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会場:日本教育会館
なお、現在サービスを展開している「信長の野望 Online」、「大航海時代 Online」、そして現在開発中の「真・三國無双BB」、「三國志 Online」については、2月1日、2日に掲載した松原氏インタビュー以上の情報は公開されなかったので本稿では割愛している。これらコンテンツの最新情報についてはインタビューを参照頂きたい。
続いて松原氏、アジアのトレンドについて、中国市場で国産タイトルが急増し、国産タイトルの市場シェアが拡大傾向にあることを報告。2005年8月のデータで、トップ10の中に中国産タイトルが4本も入っている。1位こそBlizzard Entertainmentの「World of Warcraft」だが、中国産タイトルが2位、3位に食い込んでおり、Nexonが誇るカジュアルコンテンツや、NCSoftの「リネージュII」、そしてスクウェア・エニックスが自社展開する「クロスゲート」などを追い抜いている。 中国ゲーム市場を数字で追うと、ユーザー数は2,634万人、売り上げ規模は565億円、開発タイトル192本、開発企業120社、開発者数12,600人。200億とも300億とも言われる日本のオンラインゲーム市場をすでに追い抜いてしまっている。中でも注目すべきは、前年比の3倍になっている開発者数で、松原氏はこれについて、大卒者がゲーム開発に従事する人が増えている、あるいは自ら起業するというケースが増えてきた結果だという見方を示した。 一方、日本市場はというと、報告書によって数字がばらつきがあるが、2004年でだいたい165億から367億円程度。これにパッケージの売り上げを加味して579億円とするデータもあるが、いずれにしてもオンラインゲーム市場を日本対アジアの構図で見た場合、アジアのほうが圧倒的に大きくなっていることに触れ、中国の為替の動きによってはその傾向はますます広まるだろうという観測を示した。 また、日本では、いまだに大手メーカーのほとんどがオンラインコンテンツに対して、決算短信で一切触れていない、つまりオンラインゲームが独立事業として成立するまでに至っていない状況が続いている現状を報告。その一方で、昨年ヘラクレス市場に上場したガンホーが、スクウェア・エニックスやコナミといった大手メーカーの時価総額を一時的に抜き、瞬間的に国内ナンバーワンの時価総額に達したこと、昨年末に上場を果たしたゲームポットが「スカッとゴルフ パンヤ」で500億の時価総額がついたことを取り上げ、「これがフェアなバリューかどうかというのはIRの専門家ではないのでわからないが」と前置きした上で、それだけオンラインゲーム市場に感心があり、伸びる市場だということの期待の表れだとした。つまり、日本のオンラインゲーム市場はもっともっと成長しうるし、その期待の高さも株式市場から伺える、というわけだ。 言わばここまでが前置きで、すでに日本の(オンラインゲーム)市場規模を追い抜き、今後も順調な成長が予測されるアジア諸国に対し、いまだに大手メーカーが本腰を入れていない状況が続く日本市場において、松原氏は日本ゲーム市場の土台から見つめ直した。ブロードバンド普及率の高さ、韓国の4倍のアドバンテージを持つブロードバンドコストといったポジティブな話題を取り上げ、「すでに十分な土台はある」とし、オンラインゲーム需要の新たなドライバは何かというと、韓国ではPC房だったが、日本では「それは次世代機ではないか」とした。この論の展開の仕方は、日本とアジアを知る松原氏ならではのものだろう。 以下、次世代機の話題になるが、松原氏は、まずオンラインゲームプラットフォームとしての次世代機に求められる要素として、以下の3つを挙げた。
・オンラインゲームを支援する機能 オンラインゲームを支援する機能は、課金決済システムやマッチングサービス、コミュニティ機能など、オンラインゲームのプレイに欠かせない諸機能を指す。松原氏によれば、課金決済システムは、自社ではなく、プラットフォームが持つべきだという考えのようだ。次世代ゲーム機の普及速度については、ハードが爆発的に普及する臨界点を示した用語である“クリティカルマス”を達したプラットフォームに展開すべきだという考えを示した。オンライン対応コンテンツは、自社コンテンツではなく、簡単で楽しい比較的カジュアルなオンラインゲームをプラットフォーム側が用意すべきだという考え方。 プラットフォーム別では、昨年12月に発売されたマイクロソフトのXbox 360については、HDDの標準装備、Xbox Liveによるオンラインサポート、ボイスチャット、メッセージ交換、マッチング機能等のポジティブな情報を提示したが、販売台数が伸び悩んでいる現状を見て「クリティカルマスには遠いのかな」と消極的な見方を示した。 ソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション 3については、発売時期が不透明なことについて「春と言われてますが、凄い暑い春になるかもしれませんね(笑)」と会場を沸かせた。スパコンレベルのCPUと、最高峰のグラフィックスチップは、必ずしも必要ではないと得点には加味せず、HDDの搭載が不透明なことについて「私は入れて欲しいとお願いしていますが、さてどうなるでしょうか」と懸念を示した。オンラインサービスが不透明で、「PSBBからコミュニティ機能やマッチングサービスはもっともっと充実する可能性があるのかな」と希望的観測を述べた。不確定要素ばかりのPS3に対しては、PS、PS2の圧倒的な販売台数という実績から、「オンラインゲーム普及のドライバとして大きな期待を掛けている」とコメント。やはり松原氏の本命はあくまでもPS3のようだ。 任天堂の次世代機Revolution(仮)については、記憶メディアがHDDではなくフラッシュメモリであることから、「フル3DのMMORPGは入りきらないだろう」と予測。オンラインサービスの内容は不明だが、簡単で手軽に遊べるニンテンドーDSのWi-Fiサービスがヒントになる、とした。チャットがやりづらい制限がある一方で、USB端子に繋ぐだけで日本中のユーザーと手軽にオンラインプレイが楽しめる環境を実現したことについて、オンラインゲームの今後の方向性を示してくれている、と絶賛した。
今回の講演は、メーカーの枠を超え、オンラインゲーム産業全体のことを考えた上での戦略的な提言が充実しており、大いに注目に値する講演だった。松原氏のメッセージがプラットフォーマーの戦略にどう影響し、どういう結論が生まれるのか。引き続き今後の動向に注目していきたいところだ。
□ブロードバンド推進協議会のホームページ (2006年2月10日) [Reported by 中村聖司]
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