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「メイプルストーリー」開発/運営スタッフインタビュー
5年目にして追加された新職業「海賊」、今後の展開と世界戦略

6月27日収録

会場:E3

 ネクソンジャパン株式会社は、7月30日、MMORPG「メイプルストーリー」において、大型アップデートを実施する。このアップデートで新職業、「海賊」が導入される。海賊はスピードと力に特徴のある職業で、レベル30から拳で戦う近接攻撃スタイルと、銃で戦う遠距離攻撃のスタイルの2つの戦い方を選択する。「メイプルストーリー」がサービス開始から5年、初の追加職業となる。

 この他にも、海賊に関連するクジラ型の船ノーチラス号と海賊の街が追加される。6月26日に開催された発表会ではこの他、7月に韓国で実装される新マップ「時の神殿」、そして今後の要素として「成長型アイテム」、「メインストリームシナリオ」などの要素が発表された。

 今回、発表会に合わせて来日した「メイプルストーリー」開発者NEXON Wizet1室室長のチェ・ウンド氏と、海外開発とサービスを総括するWizet2室室長のリュウ・インソン氏、さらにネクソンジャパン運用本部第1運用室運用1チームチームリーダーの柳本隆氏にインタビューを行なった。これからの「メイプルストーリー」はどのような展開を見せるのだろうか。


■ 新職業「海賊」韓国ではすでに4次職に到達したプレーヤーも。日本では初心者要素を優先的に拡充

「メイプルストーリー」の韓国開発及びサービス総括・新規プロジェクト開発総括のNEXON Wizet1室室長のチェ・ウンド氏
「メイプルストーリー」の海外開発とサービスを総括するNEXONWizet2室室長のリュウ・インソン氏
ネクソンジャパン運用本部第1運用室運用1チームチームリーダーの柳本隆氏
編集部: 最初に海賊を導入したきっかけを教えてください。

チェ氏: “新しい楽しさ”というのを目指したんです。海を舞台にしたシナリオを考え、それに合わせる形で海賊という職業に決まりました。これまでの舞台であったビクトリアアイランドから離れた場所を舞台としたエピソードから生まれました。

編: 韓国での海賊と、海賊の街の反応はどうだったでしょうか。また、2次職の「インファイター」と、「ガンスリンガー」はどちらが人気があるでしょうか。

チェ氏: 海賊という要素に関しての反応は良く、最大同時接続者数の最高記録を更新しました。シナリオやクエストを楽しむという点では韓国ではあまり反応がないです、ゲームそのものを楽しんでもらっているという実感はあります。

 ガンスリンガーは遠距離攻撃できる職業として、最初人気が高かったですね。それから徐々にインファイターの人気が高くなって、今ではインファイターの方がわずかに上回っています。これは、ガンスリンガーがアーチャーと似ているころがあるのに対し、格闘、武闘のスキルのアクション、派手な技が独特の魅力を発揮しているのだと思います。

編: 今回アップデートされた要素で、ユーザーから批判が出た部分もありますか。

チェ氏: 特に不満が出たと言うことはないですが、実装直後はスキルのバランスに関してユーザーから意見が寄せられましたね。日本で実装されるコンテンツはバランスが調節されたもので、韓国で意見が出た問題点は既に解消されています。

編: 今の韓国のプレーヤーは海賊ばかり、というようなことになっているのでしょうか。

チェ氏: そんなことはないですね。私達が一番に考えていたのは、職業のバランスです。他の職業の人達もたくさんいますよ。海賊の開発で考えていたのは、既存の職業と比べメリットを感じさせないほどに弱すぎず、他の職業が不利に感じるほど強すぎないというバランスでした。それが実現できたと自負しています。

編: 今回追加されるマップの詳細について教えてください。

チェ氏: 今回はクジラ型の潜水艦「ノーチラス号」と、その船が停泊している街が追加されました。マップは、ノーチラス号船内と、その街という感じです。

柳本氏: ノーチラス号には船室がたくさんあります。女海賊のカイリンの船長室や、食堂、動力室など細かく設定されています。全部で10マップくらいですね。

編: どのようなクエストが追加されたのでしょうか。

チェ氏: メインとしては海賊に転職するクエストです。この他にも、クジラに姿を変えてしまった王子の話や、ノーチラス号の船員に関わるクエストなどが用意されています。

編: 対象レベルはどのくらいになるのでしょうか。

チェ氏: 転職に必要な、10レベル前後になります。

柳本氏: 今回追加されたマップは、海賊に転職するためのもの、という性格が強いです。これまでも弓使いに転職するため、戦士に転職するための街、といったものがありまして、海賊の街も同じような扱いになります。これまでのアップデートのように、新しいダンジョンや冒険フィールドではなく、転職するための街が増えた、と理解していただければと思います。高レベルキャラクタを持つプレーヤーに関しては新しく海賊を作ってもらうことで楽しんでもらえると思っています。

編: 海賊への転職は、これまでの「メイプルストーリー」のキャラクタ同様、初期職業から10レベルまで育てて、転職するという形になるのでしょうか。また、120レベルの4次職の転職クエストまで7月30日の時点で実装されるのでしょうか。

チェ氏: 魔法使いに関してはレベル8でできますが、海賊はそのほかの職業と同じくレベル10まで育て上げると転職可能になります。この後、レベル30以上で2次職、レベル70以上で3次職、レベル120以上で4次職に転職可能ですが、海賊はレベル120の4次職まで実装されます。それぞれの転職には特別のクエストが用意されています。

編: 120レベルというのはかなり遠い道のりかな、という気がしますが。

チェ氏: もちろん120レベルは簡単にたどり着けるものではありませんが、海賊という職業の楽しさを感じながら育てていって欲しいと思っています。韓国では海賊の実装から6カ月ですが、既に何人ものプレーヤーキャラクタが120レベル以上、4次職に到達しています。

編: なぜ日本では、韓国の実装から6カ月かかってしまったのでしょうか。

柳本氏:  実はタイミングとしては3月の末に実装することも可能だったんです。なぜそこから更に3カ月もかけたかというのは、「新規ユーザーのためのコンテンツを拡充した状態で海賊を追加したい」というこちらの思いがありました。海賊が追加されることで、新規ユーザーと、更に既存のユーザーが新しくキャラクタを作って始めることになると思いました。実装したとき、従来の狩り場ではなく、もっと様々な狩り場でレベルアップを楽しんで欲しいと思ったんです。

 4月の末に中国の要素を活かした少林寺マップという新要素を追加したのですが、中国では高レベル向けのコンテンツですが、日本では一部バランスを変えて初心者でも冒険ができる場所にしています。奥に行くと本来の高レベルマップになるようにしています。5月にはグループマッチング機能、パーティーを検索する機能を追加しました。6月にはチュートリアルマップの改善をしました。韓国のコンテンツを順次実装していくのが本来のペースですが、海賊に関しては初心者への要素を充実させてから実装する形になりました。

編: バランスに関してはこの他にも韓国や他の国と違っているところがあるのでしょうか。

柳本氏: サービス初期からですが、日本では全てのモンスターが韓国の1.25倍の経験値が習得できるようになっています。ユーザーを定着してもらいたかったと言うことで少し経験値を多くしました。「メイプルストーリー」は日本でも人気を得ましたが、経験値だけでなく、コンテンツそのものの魅力と、日本での施策が評価していただけたと思っています。

 運営としては、様々なテーマを持ってユーザーに働きかけています。サービス開始当初はオンラインゲーム経験者向けのユーザーを想定しサービスを展開していました。しかし現在は、TVアニメの放映や、ロッテさん、コカ・コーラさんとのタイアップなどで認知度が上がって、オンラインゲーム未経験者のユーザーさんが増えてきています。

 例えばこちらで常識だろう、というところでユーザーさんがつまづく場面も増えています。「メイプルストーリー」ではキャラクタをダブルクリックして会話をするのですが、その説明がなかったため、ここでユーザーさんが帰ってしまうと言うこともありました。現在はチュートリアルで説明したりと、オンラインゲームを全くやったことのない人にも配慮したコンテンツの提供を心がけています。

 海賊実装に前後して、初心者向けのコンテンツを増やしましたので、今後は高レベル向けのコンテンツも考えていきますが、同時進行としてもっとゲーム未経験者のことを考えた調整も進めていかなくてはいけないと考えています。

新職業海賊は、2次職でインファイターと、ガンスリンガーに分岐する。新マップのノーチラス号と海賊の街では海賊の転職と、海賊に関連するクエストを体験できる


■ 時間の神殿、メインストリーム……世界に向けて広がる「メイプルストーリー」の将来像

「時間の神殿」の最終ボスマップ。このイラストにはボスに関する秘密が隠されているという。中央のハムスターのような生き物も気になる
これまでの最強ボス「ホーンテイル」。全体は3つ首を持つ巨大な竜で、とても画面に収まりきらない(写真は1つの首のみ)。時間の神殿では更に強い敵が登場するとのことだが、どのような姿を持っているのだろうか
編:  次にこれからの要素についてお聞きします。韓国で7月に実装の「時間の神殿」はどんな要素になるでしょうか。

チェ氏: 時間の神殿はこれまでの最強のモンスター「ホーンテイル」を上回るボスモンスターが登場するシナリオになります。名前の通り時間に関するダンジョンがいくつかあって、プレーヤーは過去や未来の「メイプルストーリー」の世界を行き来しながらボスモンスターを目指していきます。時間をテーマにしたマップですので、ゲームに親しんだ人は一層楽しめると思います。

 「最強のモンスター登場」というのがキャッチコピーなので、最強レベルのプレーヤーがフルパーティー、もしくはレイドのようにいくつかのパーティーで協力しなくては倒せないボスモンスターが登場します。超高レベルキャラクタ、レベル150以上のプレーヤーでなくては難しいですね。ボスにたどり着く前の雑魚モンスターでさえ、強い力を持つプレーヤーが協力しなければ難しいことになるでしょう。

 公開した「最終ボスマップ」が決戦の場になります。このイラストには最終ボスマップに関するヒントが隠されています。また、ボスモンスターは1種類でなく、何種類か登場します。是非仲間を募って挑戦してみて欲しいですね。

編: 「成長型アイテム」の情報を教えてください。

チェ氏: 成長型アイテムは、装備してプレーヤーと共に戦う中で成長し、姿を変えていくアイテムです。経験値を得ていくことで成長し、能力が増加していきます。韓国では無料で手に入りますが、日本で課金アイテムになるかどうかは未定です。失敗によってアイテムが消えてしまう、ということはありません。

編: メインストリームシナリオはどのようなものになりますか。

チェ氏: 「メイプルストーリー」は全体の世界を語るようなストーリー要素がこれまでありませんでした。世界観全体も、確立しているとは言い難いのが現状です。メインストリームは初心者が親しみやすい、世界へと誘っていけるような要素を考えています。

 韓国では下半期に導入される予定ですが、現在、ストーリーをどのように作っていくかがまだ確定しておらず、少し難航気味です。童話風の要素が導入されるというところは決まっていますが、まだ具体的にはアナウンスできないところです。

編:  次に、「メイプルストーリー」の世界展開に関して教えていただきたいと思います。韓国、日本のみならず、北米やアジア、ヨーロッパ、ブラジルとサービスをする国を広げている「メイプルストーリー」ですが、ユーザーの要望で特徴的な違いはありますか。

リュウ氏: 国ごとにそれほど特別に違う、というところはあまり感じていないですね。どの国でも10代のユーザーが多く、ゲームを楽しんでもらっているという実感があります。「メイプルストーリー」のかわいらしいキャラクタと、雰囲気が子供を中心に受け入れられていると思っています。

 ただ、国ごとに文化の違いはあり、私達はそれを活かしたコンテンツ作りを目指しています。各国の特徴を活かしたマップを導入したり、アイテムを入れたりしています。中国の西遊記や、アメリカのハロウィンをテーマにしたコンテンツがそれに当たりますね。ユーザーの楽しみの違いに関しては、現地のパブリッシャーと話した上で、方針を決めていっています。

 中国からは、天使と悪魔がキャラクタの両側に飛んでいて、天使が良いことを薦めて、悪魔が悪いことをささやく、というペットはどうかという提案がありましたね。実現できるかどうかはわかりませんが、各国のユーザーからは面白い様々なアイデアが寄せられています。

編: アイテム課金に関する議論はアメリカで盛んですが、リュウさん個人はアイテム課金に関してどのような想いをお持ちでしょうか。

リュウ氏: 北米では定額制のゲームが主流のため、アイテム課金に対する議論は活発にされています。無料でクオリティの高いゲームが遊べるというビジネスモデルは新しい価値をもたらすものだと考えています。「メイプルストーリー」ではプレーヤーキャラクタを飾り立てるアイテムを販売しています。

 強引に課金アイテムを買わせるようなゲーム性ではなく、プレーヤーの選択でお金を使っていただけるゲーム性になっていると思います。定額制よりもより良いゲームシステムではないか、と思っています。アメリカの経済誌などでも成功例として取り上げられていますし、今後ももっと成功していきたいと思っています。

編: 今後更に世界へ「メイプルストーリー」を広めるためにどんなコンテンツが必要でしょうか。

チェ氏: 世界で評価を得ている「メイプルストーリー」ですが、一方で「難しい」という声も聞かれています。より初心者へ、ゲームにこれまで触れたことのない人達が楽しめるようにしていきたいと思っています。

 それと共に、「新しい楽しさ」というのも求めていきたいと思っています。私達にとって海賊の導入はチャレンジでした、既存のゲームでは体験できない要素を足すことができたと自負しています。更に新しい要素を積極的に盛り込みたいと思っています。

編: 最後にファンへのメッセージをお願いします。

チェ氏: 海賊は「メイプルストーリー」に新しい楽しさをもたらす職業だと思います。スキルを合わせた連続技など、これまでのキャラクタとは違った楽しさを持っています。是非、海賊でプレイしてみてください。

リュウ氏: 「メイプルストーリー」はスタートして5年になりますが、5年間応援していただいてる方、そしてしばらく離れている方、たくさんいると思います。もちろん、これから始める方も含めて、新しい要素、海賊に触れていただければと思います。

柳本氏: ユーザーのみなさんのおかげで「メイプルストーリー」は5年を迎えることができました。「メイプルストーリー」はアイテム課金、経験値2倍チケット、MTS (Maplestory Trade Space) など新しい試みをしてきました。今後ともユーザーに喜んでもらえるような斬新なシステムを追加していきたいと思います。今後とも「メイプルストーリー」をよろしくお願いします。

時間の神殿のモンスターと、今後の追加要素。時間の神殿や、モンスターレイドは上級者向け要素だが、メインストリームシナリオは初心者を視野に入れたものになりそうだ。様々なユーザーに向けてコンテンツが開発されている
アジア、北米、ヨーロッパとサービスを拡張していく「メイプルストーリー」。6月にはブラジルやベトナムでもクローズドβテストを開始しているという

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□ネクソンジャパンのホームページ
http://www.nexon.ne.jp/
□「メイプルストーリー」のページ
http://maplestory.nexon.co.jp/
□関連情報
【6月26日】 ネクソンジャパン、「メイプルストーリー」アップデート発表会を開催
新職業「海賊」を実装、今後は最強モンスターや成長型アイテムも登場
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080626/maple.htm
【2月7日】ネクソンジャパン、WIN「メイプルストーリー」
登録ID数200万突破記念3大キャンペーン実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080207/maple.htm
【2007年10月5日】ネクソンジャパン、TVアニメ「メイプルストーリー」制作発表会を開催
“見て心が温かくなる、活力が出てくる、思いやりを持てるアニメに”
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071005/maple.htm
【2007年9月18日】ネクソンジャパン、TVアニメ「メイプルストーリー」制作発表会を開催
“見て心が温かくなる、活力が出てくる、思いやりを持てるアニメに”
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070918/maple.htm
【2007年8月29日】NHN Japanとネクソンジャパン、マーケティング提携契約を締結
「ハンゲーム」で「メイプルストーリー」のサービスを提供
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070829/maple.htm
【2007年8月1日】「メイプルストーリー」、新対戦システム「モンスターカーニバル」
新マップなど4周年を記念した大型アップデートを実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070801/maple.htm
【2007年6月4日】ネクソンジャパン、WIN「メイプルストーリー」
石井めぐるさんが自らデザインしたアイテムを発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070604/maple.htm
【2007年5月18日】ネクソンジャパン、WIN「メイプルストーリー」
「石井めぐるデザインアイテム発表会」をゲーム内で開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070518/maple.htm
【2007年4月25日】ネクソンジャパン、WIN「メイプルストーリー」
日本オリジナルマップや「釣り」システムなどを実装
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070425/maple.htm
【2007年3月28日】ネクソンジャパン、WIN「メイプルストーリー」アップデート
「4次職」や「ライディングスキル」を実装
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070328/maple.htm

(2008年7月1日)

[Reported by 勝田哲也]



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