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ガンホー代表取締役社長森下一喜氏インタビュー
ガンホー・モードとは何か? ガンホーグループの2006年の展望を聞く

1月収録

会場:ガンホー本社

 ちょうど1年前、ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長 森下一喜氏に年頭インタビューを行なった際、2005年は「オンラインコミュニテインメント」の年という抱負を語って頂いた。

 しかし実際には、2月の上場発表以降は、企業のM&Aや業務提携を繰り返し、上場企業として企業価値の向上に努める1年となった。この間、初のオリジナルタイトル「エミル・クロニクル・オンライン」を含む3タイトルものオンラインゲームをリリースしたものの、肝心の「オンラインコミュニテインメント」はペンディングのまま、少なくともそのように見えた。

 今回は森下氏に、2005年を振り返りつつ、ガンホーグループ全体の2006年の展望を語って頂いた。すでに発表されているように、森下氏は2月9日に開催されるアジアオンラインゲームカンファレンス(AOGC)2006において基調講演を行なうことが決定している。タイトルは「BB時代のゲーム産業革命における成長戦略」。こちらも開催が楽しみである。

 今回のインタビューでは、個人的に気になっていたガンホー・モードの事業内容、それから課金決済について深く聞いてみた。2006年のオンラインゲーム市場を予測する意味でも興味深いインタビューになった。ぜひご一読頂きたい。


■ 3つのタイトルの正式サービスにM&A……2005年のガンホー

インタビューは、ガンホー本社の社長室内で行なった。森下氏の後ろに輝く金の盾は、大阪証券取引所から上場時に贈られたもの
編: まず最初に、ガンホーにとって2005年はどういった年になりましたか?

森下氏: 会社の部分ではステージアップを果たし、飛躍した年になりました。株式の上場や、ジーモード、ゲームアーツ、ブロッコリーといったガンホーのグループを作りはじめる年になりました。

編: アトラクションに関して「タントラ」、「ヨーグルティング」、そして「エミル・クロニクル・オンライン(以下、ECO)」が正式サービスとなりましたが、この3タイトルについてはどのような感想をお持ちですか。

森下氏: 「タントラ」は、ガンホーのアイテム課金制のMMORPGとして初めてのタイトルとなりました。アイテム課金のビジネスモデルを確認でき、1つのプロジェクトとしては目標にも達成でき、いいスタートとなりました。

 「ヨーグルティング」は、商用サービススタート時に大きなトラブルに見舞われたというのは、実はガンホー始まって以来のことなんです。「ラグナロクオンライン(以下、RO)」の時から他のメーカーが有料サービススタート時に何らかのトラブルを起きているのを見ていて、商用サービスのスタートには特に慎重を期していたのですが、今回はユーザーに迷惑をかけしてしまった。企業としてより慎重な体制と商用サービスに関しての考え方を改めて確かめ直すいい機会になりました。

 「ヨーグルティング」そのものに関しては、ガンホーのアイテム課金制MMORPG第2弾であり、コンテンツとして大きな期待をかけています。スタート時にトラブルを起こしてしまいましたが、これからどうこのタイトルを育てていくかが重要だと考えています。

 「ECO」についてはオリジナルタイトル第1弾ということで、現在、様々なオンラインゲームのタイトルが乱立している中、国産タイトルとして良いスタートをきれました。GRAVITYとの提携で海外への展開も2005年ぎりぎりにスタートでき、今後も様々な可能性を秘めたタイトルだと思っています。

編: パッケージ販売では、年末に「RO」でトラブルがありましたが、これに関してはいかがですか?

森下氏: 大きな規模でパッケージを販売するというのは新しい試みでした。トラブルに関しては、GRAVITYとのパートナーシップに関して契約や協力体制についてもう一度見直す良いきっかけにもなりました。今回のBOT対策などに関して、GRAVITYとガンホーの代表が連名で声明を出したのは「RO」をガンホーがサービスしてから初めてのことでした。

 ユーザーの皆様に大きな迷惑をかけてしまいましたが、開発と運営の両輪の関係が強化されたと思います。災い転じて福となしていけるように、これからのガンホーとGRAVITYの関係を実感していただけるようにしていきたいです。

編: 次にモバイル事業ですが、ジーモードさんと業務提携をし、それから株式を取得したという強固な結びつきがありますけど、2005年に関しては表面上はほとんど動きがなかったという印象がありますね。

森下氏: ジーモードの筆頭株主になったのが8月15日で、そこから新しいモバイルと連動したコンテンツを開発しています。現在開発している「RO」のモバイル版は、韓国にあるものが念頭にあったのですが、日本の市場とユーザーのことを考えて改めて見直している段階です。

編: それをやっていくのがガンホー・モードということですか?

森下氏: 違います。「RO」のモバイルコンテンツはガンホーから出していきます。この他のガンホーのモバイルコンテンツもジーモードと協力してやっていきます。ガンホーのモバイルコンテンツを共同のプロジェクトとして進めていきます。ガンホー・モードは全く別の事業です。2005年は様々な準備をしている期間でした。今年はこういったものの結果をお見せできると思います。

編: 昨年、「ラグナロクオンライン」のGvGイベント「RJC」が大きく盛り上がりましたね。結局「今冬」の次回開催はなくなったのですか?

森下氏: 開催はしたかったのですが、スケジュールや体制を再度見直してからにしようということで延期しました。次回は新しい形で様々な試みをしようと思っています。

編: それはどんなものですか?

森下氏: 今は言えません。RJCは他のイベントと違い、参加者・来場者の方々が「RO」の持っている“競技性”に大きな興味を持っていて、いままでのイベントとはコンセプト自体がまったく違うものであったのにとても盛り上がったなと。こういったところで、演出も含めて何かやっていこうと思います。

編: 例えばそれは試合の映像をストリーミングで流すとかでしょうか?

森下氏: そういった配信方法なども考えていますが、それだけでなくもっと試合を盛り上げていく、あるいはユーザーの皆様に会場に足を運んで貰うような仕組みを色々用意していくつもりです。

編: 2005年のイベント事業全体はどう評価していますか?

森下氏: RJCだけでなく、カンファレンスなど比較的小規模のイベントも含めてかなり違った試みをできたかなと思っています。毎年同じことをやろうというスタンスは持っていません。今年は今年で色々なことをやりたいですね。

編: ひとつ嬉しい誤算だったのは、上場直後はいろいろな規制などであまり表に顔を出していなかったようですが、2005年の後半は、「ECO」で街頭演説をしてみたり、「ヨーグルティング」の発表会で学生服を着てみたりと、会社のトップがびっくりするようなことをやる(笑)。その変わらなさぶりが、ファンを安心させたところがあると思います。

森下氏: もともと自分は営業畑の人間で、会社の売り上げを伸ばしていくための努力は惜しみません。恥ずかしいとか言っている場合じゃないですね。……若干恥ずかしいですけれども(笑)。トップが出ていくことで社員自体のモチベーションも活性化していけばいいと思うし、「ガンホーが上場してかしこまってしまった」と思われたくないです。

編: その一方で社長の事業としては、昨年はなんと言ってもM&Aや投資の部分だったと思うのですが、これが今後ガンホーユーザーにとってどのようなメリットをもたらすのか、説明していただけますか。

森下氏: ゲームというのはこれから単純な“ゲーム”というものではなく、メディア的なコンテンツになっていくだろうと考えています。ブロードバンドがこれだけ普及してくれば、ゲームはテレビに映し出すものだけではなくて、携帯電話や、家庭用ゲーム機、新ハード、PCなど、色々なデバイスからユーザーが接触できる機会を増やしていきたいです。

 会社としてはその機会が増えることでマスの広がりや、顧客単価を上げることでのメリットもある。ユーザーの皆様にとっては、携帯電話でも仲間とコミュニケーションがとれるようになったり、忙しい人でも外で少しの時間でゲームができたりと、付加価値として携帯電話を利用していけるようになります。コンテンツに時間を消費する時に、その接触機会を増やしていけるようにしていきます。


■ ゲームアーツはガンホー直轄の開発スタジオに。新しい戦略ガンホー・モードとは?

ガンホー・モードのサービス概念図。
森下氏が板書してくれた最新の概念図。ガンホー・モードが一種のプラットフォームで、コンテンツ提供元としてガンホーやジーモード、ゲームアーツなどが挙げられている
編: 今後、重要な鍵を握るのがガンホー・モードということなのでしょうか?

森下氏: ガンホー・モードはグループ全体におけるメディアの窓口、いわゆるポータルなのですが、そこにコンテンツやデバイスなどを付加して提供していこうと考えています。

 ジーモードで言えば、今までのコンテンツやシステムはそのまま事業として進行していきますが、新キャリアの参入や、動画などの新しいサービス形態が増えていく中、次の成長戦略というものを持っている。単純にジーモードがガンホーモバイルをやるとか「RO」のモバイルコンテンツをジーモードがやるというだけではなくて、数年間時間をかけていく中で、ガンホー、もしくはガンホー・モード、ゲームアーツやブロッコリーとのシナジーも見いだしていきます。

 ゲームアーツに関しては今までは家庭用ゲーム機でしか開発をしてこなかった。確かにその前はパソコンのゲームも作っていたけれども、どちらかというと受託というデベロッパーという形でした。20年以上の開発のリソースとノウハウ、自分たちがゲームを作ってきたエンジンも含めて、もう少し磨きをかけて、ガンホー直轄の開発スタジオとしてオンラインゲームの開発をしていきながら、家庭用の新ハードに向けたソフトウェアの開発も進めていこうと思います。

 オンラインゲームというところで言えば、ガンホーと同じ収益の逓増モデルを作っていきます。家庭用ゲームに関しては販売本数において売り上げを伸ばし、安定した経営と開発環境を整えつつ、ゲームアーツの職人芸といわれる原点回帰をしていきたいと思います。昨年、僕と堀と松阪の3名の取締役がゲームアーツの取締役員になりましたので、開発環境、経営環境を現経営陣と一緒にもう一度見直し、開発環境を強化していきます。

 ガンホー本体としては、グループとして対応可能なプラットフォームも増大したので、新ハードの分野では、たとえば「グランディアオンライン」をマルチプラットフォーム展開していくのも良いと思っていますし、世間ではニンテンドーDSが好調ですが、Wi-Fiなどの無線サービスがこれからも大きくなっていくのであれば、ガンホーとしてはハードを選ばず展開していきたいと思っています。

編: ゲームアーツはガンホー直轄の開発スタジオということですが、例えば「グランディア4」が発売されるとして、それはガンホーから出るということでしょうか。

森下氏: それに関してはこだわりは持っていません。既存のパッケージビジネスに関しては今まで通りの戦略で行きたいと思っています。

編: ガンホー・モードが何をする会社なのか、もう少し具体的に教えていただけますか?

森下氏: ガンホー・モードは、No.1のステイタイム(滞在時間)を持つ、いわゆるメディアになりたいと思っています。形としてはインターネットのポータルという形ですが、それが認識として正しいのかという議論もあって、例えばYahooとかは検索をして出ていってしまえば、滞在時間としてはとても短いですよね。

 ユーザーがそこを目的として長期滞在するサイト、いわゆるデスティネーションサイトという言い方があります。ゲームをやりたい、その時にここですべてが成り立つという考え方です。コミュニティもあり、仲間もいるし、ゲームだけではなく映像も音楽も、eコマースのサービスも提供できる。例えばテーマパークに行けば、アトラクションに乗るだけではないですよね。ショーを見たり、食事をしたり、おみやげも買える。それらが総合的なエンターテイメントになっている。ガンホー・モードはそういったものを目指していきます。

 ただ若干違いがあるのは、リアルなテーマパークとは違い、全く知らない人同士がコミュニケーションをとってコミュニティを形成していく。例えばゲームが好きな人たちが集まったけれどもそこで音楽サークルを作ったり、ゲームのファンクラブを作ったり、少数のコミュニティがたくさんできる。そういった動きに関してブロードバンドならではのエンターテイメントに関するアプローチをしていこうと考えています。

 ガンホー・モードではゲームだけではなく、PCそのものを売ってもいいと思っているんです。たとえば、PC用のメインメモリを買いたくなったとする。ガンホー・モードでメモリを買うと、自分のアバターにポイントがたまったりするわけです。こういう付加価値のサービスも可能になります。自分のモチベーションの上がるビジネスモデルもあり得ると思います。

編: これは以前から森下さんがおっしゃっている、「RO」の1,500円+αの部分を拡充させていこうという戦略ですよね。

森下氏: そうですね。ポータルの戦略としてはマーケットの拡大化、現在は一般層、カジュアル層の取り込みがまだ市場全体で緩やかである。もっと力を入れなくてはいけないのが家庭用ゲーム機ユーザーの取り込みで、ここはゲームアーツとの戦略で取り組んでいこうと持っています。

 正直言って、今まで「誰でもわかるゲーム」というところがガンホーは弱かった。去年は自分たちだけでポータルをやろうと思っていました。それはやはり限界がありました。ノウハウや時間はショートカットするという意味においては、すでに高い技術や顧客を擁し、豊富なコンテンツ資産を抱えるジーモードと手を組んでいくというのはマストだろうという判断です。

 ジーモードで非常に面白いなと思うのは、ユーザーの女性比率が高いんですよ。他社と比較しても会員のユーザー層が多く、実に50%近いのです。この理由は、誰でもわかりやすく5分、10分で遊べるゲームにフォーカスしているからです。こういった点もガンホーには今までなかったし、宮路さんはバリバリRPGを作っていた人だから、発想の点でも勉強になりました。

 ライトでカジュアルで合理的な、短時間で終わり満足できるゲームをラインナップとしてそろえると言うところに注力し、徹底している。これはコンシューマの会社でもなかなかできないことです。ガンホー・モードでもこういったラインナップをそろえていきたいと思っています。

編: そうしますとガンホー・モードでは、ガンホーのタイトル、ゲームアーツのタイトル、そしてジーモードのタイトルが集まるのですか。

森下氏: そうですね。ただ「RO」や「ECO」などはそのコンテンツから入っていくという方法もあるし、カジュアルゲームもそう、そして携帯ゲームもそのコンテンツから入れます。これらの運営自体はガンホーがやる。これらのコンテンツに関するコミュニティや、音楽、映像、eコマースなどをガンホー・モードでやっていこうということを目指しています。ここに開発としてゲームアーツや、「北斗の拳オンライン」(仮)なども加わっていきます。


■ ガンホーが模索する新しい課金システムとは何か?

課金決済に関しては、何か新しいアイデアがある模様。利便性が高く、無駄のないシステムを望みたいところだ
編: カジュアルなエンターテイメントとしては2005年はなんといっても「どうぶつの森」や「マリオカート」といったニンテンドーDSの存在が大きかったと思います。誰でも簡単手軽にWi-Fiでオンラインプレイができる。劇的な言い方をすれば、一夜にして100万を超えるオンライン市場がいきなりドカンとできたわけですけれども、このことに関してどういった感想をお持ちですか。

森下氏: 私たちは非常にチャンスを感じています。私たちが提供するのはコンテンツなので、ハードは何でもいいわけです。ゲームアーツでは実際にDSのソフトの開発もしていますし、我々としてはあくまでも仮の話ですが、「グランディアオンライン」のミニバージョンや外伝のようなコンテンツをDSに提供してもいいと思っています。我々としてはこういった環境はすごくうれしい話です。素直にこの環境を歓迎したいです。

 むしろ2000年に私たちが会社を立ち上げた時は、もともとこれを目指していたんじゃないかなと。ハードとしてコンテンツを提供できる窓口が増えていく。その上でユーザーがちゃんとしたコミュニティを作れるような、サービスを提供していく、それがより重要なポイントになっていくと思います。

編: サービスを考える際にネックとなるのが、「少額課金の難しさ」だと思います。例えばガンホーさんの「1DAYチケット」に関しては、現にネットカフェで商品が在庫切れでプレイできないというような問題がありますよね。少額課金について新しいプランやアイデアはお持ちですか?

森下氏: 言えません(笑)。我々なりに考えて、我々なりに準備をしています。少額課金と決済の部分は特に重要だと思っています。DSに関しては課金システムが今はないところもそうだし、カジュアルゲームでの課金、チケットという概念についても新たな考え方が必要だと思っています。それは、ユーザーの皆様や、決済の受け口、例えばコンビニエンスストアやネットカフェでも、もちろん我々コンテンツホルダーにとっても重要な部分です。

 現在我々はコンビニエンスストアやネットカフェなどの料金決済に関する問題点をあらゆる角度から解決していく方法を考えています。その1つの回答は「ガンホープチチケット」です。現状では、コンビニエンスストアにカードやチケットを置いて貰ったとしても、お客さんに聞かれてわからないとか、もしくは在庫がない、反対に余ってしまう。在庫の問題の他に物流コストもかかって、手数料が高くなってしまうなどの問題が発生するでしょう。

 「ガンホープチチケット」ではバーコードに対応させて、16桁の番号を通信で取得し、レシートに打ち出すことができます。こうすることで製造原価と流通コストがかからず、在庫リスクがなくなり、機会損失もなくなる。すべての点で解決するわけです。後はこれを利用促進するためのユーザーよりのキャンペーンなどのオペレーションの仕方次第です。もともと「1DAYチケット」を発売した時から、いつかはコンビニエンスストアでチケットを発売したいと思っていました。今は、この独自のサービスをより新しく、もう少し大きく考えていこうと思っています。

編: 別のアイデアとしてはやはりデジタルになるのでしょうか。

森下氏: それは言えないですけれども、ただ、ユーザーの皆様にとって、行ったけど買えなかったとか、お店何件も回ったとかそういうことはないようにしていきたいと思っています。ユーザーの皆様がやりたいと思った時にやれる環境を整えていきたいなと。本質的な部分ではそこまでメーカーが考えるべきなのかどうかというのもあるんですけれども、この新しい産業をやっていく上ではインフラも含めて、ネットカフェも開拓していったように一緒に作っていかないといけない。私たちはハードを持たないプラットフォームだと思っています。

編: もう少し大きなITというくくりで考えると、業界の規制緩和が相次いでいます。特に顕著なのが携帯電話で、新しい事業者の参入も可能になり、ソフトバンクが名乗りを上げていますが、その枠内でガンホーが何かをすることもあり得るのでしょうか。

森下氏: 枠の中ということに限定はせずに、我々としても積極的に参入していきたいと思います。キャリアが増えていく上でマルチプラットフォームとしてやっていきますので、ここだけ、という限定はしていきません。決済に関しては対応していくことも考えています。


■ ガンホー・モードが実現する新しいコミュニティのかたち

編: 次にコミュニティに関してですが、どういったプランを考えていますか。

森下氏: 基本的にはガンホー・モードが中心となってコンテンツとコミュニティとサービスをきちっと実現していくというのが今年の最大の目標です。事業としてもこれを立ち上げるのは大きなプロジェクトとなっています。現在の金額でも人数でも足りない部分なので、今後は体制もきちっと構築していきます。ガンホーとしての成長戦略においても非常に重要な、核になる部分だと思っています。ただ、これに関して時間を買う作業と言うことで、M&Aも含めて積極的に進めて、ガンホーグループの位置づけをきちっとしていきたいと思っています。

編: 社のスローガンに「オンラインコミュニテインメント」という言葉がありますけれども、森下さんの中で現状認識と、将来像について教えてください。

森下氏: 現在はコミュニティが各コンテンツごとにバラバラに別れてしまっています。これをきちんと統合してやっていかなくてはいけないなと思っています。「RO」の、「ECO」の、カジュアルゲームのそれぞれのコミュニティを統合したコミュニティサイトを作っていきたいと思っています。

 ただ、ゲームが好きな人のコミュニティだけでなく、音楽が好きな人のコミュニティなども作って、コミュニティの会員を極大化していこうということが、インターネットのビジネスにおいては1つのキーになっていくだろうと思っています。多くのパイを持ち、滞在時間を延ばすことができればビジネスのチャンスは格段に広がっていくだろうと。

 eコマースの事業もそうだし、広告事業もそうで、今まではゲームの課金とキャラクターマーチャンダイズという比較的小さなものでしたが、それ以外にもガンホーのビジネスモデルとしては多様化していくことができる、ガンホー・モードは非常に重要なものになると認識しています。理想的な部分では、ユーザーさん同士が知り合って、仲間になって、買い物でもコミュニティが生まれる。

 ナローバンドの時代から買い物ってあまり変わっていないじゃないですか。肉の絵は見えるけど、それがうまいかどうかわからない。値段は見えるけど、本当に安いかもわからない。ここでもしコミュニティがあれば「これ、すっごくおいしいよ」といったやりとりができる。ショッピングがエンターテイメントであるならば、コミュニティや、コミュニティを介したコマースがこれからは出てくるだろうと思います。

 サイトオペレーターがリコメントしたものだけではなくて、ユーザーのコミュニティの中からリコメントされたものはこれからはもっと重要になってくる。買い物する楽しさ、例えばゲームで知り合った人と商品の話になるとか、ゲームで知り合った人と映像の話ができるようなコミュニティのプレースを作っていきたいと思います。

編: 今お話を伺った限りでは、「価格.com」で商品別のディスカッションのようなものをイメージしました。「価格.com」の場合はBBS方式ですが、森下さんが考えているのはリアルタイム、かつ専用クライアントでというスタイルですか?

森下氏: 基本はWebブラウザでやりますよ。ただ、ゲームをしながら、一緒に音楽を聴いたり、映像を見たり、買い物をしてもいい。もちろん、ゲームをするためには麻雀やポーカーなどでもクライアントは必要になる。

 「RO」だけでなくカジュアルゲームなどを通じて知り合いを作っても良い。カジュアルゲームでは、ただ黙って黙々とプレイしている人がよくいます。「RO」の場合はイベントなどでコミュニティが活発になります。気軽に話ができるような話題を常に提供することが、コミュニティを維持、活性化させるために必要なことだと思います。ただ麻雀をやるだけでなくコミュニティが生まれるようなネタを投下していけるような仕組みが必要だと思っています。

編: 話題というのはどのようなものを想定していますか?

森下氏: 何でもいいと思います。時事ニュースでもいい。現在、テレビを見る時間よりもインターネットを使う時間が延びてきている。アメリカもそうなっているし、インターネット広告も増えている、こういう時代にはメディアの存在も変わってきている。ブロードバンド時代のメディアとしてどういうものができるかといえば、ゲームもできる、自分の好きなリコメント情報を見られる。それによって話題が生まれてコミュニティが活性化する。より居心地の良い場所になっていけばいいと思います。

編: ちょっとやり方は違いますけど、Yahooさんのような、様々なメディアからソースを引っ張ってきてニュースを載せるプラットフォームになっていますよね。森下さんのやりたいのは、記者を抱えるメディアではなくて、メディアプラットフォームですよね。

森下氏: そうですが、ただ、わからないですよ、もしかしたら来年になったら中村さんがウチにいるかもしれない(笑)。私たちはコンテンツとしてメディアの価値を見いだしていくということも考えています。媒体ということではなくて、滞在時間を長くすることでいろいろな広告を掲載することができますよ、ということです。


■ 更に1つステップを上げる、森下氏の目指す2006年のガンホー

2005年の東京ゲームショウで正式発表された「グランディアオンライン」。ゲームコンテンツとしては今年の大きな目玉になる
編: では、ズバリ2006年はどういった年になるでしょうか?

森下氏: 目標としてはまずガンホー・モードで今年の1つの形をジーモードとの提携シナジーも含めて具体的に出していきたいですね。「グランディアオンライン」のリリースもありますし、そのほかのタイトルも、国産のオリジナルタイトルという点ではより強化していくということと、海外事業展開ですね。

 海外の市場に日本の国産オンラインゲームをどんどん輩出していけるようにそのポジショニングを確保していきたいと思います。ガンホー・モードでのオンラインコミュニテインメントのサービスの実現というのがまず第一にあります。

 今後の成長戦略としてはM&Aも含めて新たなビジネスを立ち上げていきます。色々手法はあると思うのですが、M&Aなどガンホーモードの事業をより早い段階で実現できるような積極的な展開を計っていこうと考えています。

 去年はどちらかというと飛躍のための助走でしたが、今年は飛躍して行く、1つ1つ実現していく年になると思っています。

編: ガンホー・モードは時期的にいつぐらいになりますか。

森下氏: まだちょっと時期は言えませんが、2006年度です。

編: では今年はガンホー・モードを成功させるという意味で、コンテンツプロバイダーから、更に1つステップを上げるということですか。

森下氏: そう、その通りです。その中において、ゲームや音楽、映像を、eコマースの話をしましたからね。やはりガンホー・モードというのはゲームだけのものではなくて、総合エンターテイメントというものに向けて、色々な形での事業展開を図っていこうと考えています。

編: ガンホーユーザーにとってはどのような年になりそうですか。

森下氏: 2006年以降もオリジナルタイトルが続々と並んでくるので、やはり国産のオンラインゲームに対して今までとは違った見方を提示できるかなと。ガンホーにとってオンラインゲームの第1世代が「RO」だとすれば、次はサービスレベルにおいても第2世代の、しかも国産の新たなサプライズがあるかなと。

編: 最初のサプライズはいつぐらいになりそうですか。

森下氏: 「グランディアオンライン」そのもの自体でも相当あると思いますよ。こちらもガンホー・モード同様、時期はまだ言えません。ただ、2006年中には正式サービスをしたいと思いますし、ガンホー・モードとうまく時期を合わせたいなと思っているんですよ。家庭用ゲーム機のユーザーもうまくポータルというサイトに誘って、どちらからも相乗効果があるようにしたいです。

編: ガンホー・モードの起爆剤として「グランディアオンライン」を入れると?

森下氏: 起爆剤の1つですよ。起爆剤はいくつも用意しなくてはダメなので、あくまでその中の1つです。まだ言えないようなこともたくさん用意しています。

編: 最後にガンホーユーザーに対してコメントをお願いします。

森下氏: まず、昨年末の色々なトラブルに関しては本当に大変申し訳ないと思っています。今回は開発元であるGRAVITYと連名で声明文が出せたことも前進だと思っています。これを機にもっともっと「RO」を盛り上げて頂ければと思います。ガンホーは「RO」で大きくなった会社なので、もっとブランド力をつけるよう、皆様にご協力いただきながらGRAVITYと共に努力を続けていきたいと思います。

 また、今後はその他のオリジナルタイトル、パブリッシングタイトルも含め、皆様が快適にプレイできる環境作りに取り組んで参ります。2006年はガンホーグループとして、ゲームアーツ、ガンホーモードの業務も大きく展開し、今年もガンホーは皆様に喜びと感動を提供して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

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(C) 2006 GungHo Online Entertainment / GAMEARTS All Rights Reserved.

□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ
http://www.gungho.jp/
□関連情報
【2005年9月20日】ガンホー代表取締役社長森下一喜氏ロングインタビュー(後編)
「ECO」、「ヨーグルティング」、そしてジー・モードとの今後
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050920/gho2.htm
【2005年9月20日】ガンホー代表取締役社長森下一喜氏ロングインタビュー(前編)
「GRANDIA ONLINE」の開発構想など新作ラインナップの今後に迫る
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050920/gho1.htm
【2005年8月24日】ガンホー代表取締役社長森下一喜氏インタビュー
「ラグナロクオンライン」の今後の戦略を聞く
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050824/rjc_in.htm
【2005年1月20日】ガンホー代表取締役社長森下一喜氏特別インタビュー
2005年以降の新しい事業戦略を語る
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050120/gungho.htm

(2006年1月18日)

[Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]



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