全体のバランスを見直さなくてはいけなくなる。東地中海は海賊のいる危険地帯だけど、ハイリスクな代わりにハイリターンがあるというところで、このゲームならではのところにしたいんですよね。 編: まったり系というイメージから、海賊なんていらないからもっと冒険させてくれ、という意見が過半を占めると想像していただけに、意外とユーザーさんはPvPを指向しているのかなと。 松原氏: 海賊はかなり強い人が多いので、海賊に勝てる人というのはそう多くないはずなんですよ。それでもアンケートに「海賊がいて良い」という意見が多かったのは、大航海時代という世界観が好きというユーザーさんが多いからだと思いますね。パッケージでの「大航海時代」シリーズが好きなプレーヤーもたくさんいるので、「このゲームでは海賊はありだよね」と思っている人が多いんじゃないかなと。 もちろん、PvPという側面もあるとは思います。海賊になってやろうという人は戦闘レベルが高い傾向にあります。その海賊にあえて立ち向かうプレーヤーへは、大きなインセンティブを提供していますから。 編: 海賊は世界観の維持に欠かせない1つの要素としてこれからも育てていくと。 松原氏: そうですね。あの時代には必要悪というか、そういうものもあったということで、海賊のハラハラドキドキさと、それをうまく回避することによって利益を大きく得られる。それはある意味「嵐」に近いものだと思います。 嵐は船員が流されちゃって荷物が消えるかもしれないけど、「嵐をやめてくれ!」という意見は少ない。嵐は、「大航海時代Online」に欠かせない要素になっています。だけど海賊はやっぱり相手が人なので、どうしてもネガティブなイメージがつくのではないかと思います。 「大航海時代Online」は、思ったよりオンラインゲーム初心者の方が多いです。初めてオンラインゲームに触れ、カジュアルな要素が強いので、まったりという形で入ってきて、いきなり海賊に襲われるとびっくりされる方もいるかもしれません。 それは“海賊”というロールプレイなんですと公式サイトなどで説明しているのですが、これからもわかりやすく説明し続けていきたいと思います。それが海賊というものの特徴だと、理解して頂けるように。我々も、当たり前ですが、海賊をやっている人は悪い人だと思っていません(笑)。 編: 今後の展開に関してはいかがでしょうか。 松原氏: 「信長」と同じようにこちらもそろそろ拡張ディスクを考えなければいけませんね。 編: 初めての拡張ディスクですよね。内容はどういったものになるんでしょうか。 松原氏: 今の海域はヨーロッパからインドまでですけど、世界はもっと広いですよね。じゃあ今度はどういったところが冒険エリアになるのか、というところですね。これまでアップデートで都市は追加してきましたが、海域は追加していなかった。海域の追加の要望はユーザーさんからたくさん来ているので、拡張パックで海域を追加しますというのは、すでに12月に発表しています。それがどの海域か、というのはまだお話できませんが。 編: 基本的には新しい海域と都市の追加と言うことですか。 松原氏: 他にも新しい何らかのシステムを追加していきます。新しいシステムと言えば2月に「副官」システムを導入します。副官を育てることで、これまでプレーヤーが1人ではできなかった、様々なことができるようになります。たとえば、副官が生産を代行してくれたり、船を自動回航してくれたりとかですね。当然、副官を育成すること自体も楽しめるようにデザインしています。ユーザーの皆様がどれだけ楽しんでもらえるか、期待しています。 それから、「大航海時代Online スターターパック」という新しいパッケージも発売します。パッケージを購入して頂いて、シリアル番号を入力するだけで、すぐに正式アカウントでプレイが開始できます。体験版の無料期間も付いてくるので、パッケージを購入すれば合計44日プレイすることができるのでお得に「大航海時代Online」を始めることができます。 編: 先ほどお話しも出ましたが、拡張ディスクの展開も含めて「大航海時代Online」の今後の展開を教えてください。「大航海」はある意味、何でもありですから、今後の方針は気になるところです。 松原氏: コンセプトは「海を翔けるロマン」です。他のMMOはモンスターと戦うとか、ファンタジー要素がありますけど、「大航海」はリアルな雰囲気を世界観として持っているということが特徴です。今後もその方向性は変わりませんが、イメージ的に広がるところがありますよね。たとえば、その時代にあると思われていたワクワク要素、というのがひとつのヒントになると思います。 編: それは海の果てが滝のように落ちてるとか、リヴァイアサンが出てくるとかですか? 松原氏: 海の果ては落ちていませんが、海の果てを目指していくというのは非常にワクワクしますよね。それも単に航海するんじゃなくて、航海の途中で色々楽しむシステムが入ってくる。もちろん海域を追加していくことで、都市や遺跡を追加するといった部分はより充実させていきますが。 編: いよいよ東方、という感じでしょうか? 松原氏: 地球の外には行きません(笑)。一応地球上ということで。 編: 仮にマゼランの世界一周を実現するとすれば、いずれは地球規模になるわけですよね。 松原氏: だんだんと広げていく感じです。拡張パックで最初の地域、海域を入れ、その後は定期的に追加していきます。今ここがヨーロッパだとすると(と、手で地球儀の形を作りそれをいろいろな方向に回して)こうかな? こうかな? 編: 西から行くか、東から行くか、夢が広がりますね。 松原氏: 楽しみにしてください。ただ、アメリカ大陸は長いんで、回るのがっけっこう距離がありそうですね。 編: ではまずはロマンと、ロマンに対応させる形で物理的な広がりをどんどん追加させていくという形ですか。 松原氏: そうですね。拡張されるのは新たな海域だけではありません。さきほど「大航海時代」はなんでもあり、とおっしゃいましたが、新たな遊びを追加する余地がまだまだある、という意味ではまさにその通りなんですよ。既存のお客様だけでなく、新規のお客様も長い間楽しめるような新システムがたくさん登場します。きっと、未知の海域を開拓していく楽しみが一気に増えると思いますよ。今はまだ詳しくお話しできませんが、そのうちしっかり発表会をしますので、どうぞご期待ください。
■ デビューはもうまもなく!? いよいよその姿を見せる「真・三國無双BB」
松原氏: 今一生懸命に作っているところです。もうちょっとだけ待ってください(笑)。 編: どのようなゲームに仕上がりそうですか? 松原氏: 皆さんご存じの「真・三國無双」シリーズの持つ一騎当千の爽快感をオンライン上で実現しようという、皆さんがかつて体験したことがないようなオンラインゲームになると思います。詳細については、先ほども申し上げたように、そんな遠くない時期にいろいろとお話できる機会を設けたいと思いますので、もうしばらくお待ちください。 編: 開発は順調なのでしょうか? 松原氏: やっぱり谷あり谷ありの順調ですが、正直言ってこの作品は技術的チャレンジが非常に高いので、慎重になっています。通常のβテストでは、システムへの負荷、ゲーム性の確認を主眼におきますが、このゲームでは実際にお客様がプレイする環境でのネットワークのレーテンシーとスループットのテストを十分にしたいと思っています。ある程度のメドはもうついていますが、さらなる最適化を目指して頑張っています。 編: プラットフォームはPCオンリーですか。 松原氏: そうです。コンソールではまだまだネットワークの設定的な部分などこちらからコントロールがきかない部分があるので。PCならある程度このスペックというようにお願いできるのですが。ソフトバンクさんとの契約でも最初はPCでいきましょうということになっています。 編: 気になるのはビジネスモデルですが、どういった課金システムを予定していますか? 松原氏: できるだけ多くの人にやってもらえるモデルで、ということを念頭において現在検討中です。今までにないビジネスモデルも色々考えています。
■ 「三國志Online(仮)」はより三国志らしさにこだわった、決定打となる作品に 編: 「三國志Online(仮)」の開発着手から1年が経過しました。進捗の方はいかがでしょうか? 松原氏: おかげさまで順調です。「三国志」を題材に、「真・三國無双BB」と「三國志Online(仮)」を開発しているわけですが、2つのタイトルの差別化を図るということに去年は気をつけてました。もちろんコアのゲーム性は全然違うのですが、他のところでもお客さんが見て明確に違うように、という点ですね。 「三國志Online(仮)」は基本的には正統派のMMORPGです。シンガポールで本格的に開発が始まってもうすぐ1年、去年2月にシンガポールで発表会を行なって、その時はまだ30人くらいでしたが、現在は65人くらいの開発スタッフがいます。 編: MMORPGとしては大規模な開発環境ですね。 松原氏: 大規模ですよ。CGなどの作業はピーク時にはもっと足りなくなるので、日本や中国に発注していますけどね。 編: 規模としては「信長の野望Online」を上回る? 松原氏: いえ、「信長の野望Online」の資産や「三國志」シリーズの資産も有効に使っていこうと考えているので、人数的には上回らないと思います。ただ、「三國志Online(仮)」は2007年にサービスインする予定ですから、「信長の野望Online」から4年後ということで、それよりは進化した形のものをお見せしたいですね。 戦国時代というのは「国」が中心で武将がそれを守るという形ですが、三国志は武将が中心だと考えています。武将を感じさせるゲームシステム、「俺は武将に仕えているんだ」という、ということを、いろんなところで実感できるようにしたいですね。 編: 基本的なゲームデザインは大体できあがっているような印象ですね。 松原氏: そうですね、企画的にはできあがっていてこれらを総合的に検証するためのバージョンを作っています。 編: 基本的なゲームの内容はどういったものになるのでしょうか。既存の「三國志」シリーズをイメージして良いのでしょうか? 松原氏: 「信長の野望Online」を作ったコーエーが「三国志」を題材にMMORPGを作ったら、という認識で良いと思います。具体的な内容はまたいずれお伝えします。 編: 「信長の野望Online」に近いとなると、敵とはエンカウント式のバトルで、合戦があって、という感じですか。 松原氏: バトル方式は変わると思いますよ。どんな形かはまだお伝えできませんけれども。ただ、日々の暮らしとか、キャラクタの選択、生産、交易、戦闘など基本の要素はやはりMMOだということです。そしてそれぞれをどうやって「信長の野望Online」と差別化というか、「三国志」ならではのものにしていくかですね。例えばダンジョンみたいなものがあったとして、「三国志」世界にはモンスターは登場しませんので、そういうところも含めて色々アイデアを出して工夫していきます。 編: プレーヤーは無名の武将ですか。 松原氏: そうですね、やはり三国志は武将のイメージが強いですから。有名な武将はNPCで登場し、プレーヤーは有名武将に仕える形になります。もちろん、プレーヤーキャラクタは、男性、女性を選ぶことができます。どんなキャラクタになるかはぜひ楽しみにしてください。 編: 「三國志Online(仮)」はいつ頃から具体的に見えてくるでしょうか。 松原氏: 「真・三國無双BB」が今年の前半とすると、今年の後半になるんじゃないですかね。これだけ大きなタイトル2つですので、プロモーション計画も慎重に練っているところです。 編: 「三國志Online(仮)」もプラットフォームはPCのみですか。 松原氏: 今のところはそうですね。この作品は最初からシンガポールで作ってますから、中国、台湾、韓国、そして日本の4地域は、ほとんど同時にサービスを始めたいと思っています。 シンガポールの人たちは基本的に中国語と英語をしゃべれます。日本人スタッフも多いですし、我々は韓国にも子会社があるので、ローカライズするときにはシンガポールに集結して作る予定です。 編: シンガポール開発なのに現地展開は考えていないのですか? 松原氏: 今は検討している段階です。シンガポールは優秀な開発スタッフが大勢いるのですが、データセンターや通信のコストが日本に比べて高いんですよ。といいますか、諸外国より高い設備費、回線費を払わなくてはいけないなど、我々だけでなくインターネットビジネス全体の問題であると思います。この問題を解決して、ぜひシンガポールでも運営したいと思います。 編: 「三国志」ということで、特に中国市場は大事ですよね。 松原氏: 中国でも「三国志」を題材にしたゲームがいろいろ作られています。我々はそれらをよく研究しています。 編: その決定打にしたいと? 松原氏: 「コーエーが出した三国志のオンラインゲームは凄い」と言われることを目指しています。今まで台湾や中国で作られた三国志のオンラインゲームはファンタジー的なMMOが多いと思うんです。我々の「三国志」では、それよりはもっと「三国志」ならではの、というものを感じさせるようにしたいですね。 編: なるほど、それでは世界初の「ハードボイルド系」MMORPGを期待して良いのでしょうか? 松原氏: ハードボイルドというと、カジュアルな人が来てくれなくなりそうでちょっと心配ですね(笑)。三国志らしさが溢れ、武将の存在感が際立っている、あのワクワクするような世界観の中でユーザー同士が結びつくプレイを実現したいですよね。 編: それってやはり一言で言うと“オトコ”の世界ですよね。 松原氏: ええ、漢字の漢をつかう、「漢(オトコ)」の世界ですね。女性ファンも多いと思いますが、そもそも「三国志」は漢の世界ですよね。それが“ハードボイルド”だと言われれば確かにそうかもしれませんが、生産や交易、衣装を変えてみたりといった要素など、初心者でも優しくコミュニケーションできるようにしているので、女性ファンも楽しんでいただけるはずですよ。
■ よりグローバルに展開していくコーエーのオンラインゲーム戦略 編: 今後の戦略として、「グローバル展開を見据えた世界戦略」とのことですが、オンライン部門のグローバルなタイトルというのは、「三國志Online(仮)」を指しているのですか? 松原氏: いえ、アジア地域以外で「大航海時代Online」の展開、その次には「真・三國無双BB」をと考えています。 編: ほうほう、「真・三國無双BB」を海外展開するのですか? 松原氏: もちろんこの作品はインフラを必要とするので、展開に当たってはインフラの整備が必要となりますが、今確実に海外でもブロードバンドの整備は進んでいます。このゲームが出るチャンスは充分にあると思っています。「真・三國無双BB」はグローバルタイトルと位置づけていますね。 今コーエーのタイトルで北米で一番人気が高いのは「DYNASTY WARRIORS」というタイトルで販売している「真・三國無双」シリーズです。北米でMMOをプレイしている人口は何百万人もいる訳じゃないですか。そうすると充分にチャンスはあるなと。後はインフラで、北米全域というのは難しいでしょうが、やりようはある。韓国展開ももちろん視野に入れていますよ。 編: 「真・三國無双BB」はさすがに国内のみのコンテンツだと思っていました。 松原氏: 国内ではインフラが必要なのでソフトバンクさんと組んだのですが、海外展開は正直に言ってまだ白紙段階です。自分たちで行くのか、どこかと組むのかは決めていません。日本でしっかり成功させた後、海外にはすぐ行きたいですね。 編: 日本より遙かに困難な道のりになりそうな予感がありますが? 松原氏: 日本でこれだけブロードバンドが発達し、世界で一番安価なレベルで提供されているからこのゲームが実現できたと考えています。ブロードバンドがこれから発達する地域、もしくはエリアの一部になるかもしれませんが、インフラさえあれば展開は可能だと考えています。 編: 今の中国でできますか? インフラ的に不可能ですよね。 松原氏: そうですね。日本でも、ソフトバンクさんという、インフラを持つ強力なパートナー無しでは実現ができない、というのが現状なのは認めざるを得ません。家庭で利用するADSL回線の状況から言えば、日本は今40~50Mですけど、中国は1~2Mです。しかし、数年で追いつくだろうと期待しています。 編: 韓国もインフラが整っているといっても、回線速度は遅いままですよね? 松原氏: 日本に比べると、家庭で用いるブロードバンドのスピードは高くないかもしれませんが、グローバルで見ると相当整備されていると思います。韓国への展開はまだ全くの白紙段階ですが、回線を持つキャリアさんを含めて話し合って協力させて頂きたいと考えています。 編: アジアのスペシャリストとしてお伺いしたいのですが、現在、中国、韓国、そして台湾に展開していますが、それ以外にもアジアは広がっていますよね。注目されているエリアはありますか? 松原氏: 1年前にタイは調べています。PCスペック、インフラ、所得、オンラインゲームはどういったものが流行っているかなどを調べて、いける時期を考えています。現状、普及しているPCのスペックでは、我々のフル3Dのゲームを動かすには十分ではないと判断しています。 編: アジア、欧米以外はいかがですか。 松原氏: インターネットの普及などのレポートを見てみると、ヨーロッパでは一部ではブロードバンドの普及が進んでいますが、全体としてはいまひとつ進んでいなくて、もう少しかかるのかなという印象ですね。 編: 韓国の一部メーカーなどは、ブラジルなど、いわゆるブリックスエリアに、カジュアルなタイトルで果敢に攻めていますよね。 松原氏: 現状の私達のタイトルはフル3Dなので、それら地域の展開にはPCのスペックの制約が大きな障壁になっているのも事実です。ただ、ブロードバンドのような技術というのはやがて普及していくと思うし、インターネットもやがて電気、水道並みに普及してくる。PCスペック、グラフィックスチップも日本だって数年前と比べるとすごく進歩しているじゃないですか。今後PCスペックの向上とインフラの整備が発展するに伴い、展開が可能になる地域はどんどん増えていくと思います。そういう点では、様々な地域が候補に上がってくるでしょう。たとえばロシアだって。 編: そういう意味では、分け隔てなく、ワールドワイド展開が最終目標でしょうか。 松原氏: 私達がゲームデベロッパーとして生き残っていくためには絶対に必要なことだと思います。インターネットは、“人と繋がる”というところと“ボーダレス”という特徴があります。お客様のニーズがあるなら、展開する地域を広げていきたいと考えています。 これからは韓国や中国のメーカーもどんどん外に出てくる。我々はもうアジアには出て行ったので、これからはホントにグローバルに展開しているメーカーとこれからどう競争していくかですね。去年までは日本発アジアでしたが、もう違いますね。“日本発世界”です。 編: それでは、まず2006年のコーエーのオンラインビジネスというのはどのようなものになるでしょうか? 松原氏: 今年は2タイトルを加えた4タイトルすべてが見えてくる年になるので、2006年のコーエーは新しい飛躍を見せることができると思います。アジア地域への広がりはもっと大きく、確実なものになる。次に2タイトルが具体的になってくる。4タイトルの用意ができれば今後の展開というのは非常に面白いものになります。 編: 今年は、オンラインゲーム部門で、業界が驚くようなサプライズはあるのでしょうか? 松原氏: オンラインに関してはこれで十分じゃないですか? 4タイトルとなると人数もかなり必要になります。将来の新たな取り組みについてはもちろん考えていますが、現段階では見えているものを着実にやっていこうと思います。次のアイデアとなると、先ほどのカジュアル構想じゃないんですけど、MMOではないいろいろなゲームの形というものも考えていかなくてはいけないですね。
■ 松原氏が研究していく、オンラインゲームと教育的要素 編: 前回のインタビューでは「三國志Online」の次にもう1本あるとのことでしたが。
いまDSの「えいご漬け」をプレイしていますが、面白いですねえ。ただ、なれないとタッチペンの認識がうまくいきませんね。レベルの測定は時間でやるから認識してくれないとスコアが上がらないようです。任天堂さんは、ゲームのカジュアル性とエデュテイメント性を出して、ゲームの中にそれを取り入れているのはさすがですね。去年のGDCの岩田さんの講演の中で、カッティングエッジのテクノロジーではなくても、いろんなジャンルのゲームが広がるという話がありましたが、それを実践されていると思います。 別に私は教育とゲームの理想論みたいなものを掲げるつもりはないのですが、面白い中で教育的効果を上げられればいいなあと。それをオンラインゲームでやりたいと思っています。これはあくまで個人的なアイデアですが。 昨年から東京大学のコンテンツ創造科学産学連携教育プログラムというところで講義を担当していますが、東京大学では馬場章先生が中心となってオンラインゲームの教育的効果をはかろうというプロジェクトが始まりました。具体的な成果がでることを楽しみにしています。 編: 純粋にコーエーのビジネスと言うより、研究なのですか。 松原氏: コーエーとして協力させていただいています。我々がタイトルとアカウントを提供させていただいて、研究自体は東京大学や各大学、研究機関の方にしていただいて、オンラインゲームが与える影響として、ポジティブなものはこういうものがある、こうすればもっとポジティブになる、というようないろんな形での研究成果を示してくださっています。ゲームの良い点、改善すべき点を様々なアプローチで検証するという、とても有意義な研究だと思います。 編: 最後にコーエーのオンラインゲームを遊んでいるユーザーさんに一言お願いします。 松原氏: おかげさまでコーエーのオンラインゲームもここまで成長することができました。日頃、プレイして頂いている大変多くのお客様へ、プロジェクトスタッフ全員に代わり感謝を申し上げます。まだまだ至らない部分もあると自覚しておりますが、お客様から寄せられるご意見、ご要望は、私達がゲームを作っていく上での一番の励みになります。今後もオンラインゲームの開発と運営を続け、より多くの皆様に楽しんで頂けるよう、頑張って参ります。これからも是非応援よろしくお願いします。
□コーエーのホームページ (2006年2月2日) [Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]
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