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★PCゲームレビュー★

多彩な表情を見せる「空」に注目
マイクロソフトフライトシミュレータ 2004 翼の創世紀
レビュー第4回
  • ジャンル:フライトシミュレーター
  • 発売元:マイクロソフト株式会社
  • 価格:オープン価格
  • 対応OS:PC Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:発売中(10月17日発売)


 ついに発売された「マイクロソフトフライトシミュレータ 2004 翼の創世紀」(以下、「翼の創世紀」)。最終回となる今回のレビューでは「空の表情」に注目していきたい。進化を続ける本作は、今まで以上の空の表現を可能にしているのである。




■さまざまな表情を見せてくれる「空」

本作は高空、低空の雲を非常にリアルに、かつ美しく描写をしている。地形にあった、その地方ならではの雲も見ることができる
 今作の第一の特徴は、その見事な「空」の表現にあるといっても過言ではない。夕焼け、日の出、そして夕闇。時間と共にシームレスで変化していく感覚は、夜通し飛ぶシナリオをプレイしている人には、特に印象に残るだろう。例え倍速飛行で飛んでいても、夜明けを迎えることで「バーチャル徹夜」ともいえる、心地よい疲れと安心感を体験できる。

 一日だけではなく、「一年」の変化も本作では体験することができる。設定により、好きな日時、好きな季節で飛ぶことができるのだが、夏と冬ではっきりと空の表情が変わっているところに注目して欲しい。空の色が全く違うのである。

 空の色は太陽の光が空気にふれて生み出されるものだが、地表と空の温度によって光の屈折率が変わって変化する。この現象をきちんと再現しているのだ。四季によって変化する空の「高さ」、これをゲームでも目にすることができるのである。

 フライトシミュレーターにとって重要なポイントである「雲」の表現も、クリエイターの強いこだわりを感じさせるものがある。冬に特に美しい高空の筋状の雲や、今にも降り出しそうな雨雲、山から立ち上ってくるかのようなガス、海上ならではの下の部分が水平になっている雲など、状況や季節によって変化するその形を非常にリアルに再現している。

 雲、そしてそれを生み出すさまざまな自然現象が組合わさった「天候」を設定することで飛行はよりダイナミックなものになる。雲の量や、気温など非情に細かいカスタマイズもできるが、用意された“タイプ”から選択するのが簡単な方法だ。特に雷雨は必見である。稲妻の表現も本作のセールスポイントのひとつで、至近距離に落ちた時など大迫力で結構コワイ。また、風防に当たる雨や雪も本作でパワーアップした演出のひとつ。視点を横にして、流れていく雨滴で嵐の激しさも感じることができる。

 天候を細かくカスタマイズすることで、よりリアルな“シナリオ”を作ることができる。天候の設定は気象台ごとにできるので、名古屋付近で発達している暴風圏を抜けて東京-大阪間を飛ぶ、といったものも作成できる。気象台による設定はちょっと手間もかかるが、史実の再現や、困難なフライトに挑戦したいプレーヤーには満足できる細かさだろう。

 天候はフライトシミュレーターのシナリオによる大事な要素である。用意されたシナリオにも天候、さらに「雲」そのものにテーマを絞ったものがいくつかある。都市上空にあっという間に雲が集まり、積乱雲が形成されていくシナリオなどは、教育番組のビデオのようで、ちょっとした驚きをもたらしてくれる。

 また、前回のレビューで触れた「嵐を呼ぶ女流作家」のシナリオは、ほとんどギャグレベルにまで飛行が困難な天候になっているので、風や霧の怖さを感じ取るにはオススメである。もちろん、既存のシナリオも時間や天候をアレンジすることでまったく違う飛行を体験できる。


【スクリーンショット】
左から、夏、冬、春の雲の景色。空の色はもちろん、雨を含んでいそうな低空の雲の表現にも注目して欲しい
さまざまな天候を簡単操作で選択することができる。激しい雪や雨など、現実では飛べそうにない状況を飛ぶ「冒険」も楽しめる
リアルな稲妻の表現。機体近くに落ちると、雷光が機体を照らす 発達していく積乱雲。倍速飛行で飛ぶことで、高速カメラの撮影のようなダイナミックな情景を見ることができる 暴風圏の名古屋に着陸する。気象台ごとの天気を設定することでさまざまな状況を設定できる。




■さらに多彩なアプローチを

地形、雲の量、撮影時間……さまざまな設定を行なうことで、「こだわりの情景」を作成することも
 4回にわたって取り上げた「翼の創世紀」。このレビューを書くにあたり、筆者はさまざまな機体でさまざまな場所を飛ぶことになったのだが、今回あらためて最新の機体で飛ぶことで“機体の違い”に驚かされた。

 歴史的機体の非力なエンジン、不安定な飛行に慣れた感覚では、ジェットエンジンで飛ぶ機体のスピード、上昇性能は、まさに驚異的なものだった。技術の進歩をはっきりと体感できたのである。

 機体の違い、という点では「Extra 300S」がすさまじい。曲芸用に特化した飛行機で、宙返り、背面飛行が簡単にできる。以前、歴史上の機体であるジェニーで背面飛行を試み、どうしてもできず、「このゲームのフライトモデルでは曲芸はできないだろうか?」と密かに思っていたのだが、300Sの機動はそんな筆者の勘違いを吹き飛ばしてくれた。そして、あらためて操作性の悪いジェニーで演技をしたパイロット達のすごさを感じることになった。

 筆者は毎年日本でも行なわれる飛行機のアクロバテック選手権「アエロバティックス」を、昨年はじめて見て、その大胆かつ繊細な演技に感動をした。与えられた時間内でテーマ音楽に乗って、小さな飛行機で「舞う」彼らの演技は、筆者の中の飛行の認識を大きく変えてくれた。

 本作では、“インスタントリプレイ”もしくは、“フライトビデオ”という機能を使うことで、競技会でプロパイロット達が行なった「魅せる」飛行にも挑戦できるのである。宙返り、錐もみ落下、さらには空中停止など、普通の飛行機では難しい飛行演技も、この機体は可能にするポテンシャルを持っている。

 管制塔を客席に見立てて、ショーを演出することもできる。もちろんちゃんとした演技をするには努力が必要となるが、本作は通常のフライトとは全く違う、こうした遊び方もフォローしているのである。また、飛行場所、天候、時間にこだわることで“最高の情景”のスクリーンショットの撮影にも挑戦可能だ。本作の自由度は、多少労力は必要となるが、プレーヤーの思うまま、さまざまなアプローチを可能にしているのである。


【スクリーンショット】
競技用にチューニングされた「Extra 300S」。宙返りや背面飛行も簡単にでき、スモークを引くことも可能である。リプレイ・ビデオ機能を使うことで、飛行演技を録画しておくことも
本作では残念ながら日本の地方の特徴的なオブジェクトは収録されていないが、東京周辺は非常に多くのものが収録されている。アサヒビールの社屋にある金色の雲や、江戸東京博物館、浅草寺、武道館、国会議事堂、東京ドーム、レインボーブリッジ、フジテレビ、品川インターシティ、池袋サンシャイン、横浜ベイブリッジ、ランドマークタワー、横浜スタジアムなどなど、ぜひ発見してみて欲しい

 フライトシミュレータというのは、どうしてもマニアックな印象を受けがちのジャンルである。本作もまた、マニアのこだわりを満足させるような深い懐を持っている。しかし、アプローチ次第では初心者も充分楽しむことができる作品でもある。特に本作の美しくリアルなグラフィックは、多くの人を引きつける魅力を持っていると思う。空にあこがれを持っている人、世界の風景を楽しみたい人、色々な雲を眺めるのが好きな人……表現力の進化は、こういった人達にもアピールできるクオリティーを備えつつある。

 しかし日本のPC業界の現状では、本作をプレイできるような3D能力を持ったパソコンを、地方で“簡単”に買うのは難しいと言わざるをえない。さらに「ジョイスティック」の問題がある。マイクロソフトのゲームデバイス部門の撤退によって、このジャンルの快適なプレイを約束するジョイスティックの入手が困難になっているのである。

 アメリカにはよりマニアックなデバイスを販売しているところもあるのだが、「初心者がソフトと一緒に気軽に買える」という状況そのものがなくなりつつあるこの現状は、フライトシミュレータファンの筆者には、必要以上の危機感を抱いてしまう。

 このフライトシミュレータというジャンルは、作り込みの細かさからくるゲーム性のマニアックさに関しては否定できないが、日本にもファンが多いジャンルである。本作が提示してくれた多彩なアプローチ、そして美しいグラフィックはファンにとって、「さらなる進化」を充分期待させてくれる。もっとリアルに、もっと楽しい「空を飛ぶ快感」を、プレーヤーに提示してほしい。

 マーケット的に難しいのかも知れないが、メーカー、ユーザー共にこのジャンルの火を絶やさないようにしていきたいと一ユーザーとして強く願ってしまった。「本物に近い空」は、確実に近づいているのである。

(C) 2003 Microsoft Corporation. All rights reserved.


【マイクロソフトフライトシミュレータ 2004 翼の創世紀】
  • CPU:Pentium 4 1.4GHz以上(最低 Pentium III 800MHz以上)
  • メモリ:256MB以上(最低128MB以上)
  • HDD:インストール時:4GB以上 実行時:400MB以上
  • ビデオカード:VRAM 16MB以上(32MB推奨)


□マイクロソフトのホームページ
http://game.watch.impress.co.jp/
□マイクロソフトのPCゲームのページ
http://www.microsoft.com/japan/games/
□「Flight Simulator 2004 翼の創世紀」のページ
http://www.microsoft.com/japan/games/fs2004/
□関連情報
【2003年9月4日】PCゲームレビュー「フライトシミュレータ 2004 翼の創世紀」レビュー第1回
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030904/fs2004_1.htm
【2003年10月3日】PCゲームレビュー「フライトシミュレータ 2004 翼の創世紀」レビュー第2回
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031003/fs2004_2.htm
【2003年10月15日】PCゲームレビュー「フライトシミュレータ 2004 翼の創世紀」レビュー第3回
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031015/fs2004_3.htm

(2003年10月28日)

[Reported by 勝田哲也]


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ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

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