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★PCゲームレビュー★

機体特性を活かしたシナリオ満載のミッションモード
「空」を舞台としたロールプレイを満喫しよう!

「Microsoft Flight Simulator X」

  • ジャンル:フライトシミュレータ
  • 発売元:マイクロソフト
  • 価格:9,870円
  • 対応OS:Windows XP/Vista
  • 発売日:1月26日発売



 本日1月26日、「Microsoft Flight Simulator」シリーズ最新作「Microsoft Flight Simulator X 日本語版」が発売された。1月11日にお届けしたファーストインプレッションに続いて、今回のレビューでは本作の大きなセールスポイントであるミッションモードを深く掘り下げてみたい。

 「Flight Simulator X」では50ものミッションが用意されている。ミッションには飛行機の操作のチュートリアルから、ミニゲーム的なもの、さらに“定期便のパイロット”や“捜索隊”など劇中の登場人物になりきってのフライトというように「空を飛ぶ」というテーマを多彩なアプローチで表現している。また、ミッションでは、旅客機、プロペラ機、グライダー、ヘリコプターなど収録されている機体それぞれに活躍の場が与えられているのも嬉しいところだ。

 日本語版オリジナルの魅力としては、「声優」も注目ポイントの1つだ。様々なシチュエーションを堀内賢雄さん、池田秀一さん、高乃麗さん、岡本麻弥さんといった31人もの声優がそれぞれ個性的なボイスで場の雰囲気を盛り上げてくれる。本作では、状況に合わせてカメラが切り替わったり、キャラクタが登場したり、音楽が挿入されたりといった演出はない。しかし、彼らの声によって演じられる様々なシチュエーションにより一層のリアリティが生まれてくる。

 出演している声優達は洋画の吹き替えも数多く担当している。彼らの声を聞きながら操縦桿を握っていると、まるで映画の登場人物になったかのような気持ちになってくる。本作はコクピットパネルや管制官との通信も再現している、リアルなフライトシミュレーターというかなり硬派な作品ではあるが、カジュアルな楽しみ方も提示されている。「飛ぶ」という事にあこがれを持っている人ならば初心者でも楽しめるだろう。1つだけ加えておきたいのは、本作のプレイにはできればジョイスティックを用意して欲しい。操縦桿を握るだけで、臨場感は大きくアップするのである。


■ 飛行機とは全く違う“ヘリコプター”の操作を体得しなくては挑戦できないミッションも

ミッションモードはいくつかのテーマにそったミッションを抽出できる。エアラインのパイロットのみにこだわる、といった遊び方も可能だ
海上オイルリグ。ヘリポートにうまく着陸するには、ヘリコプターの特性をきちんと覚えておかなくてはいけない
本作はヘリのチュートリアルミッションも多く用意されている。プレイし、練習を重ねることで独特の操作法を学ぶことができる
 「Flight Simulator X」のミッションはEASYからEXPERTまで4段階に分かれている。初心者はチュートリアルをプレイすることで段階的に飛行機の操縦に慣れていくことができる。本作のミッションは最初から順番にプレイしなければいけない、といった縛りはないので、フライトシミュレーターファンならばいきなりHARDのミッションをプレイしても良いだろう。

 ミッションはテーマ別に分けて表示することも可能で、「純粋な楽しみのために」というメニューを選ぶと、ゆったりと空を飛べるミッションが抽出され、「エアラインパイロット」では旅客機の操縦士として様々なシチュエーションで楽しめるシナリオが抽出される。これはプレイスタイルに応じてミッションを選ぶ際のひとつの指標になる。

 今回筆者はどうしてもチャレンジしたかったミッションがある。「海上オイルリグ危機一髪」というミッションで、プレーヤーはヘリコプターで火災を起こしたオイルリグ(石油採掘施設)から作業員を救出を試みることになる。このミッションはE3のデモプレイでも紹介されたぐらいのミッションで、本作のミッションの中でも屈指のできばえだ。

 筆者はフライトシミュレーションは何作かプレイ経験があり、ヘリコプターのゲームもプレイしたことがある。最初は軽い気持ちでミッションに挑戦してみたのだが、その難しさに愕然とさせられた。とにかく今回の最初のチェックポイントとなる「オイルリグの発着場」に着陸できないのだ。機体を操作して何とかホバリングまではできるが、小さな足場としか見えないヘリポートに機体をよせる所まではとてもいかない。

 何度も失敗して、ヘリの操作の難しさに打ちのめされた筆者は、とにかくヘリコプターのチュートリアルミッションを1からプレイすることにした。コクピット視点ではなく、機体を後方から見る3人称視点でヘリの姿勢をきちんと見ながら、操作を学んでいった。プレイしていくうちに、改めてヘリコプターと飛行機の違いを思い知らされた。

 ヘリコプターは、メインローターを回転させることで揚力と推進力を得て上昇し、メインローターを傾けて“重り”となる機体とバランスを取ることで進む方向を決定する。ジェットエンジンによる推進力を利用して前進することで、翼に気圧差を生じさせて揚力を得る飛行機とはまったく違う乗り物なのだ。今作のヘリのチュートリアルは充実していて、簡単な操作だけでなく、ヘリの操作テクニックを向上させるものも収録されている。でこぼこした山肌に設置されたリングをくぐるミッションは、馴れないうちはとても難しく、歯ごたえがあった。

 何度も墜落をくり返すうちに、ヘリならではの挙動をある程度理解できるようになった。特に「揚力」を生みだし、機体を望む方向に動かすその感覚を覚えていくのは楽しかった。「こうすれば機体は浮き上がるだろう」ということを意識して、機体の姿勢を制御すると、ほんの少しのタイムラグがあってから機体が動き出す。上昇や下降もスロットルを変化させてもすぐに反映されない。少しやきもきする、微妙な「間」を自分なりに理解していくのはとても面白かった。

 一番難しかったのが「着陸」である。飛行機は乱暴な言い方をすればスロットルを絞り、進入角度に気をつければ着陸できる。しかし、ヘリはそうではない。着陸地点で重い機体の重量を、浮力と釣り合わせてふわりと着陸させなくてはいけない。進入スピードを0にして静止し、降下スピードも可能な限り遅くする。スロットル操作の微妙さには「こんなに大変なのか」と驚かされた。タイムラグを先読みして高度を合わせるのはとても骨が折れる。こんなにも“繊細”な乗り物だったのかと、ヘリを現実に操縦しているパイロット達のすごさを改めて感じた。

 練習をくり返し、失敗続きながらもある程度は基礎を学んだ筆者は再び「海上オイルリグ危機一髪」に挑んだ。オイルリグのヘリポートは海上から遙かに上の小さな足場である。しかも、海上ならではの突風が機体を不安定に揺らす……。正直に白状してしまうが、筆者はミッションを「セーブ」しながら進めた。「Flight Simulator X」ではミッション中にセーブが可能で、例え失敗してもデータをロードすることでそこからプレイが再開できる。ちょっと「裏技」的な要素ではあるが、ミッションによっては1時間以上かかるものもあり、中断せざるを得ないときや上級ミッションの難所をクリアする際には非常にありがたい機能だ。

 オイルリグに着陸しようとすると施設から突然火柱が上がる! 爆発事故を確認するため旋回していたところ、ヘリポートで1人の男性が手を振っている。爆発に巻き込まれないように慎重に機体を操作し、ヘリポートで作業員を回収する。炎が大きくなるオイルリグ。作業員の話によると彼の他にもう2人この施設には作業員がいるという。同乗者がビルの上で手を振る作業員を発見した。ビルの屋上はポートよりさらに狭い。何とか着陸した筆者のすぐ横に爆発で倒れてきた給水塔が……。時間制限もあり、挑戦しがいのあるミッションである。

 この他にも「東京ヘリ秘密指令」というヘリのミッションが面白い。このミッションにはシャア・アズナブル役でおなじみの池田秀一さんが出演している。プレーヤーはヘリのパイロットとなり、特別任務によって東京のヘリポートから成田空港まで重要人物を運ぶ。池田氏はてっきり重要人物とされる乗客役かと思っていたが、無線を担当し進路を指示する副パイロット役だった。池田氏が声をあてているのだから、ただの副パイロットで終わるわけがないと思っていたのだが、その読み通り、シナリオはとんでもない展開を見せる。1時間以上かかる長めのミッションだが、オススメである。

離陸と着陸をする初心者向けミッション。小さなヘリポートに、機体にダメージを与えずに降りるのはとても難しい
山肌や海面ぎりぎりを飛行し空母に着艦するミッション。ヘリの「浮力」の感覚を覚えるのに有用なミッションだった
「海上オイルリグ危機一髪」。非常に派手で、かつ難しいミッションだ。ヘリコプターパイロットとしての手腕が試される
「東京ヘリ秘密指令」。池田秀一演じる副パイロット共に進めていくミッション。ヘリの操作そのものは難しくないが、あっと驚く展開が待ち受けている


■ シナリオと演出によって生まれるコクピット内のドラマを堪能しよう

ミッションに挑戦する前にブリーフィングで地図をチェックし、着陸する滑走路の向きなどをあらかじめ頭にたたき込んでおきたい
ミッションをクリアするとアワードを入手できる。ミッションによっては上級者向けの報酬が用意されているものも
旅客機でのデモンストレーション飛行。様々なシチュエーションで、まったく違う飛行を求められるのは、パイロットとしてとても挑戦しがいがある
 「Flight Simulator X」のミッションでは様々な機体に乗ることができ、加えてその機体ならではの状況が用意されているのが面白い。プレーヤーはミッションによって捜索隊になったり、救助隊になったり、エアラインのパイロットとなってミッションをこなしていく。

 場所、状況、そして何より機体が臨場感を増してくれる。滑走路だけでなく水上にも降りることができるG-21Aグースで、アリューシャン列島やアマゾン川流域の貨物を運ぶミッションなどは、「本当にこういうところで仕事をしている人がいるんだろうなあ」と想像をふくらませてくれる。悪天候をものともせずに任務をこなす所などは、その土地の生活の過酷さを感じさせられる。パイロット中はこういった場所で仕事を黙々とこなす、ちょっとひねた雰囲気のパイロットの気分になりきってしまった。

 計器が故障するなど極限状態のトラブル飛行も体験できる。フロリダ沖のいわゆる“バミューダトライアングル”を舞台にしたミッション「魔の三角地帯を捜索せよ」では、ミッション中突然高度計が壊れてしまう。高度がわからないまま空港に着陸しなくてはならない。勘を頼りに滑走路に向かうときはかなり緊張させられた。

 「限られた選択肢」ではさらに困難なフライトが待っている。旅客機の2つあるエンジンが両方とも停止するという状況に陥ってしまうのだ。空港は近くだが本来は旅客機が着陸できるような大きさではない。プレーヤーの肩には155人もの乗客の命がかかっている。再加速はできない状況の中、いかに滑走路にたどり着くか、そして短い滑走路にどうやって着陸させるか、操縦の手腕が試されることになる。

 他にもユニークなミッションは数多い。「LOOPY LARRY」は航空ショーのイベントとして疾走するバスの屋根に設置された「板」に着地する。使用するPiPer Cubは低速でも失速しにくい、安定度の高い飛行機だが、コクピットから見えるバスは非常に小さく、高度を下げるごとに本当に降りられるか不安が大きくなっていく。板よりも高度が下がってしまい、あわててエンジンの出力を上げる、といったこともあった。

 このミッションではショーの司会が「さあ、うまく着地できるかっ?」などとノリノリで中継している。「こっちはそれどころじゃないんだ」と思いつつも、しっかり乗せられる気持ちもあって、気合いを入れて操縦桿を握り直したりしてしまう。「合図をくれたら一気に50マイルまで加速してやる」と言ってくれるバスの運転手である相棒が老人なのがまた良い感じだ。プレーヤーであるパイロットとどんな関係なのかとか、表現されていない観客達も想像してしまったりと、イメージがふくらむミッションだった。

 今回、筆者はいくつかのミッションを体験し、クリアすることはできたが、正直なところまだまだだと思っている。確かにミッションが提示するポイントはクリアしたが、「本物」のパイロットだったら成功といえるだろうか。155人の乗客を乗せた機体を乱暴に扱ってしまったのではないだろうか。機体に必要以上のダメージを与えてはいないだろうか。こだわる部分はいくつもあり、“役割”をより完璧に演じるためには、そういったポイントもきちんと押さえていかなくてはいけない。何よりもそういった目標を自分の中で作ることで、ミッションは更に面白さ、成功した喜びを増してくれるのだ。

 本作に限らず、フライトシミュレーターはエディターによって様々なフライトプランを組むことができる作品が多い。さらに本作のようなプレーヤーが多いソフトでは、プロ・アマ問わず多くのユーザーが追加機体やシーナリーが作成する。しかし、このミッションモードのように凝ったシチュエーションのもと、登場キャラクタ、オリジナルオブジェクト、演出、そして声優の演技といった“リッチ”なミッションはなかなか作ることはできない。

 “ロールプレイ”を楽しませてくれるこのミッションモードはだからこそ高く評価したい。フライトシミュレーターを、より能動的に楽しんでもらおう、というスタッフの姿勢は好感が持てる。「追加シナリオ」の製作にも期待したいところだ。「空」というテーマはまだまだドラマの可能性を秘めているはずである。加えて、声優達による声の演出は日本人プレーヤーに「海外ドラマ」の登場人物になったような気持ちを味わせることができる。シナリオが発売された際には、日本語版もぜひリリースして欲しい。

 「Flight Simulator X」は世界すべてのマップを収録し、多彩な機体を収録している、現時点でフライトシミュレーターというジャンルの決定版、といえる作品である。要求スペックや、ジョイスティックが必要といったハードルの高い部分はあるが、多くの人に触れてもらいたい。筆者自身フライトシミュレーターというジャンルの1ファンとして、本作をきっかけにコンピュータ空間で空を飛ぶ楽しさを多くの人に知ってもらいたいと願っている。

走っているバスの上に着陸する「LOOPY LARRY」。ミッションそのものはとてものどかな雰囲気だが、プレーヤーはかなり緊張させられるだろう
グースならではの貨物配達ミッション「アリューシャンの貨物便」。こんな厳寒の地でも人が想像しているんだなあ、という感慨がわき上がってく
エンジンが2つとも停止してしまうという緊急事態を体験する「限られた選択肢」。滑走路をオーバーランしてしまった。もっと乗客のことを考えた完璧なフライトを目指したい
飛行チームへの入隊テストとなる「レッドブルタイムトライアル」。高速で次々とゲートをくぐらなくてはいけない。
高度計が故障してしまう「魔の三角地帯を捜索せよ」。ミッションの中にはUFOが出てくるものもあって、ちょっとミステリー要素が入っているのが面白い

(C) 2007 Microsoft Corporation. All rights reserved.


【Flight Simulator X】
  • CPU:Pentium 4 1.5GHz以上(Pentium 4 3.0GHz以上推奨)
  • HDD:15GB以上
  • メモリ:256MB以上(1GB以上推奨)、
  • ビデオカード:ビデオメモリ128MB以上

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□「Flight Simulator X」のページ
http://www.microsoft.com/japan/games/fsx/default.mspx
□関連情報
【1月26日】PCゲームファーストインプレッション「Microsoft Flight Simulator X」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070111/fsx.htm
【2006年12月15日】マイクロソフト、「八谷和彦 - Open Sky 2.0」展に協賛
「Flight Simulator X」で“メーヴェ”に乗ろう!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061215/opensky.htm
【2006年12月11日】マイクロソフト、WIN「Microsoft Flight Simulator X 日本語版」
八谷和彦氏の展示会に「M-02J」のシミュレータとして出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061211/fsx.htm
【2006年12月4日】マイクロソフト、Vista対応のフライトシミュレータ
WIN「Microsoft Flight Simulator X 日本語版」2007年1月26日発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061204/fsx.htm
【2006年12月4日】ゼネラルオートサービス、ゲーミングデスクなどの取り扱い機器が
「Microsoft Flight Simulator X」の推奨商品に認定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061204/msy.htm
【2006年10月18日】マイクロソフト、WIN「フライトシミュレータX」
日本語吹き替えに総勢31名の声優陣を起用
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061018/fs.htm
【2006年9月12日】マイクロソフト、WIN「エイジ オブ エンパイアIII: ザ ウォーチーフ」と
「フライトシミュレータX」の日本語版を開発
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060912/ms.htm
【2006年5月11日】【E3 2006】Microsoftブースレポート Game for Windows編
初のVistaタイトル「Flight Simulator X」は、DirectX 10グラフィックス&ミッションモードに注目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060511/e3_mspc.htm
【2006年1月6日】米Microsoft、FSシリーズ最新作「Flight Simulator X」を正式発表
Windows Vista時代を見据え全面進化を果たしたシリーズ第10弾
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060106/fsx.htm
【2006年1月6日】米Microsoft、FSシリーズ最新作「Flight Simulator X」を正式発表
Windows Vista時代を見据え全面進化を果たしたシリーズ第10弾
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060106/fsx.htm
【2003年10月28日】PCゲームレビュー「フライトシミュレータ 2004 翼の創世紀」レビュー第4回
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031028/fs2004_4.htm

(2007年1月26日)

[Reported by 勝田哲也]



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