インタビュー

2人の10代の視点で描くADV「ROAD 96:MILE 0」開発者インタビュー

若者たちが逃げ出す「ペトリア」はどんな国なのか……

【ROAD 96:MILE 0】

4月4日 発売予定

価格:
1,619円(PC)
未定(PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Switch)

 PLAIONは、4月4日にプレイステーション5/プレイステーション4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC用アドベンチャー「ROAD 96:MILE 0」を発売する。

 「ROAD 96:MILE 0」は2022年6月に発売されたアドベンチャーゲーム「ROAD 96」の前日譚を描く物語となっており、主人公は「ROAD 96」で登場したゾーイと本作から登場するカイトの2人になっている。本作と「ROAD 96」の舞台は同じ国「ペトリア」で、この国では腐敗した政治から逃れたり、外側から変えるために若者たちが国外への脱走が頻発している。「ROAD 96」では国外に脱出を試みる若者たちが主人公となっている。

【Road 96: Mile 0 - Announcement Trailer】

 今回の主人公の1人であるゾーイは「ROAD 96」で若者たちが出会う家出少女だ。本作では富裕層の彼女がどうして家出をするに至ったのかが描かれる。また、もう1人の主人公となるカイトは貧困層出身で、両親が職を求めて引っ越した先でゾーイと出会うことになる。この2人の10代の若者の視点からこの国がどういった国なのか、どうして若者が国外に脱走しようとするのかが描かれるため、本編となる「ROAD 96」の世界をより深く知るためにも本作は重要な物語と言える。

本作の主人公ゾーイとカイト

 ゲームシステムは「ROAD 96」同様、会話や行動の選択で進む物語となっており、選ぶ選択肢によってエンディングが異なるマルチエンディングとなっている。

 さらに本作では「ROAD 96」のゲームシステムに追加して、主人公2人の内なる世界を描く際には音楽に合わせたリズムゲームが新たに採用された。その為「ROAD 96」とは少しプレイ感覚が異なるものとなっている。本作では特に音楽が大事な要素となっており、アメリカのシンセサイザーバンド「The Midnight」による楽曲も登場する。

 今回発売に先駆けて、本作のクリエイティブディレクターであるYoan Fanise氏に本作についてオンラインでインタビューすることができた。

本作のクリエイティブディレクター Yoan Fanise氏

――「ROAD 96」の続きを描くのではなく、物語の前日譚として制作されたのには何か理由があるのでしょうか?

Fanise氏:1つは、「ROAD 96」のファンやプレーヤーが作中の世界をもっと知りたいと思ったからです。前作をプレイした人は、家出をした子どもたちがどこから来て、どんな家庭で、どんな生活をしているのか、もっと知りたがっていると感じたのでそこにお答えする形です。

 もうひとつは、「Road 96」はプレーヤーの選択によってさまざまなエンディングを迎えるため、続編を作るとそのエンディングにそぐわなくなる場合があります。「ROAD 96」にはたくさんのエンディングがあり、プレーヤーの選択によっては主人公が死んでしまうこともあります。その中で「この人は死んでいませんでした」という続編を作ると、プレーヤーの選択に敬意がなくなってしまいます。なので、前日譚という形にしました。

――前作「ROAD 96」では、ランダムで多様なロードムービーのような体験ができました。本作ではランダム性というのはあまりないのでしょうか

Fanise氏:「ROAD 96:MILE 0」はストーリー性が強く、物語も「ROAD 96」よりもプレイ時間は短いです。しかし、とてもしっかりとしたストーリーとなっていて、登場するゾーイとカイトに着目した物語が描かれることになります。ただ、選択肢はたくさんあるので、エンディングもたくさん用意しています。

――前作「ROAD 96」では、世界観やストーリーのコンセプトに当時のアメリカで壁を越えて国外に出るという情勢を描かれていました。本作でもそういった現在のアメリカの情勢は反映されているのでしょうか。

Fanise氏:「ROAD 96:MILE 0」は若者の成長にフォーカスを当てているので、現実世界の政治情勢はあまり反映していません。「ROAD 96:MILE 0」で中心となるのは若者たちがどうしてこの国を去ろうと思ったのかという物語です。ただし住んでいる場所がマンションなので、どうしても世界との繋がりは切っても切れないものにはなっています。

 また、舞台が「ホワイト・サンズ」というペトリアの国の中でも富裕層が住んでいる場所になります。加えて、その場所以外の貧困層が住んでいる場所との格差などは作中で描いています。そのため、「この国はとても貧しく、自分のいるところは普通ではない」という葛藤が起こるのです。2019年に公開された韓国の映画「パラサイト 半地下の家族」のように序盤はおもしろいですが、プレイしていくにつれてどんどんシリアスになっていきます。

――本作は前作の前日譚と伺いました。これからシリーズをプレイする場合、どういう順番でプレイすればいいのでしょうか?

Fanise氏:そうですね。「ROAD 96」をプレイしていない方は最初に「ROAD 96:MILE 0」をプレイすることをおすすめします。今作は「ROAD 96」の世界観やキャラクターを理解するのにとても良い作品です。本作の終わりが「ROAD 96」に繋がっていきます。

――「ROAD 96」で主人公たちが出会う7人のキャラクターのうち、なぜゾーイをピックアップしようと思ったのか、その理由を聞かせていただきたいです。

Fanise氏:ゾーイは彼女の父親が特別なんです。彼女は他の若者とは違い特殊な人生を歩んできた子です。その彼女がなぜ旅に出るのか、その理由を説明したかった。なぜゾーイが旅に出たのか、彼女がどのような秘密を発見したのか、そして、その秘密がどこにあるのかを理解することが重要だと感じています。彼女は「ROAD 96」の物語の核心にいる存在なんです。

 そして、「Road 96」で演じているような、普通の若者のようなキャラクターを新たに加えたいと思いました。それがもう1人の主人公となるカイトです。

 ゾーイは、なんと言っていいかわからないけど複雑なキャラクターで、ちょっと裕福な家庭で育ったという点で「ROAD 96」に登場したほかの主人公たちとも、他の6人のキャラクターたちとも違います。なぜゾーイが「ROAD 96」にいるのかを少し説明したかったんです。

――日本のメディアやファン、プレーヤーに伝えたいことはありますか

Fanise氏:日本のプレーヤーは、リズムゲームなどの音楽ゲームがとても好きだと感じています。このような音楽ゲームが好きな日本のプレーヤーにとって、「ROAD 96:MILE 0」のミュージカルパート(リズムゲームパート)は、日本で受け入れられると思います。2つのジャンルのゲームが混ざり合っていて、とてもクールな作品になっています。

 また、カイトは両親が日本人であり、日本人の血を引いています。日本のプレーヤーに捧げる作品だと思います。特に今回は音楽的な要素も新たに加わっているので、日本のプレーヤーの皆さんには音楽的な部分にも注目していただければと思います。