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★PS2ゲームレビュー★

新旧取り混ぜた懐かしさと新しさ
「ハイパーストリートファイターII The Anniversary Edition」

  • ジャンル:対戦格闘
  • 発売元:株式会社カプコン
  • 価格:3,800円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(2003年12月18日)



 2D格闘ゲームのパイオニア、「ストリートファイターII(ストII)」シリーズの歴代キャラクタを一堂に集め、同じ土俵の上で戦えるという画期的なゲーム、それが「ハイパーストリートファイターII The Anniversary Edition(ハイパーストII)」だ。「ストリートファイター」シリーズ15周年を記念した作品ということで、続編も多く作られたシリーズだけに許されるお祭りゲームだと思うとそれだけで十分面白そうなのだが、ベースを最終作「スーパーストリートファイターII X」にし、歴代のシリーズの性能(多少調整はほどこされているが)のキャラクタを自在に選択できることによる、新たな戦いの駆け引きが堪能できる。


歴代「ストII」のタイトルが、「スーパーストリートファイターIIX」のリュウの波動拳のアニメの間に挿入され、最後は「ハイパーストリートファイターII」のタイトルになるオープニング


■ 歴代のシリーズごとに異なるキャラクタ性能が楽しい

 キャラクタの選択は、まずシリーズのどの作品を選ぶか、から始まる。その後、キャラクタを選択するわけだが、初代は8キャラ、「~ダッシュ」、「~ダッシュターボ」は12キャラ、そして「スーパー」からは16キャラ(「X」ではプラス豪鬼、そして「X」で使用できた「スーパー」性能のキャラ)が選択可能となっている。グラフィックもほぼ当時のものが再現されているので、同じキャラでも顔つきや技などが異なっている。キャラクタを選択した後、ゲームスピード(最大4段階)の選択が可能となっている。初代が「TURBO 1」で、「X」の「TURBO 3」が「TURBO 2」、「~ダッシュターボ」と同じ「TURBO 3」、「X」の「TURBO 4」が「TURBO 4」、といった具合になっている。

ゲームモードを選択するとこのようなキャラクタ選択画面となる。どの作品にするか、そしてどのキャラにするか、という順だ。初代、「~ダッシュ」、「~ダッシュターボ」、「スーパー」以降と使えるキャラクタが増えていく。右は初代リュウと「X」のリュウ。グラフィックも色もちがうのでかなりの違いを感じてしまう

 初代の登場以来、バージョンアップを繰り返した「ストII」だけに、シリーズそれぞれに特徴がいろいろとある。基本的には、初代から最終作「X」にいたるまで、攻撃力はマイルドになっているが、その分技が増えていっている。下にシリーズごとのキャラクタの特徴と変遷を主人公・リュウを例にピックアップしてみた。また、途中でなくなってしまったテクニックなどもあり、遊ぶ人の思い入れなどに合わせてキャラクタを選んでいくといい。歴代プレーヤーなら「あのときのあいつは面白かった」という基準で遊んでみるところからまず始めると楽しめるだろう。

初代(ノーマル)のリュウは、ダメージ量が高いうえに気絶値の面で有利。めくり(裏周り)強キックからしゃがみ弱キック3発で相手は気絶してしまう(相手は「X」リュウ)
初代~「~ダッシュターボ」まで限られたキャラ(リュウ、ケン、ガイルなど)で使えた“同時押し”。ここでは近距離立ち弱キックをしゃがみ弱キックと強パンチを同時押ししてしゃがみ強パンチでキャンセルし、さらにそれを強波動拳へとつなぐ3段コンボにしている

 大雑把に言えば、ハイリスク、ハイリターンの初代から、緻密な駆け引きが要求される「X」へと変わって行ったといえるのだが、それぞれのキャラクタにも強さのピークがある(初代のガイル、ダルシム、「~ダッシュ」のベガや、「~ダッシュターボ」のザンギエフ、「スーパー~」のホーク、「X」のディージェイやバルログ、といったふうに)。また、システム的には「X」をベースとしているため、起き上がり動作から必殺技への完全移行などがサポートされているので、いわゆる「ハメ」や、「バグ」に対する対応は基本的に取れている。「X」のシステムを採用しているため、連続技は技がつながれば初代キャラでも関係なくコンボ表示なども行なわれる。

【初代(ノーマル)】
対戦格闘ブームの立役者である偉大なる初代。弱、中、強3種類のパンチ、キックに加え、コマンドによる必殺技、そしてそこから広がるコンボ……瞬く間に全国を「ストII」旋風が巻きこんでいった。3段コンボで気絶(ピヨピヨ)になったり、弱攻撃連打が恐怖だった。リュウの基本的な能力はケンと変わらなかったが、気絶時にケンよりも被ダメージが高いという違いがあったりした。昇龍拳は弱が2ヒットする相手がいて、地上でヒットするとダウンしないが上昇中は完全無敵という特性があった
【ダッシュ】
四天王(ベガ、サガット、バルログ、バイソン)が使用可能に。ゲームスピードが若干上昇。リュウは竜巻旋風脚の上昇、下降中に無敵時間がつき、ヒットすれば相手が転倒するように変更。波動拳が高速化、昇竜拳が弱で地上ヒットすると転ぶように
【ダッシュターボ】
ゲームスピードが4段階までセレクト可能に(設定による)。リュウは空中竜巻が追加。波動拳は技モーションが高速化、逆に昇竜拳の動作はケンのほうが高速化されている。より一層ケンとの差別化が施されている
【スーパー】
システム基板がCPSIIに。グラフィック、サウンド、アドバタイズデモが大幅変更となった。8人のトーナメントバトルが可能なバージョンもあった。キャミィ、フェイロン、ディージェイ、ホークが参戦。リュウは空中竜巻の軌道が変更になり、ファイアー波動拳が正式に必殺技に
【X】
スーパーコンボの導入、スピード4段階まで選択可能(設定による)になったり、投げ抜けなどが追加されるなどシステムの変更を受けた。しゃがみガードできない地上での中段攻撃などが追加され、各キャラクタはそれぞれバランスの再調整を施された。そして豪鬼が登場。リュウは→強パンチ、→中パンチ、斜めジャンプ中の中パンチなどの新技を会得。スーパーコンボ「真空波動拳」は最大5ヒット。飛び道具を相殺する

■ シンプルだけにリスクもリターンもわかりやすい

 古いゲームをプレイしてみると、一概にいえるのは、「シンプル」であること。このゲームも、空中ガードやその他もろもろのシステムで変化していった昨今のゲームと比べると、非常にシンプルである。地上での技のリーチや判定の大きさなどを主軸とした駆け引き、そして必殺技などを含めた地対空の駆け引き、そして空中での迎撃など、攻撃、そして防御の仕組みはわかりやすい。

 逆に、一度ミスを犯すと、最低でもライフゲージの1/4~1/3以上を持っていかれる激しいゲーム性になっている。特に連続技のダメージはそれを脅威的なものにしており、通常技の連打によるコンボから始まり、必殺技を使ったキャンセル、さらに飛び込みからの連続技など、そのダメージはかなりのものになってくる。大雑把に遊んでも十分面白いが、細かな駆け引きを上手く切り抜けてダメージを与えることに成功する、という喜びこそ「ストII」シリーズの醍醐味なので、空中ガードやダッシュをはじめとした昨今のフォローがあふれるゲームをプレイした後では、このゲームのリスクとリターンのやり取りはシーソーの傾きが激しいと感じるかもしれない。

 ただ、筆者も当時から歴代シリーズを遊んでいた身として、キャラクタや戦略などを思い出しながらプレイしていくと、自分の記憶力に思わぬ感動を受けたり、新たな発見に喜びを見出すことが楽しいと思える。逆に、当時はできていたことができなくなっていたり、ヘコんでしまうこともあるのだが……(苦笑)。こういったノスタルジーに浸れる部分もありつつ、異なるシリーズの組み合わせでキャラクタを選べるという試みは、思ったより楽しい。「CAPCOM VS.~」シリーズなど、こういった要素を含むゲームはいくつも登場してきているが、代を重ねた「ストII」だけに、このような面白みがより明確に味わえたのだろう。

飛ばせて落とす、通称「鳥カゴ」。リュウの場合は波動昇龍拳。こういった戦略やテクニックにシビアさが求められる

■ セーブできない「OPTION」は不満

 この作品、メモリーカードに対応していない。つまり、セーブできないので、ボタン設定の変更などを起動ごとに行なわねばならない。ジョイスティックでこのゲームをプレイしたい、という人には少々面倒だ。

 せっかく、BGMをCPSI、CPSII、アレンジと選択できたり、ゲームスピードの変更ができるようになっているのに、これを保存できないのはもったいない。筆者の場合、やはり初代からのCPSIのサウンドが気に入っているし、ゲームスピードはTURBO 3が妥当だと思っている。標準の設定ではサウンドは「ARRANGE」だし、ゲームスピードはTURBO 2なので、いちいち設定しなおさなければならないのには少々困った。メモリーカードを持っていないプレーヤーは皆無だと思うので、できればこういったところはきっちり作って欲しかったところだ。

「オプション」の中はそこそこ項目がそろっているだけに、起動時に再設定が必要なのはちょっともったいない


■ 懐かしさだけでない試みは評価できる

「X」と同じく、CPU戦でラストに豪鬼が出てくる。空中で2発放たれる斬空波動拳、連続ヒットする竜巻斬空脚や 豪昇竜拳など、当時の強力さはそのままだ。コマンドを入力すればプレーヤーキャラ(CPU豪鬼とは性能が異なる)としても使える
 前述の「CAPCOM VS.~」シリーズなどのように、違ったシリーズものを対決させる、というものとは微妙に異なるが、「ハイパーストII」は、シリーズものの強みを活かしたタイトルのあり方を1つ提案していると思う。シリーズプレーヤーの知識は間違いなくこの作品を遊ぶときに活かされるし、新たな組み合わせによる駆け引きの選択肢を増やしたことで、今なおアミューズメント施設で稼動している「X」の代替としても楽しめそうだ。対戦格闘の本質といえる、駆け引きの面白さと、シンプルながら強烈な技の数々など、操作して楽しい、戦って楽しい、という面白さも十分受け継いだ作品といえるからだ。単なる歴代シリーズコレクションではなく、新たな土俵を用意してくれたことには素直に感謝したい。

 また、ロードは最初と、「GALLERY」、「OPTION」に入り、抜けるときに行なわれるのが顕著なぐらいで、あとはほとんどシームレスに近いのは特筆すべき利点だ。ゲーム中でも、上手くロードを感じさせないつくりになっており、SELECT+STARTですぐにタイトル画面に戻ることができるのはすばらしい。

 ただ、昨今のゲームに比べればグラフィックは寂しさを感じさせないわけでないし、いろいろ物足りなさを感じるかもしれないという危惧はあるが、そんなことを気にする人はそもそもこのゲームに見向きもしないだろうと思われるから、そのこと自体が筆者の杞憂に終わるだろう。

 それから、対CPU戦では「X」のキャラクタのみが対戦相手に選ばれるのも残念といえば残念。また、ボーナスステージも「X」をベースにしている以上しかたのないところなのだろうが、入っていないのはさびしいところ。

 稼動開始予定のAC版も含め、懐かしさを感じるとともに、格闘ゲームの面白さを再確認できるタイトルであることは間違いなさそうだ。低価格で楽しめる新たな「ストII」、一度触れてみてはいかがだろうか?

CPSIでの「スーパー」以降に登場したキャラクタのステージ曲も聞ける「GALLERY」 「GALLERY」では、映画「ストリートファイターII MOVIE」の全編が収録されている。画質は飛びぬけてよいものではないが、当時を知りたい人、なつかしみたい人には十分 「GALLERY」では、シリーズのオープニングとスタッフロールも収録されている

(C)CAPCOM CO., LTD. 2003 ALL RIGHTS RESERVED.

□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□「ストリートファイター」15周年記念公式ページ
http://www.capcom.co.jp/sf15th/
□製品情報
http://www.capcom.co.jp/hyper_sf2/
□関連情報
【2003年11月27日】カプコン、「新製品内覧会」を開催
ACでも「ハイパーストリートファイターII」が2004年稼動決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031127/cap.htm

(2004年1月6日)

[Reported by 佐伯憲司]


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