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会場:日本教育会館
今年の傾向としては、昨年が第1回目ということもあり、各アジア地域の現状報告が中心だったのに対し、今年はオンラインゲーム開発やコミュニティ対策、人材育成問題、運営のマネジメントなど、さらに踏み込んだ議論が行なわれた。対象エリアも日本、中国、韓国に加え、一部ASEAN諸国にも踏み込むなど、順調な成長を見せていた。 初日トップバッターを切ったのは、基調講演を務めたガンホー代表取締役社長 森下一喜氏。「BB時代のゲーム産業革命における成長戦略 -オンラインゲーム産業の展望とガンホーの戦略-」と題し、ガンホーの次期戦略を例に、オンラインゲーム産業の成長戦略を紹介した。 森下氏は、冒頭でナローバンド時代の'99年から始めてきた自身の取り組みを引き合いに出しながら、高速低額のブロードバンド環境の普及が、コンテンツとインターネットの融合へと繋がり、ゲーム産業のパラダイムシフトが発生しているという独自の見解を披露。 続いて“BB時代のゲーム産業革命”のファクターとして、ネットワーク技術開発力、オンラインゲーム開発力、サービス業への抜本的シフト、人材育成、決済インフラ、資金調達、法的整備および国の取り組み、の7つの要素を取り上げ、個々についてガンホーの取り組みを紹介した。 ネットワーク技術開発力とは、具体的な内容について触れられなかったが、ガンホー取締役開発本部長堀誠一氏が取り組んでいる次世代ネットワーク技術プロジェクトを指している。2005年6月にAGEIAが発表したPhysXテクノロジーの採用などは氷山の一角で、先月行なったインタビューでも堀氏が明らかにしているように、プラットフォームレベルの壮大な構想で取り組まれている。第1に取り上げていることからもわかるように、これこそが同社の切り札といっていい。 オンラインゲーム開発力は、昨年断続的に実施されたM&Aによるゲームアーツの子会社化や、ガンホーが筆頭株主であるジーモードと共同で設立したガンホーモードなどのグループ会社による開発力の増強を指す。残念ながら、具体的なコンテンツの中身については一切触れられなかった。 サービス業への抜本的シフトについては、身近な例としてコールセンターやオン/オフイベントを取り上げた。森下氏は、自社調査の結果により、オンラインゲームを配信する国内44社中、コールセンターによるユーザーサポートを行なっているのは、ガンホーを含むわずか4社だけだという。残る3社は、スクウェア・エニックス、エレクトロニックアーツ、ソニーコンピュータエンターテイメントの大手メーカーばかり。この調査結果が事実であれば、いわゆるオンラインゲームパブリッシャーは全滅ということになる。 ちなみにガンホーは「ラグナロクオンライン」の正式サービスに合わせてコールセンターを設置しており、全タイトルのコールセンターサポートを実現している。言うまでもなくコールセンターの設置はユーザーサポートの基本的なサービスなだけに、森下氏としては現状が大いに不満なようだ。欲を言えば基調講演の中で「改善すべきだ」とハッキリ言って欲しかったところだが、こうしたユーザーのメリットに直結する業界に対する提案は大いに歓迎したい。 人材育成については、オンラインゲーム業界では、決定的に人材が不足していることを取り上げ、インターン制度による採用事例を紹介。現在、ゲーム開発についてはある程度学べる環境が育ってきているが、ゲームをサービスする、つまりオンラインゲーム運営に必要な人材を育てるカリキュラムそのものが存在しないため、ガンホーでは自社で、専門学校生を対象にインターン制度を採用し、実地体験してもらっているという。この取り組みは、2005年11月より開始し、2006年4月にはインターン経験者の中から正規採用も生まれる見込みだという。 「法的整備および国の取り組み」では、韓国政府の産業支援策を取り上げ、RMTや不正行為、コピーサーバーといったネガティブな話題、法整備による規制、一部メディアによる批判ばかりが目立つが、新たな産業として活性化させるための施策も必要だろうとコメント。法的整備に関しては、完全に棚上げ状態で、個人的には基調講演だけに、法整備の必要性や、どのような法整備が望ましいのか、あるいは予測される法整備に対するメーカーとしての対応などについても言及して欲しかった。 森下氏は、将来のビジネスモデルについても言及。現在は月額固定制とアイテム課金制が半々だが、今後は両システムのメリットを兼ね備えたハイブリッド型や、新モデルの創造がARPU(顧客単価)を引き上げる原動力になるとした。 森下氏は、この「ARPU」というキーワードを連呼していたが、ARPU拡大事例のサンプルとして、オンラインゲーム内における映像・音楽配信、広告モデル、イーコマースなどを紹介。サンプル画像では、「エミル・クロニクル・オンライン」のショップでPCが買えたり、ショップの壁に「ヨーグルティング」の広告が張られていたり、それからすでに実装済みの映画館でプロモーションビデオの配信シーンなどを取り上げた。こうした同社の取り組みは、すでに弊誌では何度も取り上げてきているが、一般来場者は驚いたのではないだろうか。 最後に森下氏は、ガンホーの中長期戦略として、自社のオンラインゲームパブリッシャーからサービス業へのパラダイムシフトを強調すると同時に、「あらゆるデバイスの画面占有率の競争」をしていくことを宣言。これはPCモニタだけでなく、テレビモニタ、PDA、携帯電話など、モニタを含むあらゆるデバイスで、ガンホーのサービスの占有率を上げていくという考えである。
森下氏は、わかりやすい例として「宮崎駿アニメ」の強さを取り上げたが、将来的には国内最高峰のエンターテインメントコンテンツである宮崎アニメとがっぷりよつで組んで競り負けないコンテンツやサービスを提供していくことを目標にしているようだ。2006年、同社はガンホーモードを軸に、昨年以上に多様なビジネスを展開していく方針としている。今後とも同社の動向に注目していきたいところだ。
□ブロードバンド推進協議会のホームページ [Reported by 中村聖司]
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