インタビュー

「ファイナルファンタジーXVI」吉田直樹氏、髙井浩氏、鈴木良太氏インタビュー

必須ではないが重要な“技術介入性”の高いアクション

――技術介入性といえば、クライヴのアクションについてなのですが、□ボタンの攻撃が当たった瞬間に△ボタンで追加攻撃が入る「バーストショット」などがありました。とてもテクニカルなアクション要素もあって、そういうところは上級者向けに作られているのかな、と感じました。

鈴木氏:そうですね、そこは技術介入性という意味で、あった方が絶対に面白いという判断で入れています。楽しく思わせるアクションは基本的に召喚獣の力を使う点に集約させるよう構築していますが、一方で基本攻撃である□ボタンの使い方、△ボタンの使い方の中でも、上手な人が□ボタン、△ボタンを使った時はどうなるの? というところも考えています。アクションがあまり上手ではないユーザーさんと、アクションが上手な人で、基本攻撃にも戦術の変化幅があった方がいいだろうと。

――確かに自分はあまりアクションが上手ではないほうなので、コマンドを見ても結局あまり使いませんでした。

鈴木氏:絶対にやってはいけないのが、アクションが苦手なユーザー層にそういう技術介入性を持った遊びを強要させることなんですよね。なので、使うことによって得はするけれど、やらないことによってゲームがクリアできないとか、倒せないとか、そういう形にならない範疇に留めています。

――実際、できなくても(今回の体験版を)クリアできたので、すごくいいバランスですよね。

鈴木氏:バーストショットは、クライヴの基本アクションの企画を固める際に、かなり速い段階から採用することを決めていました。アクションの上手な人がゲームを触り始めた序盤から「おっ」と思うような要素を入れておきたかった感じです。

 今回の試遊でも体験できたと思うのですが、□ボタンの斬る攻撃は、敵が放ってきた攻撃に合わせると「パリィ」になって、一定時間バレットタイムが走り、攻撃力も増加します。そういうバトルのアクセントとなる技術介入要素は入れています。

吉田氏:すごいのは、これらが必須じゃないところなんです。できた人たちはすごく見えますが、できない人たちが損をしないんです。開発工数としてはある意味で無駄ではあります。必須じゃないなら入れなきゃいいじゃん、ということなので。でもアクションゲームはそういうものじゃないから、というところは終始一貫していました。

――わかります、アクションゲームは自分だけのバトルが出来上がっていくところにも楽しみがありますからね。

吉田氏:開発チーム内でも、他の人のプレイを見てるとバーストショット入れながら絶対に意地でもこのコンボは基本として入れる、というタイプや、そんなの全くしません、みたいな人が混在していて、たまに良太くんのプレイを見ると「えっ、こんなこともできるんだ」って驚いたりもします(笑)。これが配信になれば、自分のクライヴと全く異なる動きをする別のクライヴを見られるようになると思いますし、すごく世界が広がると思ってるので、僕も楽しみです。

髙井氏:バーストショットは□ボタンの4連攻撃の間全てに挟まるようになっているので、□→△→□→△……というように繋がっていきますが、人によっては4連目だけに必ずバーストショットを入れる、みたいに、ルーチンワークでプレイするような人も出てきています。同じアクションの中で、みんな自分にあった遊び方を工夫して遊んでくれるようになるな、と思いながら見ています。

――トルガルも技術介入の要素が多い部分ですよね。今回、あまりうまく操作できなくて……。何かコツはあるのでしょうか?

鈴木氏:クライヴが剣を振ったり、魔法を放ったり、何かしらのアクションを実行した時は、その後に必ず硬直が生まれます。トルガルはクライヴの動きに依存せず、命令されたらすぐ動いてくれます。そのためクライヴが動けない場面……硬直中などに指示をすることで、本来クライヴが攻撃できない瞬間でも、トルガルを使って攻撃を放つことができます。

――クライヴの動きを補完する感じで使えばいいのでしょうか。

鈴木氏:そうですね。あと細かい要素で言うと、クライヴが敵を吹き飛ばした時にタイミングよくトルガルに命令を出すと、プレジショントルガルという命令アクションに強化されて、威力が1.25倍に強化されます。

――プレジショントルガル……ここで聞きなれない単語が出てきましたね。

鈴木氏:プレジショントルガルは、威力の強化だけでなく、攻撃アクションも変化します。例えば通常の命令では、トルガルは噛み付くだけですが、敵を吹き飛ばした時にプレジショントルガルを成功させると、吹き飛んだ敵に対してローリングアタックで連続攻撃してくれ、一定時間、敵を空中に留めてくれます。なので、敵が空中に留まっているということは、○ボタンを押してフェニックスシフトで敵に近づいたら、クライヴも空中状態に遷移する。トルガルへの命令の出し方で、クライヴ側の戦術にも変化が生まれるようにしています。

――なるほど。何も指示しなくてもたまにトルガルが自動的に攻撃してくれたりもしますよね。

吉田氏:そこは自立思考で動いてくれます。例えばクライヴの体力が減ってきたら、回復をしてくれたりとか。

――オートトルガルのアクセサリをつけると、どこまでやってくれるのでしょうか?

鈴木氏:普段のトルガルの戦闘思考は、クライヴが敵と戦ってる時は、クライヴがその敵との戦いやすい状況作りを作るために、他の敵を優先して戦う思考になります。オートトルガルのアクセサリをつけると、クライヴの戦闘をアシストしてくれる役回りに変わります。積極的にクライヴの戦いに介入するようになる感じです。クライヴが動けない硬直時間中にオートでトルガルが攻撃してくれたり、また先ほどお話ししたプレジショントルガルもオートでやってくれます。

――深いですね。このあともう一度プレイしてみます。

髙井氏:この硬直時間を有効利用しようと思い始めると、意外と考えますよ。例えば今日のビルドでも剣の溜め斬りや魔法の溜め打ちがあったと思いますが、硬直時間中でも溜められます。出の長いアクションの最中に溜めていれば、そのまま一気に溜めた魔法発動ができますし、今度はこの硬直時間にトルガルをどうやって合わせてあげるか、みたいなことまで考えだすようになってきます。

吉田氏:ちなみに、何度も言いますが、今お話ししたアクション要素はまったく必須ではありません(笑)。単純に武器防具を強化して、レベルを上げて、自身の能力を上げることによって、全てのアクションが強化されますし、武器を強いものを装備することによってもリミッターが上がるし、基本はそれで充分な設計です。

――そこまでやりこめるのは趣味の範疇、みたいな感じですか。

吉田氏:ジャンルがアクションとRPGの融合ですので……。ただアクションには技術介入要素がこれだけあって、工夫していくことでダウンをさせるまでのゲージの削りをものすごい高速化させられます。そうすればテイクダウン頻度を上げられるし、テイクダウンした後にまとまったダメージを入れるだけのコンビネーションを自分の中でキッチリ持っていると、その間に大ダメージをたたき込めます。

――その分、全体の戦闘時間が短くなるんでしょうか。

吉田氏:そうですね、その分クライヴがダメージを受けるリスクが減るし、スタイリッシュに戦い続けて圧倒的にノックアウトするっていう格好良さを作れるんですよ。

 でもこれは別にクリアのために必要なものではなく、ただ、アクションゲームとして魅せプレイをしたい、配信をして「俺スゲー」したいといった遊びに近いですね。

――やりこみといえば、本作では2周目がちゃんとあるんですよね。

吉田氏:2周目の「強くてニューゲーム」は、そこまで育てているクライヴ、すべての能力を引き継いで2周目に突入できます。序盤アクションが少なく、苦労した敵であっても、様々な召喚獣の力を得た状態でねじ伏せていける。さらに、「強くてニューゲーム」の状態でのみ選択できる「ファイナルファンタジーモード」という、開発からの挑戦状みたいなものもあります。どこまでアクションフォーカスモードでやり込んでみせるか、みたいに楽しんでもらえる幅の余地は信じられないくらいありますよ。でも1周目は、もう全然そんなこと気にしなくていいです。ストーリーを楽しんでほしいです。

髙井氏:むしろ1周目は怒涛の展開なので、アクションよりもそちらを楽しんでもらえると(笑)。

鈴木氏:1周目でかけた時間は2周目以降も決して無駄になりません。

――それでは最後にひとことずつお願いします。

吉田氏:今回はバトルにフォーカスしたメディアツアーで、ゲーム全体の体験とバトルに特化した内容になっているので、是非今回2人がこだわった「FFXVI」のアクション部分……バトル部分にフォーカスして作ってきたものを、記事を見て、「スクエニ、そこまでこだわって『FF』でアクションを作ってきたか!」というのを感じていただきたいです。

 RPGではあるのですが、コマンドを敢えて採用しないことで達成できたリアルタイムアクションのこだわりを、ぜひ楽しみにしていただけると嬉しいです。今後は今回お伝えしていない、「RPGとしてのFFXVI」の大きな要素や、プレイサイクルについてもお伝えしていきますので、そちらについてもご期待ください。

髙井氏:メディアの皆さんに、実際を触って体験していただく機会を設けましたが、ストーリー的にもなかなか「この先どうなるんだろう」と興味を煽れるような内容になっていると思います。アクション部分に関しては本当に「ここまでやったんだね」というくらいのものになっていると思います。

 一方で、「ここまでアクションできなくても許されるんだ」というのもメディアの皆さんには体験していただける内容になっていると思いますし、あとは「FFXVI」を一日でも早くこの記事を読んでいるお客様にも届けたいと思っています。記事内容から色々想像しながら、その日を楽しみに待っていただければなあと思っております。

 絶賛デバッグ中、最後のパフォーマンス調整を今スタッフ一同がむしゃらにやっているところでありますので、無事マスターを迎えられるようお待ちください。

鈴木氏:今回、やっとバトルパートをお披露目することができました。「FFXVI」は、「FF」シリーズユーザーさんでもしっかり遊べる、またアクションヘビーユーザーさんでもやりごたえを感じられるゲームにするというところを目指して製作してきました。

 アクションとなると抵抗を感じるユーザーさんもいらっしゃるのは事実で、僕としてはむしろ今までのターン制バトルの「FF」を遊んできたユーザーさんに是非遊んで欲しいと思っています。「FFXVI」を機会にアクションの魅力を知ってもらえたら、僕としてはとても嬉しいです。

――ありがとうございました。