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「FFXVI」スキルツリーの存在や、「FFXIV」坂口氏衣装デザイン企画などが飛び出したTGS「坂口博信 X 吉田直樹特別対談」

10月2日 開催

 東京ゲームショウ2021、オンライン配信の10月2日土曜最初の番組として、「FF」を背負う2人の巨匠が語り合うトーク番組「RPGの魅力と可能性 ~坂口博信 X 吉田直樹/TGS2021 ONLINE 特別対談~」が開催された。ミストウォーカー代表坂口博信氏は、「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親であり、Apple Arcadeに前後編でローンチした最新作「FANTASIAN(ファンタジアン)」も好評だ。

 対して吉田氏は11月23日に最新拡張パッケージ「暁月のフィナーレ」の発売を控える、「FFXIV」のプロデューサー兼ディレクターであり、現在開発中の「FFXVI」のプロデューサーも務めている。対談はオンラインで開催され、吉田氏は会社から、坂口氏はロサンゼルスからの参加となった。

「FF」のレジェンドと久しぶりの邂逅

 2人が実際に邂逅したのは、ちょうど「新生FFXIV」のローンチ時、食事の席を共にした。「ドラクエ」畑から移ってきた吉田氏からの「FFってどうすればいいんですか」という問いに、坂口氏は「それはあなたのゲームなんだから好きにすればいい」と答えた。

 なぜ、「新生FFXIV」を作り直すタイミングではないのかについて、スクウェア・エニックスへの入社時にも坂口氏のお世話になったという吉田氏は、「やれるだけやってから、そのご報告も含めて、ぜひ一度」お会いしたいという話になった。対する坂口氏は、指輪やアクセサリーをジャラジャラつけた(注:吉田氏のアクセサリーは公式PRでいじられるほどにトレードマーク化している)吉田氏の、ゲーム開発者にはややオラ付いても見える外見に、「最初は怖かった。でも話をしてみたらすごく真面目な人なんだなと」と第一印象とのギャップを語った。吉田氏は「FF」のレジェンドに会うのにガチガチに緊張していたが、「“優しい”が第一印象だった」とその印象を語った。

吉田直樹氏と坂口博信氏、左はモデレーターの林克彦氏

「ファンタジアン」ジオラマで作られたマップの魅力

 吉田氏からの最初の質問は、「なぜジオラマで作ろうと思われたのか?」というもの。「ファンタジアン」は前後編に分かれているが、全編のマップはジオラマを撮影したものが使われている。その斬新な手法には、吉田氏ならずとも「なぜ」という疑問がわいて当然だ。「作り手からしたら、めちゃくちゃ大変だと思う」という吉田氏に、「ほんとですよね」と坂口氏。

Apple Arcade限定コンテンツとして公開されている「ファンタジアン」

 「ジオラマは、作るのが大変ということもあるんですが、放っておくと色落ちしたり、粘土が溶けたりして劣化しちゃう。だから写真を撮り直すと別の風景になってる。アナログですよね」と苦労を語りつつも「昔からジオラマが好きだったので、ここまで高解像度になったらその写真が使えるのかな」という技術的な理由と、「テーマ的に、混沌と秩序みたいな話しだったので、アナログとデジタルでちょうどいいかな」という世界観的な理由を語った。ジオラマというアナログには、理路整然と作られるCGにはないカオスがあり、それが作品に合っていたからというのだから、坂口氏の中では必然的な帰結といえるだろう。

 最初にCGでモックアップを作ったのか、という吉田氏の質問に対しては、CGは作らず数枚のコンセプトアートとマップを使ってシナリオに合わせて作ったと坂口氏。だが、専門の業者といえども、どうしても違う部分が出てきてしまうため、そこはシナリオの方を変えることで対応したのだそうだ。例えば、歩ける距離がほとんどないのに、語るべきシナリオが多すぎて尺が合わない時には、語る場所を別のシーンに変更する、など。

 CGではレンダリング時にポストエフェクトという後処理をすることで、CGに様々なニュアンスを追加することができるが、ジオラマの場合は、例えば光がある場所にはあらかじめLEDの光が組み込まれており、それをポストエフェクト処理して使用している。写真にも、光源を追加するポストエフェクトはあるが、「ジオラマ作家さんが勝手に電源を入れて持ってくるんですよ。後からやるよと言ってるのに」と、ジオラマ作家魂が生み出したこだわりだ。

フィールドはジオラマ作家が作ったジオラマを撮影して使用している

 ゲームシステムに関しても吉田氏から「ファンタジアン」独自の「ディメンジョンバトル」について質問が出た。「ファンタジアン」は、基本的にはエンカウントバトルだが、敵とエンカウントした際に敵を異次元に飛ばしておいて、後から戦うことができる。すぐにプレイを中断できる、時間のかかる部分は後からじっくり遊ぶといった、スマートフォンユーザーのプレイスタイルにあったシステムだ。このシステムについて「クラシックなRPGをイメージしているとは思うが、最初からあの作りになっているのか」と吉田氏。坂口氏は「引退作のつもりで作ったので、自分が好きなように作っただけ」とあっさり回答。

 ジオラマのマップを散策している最中にエンカウントしてくる敵が鬱陶しくて、バトルは後回しにしてじっくり歩きたかった、というきわめて個人的な理由で生まれたシステムだったが、実際に遊んでみると「ディメンションバトルで貯めた敵と戦うことがまた気持ちいい」(吉田氏)という効果が出た。

ジオラマ作家のこだわりにより、輝く部分にはLEDライトが埋め込まれていたりと、リアルでしかできない表現が魅力

 最初から決めて始めたというよりも、実際にプレイしてみて感じたことを盛り込んでいくという坂口氏の開発姿勢は、最初から全体を決めて進めていく吉田氏とは真逆。そんな自身の開発スタイルに対しては、坂口氏自身も「僕の作り方のよくないところなんですよ、結構スクラップ&ビルドで」と苦笑していた。「ファンタジアン」のバトルシステム「エイミング」は、白い軌跡でつながれた敵を一気に攻撃にするというもので、ディメンジョンバトルで異次元に送った敵を一網打尽にすることができる。

 だが、このシステムは最初からあったわけではなく、当初は物理演算で攻撃していた。だが面白くなかったので、どんどん変化していった。「プログラマーは大変だと思います」と坂口氏。エイミングと相性の悪いATB(アクティブタイムバトル)を廃し、アクション性をそぎ落とした結果、戦略性の高い戦闘が楽しめるゲームへと昇華していった。そんなゲーム性に対して吉田氏は「クラシックといいつつ、今風。面白さと遊びやすさを兼ね備えている」と絶賛した。

坂口氏も「FFXIV」を絶賛プレイ中

 ここから話は「FFXIV」のことになる。坂口氏はこの対談に合わせて「FFXIV」をプレイし始めた。これまでプレイしていなかった理由としては、MMORPGが好きすぎて「出てこれなくなるから」なのだそうだ。現在はマイチョコボを手に入れたところで「もう出られる気がしません(笑)」と楽しんでいる様子を語った。松野泰巳氏(「オウガバトル」シリーズなどで知られるゲームクリエイター)にアドバイスを仰ぎながらプレイしている様子は、ツイッターにも刻々と挙げられている。

 そこに寄せられるコメントの中に含まれる「ヒカセン」は「光の戦士」の略称なのだが、坂口氏はこれを知らず最初は「ヒカキンの仲間かなにかかな?」と思っていたのだそう。坂口氏は松野氏とZoomで画面を共有して、UIの配置などのレクチャーをスパルタ式に受け、「今ではなかなか操作がスムーズになってきました」と成果を語った。

坂口氏はララフェルでプレイ。ベヒーモス装備のマイチョコボを披露

 ちなみに、テレポ代にも事欠いていた坂口氏がおねだりすると、ポンと100万ギルくれたそうだ。おかげで、今は「金ならあるんだよ」状態でテレポしまくりの豪遊プレイが可能になっている。吉田氏は現在「暁月フィナーレ」のマスターアップに向けて、最も忙しい時期なので身動き取れずにいるが、落ち着いたら「ぜひ一緒にプレイさせてください」と懇願し、坂口氏も「ぜひ」と快諾していた。

松野泰巳氏がゲームのアドバイザー。スパルタで進んでいるという

 なぜララフェルをプレーヤーキャラクターに選んだのかというコミュニティーからの疑問については「僕は『エバークエスト』の時にも一番小さい種族だったんです。それが好きなんです」と坂口氏。ただ、小さいゆえに戦闘中に自分を見失ったりしてしまうこともあるのだとか。吉田氏もララフェル使いだが、吉田氏の場合は対人戦でターゲットされにくい種族というきわめて実利的な理由なので、同じ小さい種族を使うにしても個性が出ている。

 坂口氏がツイッターで情報を公開していることもあり、プレイ中には坂口氏と遊びたい一般のプレーヤーが多く集まってくる。チョコボをとった時には、それぞれが自分のマイチョコボを出して並んで出迎えるなど、MMORPGならではの歓迎も受けた。「いいですよね。そこに世界がありますよね」とMMORPG好きらしいコメントを添えつつ、「『エバークエスト』の時代にはなんでもありなところもあったけれど、FFXIVは(コミュニティが)優しい気持ちと、ある程度ソロプレイみたいな感覚でMMORPGの世界に入っていけるので、これは考えたなと思いました。遊びやすくなっているけど、掘れば掘るほどどんどん出てきて、底の深さはすごいなと思いました」と感想を語った。ウルダハスタートの坂口氏が、今冒険者ギルドにいるモモディは「もう心の友だから」と言うと「増えていきますよ、心の友が」と吉田氏。

 坂口氏にとっては、周りにプレーヤーがいるMMORPGでNPCの心の友ができるのは初体験で「そこがすごく面白いと思った」という。吉田氏が「そこはスタンドアロンのFFをすごく意識していて、いつものFFのつもりでストーリーを追ってくださいというのをコンセプトにしています」と説明すると「FF感ありますよね」と坂口氏。「FFXIV」がコンセプトにしている「FFのテーマパーク」という部分を坂口氏も「まさしくそんな感じだ」と堪能しているようだった。

 吉田氏は「FFI」の橋を渡った後タイトルが出るシーンがとても好きで(このシーンは、FFXIV内でも宿屋のミニゲームとして登場している)、「FFXIV」でもタイトルを出す画面は、どこで物語がスタートするのかを表すことになるため、毎回かなりこだわっているのだそうだ。坂口氏にとっては冒頭にかかる「プレリュード」のアルペジオがやはり「FF」だ。聞いた瞬間「いいね」とゲーム内に入っていくことができたのだという。

「FFXVI」にはキャラクタービルドのスキルツリーがある

 次に、まだファーストトレーラーのみしか出ていない「FFXVI」について。モデレーターが坂口氏にファーストインプレッションを聞くと、吉田氏は「恥ずかしい!」と画面から顔を隠してしまった。

 坂口氏は「すごく本格的なファンタジーにもっていくのかなという気持ちもあり、ということはシナリオはハードで、人間みたいなものに突っ込んでいくのかなという期待感がありつつ、そこに行くのは大変そうだな」と開発者の目線から率直な印象を語った。さらにシナリオはもう完成済みと知っているのに「ヨコオさんがシナリオ書かせてくれと言ってたじゃないですか。僕も書きたい」と要望。「ちっちゃいクエストだけ書かせてよ」と詰め寄った。

 「FFXIVの機会はございますよ。まだまだ続いていきますし」と吉田氏が誘うと、「松野が書いているでしょ、僕は松野と勝負するつもりはないんですよ」と意外な弱気を見せた。「何かとめんどくさいし、シナリオで彼に勝てる気がしないので。まあヨコオさんに勝てるという意味じゃないですが」と坂口氏。いちユーザーであるこちらの立場からは、ぜひ坂口氏の書いた「FF」を再び見てみたいという気持ちはあるが、それにしても豪華なメンツだなと改めて感じる。

かなり完成に近づいている印象をうけた「FFXVI」

 吉田氏によれば「FFXVI」は現在はサイドと呼ばれるいくつかのクエストを残すだけになっており、キャラクターモデルも完成し、あとはクオリティアップを残すくらいと完成間近であることをにおわせた。「FFXVI」は少人数でスタートし、シナリオを先に作り上げた。そこからシーンの分割をして、という形で進行したため、トータルでは長くなっているが、なるべく人を増やさない形で進行してきたのだそうだ。「プリプロダクションを長くとることで、結果的にはいいものになりますよね」と坂口氏。「今回アクションに振ったので、作ってみてダメだったから壊そうということを序盤には結構やっていました」と吉田氏。

 ずっとRPG開発にかかわり続けている2人。その2人に、なぜRPGを作るのかという問いが投げかけられた。「僕は空想がちな子どもだったんですよ」と坂口氏。なんでも妄想しちゃうというか。それをゲームに出会って形にできたじゃないですか。世界観やルール、乗り物なんかが具体的になるのが楽しくて。もう1つは、スタッフがこちらが思いもよらないことを追加してくる。彼らにとっても自分の作品だからだけど、僕からすると、僕のためにありがとうと勝手に思っちゃう(笑)。どうしてこのワールドにそんなアイデアをくれちゃうの、と。それが楽しくなっちゃうんです。スタッフが熱くなって、その熱が作品にこもる方が僕も好きです」。

 そんな坂口氏の弁を聞いて、吉田氏は「その空気は今でもスクウェア・エニックス社内に残っている」と言う。現在は「FFXVI」のディレクターを務めている高井浩は、吉田氏に「坂口さんが号令をかける時の熱がFFを作ってきた」とよく語っていたのだそうだ。坂口氏も「あれだけいうこと聞かなかったやつが言ってましたか」と驚きとともに笑顔で応じていた。

 吉田氏は「小学生の時にドラクエとFFをプレイしたことが大きい」という。話を書くのが好きなので、ちょっと荒れた学生時代だったけれど、家に帰ると「指輪物語」を読んでいるような微妙なキャラだった。ゲームの中でもこんなに物語が表現できるんだということが、ドラクエやFFをプレイしたときに焼き付いていた。そして松野氏の「伝説のオウガバトル」に衝撃を受けた。映画では、物語を見ることしかできないが、ゲームは自分の手で物語を作っていける。だからこそゲームを作っている。

 スキルツリーのように、システマティックなものが、物語や世界観と組み合わさっていて、自分の成長の瞬間を実感できる。まだゲーム実況などない時代に、自分でそれを作り上げていくことができたことが、RPGが長く続いてきた理由ではないか、と坂口氏は分析。吉田氏にとってRPGの定義は「成長があるかどうか」に絞られてくる。「FFXVI」にもスキルツリーのようなものが存在しているそうで、「広がる瞬間がめっちゃ楽しみ」と坂口氏。スキルツリーについて詳細は明らかにならなかったが、「物語の主人公になりきるパターンと、FFXIVのように自分が主人公であるパターンがある。キャラクターになりきってプレイする場面でも、自分ならではの成長軸とかカスタムがあった方が幅が広がりますから」という吉田氏の説明からも、キャラクタービルドがシステムのポイントになっているような印象を受けた。

 「FFXIV」では、周りも全員光の戦士だが、シナリオによって「このワールドの中で、俺が一番ヒカセンかもしれないと自然に思えるところがうまいし、いいなと思いました」と坂口氏。だがそれは坂口氏のゲームから学んだことだと吉田氏。自分が遊んだ時に、自分が最強で主人公なんだと思えるように、「三国編が終わった時に飛空艇をみんなで見送ってくれるシーンはこだわって作りました」(吉田氏)。ところが坂口氏の実際のプレイでは、松野氏に「早くしてくださいよ」とせかされながらのプレイだったそうで、それを聞いた吉田氏は爆笑していた。

坂口氏が「FFXIV」の衣装デザインに参加?

 この先のRPGの広がりについて尋ねられた坂口氏は、ARでマウントやミニオンが出るようにして欲しい提案した。ARメガネをかけていれば、リアルワールドで他人が連れまわしているミニオンを見ることができて、現実世界が「FFXIV」と重なる。「それをすごく妄想しました。夢みちゃった」と力説する坂口氏に対して、「ARは結構研究してたりします」と吉田氏。そんな吉田氏はRPGを作るために必要なグラフィックスリソースのコストが上がりすぎていることが辛いと語る。

 手間もかかるし、スケールがリアルに近づくほどに嘘がつけなくなる。そうなると世界を救う大冒険が描けなくなる。しかし「たぶんFFファンが見たいものは「とある国のとある場所のお話ではないと思うんです」と吉田氏。世界の広がりをどう表現していくか、割り切るところは割り切ってコンセプトをまとめていかないと、発売するまでにあまりにも時間がかかりすぎるとか、完成しきらないところが出てくると思います。世界をまたにかける大冒険を、ビデオゲームで表現することが難しくなっていると感じます」。

 AIで自動生成する技術も進化してきているが「自動計算で作ったものはあまり面白くない」と吉田氏。坂口氏も「お手伝いにはなるけど、無理ですよね」と技術の限界を認める。単に広大なフィールドを作っても、そこに遊びがなくなっては意味がない。「ファンタジアン」をプレイして「ジオラマ1つ1つに物語を感じたのは、あれを作っている人のクリエイティブが載っているから冒険している感じや、住民が生きている感じがする」と吉田氏。それをツールで再現できるかどうかについては懐疑的だ。

 トークの最後に、坂口氏から「僕が今日言いたかったのは、『FFXVI』か『FFXIV』でもいいんですが、衣装デザインをしたい」と予想外の提案が飛び出した。「シナリオだと松野さんやヨコオさんとの勝負になってしまうので、ここは衣装デザインでいこうかなと」。吉田氏は「本編から少し進んだところでも大丈夫ですか?」と確認。「暁月のフィナーレ」のパッチで、坂口氏デザインの装備が実装されることがほぼ決定した瞬間に立ち会った気がした。

 吉田氏は「FFXIV」フリートライアルと、「暁月のフィナーレ」を宣伝。「僕はファンとして楽しみだな」という坂口氏は「ファンタジアン」が一段落し、お休みしつつしばらくは「FFXIV」の世界でプレイを続けるようだ。「これで引退かと思っていたけれど、またお話が沸いてきたので何か考えていこうかな」と新たな創作意欲ものぞかせていた。