インタビュー
「ファイナルファンタジーXVI」吉田直樹氏、髙井浩氏、前廣和豊氏インタビュー
サードトレーラーを軸に“世界の理”について深く迫る
2022年11月4日 22:00
- 【ファイナルファンタジーXVI】
- 2023年夏 発売予定
- 価格:未定
スクウェア・エニックスから2023年夏にPS5で発売予定の、「FINAL FANTASY XVI」(以下、「FFXVI」)。先日公開された第3弾トレーラーでは舞台となる5つの国の片鱗などを見ることができた。
物語のキーとなるのは、大地の各所に存在する”マザークリスタル”。各国がひとつずつマザークリスタルを保有することで、国同士のバランスを保っているヴァリスゼアが、本作の舞台となる。それぞれの国には、召喚獣をその身に宿す“ドミナント”がいて、自らの身体へと喚び降ろすことができる。各国で主要な役割の位置にいることが多いようだ。
主人公である「クライヴ・ロズフィールド」はロザリア公国の第一王子ながらもドミナントとして覚醒せず、弟のジョシュアが召喚獣フェニックスのドミナントとして覚醒している。
今回、本トレーラーの公開に合わせて「FFXVI」のプロデューサー・吉田直樹氏、ディレクター・髙井浩氏、クリエイティブディレクター&原作/脚本・前廣和豊氏の3名に話を聞くことができた。
GAME Watchでは6月に吉田氏へのインタビュー記事を公開しているが、今回は、より深く「FFXVI」の内容に踏み込んだ話を聞くことができた。
髙井氏と前廣氏、打診の最初の感想は「苦労するんだろうなぁ……」
――よろしくお願いいたします。前回のインタビューで、吉田さんには第3開発事業部で「FFXVI」を開発することになった経緯をお伺いしましたけれども、改めて髙井さん、前廣さんが参加された経緯などをお伺いしたいです。
髙井氏:おそらくは評価面談だったと思うんですけれど、吉田からその最中、評価の話とは別に「次の『ファイナルファンタジー』をどうにかしなきゃいけないんだけど……」みたいなことを打診されて。せっかくの話なので「集大成という意味でもやっておきたいな」と(笑)。
――面談の場で話があったんですね(笑)。
髙井氏:もちろん真面目な話もしたのですが、第3開発事業部はアクの強い面子も多いですし、その中で知名度だけはある自分がディレクターをするのも悪くないだろうと思ったので、「では前向きに考えさせていただきます」と(笑)。
前廣氏:僕は前のことすぎて流れを全然覚えていないんですけれど、おそらく外でご飯を食べながら「どう?」みたいに言われて、「はい」みたいな感じだったと思いますね。日常会話の中で、自然なノリでそうなっていたような……。
――髙井さんのように改まってというような席ではなかったんですね。
髙井氏:僕も改まっているっていうか、評価面談だからなぁ(笑)。
吉田氏:僕の中では、個別に話している時点で改まっているんですよ(笑)。
――皆さんの認識が……(笑)。それでは実際にその吉田さんから打診を受けた時のお気持ちをお伺いできればと思います。
髙井氏:「やるって言っちゃったけど、苦労することも多いんだろうなぁ」……というのが正直なところでしたね(笑)。やはり、この会社の看板タイトルですから。
――髙井さん……(笑)。それはプレッシャーですか?
髙井氏:いや、プレッシャーというのはあまりなかったんですけれど、もう本当に大変なんだろうな、と(笑)。
前廣氏:僕は、ならば「FF」としてのシナリオを書こう、というくらいでしたかね。もちろんそこに至るまでの決意とかはありましたけれど、返事の瞬間はそこまでプレッシャーには感じませんでした。
――プレッシャーとは別の感情があったのでしょうか。
前廣氏:そうですね……特に最近の「FF」は発売の間隔が割と長かったりしているので、プレイした人の「これが『FF』でしょ」というイメージが本当にバラバラなんですよ。「FF」らしさが後から来ると言えばいいんでしょうか。ですから、「FFXVI」と「FF」をスタッフに伝えるのは難しいだろうと。
――それを乗り越えて今に至るわけですね(笑)。では、先日公開されたトレーラーのコンセプトについてお話をお願いします。
吉田氏:まず初報で「FFXVI」を作っているらしいぞ、というのを出して、セカンドトレーラーで「召喚獣大決戦っぽい」というところは伝わったと思います。それで今回、いよいよ「FFXVI」を楽しみにしてくださっている、つまりコアなファンになってくださるであろう方々に、どんな世界感で、どんなキャラクターや国が登場して、ヴァリスゼアという地がどういう状況なのか、事の発端を知っていただこうと思いました。そこがRPGとしての物語の基盤です。ですので、しっかりお伝えしていこう、という感じです。
――なるほど、訴える対象が違うんですね。
吉田氏:はい。今までは得体の知れない怪獣大決戦――召喚獣を使った大規模バトルが売りだというところをアピールしてきましたが、今回は”そこ以外”です。要はRPGとして、ストーリーとしての根幹をいよいよお見せしていこう、というのが今回のコンセプトです。まず世界観や雰囲気を理解してもらえればいいなと思って作っています。
――これまで公開されたトレーラーで改めて注目してほしい点はありますか?
髙井氏:多種多様な人物が織りなす群像劇らしきものを予感させていると思いますし、召喚獣というものが中心に来ていて、きっとこいつらが派手な何かをしでかすだろうし、それに絡んでプレーヤーと一体になって何かするんだろうな、というところを想像してもらえるのが一番いいかなと思います。
前廣氏:これまでの「FF」とは作りもビジュアルも戦闘にしても、全然違うものではあるんですけれど、全般的に多分「ファイナルファンタジー」を感じてもらうことはできるんじゃないかなと思っていて。今回のストーリー系のトレーラーに関しても、前回のあの召喚獣のトレーラーに関しても、そういうところが感じ取ってもらえるんじゃないかなと思っています。
吉田氏:今回のトレーラーは知識ベースを増やすというか、「FFXVI」について知っていることを増やしてもらいたいというトレーラーだったので、見所というよりも全体に漂う退廃感とか、終末に向かって行っている感じが伝わるといいですね。
――見ていると、人同士のぶつかり合いみたいなものもより強く感じられました。
吉田氏:今回、結構”人”に特化した「FF」かなとは思っています。世界ももちろんなんですが、そこから「人間ドラマがすごくありそうだ」ともし感じていただけたんだとしたら、そこが狙いではあります。“人”に注目して、改めて今回のトレーラーを見ていただけると嬉しいです。
――今回のトレーラーで5つの国が紹介されましたが、改めてどのような国なのでしょうか?
前廣氏:今回ゲームに登場する5つの国全部をトレーラーで紹介させてもらいました。まず、最初の「ロザリア」は主人公の生まれた国で、歴史の長い厳格な国です。
次の「ザンブレク」は宗教国家で、指導者の元で唯一教がすべてを支配しています。神のお告げと言えば何でも通るような、ワンマンな国です。
次の「ダルメキア」は、砂漠と荒野の国家です。ここは王様がいない共和制の国なので、評議会が政治をすることになっています。
「鉄王国」はザンブレクと同じ宗教国家ですが、マザークリスタルが全てで、それ以外は不要とする原理主義のような考えが古代から伝わる宗教の一派です。
最後の国が「ウォールード」です。今回のトレーラーでも出てきたバルナバスというキャラクターがオーディンを有していて、強いオーディンを筆頭に騎馬隊の武力で統一してきた、戦を主体とした国です。
――今回のトレーラーでザンブレクの皇子ディオンとウォールードの国王バルナバスが公開されましたけれども、この2人のコンセプトについてもお伺いしたいです。
前廣氏:主人公のクライヴが色んなものを背負って生きていることに対して、ディオンに関しては何でも持っている、どストライク王子様みたいなイメージです。クライヴも王子様なんですけれど影があって、光の王子と闇の王子みたいなイメージで作りました。
バルナバスは、よくわからない不気味な国王、というイメージです。オーディンのドミナントで、すごい力も持っていて、戦を司る国の国王でありながらとにかく腹黒そうで何かを考えている。それも表情から読み取れないから不気味、というキャラクターをイメージして作りました。
――ディオンはバハムートのドミナントなんですよね? バハムートといえば、歴代のシリーズの中でも最強のイメージがあるんですけれども、召喚獣の強さというのは、ドミナントに依存していたりとかするんでしょうか?
前廣氏:召喚獣の強さは基本的に均衡しています。ただ当然その核となるのは人間なので、人間のフィジカルな経験だったり蓄えられた知識から、当然戦い方も変わってくるし、パワーで押す者もいれば魔法を使いこなしたりなど、自分の特性を活かした召喚獣の力では優劣は出てくると思います。
吉田氏:たとえば、アムロが搭乗するからガンダムなのであって、ガンダムに普通の一般兵士が乗ったら即撃墜される……みたいな。通じますかねこれ(苦笑)。それと同じでドミナントの能力や精神力、戦い慣れしているかによって発揮できる力はガラッと変わります。覆せないサイズ感の違いなどはあるから、それぞれの能力をどう上手く使っていくか、という。サイズが違うからこその攻め方もありますし、飛べる召喚獣、飛べない召喚獣といった違いもありますね。
――ああ、なるほど、そうですね。
吉田氏:ですので、そういった召喚獣毎の特徴をゲームでどのように体験するのか、そういった点にご注目いただけると有り難いです。
前廣氏:補足すると、なぜ召喚獣同士の強さが均等なのかも、ちゃんとストーリーがあります。
「FF」の世界、ストーリーに“逃げずに向き合う”
――では、今回の「FFXVI」の物語を作り上げるにあたって、特に力を入れた点などについてお伺いしたいです。
前廣氏:召喚獣をメインに据えた物語を作るのは初期の頃から話していて、それをしっかり世界観に落とすようにしました。召喚獣が飾りではなく、召喚獣ありきで世界がちゃんと作られている、というところを自然に受け入れられるように構築しています。
――召喚獣を中心にしようと思った理由はあるのでしょうか?
前廣氏:声をかけてもらってすぐくらいの最初の段階から、提示されたコンセプトの何個かのうちの1つに「召喚獣」というキーワードがあって。そこから膨らませていきました。
――その時点では召喚獣大戦までは構想していなかったのでしょうか。
前廣氏:そうですね。技を出して終わりの召喚獣ではなく、召喚獣同士が戦うことの面白さを打ち出そうと考えていきました。召喚獣が根差している世界を舞台にするなど、包括して書いていったら結果的にこうなった、という感じです。
――髙井さんと前廣さんといえば「ラストレムナント」や「FFXIV」で知られているお2人ですけれども、本作でこれらの作品から影響を受けている部分とかはありますか?
髙井氏:ないとは、きっと言い切れないんでしょうけど、意識はしていません。「ラスレム」の時のあれを今回こうしようみたいなのはありませんが、せいぜい特定のキャラクターの命名に、昔にもそんな名前のキャラクターがいたかなぁ、みたいなのはありましたね(笑)。
前廣氏:どちらも僕らが作りましたから(笑)。似通っちゃうところはあるのですが、それは単純に僕が好きだから、くらいの理由程度なんですよね。
――ちなみにヴァリスゼアという名前の由来についてちょっとお伺いしたいなと思ったんですけれども……。というのも、どうしても「FFXIV」ユーザーとしてはヴァリス帝とエオルゼアが浮かんでしまうんですよね。改めてお聞きしたいんですが、エオルゼアとは関係ないんですよね?
前廣氏:エオルゼアとは全然関係ありません。由来というか……僕がこういう響きが好きだからという感じですね。濁点だとか小さい文字を入れると人の頭に残りやすいとか、そういった手法に、個人的に好きな響きも入れて合体させたらヴァリスゼアになった、という感じです。
――吉田さんはヴァリスゼアという響きを聞いた時、どこか馴染みがあるなぁと感じましたか?
吉田氏:そうですね。ただそれはライターの領分ですから、多言語で見た時に問題があるとかではない限りは、基本的には任せるのが僕の主義です。これだめ、あれやりなさい、っていうのはゲームを作っていて一番面白くないと思うんです。
僕は元々、スタッフがこれで行きたい、これで頑張りたいというものはそのまま通したいタイプなので、確かに関連性を思う方はいらっしゃるかもしれませんが、実際には何の関係性もないからまあいいかな、くらいです。ちなみに本当に「FFXIV」とは関係がないことは、大文字にして書いておいてほしいくらいです(笑)。
――ヴァリスゼアは「FFXIV」と関係ありません、ともう一度書いておきます(笑)。では「FF」というタイトルだからこそ、チャレンジしてみようと思ったことはありますか?
髙井氏:「FF」だからというわけではないのですが、操作感ですね。アクションとリアクションが、リアルタイムでダイレクトに感じられるアクションRPGにしたい狙いはありました。
――アクションにしたいというのは髙井さんからのご提案だったんですか?
髙井氏:アクションにしたいとは言ったような気がします。
前廣氏:なんとなく当然のような、総意だったようなイメージですよね。
髙井氏:そうそう。それで、別にプロデューサーからも「そうじゃないでしょ?」みたいなことも全然なかった記憶があるし、強烈な反対みたいなのがあった記憶もないですね。むしろコマンド式は、ワールドワイドで考えた時には逆にハードルがすごい高いなと思うんですよね。
――コマンド式にすることへのハードルの高さというのはどういう部分でしょうか?
髙井氏:すべてのプレーヤーには伝わらないのかなと思います。「たたかう」をどうして選択しなければいけないのだろう、とか、いちいち何かをする時に画面が止まる理由は何なのかとかを、矛盾なく今のゲームの仕組みに落としていくことの方が、難しいんじゃないでしょうか。
――吉田さんも前回のインタビューで、日本や海外の若いゲーマーたちと話をすると、「コマンドの意味がわからない」と言われることが多くなってきている、とおっしゃっていましたね。前廣さんは何か「FF」だから、というチャレンジはありましたか?
前廣氏:「FF」の世界と「FF」の物語を逃げずに正面から使っていこう、というのはある意味でチャレンジだったかなと思っています。
――「逃げずに」というのはどういう面でしょう?
前廣氏:これまで「FF」シリーズの中では色々な要素が出てきました。召喚獣しかり、魔法しかり、そうした要素をそれぞれちゃんと組み込んだ上で、ひとつの世界と物語をきちんと作る、ということですね。
――真正面から「FF」の世界観と向き合うという。
前廣氏:避けようと思ったらいくらでも避けられるんですよね。要は作りやすい物語を作ればいいわけですから。でも避けずに正面から向き合うのは、ひとつのチャレンジだったと思います。
――あえて難題に取り組んだんですね。
吉田氏:皆さんが思っているほど、「FF」の開発は自由ではないと感じます。シリーズのすべてを自分たちで作ってきて、その16作目だったらなんとでもなると思いますが、常にバトンをリレーのようにつないできたものが「FF」です。ファンの皆さんの期待、メディアの皆さんが注目する部分、自分たちそれぞれが「FF」とはこうだよね、と思っているものは意外なほどバラバラです。そのご期待に応えつつ、自分たちの目指すものを作る、というのはかなり難しいと思うのです。
――なるほど。
吉田氏:取捨選択もしなくてはいけないので、全て覚悟を決めないと作れないところはありますね。しかも油断するとすぐ「FF」ではなくなります。内部からですら「これは本当に『FF』なのか」というような意見が出てくるので、その構築は想像以上に大変で、常に意識しないとなりません。
――「『FF』ではなくなる」とはどのような感じなのでしょうか。ある種「FF」は、いつもチャレンジしてきた作品だと思うんです。
吉田氏:これはもう、ひとそれぞれにある、としかお答えできません。「コマンドがない『FF』」なんて……」という方もいらっしゃれば、「このグラフィックスのテイストでは『FF』じゃない」という方もいらっしゃる。「飛空艇が飛んでいて青空が出ていないと『FF』じゃない」という感想も多いかもしれません。想像以上に“こうじゃないと『FF』じゃない”が多いかもしれないですね。
――確かにそう言われてみればそんなシーンはどこかにあるかも、という感じですね。
吉田氏:もちろん、「思い切って作って欲しい!」と言ってくださる方も多いですが、今はそれぞれの感想をSNSで発信できる時代でもあり、シリーズを通じて我々が作ってきたシリーズファンの皆さんの「想い」は無下にしたくないのです。ですので、そのご期待に対して1個ずつ、今回はこれをやる、その代わりにこれはできない、やらなくていいというものを決めています。そもそもシリーズである以上100%、ゼロベースから自由に制作していいよとはならないわけです。
でもご期待いただけるからこそ、開発にたくさんのお金がかけられる。たくさんのスタッフで作れる。ものすごいPRができる。その分多くの人に買っていただく必要があるという条件はもちろんありますが、それも開発者にとってはメリットですよね。あとはその中で自分たちが思う「FF」をできるだけ1個のイメージに変えてみんなで作るということかな、と思います。
――そのイメージを1個にまとめるにあたって、特に大変だった部分はありますか?
髙井氏:初期のコンセプトという意味では、召喚獣が世界の中央にあって、召喚獣と召喚獣が派手に戦うカタルシスと、それをプレーヤーが操作して楽しめるように作るという柱がありました。
そこから、オープンワールドは早々にやるのはやめましょう、となって、だからこそストーリーできっちり引っ張っていかなければならないと決まりました。ストーリーできっちり引っ張るのは「FF」に求められているものだとも思っていたので、ここにもしっかり注力しようと。
その上で、今回は手触りのきっちりしたアクションRPGとしてバトルもプレイの中心に据えたいと考えました。召喚獣、ストーリー、バトルの大きな3つの軸があって、これを愚直にちゃんと作っていきましょう、という感じでした。なので、イメージをまとめることに関しての苦労はなかったですね。
――しっかりとしたコンセプトの賜物ですね。
髙井氏:そうですね。ただ、それを実現するにあたって、現状のテクニカルな面でのハードルなどを1個1個潰していくのは大変でした。
――髙井さんは元々グラフィックス分野のご出身ですけれども、本作で特にこだわったグラフィックスの部分などについてお伺いできればと思います。
髙井氏:全体としては物理ベースでリアリティのある世界を構築していて、キャラクターモデルも背景もですが、かなり細かいところまで作り込まれています。かなり近くまで寄っても、「ここまで作ってるんだ」と言ってもらえるものになっていると思うので、グラフィックス面で言うと、そういうところは注目してもらえればなとは思います。
――バトルのエフェクトはいかがですか?
髙井氏:バトルのエフェクトは大型タイトルをいくつも担当してきたスタッフが担当していますが、彼らのけれん味のあるエフェクトでまとまっているので、ご期待ください。周囲を見渡しても、エフェクトをここまで頑張っている会社はあまり多くないと思っているので、自信を持ってお見せしたいですね。
“世界の理”が存在するヴァリスゼアとは?
――人が神に挑んだ罰を受けている世界がヴァリスゼアということですけれども、神と召喚獣は全く別のもの考えて良いのでしょうか?
前廣氏:これは、すごくストーリーの根幹に関わるお話なので、ちょっとお答えしにくいですね……(笑)。
吉田氏:でも鋭い着眼点だと思うので、ぜひ覚えておいてください。世界が今なぜこうなっているのか、召喚獣が1属性1体で定期的に現われる部分、そもそもこのヴァリスゼアの世界の今のルールは誰が作ったのか、はかなり大きなポイントです。最後まで詳しくは言えないですが、話の根幹に関わるところとして注目していただけると嬉しいです。
――“世界の理”に触れてしまいましたか……。
吉田氏:“世界の理”は最初から前廣もこだわっていて、この理の上に則ってヴァリスゼアは構築されて動いていますが、そこはきっと最後までプレイしていただくと、どういう理の上でヴァリスゼアが動いていたのか、構築されていたのかはわかってもらえるようになるかなと思います。
なので、単純に神と召喚獣についても単なる設定というわけではないです。そこはしっかりとした成り立ちを前廣が考えてくれた世界になっているので、ひとつのポイントだと思います。
――現在の情報だけでも8体の召喚獣が登場しておりますけれども、国家は5つですよね。ドミナントは各国に1人いるように見えるんですけれど、数が合わないのですが……これも“世界の理”に触れてしまうのでしょうか?
前廣氏:各国に1人というルールはないです。
吉田氏:それは“世界の理”ではないですね。
前廣氏:さっきからいい大人たちが真剣な顔で「世界の理」って連発してて、すごい空間になってませんか(笑)。横で聞いていたら「世界の理」がツボっちゃいました。
吉田氏:それは貴方がそう書いたんでしょうが(笑)。まぁそれはともかく、国は人が集まって勝手に作ったものなので、それは世界のルールではないわけです。国が5つしか存在してはならないわけでもないですし、それは生物として人が勝手に今5つに別れているだけで、かつては7つとか8つとかあったかもしれないし、逆にもっと少ない時代もあったかもしれません。
――ああ、なるほど、そうですね。
吉田氏:ドミナントが生まれるにはルールが存在しますが、ドミナントがどの国に移動しているかは本人の意思もあったり、強制的に捕まえられてきてしまう場合もあるわけで、そうなると別に国にひとりのドミナントというのはルールではない、という考え方ですね。
前廣氏:ドミナントというのはすごい力を持っているので、国にとってみれば宝みたいな……どうとでも使えるものになるんですよ。抑止力にもなれば影響力にもなるし、大事な存在なので国としては当然いればいるほど国が大きくなる。8と5という数字は、ルールとの関係性がないわけです。
――ひとつの国で何体もドミナントを囲い込んでるような国もあるかもしれない、ということなんですね。
前廣氏:理の上で、人間は小賢しいことやっているだけですよ。
――では、ヴァリスゼアにおけるマザークリスタルの役割を教えてください。ドミナントとマザークリスタルとの関係性も知りたいところです。
前廣氏:「FF」ではお馴染みのエーテルというエネルギーが満ちていて、それをマザークリスタルが放出してるようなイメージで、いわば発電所ですね。で、マザークリスタルから切り出した小さなクリスタルを使って魔法を使います。発電所と端末があるようなイメージで、電力で想像してもらえればわかるように、人々の生活が魔法で豊かになります。だからマザークリスタル周辺に国が作られる、という感じですね。
この世界に生きる人はみんな、魔法ありきで生活しているんですよ。火を起こすにしても魔法で済んでしまいますし、だから普通に火を起こす方法なんて知りません。何故かというと産まれた時から魔法があるからです。……という世界の中で、ドミナントがどう関係していくかというのは、お話の理に絡んでしまうので今は言えません(笑)。
――なるほど(笑)。マザークリスタルそのものはすごく大きなものなんですよね?
吉田氏:先日公開したトレーラーの、例えばザンブレクあたりがわかりやすいと思うのですが、城の後ろに斜めにドカンとあるのがマザークリスタルです。
――つまりは、マザークリスタルを奪い合うというのは物理的ではなく、領土を奪い合うイメージなんですね。
吉田氏:そうです。油田のような動かせないものなので、場所そのものを制圧することで奪うことができます。
召喚獣大戦の格ゲー的UIは「1対1がゆえ」
――クライヴという主人公を作り上げるにあたって注意した点、気を配った点などについてお話を聞かせてください。
髙井氏:キャラクターを作る上ではそこまで苦労はしなかったですね。ただビジュアルについては相当話し合いました。「FF」の主人公としてもそうですし、プレーヤーのアバターでもありますし、プレーヤーの方に嫌われないというか……操作したいと思えるビジュアルにするべく、すごく詰めましたね。髪型ひとつでもそうですし、髭の生え方もですし。ただキャラクターを作る点においては、世界を作ってストーリーの枠を作っていったところから自然に出来上がってきた感じです。
――トレーラーを見る限りだいぶドミナントを中心にストーリーが進むようですが、その中で主人公のクライヴの立ち位置を改めて教えてください。
髙井氏:ゲームの序盤はクライヴ自身が世界と深く関わるかというとそんなことはなくて、クライヴはある目的のために生きていて、その目的を果たすためのストーリーが展開していきます。ただ、ゲームの中盤に差し掛かるくらいの頃からドミナントと絡み合い、大きな世界のうねりの中に巻き込まれていく、という展開です。
――「召喚獣大戦」という今回のキーワードですが、召喚獣大戦というキーワード自体がクライマックス感のあるキーワードだと感じます。召喚獣大戦は実際ゲーム中に頻繁に発生していくものなのか、それとも本当に物語の最後の方になって一気に召喚獣同士がぶつかり合うのか、どちらに近いのでしょう?
吉田氏:RPGをやっていて、大概はエリアごとにまとめにふさわしいボスがいますよね。基本的には、そのタイミングで召喚獣の激突があると思ってもらえれば大丈夫です。
――ただ、クライヴはドミナントではありませんよね? 召喚獣と召喚獣が戦うというのにあたって、クライヴ自身が召喚獣になるわけではないですよね。
全員:……(顔を見合わせる)。
――おっと、踏み込みすぎですか……?
吉田氏:もう少しPRが進めば出てくるとは思いますが、今はどちらかというと、どんなシチュエーションでこうなるんだろうとか、こういうことができるかもね、ああいうことができるかもね、というのを色々楽しみに映像を見ていただければいいかなと思います(笑)。
いずれにせよ、感情移入できないキャラクターを操作しても意味がないと思っているので、そこはしっかり皆さんが興奮した状態で、コントローラーを握る手に力が入るようにはなっています。なので、そこはむしろ楽しみにしておいてほしいです。こうなるのか! みたいなところは結構見所かなとは思っているので。
――本作には、メインストーリーに絡むようなパーティーキャラクターというのは存在するのでしょうか?
吉田氏:はい、もちろんです。今回はアクション性が強く、これまでのトレーラーでは、主人公であるクライヴのアクションシーンをわかりやすく撮影したため、単独での行動に見えたと思います。ですが、クライヴの旅路の大部分には、パーティと呼ぶべき仲間が同行しています。
――パーティができたとしても、ノンプレイアブルのキャラクターなのかなと想像していました。
吉田氏:前述のように、クライヴには行動を共にする仲間が存在します。そのシチュエーションでクライヴと共に戦うキャラクターをパーティメンバーと呼んでおり、パーティメンバーはAIで動くので、プレーヤーはクライヴの操作に集中すればいいという感じですね。パーティメンバーはクライヴと一緒についてきて、会話もしながらオートで全部戦います。
前廣氏:最序盤ではクライヴではないキャラクターを操作したりもします。
――「FFXII」のレックスの時みたいなイメージですか。
前廣氏:そうですね、そういう認識で良いかと思います。
――ドミナントは一度召喚獣になったら人間の姿には戻れないものなんですか?
前廣氏:自分の力なので、自分の意思で召喚獣の姿になることもできれば、自分の意思で戻ることもできます。
――石化の病とは、マザークリスタルの影響などで起こっている現象なんでしょうか?
前廣氏:力を行使することによる代償です。力を使うことによって、身体がダメージを受けています。自分で望みの通り、召喚獣になったり戻ったりできますが、召喚獣になることで蝕まれていくので、その駆け引きですね。バランスを考えて使わないと死んでしまうんです。
――ドミナントはそのことは当然知っているものなんですか?
前廣氏:石化が起こるっていう部分については世界の常識ですね。
――トレーラーにある、対フーゴのシーンは格闘ゲームのようなUIにも見えるのですが、なぜこのような画面になったのでしょうか。
吉田氏:HPゲージがそう見えるということだと思うのですが……これは1対1がゆえなんです。この場面は自分と相手しかいませんが、アクションゲームですので、当然繰り出す技や連携によって与えるダメージ数が伸びます。シチュエーションも目まぐるしく変わるため、そこで単純な数字の表示だけだと、戦っている手応えや、「どの程度まで上手くやれているのか、あとどのくらい戦闘が続くのか」などを感じ難いのです。
アクションゲームだからこそ、相手のゲージを削り切ったらダウンするだろう、次のフェーズへ行くだろうと、そういうことを考えてもらうようにする、かつ出来るだけHUDの表示は減らす……とあのような画面になりました。
――シンプルに1対1を突き詰めていった結果のUIなんですね。
吉田氏:そうですね、できるだけシンプルに分かりやすい表示にしたというだけです。頭の上やサイドなど、どこにゲージを出すかを模索しましたが、どこに出してもわかりにくかった上に、特に巨大ボス戦になれば頭の上ってどこ? となってしまうので、画面の一番上でいいよねと結論が出ました。
――トレーラーのオーディン戦では「FFXIV」の討滅戦みたいな雰囲気がありましたが……。
吉田氏:うーん、「FFXIV」は一旦置いておいてください……(苦笑)。あれはどちらかというと、横スクロールアクション時代の「ゴッド・オブ・ウォー」などの偉大な先人たちのイメージで作られています。また、トレーラーは本当にワンシーンを切り取っているだけなので、あのようなバトルがずっと続くというわけではありません。
――わかりました。それでは最後に楽しみにしているファンの皆さんへの意気込みなどをお伺いできればと思います。
前廣氏:長々と開発してきましたけれども、もう間もなく完成して皆さんにお届けできると思います。しっかりと「ファイナルファンタジー」しているタイトルになったと思いますし、それを抜きにしても1本のゲームとして面白いものになっているので、是非楽しみにしていただければ。
髙井氏:世界観とストーリー、プレーヤーが操作するアクション部分が、本当にうまくまとまったと手応えを感じています。開発はオープニングからエンディングまで行けるところまで進んでいて、今は調整とバグ取りに集中しています。ひとりのプレーヤーとして面白いゲームだなと思って遊べていますので、もう少しだけ楽しみにお待ちいただければと思います。
吉田氏:今2人からもありましたが、開発はだいぶ練り上がっていて、通しプレイを何周もやれるような状態です。良いゲームだと言える自信が出てきたとは思いますが、その良さをどう皆さんに伝えて興味を持ってもらえるかがここからの僕の本格的な仕事です。今回のトレーラーを皮切りに、年内にもう1回情報を出しつつ、発売のより詳細な時期などをお伝えしたいと思います。そして来年からはヒートアップしてPRをしていきたいなと考えていますので、ぜひ細かい情報を色々ピックアップしながらワクワクしていただけると大変嬉しいです。
――ありがとうございました。
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