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★PSPゲームレビュー★

簡単操作でダンジョンを育む
「勇者のくせになまいきだor2」

  • ジャンル:ダンジョンマネージメント
  • 発売元:SCEJ
  • 価格:3,980円(UMD版)、2,800円(ダウンロード版)
  • プラットフォーム:PSP
  • 発売日:発売中(10月16日)
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)



 まさか「勇者のくせになまいきだ。」の続編がプレイできる日が来るとは思ってもみなかった。そう、本作「勇者のくせになまいきだor2」は、昨年12月に発売され、一部ファンに熱烈な支持を受けた「勇者のくせになまいきだ。」の続編タイトルだ。

 プレーヤーはつるはしで穴を掘るだけの簡単な操作と、パロディ満載の少しひねくれた世界観、懐かしさを誘う2Dグラフィック、さらにその奥深いゲーム性などで好評を博した前作。筆者も知人に薦められて購入し、その手軽さと中毒性にやられて夢中になった1人だ。まさか続編がプレイできるとは思っていなかった。

 その“まさか”が起こっただけで筆者としてはもう満足なのだが、遊んでみるとこれが期待を裏切らない出来で、非常に面白い。本稿ではその面白さを、少しでも多くの人に伝えていきたいと思う。



■タイトルの「or2」ってなに?

 まずゲーム内容に入る前に、本作の世界観について少しお話ししたい。

 例えばタイトルについている「or2」と言う表記だが、これは恐らくネット上でよく使われる「orz」を少し変形させたもので、崩れ落ちる人をあらわすアスキーアート。要するに“or”の部分は飾りなので、発音は「ツー」でいいらしい。こんなタイトルがつけられていることからも伺えるとおり、本作は随所に悪ふざけやパロディが散りばめられている。

 「魔王」は本作のナビゲート役となるキャラクタだが、ストーリーモードの最初のステージで勇者が攻めてくると、

 『む!勇者があらわれたようです。それでは、かえりうちにいたしましょうか!』

 と発言し、「はい/いいえ」の選択ウィンドウが表示される。「はい/いいえ」どちらを選んでも特に進行上影響はないのだが、試しに「いいえ」を選ぶと

 『とりあえず、「いいえ」をえらぶせいかくのようですな。いや、破壊神としてはなかなか、ゆうぼうだと思います。』

 と答える。なんとも力の抜けた受け答えである。

 後述するシンプルな操作形態と短時間で完結するゲーム性もあいまって、この力の抜けた独自の世界観が気軽に遊べる雰囲気を演出している。

【気軽に楽しめる世界観】
どちらを選んでも、実際のゲーム進行には特に影響がない。真面目に答えてみるもよし、魔王をからかってみるのもよし。どちらにせよ勇者は攻めてくるので、諦めて戦いましょう


■どんなゲームなの?

 本作のジャンルはダンジョンマネージメントと言う独自のもの。プレーヤーは魔王軍の破壊神となってダンジョンを構築し、攻めこんで来る勇者を撃退するのが目的だ。

 ダンジョンを構築、と言うと若干難しい印象を受けるかも知れないが、プレーヤーが行なえるのは、つるはしで穴を掘るだけの簡単なもの。操作も基本は方向キーと□ボタンのみの非常にシンプルなものになっている。

 ゲームが開始したら、まずはまっさらなフィールドにつるはしで穴を掘っていく。しばらくすると勇者が攻め込んでくるので、魔王を掘った穴のどこかに設置する。魔王は魔王軍のシンボルとも言うべき存在で、勇者に発見されると簀巻きにして連れ去られてしまう。そのまま地上まで連れ去られてしまうとゲームオーバーだ。

【ゲーム概要はトレーニングで解説される】
ゲームの概要はトレーニングで懇切丁寧に解説してくれる。ちょくちょく訪れる勇者を撃退するのがプレーヤーの役割


■穴を掘って魔物を生み出す

堀パワーがなくなると、ほぼ何もできなくなってしまう。計画的な運用が重要だ
一部のステージを除き、魔分は原則地中に存在しない。ゲーム開始時にあるのは養分だけだ

 穴を掘るには「堀パワー」が必要で、堀パワーがなくなるとそれ以上ダンジョンを拡張できなくなる。また、堀パワーはステージごとに魔物を強化するためにも使用することができる。いわば破壊神のエネルギーとも言うべきパラメータだ。これを使って穴を掘ることで、ダンジョンを構築していく。

 誰もいないダンジョンでは勇者を撃退できないので、魔物を生み出す必要があるのだが、これには「養分」と言うシステムが組み込まれている。養分ははじめから地中に散らばっていて、この養分が含まれた土を掘ることで魔物が発生するのだ。



 養分と似たような要素として、「魔分」が存在する。ゲーム開始時、原則魔分は地中に存在しない。では、どうやって手に入れるのか?

 答えは勇者である。魔分はその名の通り魔法のエネルギーであり、勇者が魔法を使ったときに周囲に飛び散る。この魔分を吸収した土を掘ることで、魔分系の魔物を発生させることができる。

 少し話は逸れるが、これを読んでいる読者は強い魔物と言えば何を想像するだろうか? 人によっては「ウィザードリィ」のグレーターデーモンかもしれない。あるいは「FFV」のオメガ、もしくは「ドラゴンクエストIII」のバラモスかも知れない。しかし、筆者は強い魔物と言えばドラゴンを思い浮かべる。「ウルティマオンライン」でも最強のペットはドラゴン系の上位種、ホワイトウィルムだった。

 そのドラゴンだが、もちろん本作にも最上位の魔物として登場する。ドラゴンは強力な魔物だが、生み出すためには前述の魔分が大量に必要になる。

 ドラゴンを生み出すには魔分が必要で、魔分を手に入れるためには勇者が攻めてくる必要がある。つまりなまいきな勇者もダンジョンの生態系に組み込まれており、より強固なダンジョンを構築するためには必要な存在なのだ。

 養分・魔分の含まれた土を掘ると魔物が発生し、発生した魔物は独自のルーチンで勝手に行動するので、発生させてしまえばあとは魔物まかせ。最初のうちは適当に掘っていくだけでもそれなりに戦えるので、あまり深く考えず、ざくざくと掘っていくといいだろう。

【魔分を集めてドラゴンを生み出してみる】
勇者を倒した際にも魔分は回りに飛び散る。これを破壊すると、魔分を運ぶ魔物、エレメントが生まれるので、うまく誘導しつつ魔分を集める。
1ヶ所にまとめると、レベル3の土ができるので、これを壊すとドラゴンが発生する!! その後あっさりやられてしまいましたが…


■懐が深く、中毒性の高いゲーム性

 いくら適当に掘っても大丈夫とは言え、適当に掘って勝った、負けたを見るだけではゲームとして面白いとは言えないだろう。やはり何らかの形で知識を蓄積し、ダンジョン構築の効率を上げ、プレーヤー自身が成長を感じられなければ面白味はない。ではどこに面白味があるのか?

 そのひとつが、魔物の行動ルーチンである。

こんな感じの配置にしておくと、ドラゴンが確実に戦ってくれる

 一番基本となる知識は、コケの移動ルーチン。コケは壁にぶつかるまで原則直進しかしないので、ダンジョンの掘り方次第である程度誘導することが可能だ。魔物を生み出すには養分を狙った場所にまとめる必要があるので、養分の運搬を行なうコケの誘導は非常に重要になる。

 他にも。コケは体力が少なくなるとツボミになって周囲から養分を吸収し、集めた養分を元に新たなコケを複数体生み出す。ツボミは隣接していない少し遠くの土からも養分を吸収するので、これを狙ってつるはしで少しつついてやる、などといったテクニックも存在する。

 また、前述のドラゴンは強力な魔物だが、横にしか移動できない、と言う弱点がある。せっかく生み出しても、位置が悪いと華麗にスルーされてそのまま魔王を連れ去れてしまうこともしばしば。生み出すことも難しいが、生み出す位置にも気を使わなければならない、運用が難しい魔物だと言えるだろう。

【コケを誘導する】
コケは壁にぶつかるまで直進する。左の写真では上に戻る確率と右に行く確率は1/2だが、右の写真のように1マス掘ってやることで2/3の確率で右に行く。このように掘り方に工夫をすることで、コケを誘導する


■魔物同士の相互関係

ゲーム起動時に表示される、食物連鎖図。魔物は相互に捕食関係が存在する
最下位の魔物であるコケを大量に1カ所に集め、勇者を押し包む、通称「コケ地獄」と呼ばれる戦法。一部では邪道とも言われるほど、強力な戦法だ

 さらに魔物には魔物同士の相互関係が存在する。

 例えばコケはガジガジムシと言う、より上位の魔物の餌に設定されていて、体力の減ったガジガジムシがコケの近くに来ると、コケはガジガジムシに捕食される。同様にガジガジムシはより上位の魔物であるトカゲおとこの餌に設定されていて、トカゲおとこに捕食される。この時捕食された側の養分が捕食した側に移り、この養分を元に捕食した側は子を産み、繁殖する。

 体力は自然減少するので、餌がなくなった魔物はほっておくといずれ餓死してしまう。つまり、上位の魔物であるトカゲおとこは強い魔物だが、だからと言って増やしすぎると餌であるガジガジムシがいなくなってしまうし、ガジガジムシを増やしすぎるとコケがいなくなってしまう。勇者と戦うために都合がいいからと言って、上位の魔物ばかりを生み出していても結果的には生態系が崩壊し、いざ勇者が来た時には腹ペコでぼろぼろ、と言う状態になってしまうのだ。そのためプレーヤーは、魔物全体をバランスよく増やしていく必要がある。

 このように魔物にはそれぞれ行動パターンが存在し、それをひとつずつ学んでいくことで、より効率よくダンジョンを構築することができるようになっていく。

 何も上位の魔物を増やすばかりが良いダンジョンとは限らない。魔物の特性をよく把握し、有効に活用することで下位の魔物でも大きな効果を発揮することがある。筆者は少数精鋭の強力な魔物が好きなので、ついドラゴンを作りたくなるが、ドラゴンよりも下位の魔物を使って物量で攻める作戦の方が有効な場面もある。

 ひとつ覚えればまたひとつ選択肢が増え、試さずにはいられなくなる。これが本作の麻薬的な中毒性を生み出しているのだ。



■より深みの増した進化システム

ゲーム中で登場する、月刊魔物マガジンの図解
変異して生まれる魔物はひとつ上のランク。ステージをまたがずに強化できるのも重要な要素だ

 ここまでは前作も含めた本シリーズの紹介を行なってきたが、ここからは本作からとなる新要素を紹介したい。

 まず新たに加わった魔物の進化システムである、「突然変異」から。

 本作は魔物ごとに前作からあった「基本種」のほかに、「巨大種」「異常種」の2つの種族が加わった。例えばニジリゴケならば、基本種「ニジリゴケ」に加えて、巨大種の「ジャンボニジリ」と異常種の「マヒニジリ」が追加されている。

 巨大種は個体の生命維持に特化した種族で、互いに吸収・分裂を行なうため、繁殖しづらいが餓死しにくい。異常種は天敵からの攻撃に対しての抵抗に特化した種族で、捕食されにくい。

 突然変異はこれらの種族追加を前提とし、ある魔物が絶滅しそうになったとき、死因に適応するそのひとつ上のランクの種族に変異するシステムだ。

 例えばニジリゴケがガジガジムシに捕食されすぎて絶滅寸前になると、変異アナウンスが発生し、ニジリゴケが次に子を産んだ場合はひとつ上のランクである「アメリカニジリゴケ」クラスの異常種、「パララメリカ」が生まれる。

 慣れてくれば狙って変異させることも可能で、堀パワーを使わずにひとつ上のランクの魔物に強化することができるので、有効なテクニックになる。

 このシステムによって、「最初にコケを発生させて、その後ガジガジムシを少し出してコケを絶滅寸前に追い込み、コケを異常種に変異させ、その後にトカゲおとこを出して同様にガジガジムシを異常種に変異させよう」などの戦略が新たに可能になった。種族ごとのバランス管理がより重要になり、さらに深みを増していると感じられる。

【新しい種族、巨大種と異常種】
巨大種と異常種が新たに追加された種族。巨大種は餓死しづらく、異常種は天敵に捕食されにくい。勇者に対しては、どちらも基本種よりやや強くなっている印象だ


■好きなだけ生態系を見守れる「魔王のへや」

魔王のへや設定画面。好きな設定で開始できる

 これはもう、前作のプレーヤー誰もが欲しかった機能なのではないだろうか。

 「魔物を生み出して観察したり、試行錯誤してみたいが、ストーリーモードでは勇者が攻めてきてしまうのでゆっくり観察できない!」

 「もっと好きなだけ魔物を生み出してみたい!」

 「精魂込めて作り上げたダンジョンがどうなるか、もっと先まで見守りたい!」

 などの要望に応えるモードが、この「魔王のへや」だ。

 魔王のへやを開始すると、まず以下のパラメータを設定できる。

  • ふかさ
  • 養分
  • 魔分
  • 堀パワー

 さらにどの土からどの魔物が生まれるかも、魔方陣系を除き、生み出したことのある魔物ならば全て設定できる。設定が終わるとゲームスタートだ。

 魔王のへやでは、能動的に勇者を呼ぶまで勇者は攻めてこない。そのため心置きなく魔物を見守ることができる。

 クリアできないストーリーモードの解法を研究するため、もしくはより効率の良いダンジョンの研究を行なう、さらにはただ漫然と魔物を見守って和む、などの使用用途が考えられる。前作のプレーヤーからすれば、夢のようなモードだ。

 筆者は最近前作の動画で見た「エレメント地獄」と呼ばれるテクニックが試してみたくて、魔王のへやでやってみたところ、エレメントが300体を超えるとそれ以上繁殖しないようになっていることがわかった。エレメントが無制限に増やせるわけではなかったことは残念だが、むしろ開発側でそう言った戦略があることも把握していて、きちんと対策されている点には好感を覚えた。

 このように魔王のへやは、色々試してみると意外なことがわかることもある。このモードで魔物の特性を研究し、ストーリー攻略の新たな切り口を探してみるのも面白い。

【生み出される魔物は自由に指定可能】
図鑑に載っている魔物は全て設定可能。目的に応じて指定しよう
【エレメント地獄を実験してみた】
ファイアエレメントから開始し、少ない数から勇者を呼びつつ徐々に増やしてみたが……
300体を超えると増えなくなる模様。この後しばらく放置しても300強で必ず止まった


■充実した情報表示

テロップは右から左に流れる某動画サイト風。表示される位置は勇者の登場順と対応している
勇者が来る15秒前には、天の声が勇者の接近を知らせてくれる
ズームアウトした際には、魔王や勇者など重要な場所は円で囲まれて強調表示されるようになった

 本作では前作になかった情報表示機能として、「ニコ○コ風テロップ」と「ライブカメラ」、「天の声」、「魔物バー」などが追加されている。

 ニコ○コ風テロップとライブカメラは画面外にいる勇者が何をしているのかをある程度把握できるようになっており、これがあるおかげで前作よりも臨場感が増しているように思う。

 天の声はそろそろ勇者が来ることを知らせてくれるほか、突然変異の前兆も知らせてくれる。

 魔物バーは現在ダンジョンに生息する魔物の割合を知らせてくれる表示。突然変異の条件には魔物の割合が密接に関わってくるので、変異を狙う場合には天の声と合わせてお世話になる表示だ。

 全ての表示物が見やすく、邪魔ではないように配置されていて、より快適度が高まったように思う。



■全体的にボリュームアップ

 前述した魔物の種類増加もそのひとつだが、全体的にボリュームアップしているのも本作の特徴。

 ストーリーモードのシナリオが前作では表・裏のみだったのが、本作ではエリアごとに1つのシナリオが存在するので、大幅に増加している。

 また、なまいきな勇者もボリュームアップし、新職業が追加されている。追加された職業は「魔物ハンター」と「錬金術師」。

 魔物ハンターは「樽爆弾」や「ベイト(=エサ)トラップ」を置く、どこかで聞いたような職業。樽爆弾はドラゴンさえも木っ端微塵になってしまうほどの威力で、うっかり爆発させると大変なことになる。つるはしでつつけば不発のまま壊せるので、置かれたらすぐに破壊できるよう注意しておく必要がある。ベイトトラップには毒が入っており、魔物が食べると運が悪ければ即死する。これも注意したい攻撃だ。

 錬金術師の方は「岩柱生成」攻撃と「キレイな魔物」の召還を行なう。

 岩柱生成攻撃は範囲攻撃を仕掛けてくるので、ダンジョンの構造によっては甚大な被害を被る。通常の範囲魔法と違い、魔分をばら撒かないのも厄介な特徴だ。キレイな魔物は見た目上デーモンやゴーレムの色違いだが、魔王軍の魔物を攻撃してくる。そこまで強烈な攻撃ではないが、軍事力が拮抗した状態で呼ばれると厄介だ。

 他にも勇者はセーブフラッグを置くようになった。セーブフラッグがダンジョン内に存在すると、設置した勇者は、せっかく倒してもまたセーブフラッグの位置から復活してしまう。

 これらのダンジョン設置物はつるはしでつつくことで破壊できるので、置かれたらすぐに破壊するようにしたい。

 勇者にバックアップ機能が搭載されたこともなまいきだが、お気の毒ながら冒険の書が消えてしまうのは破壊神の仕業だったことには少なからず衝撃を受けた。

【大幅に増加したシナリオ】
RPG風のワールドマップ。クリアしたエリアは色が変わり、新たなエリアに進攻できる
【なまいきな勇者もパワーアップ】
白いデーモンがきれいなデーモン。ダンジョンの形状によっては、岩柱生成攻撃も強烈だ
セーブフラッグは非常に危険な設置物。設置されたらすぐ破壊するようにしたい


■その他の新要素

勇者ラッシュでは勇者を倒すとすぐ次の勇者が来る

 上に挙げた点が大きな新要素だが、他にも「ダンジョンクエイク(DQ)」と「勇者ラッシュ」が追加されている。

 DQはRボタンを押しっぱなしにすることで、堀パワーを20消費してダンジョンに地震を起こすことができるシステム。DQをすると、突然変異がキャンセルされる、勇者が時々麻痺する、魔物の行動パターンが変わる(コケが直進しなくなる)、勇者が設置したオブジェクトが破壊される、などの効果が現れる。非常に強力な行動だが、特に使用しなくともクリアは可能。トレーニングなどでもそれほど強調されていないので、裏技的位置づけだと思っておけばいいのではないだろうか。

 勇者ラッシュは文字通り勇者が立て続けに現われるモード。特定のステージや、チャレンジモードで遊ぶことができる。

 このモードでは勇者を倒すと、ステージクリアにならずにそのまま次の勇者が現れる。そのため堀パワーを使って魔物を強化できず、魔王が連れ去られそうになっていても再配置できない。大抵長丁場になるので、魔王を連れ去る途中で勇者を撃退した場合などには、打ち捨てられた魔王がその後の勇者に見つかってしまわないかとハラハラする。なかなかスリリングで面白いモードだった。

【多機能なDQ】
DQを使えば突然変異をキャンセルできる。望まない形の突然変異はDQでキャンセルしよう


■前作をプレイしていないのなら、まずは本作を

 続編もののレビュー記事でありながら、大半の内容は前作も含めたシリーズ全体の紹介になってしまった。しかしそれも当然で、本作は“いい意味で”前作から大きく変わっていないのだ。そのため前作のファンに対しては、自信を持ってお勧めしたい。前作が楽しめたのならば、間違いなく楽しめる内容だろう。

 そしてもう1つ言っておきたいのだが、まだこのシリーズをプレイしたことがないのであれば、まずは本作を手にとって遊んでみて欲しい。人によっては前作からプレイすることを勧める向きもあるだろうが、ストーリー的なつながりも特に無いので、筆者としてはこちらを先にプレイすることをお勧めしたい。そして楽しめたのならば、その後で前作を購入するという流れが楽しめるのではないだろうか?

 なぜならば、前作のクリアデータを読み込むことで、「おまけチャレンジ」が追加されるからだ。

 実は筆者のPSP本体は、事情により今回使用しているものと前作で使用していたものが異ったため、前作のセーブデータが存在しなかった。そこで、このおまけチャレンジのために、もう一度前作をクリアまでプレイしてみたのだが、本作をプレイしてから前作をプレイすると、また違った趣のあるプレイが楽しめる。

 「本作で使用できたあの戦略は前作でも通用するのか?」

 「本作で弱体化されたと言われているあの戦略は本当に前作では万能だったのか?」

 など、当時は気付かなかったやりたいことが色々出てくる。おまけチャレンジを出現させる目的ではじめた前作だったが、これはこれでまた面白い。単純に多少ルールの異なるシナリオが追加でプレイできると思えば、本作のストーリーモードを全てクリアしたプレーヤーにはちょうどいい追加コンテンツなのではないだろうか。ちなみに前作は8月にPSP the Best版が2,800円で発売されている。

 そしてまた、目的となるおまけチャレンジが非常に面白い。ネタバレになってしまうので念のため詳細は避けるが、本シリーズのファンであれば、ぜひ挑戦したいと思う内容になっているはずだ。

【前作のクリアデータでおまけチャレンジがプレイ可能】
おまけチャレンジはタイトル画面で「データ>かこのきおく」を選び、前作のデータを読み込むことでプレイ可能になる。本作を遊んでみて、面白いと感じたならぜひチャレンジしてみて欲しい


■「videotope project」とは?

起動時に表示される、「videotope project」なる用語。実は本作の原点にある単語だ

 最後になるが、本作の起動時に表示される「videotope」と言う用語について触れておきたい。

 この用語はもともと「biotope」と言う用語から作られた言葉で、ビデオゲーム+ビオトープでビデオトープと言うわけだろう。

 ビオトープはドイツで提唱された環境に対する思想で、経済的繁栄のために開発を優先することで失われた小さな生態系を保全・管理しようとする考え方。これをRPG的文脈に落とし込んだのがビデオトープであり、本作「勇者のくせになまいきだ」シリーズである。

 実際に読み解いてみるとどうなるだろうか。

 まず、経済的繁栄は何か。

 RPGで言う経済的繁栄は、プレーヤーの所持金であったり、レベルアップのための経験値が想起される。これらを得るために、本作の勇者達はダンジョンに攻め込んでくる。そして、魔物達の小さな生態系を破壊して去っていく。この魔物達の生態系を保全・管理するのが破壊神たるプレーヤーの役割である。

 しかしこれだけが本作の全てだろうか。そう考えると、辻褄が合わない気もする。なぜなら本作の勇者達は、攻め込んでくることで魔分を撒き散らし、生態系の一部に組み込まれているからだ。

 これをさらに拡大解釈すれば、RPGでの所持金や経験値は、結局のところゲームクリアの手段に過ぎない。そこで、目指す経済的繁栄を、ゲームクリアとしてみる。そうすると、自然破壊をしてきた人間達は、ゲームをプレイするプレーヤー自身になる。

 では破壊された小さな生態系は何か。それは、ゲームクリアを優先するあまり、過程を楽しめなくなってしまったプレーヤー自身のゲームに対する気持ちではないだろうか。そういったことに対するアンチテーゼが、本作の「videotope project」なのだと思う。

 ここで本作をもう一度省みる。

 本作にも当然ゲームクリアは存在するが、それはあくまで目的に過ぎない。大切なのは、そこまでの過程であり、ゲームを楽しもうとする気持ちだ。そういった視点で見ると、本作は実によく練りこまれている。様々な方法でクリア可能なゲームバランス。なかなか思い通りにならず、悔しい思いをするが、どこか憎めない魔物たち。何度プレイしてもストレスにならない単純なインターフェースと、テンポの良いゲーム展開。

 大作RPGのパロディにしたって、プレーヤーに「ああ、あの頃はこんなことを考えてゲームをしていたな」と言うことを思い出させたくて取られた施策なのではないだろうか。また、本作から追加された変異システムも、「過程を楽しむ」意味ではまたひとつ選択肢が増え、深みを増す要因になっている。

 そんな風に、「過程を楽しみ、ゲームを楽しむ気持ちを思い出させてくれる」ところが、本作の本質的な魅力である。

 「最近、ゲームが楽しくなくなっちゃったなぁ」

 そんな気持ちを抱えているプレーヤーに、ぜひ手にとって遊んでもらいたいタイトルである。気になる人は、まず、「PlayStation Store」で配信されている体験版をプレイしてみてはいかがだろうか?

(C)2008 Sony Computer Entertainment Inc.

□プレイステーションのホームページ
http://www.jp.playstation.com/
□「勇者のくせになまいきだor2」のページ
http://www.jp.playstation.com/scej/title/or2/
□関連情報
【10月17日】SCEJ、「TGS08」開催! 「Togoshi Game Show 2008」?? 「勇者のくせになまいきだor2」発売記念イベントで新キャラ発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081017/tgs08.htm
【10月12日】TGS2008 SCEJブースレポート PSP編
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081012/sce4.htm
【10月2日】SCEJ、PSP「勇者のくせになまいきだor2」独自要素を盛り込んだ体験版を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081002/or2.htm
【9月30日】SCEJ、PSP「勇者のくせになまいきだor2」前作からの進化ポイントなどを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080930/or2.htm
【9月2日】SCEJ、「“美・画面”な“PSP-3000”」国内でも発表
PS3経由で離れた相手と対戦が可能になるなどサービス的にも進化
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080902/psp3k.htm
【8月22日】SCEJ、PSP「勇者のくせになまいきだor2」など2タイトルの
ダウンロード版とパッケージ版を同時発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080822/pss.htm
【7月14日】勇者と魔王の生存競争ふたたび!
SCEJ、PSP「勇者のくせになまいきだor2」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080714/nama2.htm

(2008年11月17日)

[Reported by 米澤大祐]



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