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ナムコ、表示解像度が向上した新型「O.R.B.S.」を |
新型「O.R.B.S.」 |
多人数視聴用の「O.R.B.S.LE」も提案されている |
まず、筐体サイズが変更された。横1,700mm×縦2,150mm×奥行き2,620mmと大型化し、半球スクリーンも直径1,600mmと100mm大きくなっている。重量は約400kg。また、表示解像度もプロジェクタの変更により、1,280×1,024ドットのSXGAサイズに拡大。明るさは1,800ANSIルーメンとなった。プロジェクタ本体も大型化しており、筐体上部の突起も拡大。そのサイドには、緊急用のパトランプが増設された。また、シートバックには状況確認用のランプが、ドーム横には内部映像確認用の窓が2カ所開けられている。また、基板収納部上部、そしてコクピット中央部には緊急停止スイッチが設けられた。
筐体サイズの変更は、シート左側にサブシステムを含んだ基板収納部(小型のPCぐらいまでは収納可能)を一体化し、さらに、誤進入防止フェンス、シートレールの増設など、より製品化へ向けてのブラッシュアップが行なわれたことによる。株式会社ナムコの小林氏によれば、サイドに補強が入ったり、構造の見直しにより、より剛性が増し、外装の取り外しが容易な構造になり、運搬も楽になったという。筐体の設計はプロトタイプに引き続き、ナムコの渡辺氏が担当しているとのこと。
誤進入防止フェンス、状況確認ランプ、そしてシートはサブシステムによりコントロールされ、投影される映像とともにプレーヤーの状態に合わせて制御される。まず、フェンスを開けてシートに着座。シートをスライドさせるよう促すメッセージが画面に表示され、自力で前方へとシートを移動させ、筐体にシートが密着した段階でシート背後の確認ランプが点灯、スクリーンにプレイ用映像が流れるというシーケンスになっている。
プレイ中はフェンスは固定され、プレイ終了時にはシートを後ろにスライドさせるよう指示が表示される。最後に、プレーヤーが席を離れるまでフェンスは動かない。こうすることで、より安全にプレイを楽しめるような配慮がなされている。また、プレイ中の状況はサイドの窓から確認できるようになっており、この「中を覗きたくなる」という人間の心理からか、取材中にも「中で何が行なわれているのだろう?」と興味津々の来場者が中を覗きこむ光景が何度も見られた。以前のバージョンであれば、外部にモニタを設ける以外、内部状況は確認する手段がなかったが、こうすることで、コストをかけずに、かつスクリーン内部に光が入り込まないように内部状況を確認できるようになった。
また、アーケード用筐体として開発されている「O.R.B.S.」本来の用途とは異なるが、VR用途に合わせた筐体バリエーションとして、「O.R.B.S.LE」も提案されている。これは、本体の半球ドーム部分はそのままに、シート部分に関わるパーツを省略し、同時に複数の視聴者が映像を鑑賞することができるようになっている。
さて今回、筐体でプレイできるのは旭エレクトロニクス制作によるデモプログラム。水中をコントローラで自由に移動するものと、DVDをキャプチャした映像を、この筐体向けにリアルタイムにコンバートした映像の2種類の内容になっており、体験時間は約2分。実際に体験してみたが、まず、ドームの大型化により、圧迫感が解消されたことが印象に残った。以前のものだと、シートを前に持っていった段階で、目の前が映像に埋め尽くされることで圧倒されると同時に、多少の圧迫感を感じていたのだが、新型では、同じく目の前が映像で埋め尽くされるにも関わらず、安心感のようなものがある。また、SXGAに拡大した解像度のおかげで、より緻密な映像が楽しめるのもうれしい。スクリーンの大きさに対して、プロトタイプではやや映像の荒さが見える印象だったが、今回は必要にして十分な映像が得られている感覚だ。
ソフトを制作した旭エレクトロニクスの藁科氏によれば、今回の映像を出力しているPCは、Pentium 4 1.7GHzというスペックだが、解像度が向上した分、フレームバッファに必要なメモリが増大し、以前のものと比べて1枚の映像を描画する際に、メモリへの転送が3回必要になったという。しかし、それでも十分な映像を出力できている。制作期間としては、乗降シーケンスを含めて1週間程度でソフトの制作が完了したとのこと。また、旭エレクトロニクスでは、この筐体にあわせて、バーチャル リアリティ映像用開発ソフトウェア「WorldToolKit Release10」用のDirectX、OpenGLのSDKを用意しているという。
左は水中を泳ぐデモ。右はDVDをリアルタイムにコンバートした映像。サブシステムにより、シートを引いた状態で撮影できなかったため、アップになってしまっていることをご容赦いただきたい | VR用開発ソフト「WorldToolKit Release10」も展示されていた |
リリース資料によれば、サウンドはステレオ2ch+ウーハーということになっている。ウーハー部は以前はシート下部に設置されていたが、今回はシート背面に位置を変更してあり、低音にあわせてシートが心地よく振動する。また、プロトタイプは5.1chだったが、2chに変更になったのはコストの関係ということで、実際に今回出展されている筐体は5.1ch+ウーハーという仕様になっている。いずれにしても、製品にグッと近づいた印象で、「いつ市販されるの?」と聞いてみたくなる仕上がりになったといえるだろう(現状、まだ市販の予定は立っていないとのこと)。あとは、このシステムを生かすソフト次第というところだろうか。
【そのほか会場で見かけたもの】 | |
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半球型のプロジェクター(日本バイナリー) | ホンダのドライビングシミュレーター(CRCソリューションズ) |
光学式モーションキャプチャーシステム(スパイス) | ライト兄弟の「フライヤー号」の操縦を体感できるシステム(CRCソリューションズ) |
(2003年6月25日)
[Reported by 佐伯憲司]
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