【アーケード ミニ特集】

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第39回AMショーに参考出展された
ナムコ大型汎用筐体「O.R.B.S.」の謎を追え!!(第4回)

「O.R.B.S.」を作った男たち(part3)
【SBOBP編】


(写真中央)東山朝日氏 株式会社ナムコ 第一開発本部 制作二部所属
(写真左)渡辺祐介氏 株式会社ナムコ 第二開発本部 開発企画二部所属
(写真右)指田 稔氏 株式会社ナムコ 制作二部 ヴィジュアルチーム 主任

 いよいよラストとなる「アーケード ミニ特集『O.R.B.S.の謎を追え!』」。開発者インタビュー「『O.R.B.S.』を作った男たち」のPart3となる「スターブレード オペレーションブループラネット(仮)(SBOBP)」編は、「SBOBP」の企画を担当した東山朝日氏に、「O.R.B.S.」ならではのソフト制作についてのエピソードをうかがった。また、「O.R.B.S.」の企画を担当した小林氏にも同席いただいた。


「七人の侍」みたいなボトムアップ型のプロジェクト

「SBOBP」のスタートシーン。多言語のアラートメッセージの中、ジオ・キャリバーが出撃する
--東山さんがこのプロジェクトに関わられたきっかけは?

東山 研究本部(当時技術本部)が開いた「O.R.B.S.」の社内プレゼンを見たときに、「これは興味深いな」と思ったのがきっかけになりました。

「子供が思い描く未来のゲーム筐体」の姿がそこにあって、「面白い発表があるよ」って部内のスタッフを誘ってまた見にいって、アンケートにあれこれ記入したりしたんです。ただ、「(実現は)難しいのかな」と思っていたら、研究本部(当時技術本部)の方々から招へいがかかりまして(笑)。

 「あの筐体をなんとか世に出したい。ついてはアプリケーションを開発したいんですが、技術本部はテクニカルな部分がメインで、ソフトウェア開発の人員がいない。ですので、各アンケート結果からこの筐体に興味のある人材をはじき出して、今日お招きしました。ついては、一緒にやりませんか?」という話で。

 僕はもともと家庭用のゲームをずっと手がけていましたので、業務用は初めてだったんですが、あの筐体に魅力や可能性、先進性を感じましたので、「できればなんとかしたいなあ」と思いまして。そういう「出会い」があったと言うか。

小林 草の根レベルで動きだしたのが、2000年の初夏ぐらいですね。とにかく興味のある人たちに集まってもらって、下からボトムアップの形で始めることにしたんですよ。

東山 「七人の侍」みたいなものですよね。時は戦国、業務用筐体には不況という名の野武士が押し寄せてきている。

 そんな時、研究本部(当時技術本部)が「こういうものがあるんだけど、なんとかしたい」ということで侍を探しに来たというわけです(笑)。その結果、企画、プログラマ、サウンド、グラフィック担当含めて13名ぐらいのメンバーが「この筐体で何かやってみよう」ということで集まって。だからボトムアップの形になったんです。

小林 技術関連の部署から始まったプロジェクトだったので、これは会社的にも前代未聞だったんですよ。でも我々だけではソフトに関しては右も左もわからない。そこで東山さんのようなプロフェッショナルを集めて……(笑)。

東山 僕は「エースコンバット」、「エースコンバット2」を担当した経緯もあって、3Dシューティングゲームには一応のノウハウがあるつもりなんですが、その時に集まったメンバーというのが、グラフィックの指田さん、プログラマの永堀くんを始めとして、各部門から腕利きがわっと集まっていて……。「これはすごいな」と。それまでは家庭用は家庭用、業務用は業務用で部署を越えてなかなか顔を会わせることがなくて……。

 あの筐体に惹かれるようにして集まったら、そんなメンバーがいて。「これはひょっとして本当になんとかなるんじゃないか」と(笑)。で、始まってからいろんな危機に直面するんですけれど(笑)。

飛び出したジオ・キャリバーの眼前に巨大な敵艦が迫る
--その危機の具体的内容についてお伺いしてもよろしいですか?(笑)

小林 具体的に「スターブレード」を作りはじめる前にちょっとありましたね。「何のソフトを入れるのが一番いいんだろう?」ということで。ショウに出展するということで、制作期間もそれほどかけられない、という事情もあって、わりとケンケンゴウゴウの議論が。

東山 あの筐体の特長である視野の広いところ、密閉された外界と隔絶される環境なんかを考えると、やはり"乗り物系"が向いてるだろうなあとまず考えたんです。

 加えて、集まった連中が「あれで『スターブレード』がやりたいね」、「実は『スターブレード』が好きでナムコに入ったんだよ」、「俺もなんだよ」、「マジで?」とかいう話になって……(笑)。メンバーのモチベーションも高かったですし、「イメージの共有」ができる、というのはスムーズなチーム運営に欠かせないものなので、候補として「スターブレード」というのが浮上したわけです。

 もちろん、単に「スタブレ好き」なだけで突っ走っていいわけがないので、企画としてその素材を客観的に考えてみる必要があるわけです。

 最近のゲームってルールが割と複雑で、格闘ゲームであればまずコマンドを覚えなければプレイが出来ないし、シューティングゲームも非常に難易度の高いマニア御用達になっている。逆にライトユーザはとことんライトで、ビデオゲームに興味がない方も多い。

 そういう市場を踏まえた上で、ゲームとしてはあえて「1レバー1ボタン」で「敵を狙って撃つ」だけの単純なスタイルにするのもありではないかと考えたんです。ゲームにあまりなじみのない人も、あの筐体のインパクトで「何かおもしろそうじゃん!」という人が座って、すぐゲーム内容を理解して楽しめる。逆にマニアの人も、「『スターブレード』がこんなになって帰ってきた!」とうれしく思ってくれるはずですし……。「市場の状況が厳しいのであれば、なんとか工夫していろんな層に訴求できないものか」という思いが、「スターブレード」という形に帰着した、という面もあります。

 ただ、僕は今まで家庭用しか手がけていなかったので、今回初めて業務用の営業サイドをまじえた打ち合わせに出席したんですよ。そこで技術本部の方々と営業の方々のやりとりから業務用の状況の現実を目の当たりにして……ショックを受けてしばらくヘコみまして(笑)。

 「我々なりの分析も踏まえたし、あの筐体に魅力があるのも事実だ。だが、この市場状況の中で果たしてこのまま進めていいものだろうか?」という葛藤はすごくありました……。ただ、このまま全くなかったことになってしまうのは本当にもったいない。

 ……例えば「ナムコの技術力をアピールする」、「ナムコが提案する新しい遊びの可能性」という位置付けで、「O.R.B.S.筐体をプレゼンテーションするためのアプリケーションとしてショーバーションの『スターブレード』」を制作する、というのであればどうだろうか……。

 ショーバーションということは、当然それ自体は金銭面での利益を生まない。ならば開発の現場としては、「少人数で」、「非常に短い期間で」、「開発費用をすごく圧縮して」、「水準以上のものに仕上げる」という覚悟で、チームが一丸となって作業にあたれば、少しは勝機があるかもしれない……。このメンバーなら……。そういった経緯を経て、実際の制作が始まったわけです。

敵艦とのニアミス
--まずは最初の危機を乗り越えたということですね。

東山 実際に制作が始まっても、System246基板を使っている関係上、VRAMの容量が少なくて、ドームスクリーン全体に画像を表示するためにテクスチャがあまり使えない、フラットポリゴン主体にならざるを得ないという「O.R.B.S.」ならではの宿命がありまして……。それ以外にも、ドームの広い画面に描画するという点で、計算コストが大きいんです。プログラマの永堀くんがいかにして処理を稼ぐかという点で非常に頭を悩ませました。

 ビジュアル面でも同様で、一連の敵デザインを起こした齋藤くんが、少ないポリゴン数で処理を軽減しつつ「スターブレード」の続編としてふさわしいビジュアルを再現するのに苦心していました。

--「SBOBP」の解像度はどれぐらいのものなんでしょうか? プロジェクタの性能だと1,024×768ということなんですが?

小林 ショーバージョンでは最終的にプロジェクタに入力されている解像度は800×600なんですよ。その解像度でSystem246の4MBのVRAMにフレームバッファをとってしまうと、本当に余裕はないですね。

東山 あとの容量を地球のテクスチャに充てるぐらいしかないですね。

 ゲーム的には「レールシューティング」と呼ばれる、プレーヤーが何もしないでゲームが進行して、出てくる敵を撃つ、というスタイルになりますので、プレーヤーをビックリさせたり感動させたりするために、カメラが凄く重要なんです。ですので、僕とカメラ専任の担当者である永谷くんとの二人三脚で、カメラの制御を行ないました。

 サウンド面でも前作のイメージがありますから、ゲーム中は音を流さずにドキュメンタリータッチの宇宙空間での戦闘をイメージしてもらって。最後にボス敵と遭遇するデモがあるんですが、前作にならってそこだけ音楽をかぶせてちょっとした余韻を残そうか、とか。

 やっぱり、スタッフ全員が「スターブレード」にモチベーションを持って集まっているので、自分たちの力不足で「前作を汚す」ようなことはしたくないし、「10年経って帰ってきてコレかよっ!」って言われたりするのもすごく残念なわけです。だから、前作をリスペクトしながら、「O.R.B.S.」の良さを活かすためにいろんな工夫を盛り込んだという、そんな開発作業でした。


 思い入れが生み出したカメラアングル

戦場を上から眺めおろす。敵の攻撃力に圧倒される
--東山さんの作業は具体的にどんなものだったんでしょう?

東山 映像が主体のゲームを作る場合、基本的に絵コンテを描く場合が多いんですが、このゲームは映画でいうところの「1カット長回し1本」なんです。だから、動きだしたら最後までずっと1つのカメラで追いかけるんです。ですので、絵コンテを切るよりは、カメラレールの仕様(レールコンテ)を作ったほうが、おそらくカメラ担当と意思疎通が早いんじゃないかと思いまして(ここでレールコンテを見せていただいた。ジオ・キャリバーの進行(カメラの軸になる)と、敵機の飛来パターンやカメラアングルの指示が進行にそってわかりやすくイメージされたものになっていた。残念ながら非公開)。

 今回こうしたカメラコンテの仕様書をつめて作ることで、企画意図に沿った劇的な映像をプレイヤーに提供すると共に、作業担当者間の意思疎通をスムーズにし作業時間の軽減を図れるよう考えました。僕は演繹的な手法でゲームを作るというスタイルを採ることが多いんですが、「ここでこういう仕掛けを作ったからプレーヤーはこう考えるハズだ」という設計図をまず書いて、それを文字のコンテに起こして、カメラコンテを起こす。そういうプロセスを経ると、カメラ担当者とも連係がとりやすいんです。

 「O.R.B.S.」自身の強みを活かすために、「スターブレード」を踏襲してどういったシーンを盛り込むか、というのも大きな課題だったんですが、最初のブレインストーミングで、チームメンバー全員で「こんなシーンを入れたい」というアイデアを出し合い、それを小林くんと僕の方でまとめて、ゲーム的な起伏を確保しつつ、時間が5分くらいしかないので、それにあわせて取捨選択していきました。

 「没入感を高めるために、どういった仕掛けが必要なんだろう?」、「やっぱり発進シーンは必要不可欠だよね。前作にもあったし。あれがあるとゲームのノリが全然違うね」ということで、発進シーンには、グラフィッカーもカメラも非常に気を配って、ゲーム前の心情を盛り上げるという工夫をしていきました。

 今回、宇宙空間と、敵の戦艦の中に飛びこんで戦う“通路面”と呼ばれているものと、最後に出てくる球状空間の中のデモと、全体は大きく3つのシーンに分かれているんですが、最初に宇宙空間の面を作ったんですね。で、カメラをぐるぐる回してみて、「これは浮遊感があるなあ」とか、「宇宙の広さがわかるなあ」といったアングルがある程度見込めるようになったんですけれど、テストプレイを行なう人を後ろから眺めたりとか、プレイした人に感想を聞いたりすると、思いのほか、スクリーンのあちこちに目をやらない。

 やっぱり、通常のTVの前に座ってプレイするというスタイルに慣れているんで、いきなりあの筐体の中に入っても、あちこち見回して広さを感じるとか、空間を感じるという風にはなかなかいかないんですよね。

 「どうしたものか」と思って、家に帰って風呂に入りながらずっと考えて(笑)。結 論として、「通路面」を作ろう、ということになったんです。前作の「スターブレード」のように、スムーズに常にパイプの中をストレートに進んでいく、ということではなくて、(T字路のような)目の前に壁があるところをブワーッと横にスライドして飛ばそう。そうすればプレーヤーの前には壁しかないから、自分の進行方向である壁の向こう側を見るはずだ。そこに敵をチラッと置いておけば、そこを見て「敵だ! 撃てっ!」となる。で、反対側にカメラが流れてその先に敵を置いておけば、今度はそちらを見て攻撃するようになって、画面の横を見るようになる。そうすると、今までTVレベルの広さの視界で映像しか見ていなかったものが、ドームスクリーンの情報の多さの中で首を振って敵を探している自分に気付いて、「これは今までになかった」ということを感じてくれるんじゃないか、「目前の情報量を敢えて制限することで、プレーヤーの注視点を誘導できるのではないか」と考えたんです。

 そういう意味で、通路面の調整にはすごく気を配ってカメラの方にも何回もリテイク を出して……。担当の永谷くんはすごく熱心な人で、企画意図を汲み取りながら、自分なりのアレンジを加えて、この通路面に情熱をかけてやってくれたんで、ショーで紹介したような、スピード感があって、こちらの企画意図を伝えてくれるようなものになったと思います。

 ショウが終わったあとに、ユーザーの方々のファンページを覗きに行ってみましたが、ある方のページで、「ナムコの『スターブレード』に乗りました。筐体に座って宇宙の広さにビックリしたり、激しい敵の攻撃に驚いたりしたけれども、あちこち見渡して、筐体の中で首を振って敵を探すというのが新鮮な驚きでした」と書いてあって。

 やっぱり、企画意図が伝わるとすごくうれしいんですよね。ちょっとじんわり来ましたね。ユーザーに伝わったのが非常にうれしいです。

--私も首を振って敵を探しましたよ(笑)。

東山 「ありそうで、ない」んですね。プロジェクターで50インチという筐体は今までもガンシューティングやレース物なんかでありましたけど、やはり大きな画面でも常に100%の情報がプレーヤーに見えていることには(今までのゲームと)変わりないんです。

 でも「O.R.B.S.」の強みというのは、目の前に映っている情報は全体の40~50%ぐらいで、あとは自分で首を振って探さないと、その広さを体感できない。そういうところにプレーヤーをどうやって誘導しようか、というあたりが企画として今回一番大きなキモでしたね。

 しかもショーバージョンということで、全体が約3分から5分ぐらいの尺で、各ミッションごとにウリを決めないといけないわけです。

ノンテクスチャでも十分な迫力
ここで東山氏はカメラレールを見せながら、各ステージのコンセプトを語ってくれた。

  • 発進シーン
    プレーヤーが「ジオ・キャリバー」に乗り込む。緊張感を高めて、「これから宇宙に行くんだ」という気持ちを盛り上げる。
  • ステージ1
    細いパイプ状のカタパルトを抜けて、母船から飛び出した瞬間に目の前に開ける宇宙空間。飛び出した瞬間に爆発が起こり、戦争の激戦の雰囲気が感じられる。直線的、機械的な発進シーンのカメラから一転、流れるようなカメラで飛翔感覚を楽しんでもらう。
  • ステージ2
    巨大な敵空母「メガマウス」が見え、その側面を飛びながらその巨大感を感じつつも攻撃するが、敵は平然と浮かんでいる。しかも敵の前面に回り込むと、敵空母から一気に戦闘機が発進、味方艦「ソルトフラット」が撃沈される。圧倒的な巨大感と物量戦の迫力。
  • ステージ3
    「じゃあ、あの中に飛び込んで戦るしかないな」というプレーヤーの望んでいるお約束、敵艦内部に突入するシーン。通路ではスライドやターンを多用した、テンポとスピード感を重視。
  • ラストシーン
    「母体」をイメージさせる「球体のモチーフ」からなる敵艦最深部へ到達。ここで敵のボスと対峙。「これからもっと強い敵が出てくるんだろうな」という今後のゲーム展開を予感させる幕切れ。
東山 ほかにも、「赤い敵」……前作の最強の敵機体「コマンダー」を模した形をしている……が出てくるんですが、マニアの方はアイツを見て「今回のボスはコイツか」と思って追いかけてくれると思うんですが、実はヤツは量産機で、敵艦最深部まで辿り着くと、目の前にずらりと並んで待ち構えている。と、上から「真のボス」が振ってきてプレーヤーを急襲、といった、短い尺の中にもドラマを感じさせるような展開を心がけました。

 こういったものを要所要所にはさみ込みながら、この5分の中に一通りの起承転結や「味方が撃墜される」というドラマ性を盛り込んで、プレーヤーの方々に宇宙戦争の一端を垣間見たような気になってもらいたいな、という思いでこのコンテを切りました。


 誤算だった「SBOBP」の難易度調整

画面横を見てもらうためのコーナーの演出
--「SBOBP」はかなり計算されて凝縮された作品、というイメージがありますが?

東山 ええ。とはいうものの誤算もたくさんありまして(笑)。当初、回転も考えると3分ぐらいだろうな、というチームメンバーのコンセンサスがあって、「東山さん、どうですかねえ?」と聞かれたときに「いや、3分もあれば起承転結や見せ場も盛り込んでなんとかなるでしょ。もちろんシューティング遊びの部分もちゃんと確保した上でね」と大見得を切ったのに、コンテ書いたら5分になってしまいまして(笑)。ショー会場で長時間お待ち頂いた方、あきらめた方、本当に本当にどうもすいません。

 しかも「家庭用で難易度調整なんかの場数も踏んでますし、確かに期間は短いけど調 整できますよ」とかいって難易度調整したら、ショーでは9割5分までクリアされちゃいまして(笑)。社内である程度ゲームが出来上がったときに、「SBOBPできましたのでプレイしてみてください」と社内調査を行なった時は、クリア率は7割ぐらいだったんですよね? 3割の人は途中でゲームオーバーになっちゃったと思うんですが?

小林 7割ぐらいだったと思います。「これでちょうどいい難易度だ」と思ってたんですけれど、実は……

東山 ゲームを作っている会社のメンバーがプレイするわけですから、通常のプレーヤーさんよりはゲームが上手だと見積もったので、それで7割ならいいかな……、と。ひょっとしたら難しすぎるかな、と思ったら、ですよ。1人まるまる6分、最長で150分もお待たせする事態になりまして……。そんな誤算もありつつも、なんとか完成させたという感じです。

--「O.R.B.S.」の描画領域や映像の情報量の違いは難易度調整にも影響を与えたと思うんですけれども?

東山 開発メンバーの中に、「ギャラクシアン3」や「シアター6」、「アタック・オブ・ザ・ゾルギア('94)」を手がけた、しかもその敵の配置を手がけた貞弘さんがおられまして。非常に心強いメンバーですよね。

 彼と相談しながら……。「なるべく、視界の外周のあたりの敵はいきなり弾を撃たないようにしよう」、「とりあえず飛び込んで来て、プレーヤーの視界に入ったらかっこよく反転して向かってくるときに弾を撃つというふうにして、意地悪なゲームにはしないようにしよう」と話をして、画面の中で敵が占める位置と、攻撃のバランスに気を配りました。

 ただ、「ギャラクシアン3」や「シアター6」などと違って、今回はシングルプレイなので、「この場面ではこの敵に注目させたい」という、ゲーム面と演出面双方からの方針を決め、そういった企画意図とカメラに合わせたカッコイイ敵の出現パターンなどを貞弘さんに非常に気を配って作業していただきました。

 少数で作業しないと開発予算がかかってしまいますので、ほぼすべての敵配置を貞弘さんが1人で手がけたんです。朝、出社してプロジェクトチームのところに行くと貞弘さんが座っていて、「どうするかな……」と作業していて、僕が他の仕事で席を離れて夕方ごろに戻ってくると、貞弘さんが座っていて、「どうするかな……」と作業していて……(笑)。相当の根気と、几帳面さと、センスの必要な作業なんですよ。

 で、大まかに敵が配置されてきて「あとは演出用の敵が必要だな……。でもこの作業量と納期じゃそこまで手が回らないかもな……」と思っていたら、なんか毎回プログラムをコンバートするたびに、敵の配置が微妙に良くなっていくんですね。(貞弘さんが)「3機増やしてみたよ」、「あそこの2機は削ってこっちに1機置いてみたよ」って……。

 全部でおそらく1,000に届くか、という数の敵の配置を行なっていて、その中で1機2機の調整を最後の最後まで手がけていましたね。それがカメラとうまく合って、戦場の雰囲気をうまくかもし出せたんじゃないかと思います。

 「スターブレード」という魔力に引き寄せられて、皆がこの筐体の魅力と、各々の持ち分を十分に発揮できたという意味では、このプロジェクトはよかったと思いますね。


 「スターブレード」が生んだ力

敵艦内部奥深くまで侵攻……
--やはり「スターブレード」をリスペクトして作られたことによる効果なんですね……

小林 モチベーションの高さがうまく作用して、期間的にもうちにとっては異例なぐらい早く仕上がったプロジェクトだったんですよ。

東山 予算も人員も期間もあまりない、ある意味逆境が生んだチャレンジ精神がチームを引っ張りましたね。そのせいか、大幅にスケジュールが延びたり、チームがギクシャクしたりとか、そういうことが"ゼロ"でした。研究本部(当時技術本部)の大久保課長、主幹の小林くん、菊池くんらの元で我々が開発に携わったわけですが、その間の意思決定が非常にスムーズで、当然開発上のトラブルはあったわけですが、「どうやって早く、安く、しかもよいゲームにするか」という前向きなものにとどまりました。それがよかったですね。

小林 「SBOBP」は、「スターブレード」を作っていた人たちが、「おそらく技術が追いついていたならこういうものを作りたかったんだろう」というものを想定して制作していました。元祖リスペクト、という意味でも。

東山 あの筐体は凄いところもあるし、それゆえの弱点もある。前述のVRAMが足りないというのもそうなんですが、ボトルネックに直面したときに、転んでタダで起きたら企画としてはやはりダメなので、「元祖をリスペクト」という部分をうまく持っていこうと。

 前作「スターブレード」がノンテクスチャでフラットなところが硬派でソリッドな印象を与えたのであれば、「SBOBP」がノンテクスチャでもおそらくそんなに大きなクレームは来ないだろうと。残ったテクスチャ容量を、地球など要所要所に使っていけば、全体 的なクオリティが大きく劣ることは恐らくないのではないか、と考えました。

 レースゲームやフライトゲームだと、テクスチャがないと困ってしまうので、あの筐体のアプリケーションとして「SBOBP」というのは弱点をうまくカバーするという点でもよかったと思います。


 ナムコスピリッツは今でも生きている

ラストに待ち受けていたのは……
--初めての筐体で、初めての業務用ということで、東山さんにとってどんな仕事でしたか?

東山 「画面が広くなるとどういった新しい感動が生まれるのか」ということをプレーヤーにどう伝えるのか、「実際に自分が首を振って敵を探している」というありそうでなかった要素、それをどう落としこんでいくのか、ということが一番の仕事でした。

 新しい技術は必ずゲームを変えていくきっかけになりますから。「こんなに広い画面があったらあなたはどうしますか?」という提案、技術が向こうから向かってくるわけです。それをゲームを作る現場の我々がしっかり受け止めてアイデアを凝らしてプレーヤーに伝えていく。そういった「ハードとソフトのよい出会い」をどう展開していくかという大変さや面白さがありました。

 僕は家庭用ゲームという、どのメーカーさんが(ハードを)叩いても条件は同じ、ほぼ器の決まっているものの中でいかに戦うか、ということに知恵を絞ってきましたんで……。この筐体は今ナムコにしかないわけです。料理人が見たこともない鳥を出されてきて、「どうしますか?」と聞かれたら「焼く? 蒸してみる?」という話になると思うんですが、それに似たおもしろさですね。

--他社の開発陣にもこの筐体でのゲームを作ってもらいたいと思いますか?

東山 思いますね。やっぱり、他社さんでしたらこの筐体を使ってどんなゲームを作るのかを見てみたいです。汎用筐体ですので、基板も自由に選べますし。

小林 映像生成の部分でノウハウは必要ですが、契約を結んでいただければこちらからちゃんと情報を提供させていただきますし(笑)。

--今回でこの特集がラストなんですが、ショーで体験してくれた人や、この記事で「O.R.B.S.」に興味を持ってくださった方々に何かメッセージなどありますか?

東山 元々はアーケードゲームから始まり、皆さんに愛されここまできたナムコですから、今回のような「ハードとソフトのよい出会い」を通して生まれたちょっとした驚きを皆さんに伝えられれば…。現場でゲーム作りに関わる我々として、とてもうれしいことですし、この筐体が「もうゲームなんてつまんないよ」、「ゲームセンターに行ってもびっくりするようなゲームなんてないし」といった人の心に僅かでも届くのならばすごくうれしいですね。

 もちろん、家庭用でも業務用でも、従来の路線のゲームも作っていきますが、「今の状況でこういった新しいものを作れるのはナムコしかいない」という書き込みをどこかの掲示板で見かけましたが、そういう期待を寄せて下さっている全てのプレーヤーの皆さんに、ナムコを応援して下さっている全てのゲームファンの方に、かつての「ナムコスピリッツは今も生きているよ」ということを、伝えられればと思います。

--どうもありがとうございました。製品化を期待しています。


 取材は数度に渡って行なわれた。インタビューは1日に5人の方に参加していただいた。今まで開発がここまで表に姿を表し、試作品であるにもかかわらず、これほどまで情報を開示してもらったことはいまだかつて経験がない。ここまでして、製品化の熱意を持ってこちらの稚拙な要望に応えてくれた「O.R.B.S.」のプロジェクトメンバーの方々に敬意を表するとともに、このプロジェクトの成功を願ってやまない。

 そして、取材対応や記事チェックなどご迷惑をおかけした(今まさに締めきりはとっくに過ぎている)ナムコ広報の方々を含め、この記事に関わっていただいたすべての人に感謝。そしてこの記事を最後まで読んで頂いた読者の方々、本当にありがとうございました。晴れて製品化される日を期待しながらこの記事を終わります。ありがとうございました。



※画像は4対3のTV画面用に補正したもので、実際に画面上に投影されるものとは異なります
(C)NAMCO

□ナムコのホームページ
http://www.namco.co.jp/
□プレスリリース
http://www.namco.co.jp/home/pr/2001/nov/press04.html
□関連情報
【11月16日】第39回AMショーに参考出展されたナムコ大型汎用筐体「O.R.B.S.」の謎を追え!!(第3回)
「O.R.B.S.」を作った男たち【part2:デザイン編】
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011116/orbs.htm
【11月9日】第39回AMショーに参考出展されたナムコ大型汎用筐体「O.R.B.S.」の謎を追え!!(第2回)
「O.R.B.S.」を作った男たち【part1:基礎理論・企画編】
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011109/orbs.htm
【11月2日】第39回AMショーに参考出展されたナムコ大型汎用筐体「O.R.B.S.」の謎を追え!!(第1回)
百聞は一見にしかず。これが「O.R.B.S.」だ!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011102/orbs.htm
【9月20日】「第39回アミューズメントマシンショー」ブースレポート(ナムコ編)
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010920/jmr2.htm

(2001年11月22日)

[Reported by 佐伯憲司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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