★ピックアップ アーケード★
■ 「頭文字D Arcade Stage」プロデューサーの新井氏に直撃インタビュー! (後編) 前回に引き続き、「頭文字D」プロデューサー新井氏のインタビューの後編をお届けしよう。今回はよもやま話的な内容がメインだが、それだけに、ファンの興味を刺激する単語が、そこかしこにちりばめられている。そういった部分をふまえつつゲームをプレイすることで、新しい発見などがあるかもしれない。
■ 熱心なプレーヤーと、それを生み出す環境
-- プレーヤーの“愛着の強さ”を感じますよね。原作、カードしかり。 新井: 本当に、愛着が強くて……ヘタなもんつけられないから怖いですよねぇ。でも、ボクらも逆に愛着もってゲームつくってますから。大きく外すことはないと思いますよ。たぶん、ユーザーさんが期待しているところと、ボクらが作りたいものがミートしている感じが、今しているんですよ。メールとかくると「あ、それやろうと思ってたんだよ!」みたいな。だから、結構、平気かなと思ってるんですけどね。ただ、油断はできないですけどね。お客さんの気持ちってのは本当にうつろいやすくって。 -- やはり、ユーザーが求めるものとマッチすると反応は歴然と違いますよね。「つかみ」の部分とか。アーケードゲームは“微妙な盛り上がり”が重要だと思います。 新井: コンシューマなら、お金払っちゃえば最後までやらなきゃ損、みたいな。その点、アーケードは怖いですから。そこいらへんは、気をつけなくっちゃなーとは思ってるんですけど。 -- 100円入れてつまらないと止めちゃうし、上手くいくと何となく盛り上がる。今は、ネット上で体験を共有するような部分もありますし。 新井: アーケードは100円で終わっちゃうか、コンシューマーソフト代の6,800円以上に金つぎ込んでもらえるか、みたいなところがありますからね。 -- ゲームが出てから、何カ月か“共有体験”みたいな、そんな雰囲気がありますよね。 新井: 奇妙な“場の雰囲気”ってありますよね。なんか“連帯感”っていうか、あと、ちょっとピリピリしたもの。「あいつ、速い!」みたいな。今回、ゲームセンターに若いっていうか、子供までいかないかな……地方にいくと中学生がやっていたりとか。あれ、うれしいですよねぇ。今までいなかったじゃないですか。プリクラとかUFOキャッチャーやってるカップルとゲーマーがドッといるだけで、子供たちがいなかった。 -- 夕方とかになると中高生がやってて、夜になると背広姿のサラリーマンがハンドルを握っている。 新井: ボクらの意図にバッチリなんですよね。部活の帰りに、ちょっと寄っていこうみたいな。うれしいですねぇ。 -- 地方のロケーションでも強いですよ。ただ、新宿とかに出たほうが、筐体が多いからプレイしやすい。 新井: このまえ京都に出張したとき「京都ジョイポリス」にいったんですけど、昼間、2時か3時でしたけど、並んでやっている人がいましたからね。おぉ、こんな昼間から! 学校は!? みたいな(笑) -- それだけ多くのプレーヤーが注目し、支持している。ドライブゲームでは久しぶりですよね。 新井: 『「セガラリー2」以来です』と言われたりとか。ぼくもそうですね。作っている最中にチェックのためにやってくれっていわなくても、スタッフがやっちゃうんです。これっていい傾向で、やっぱみんなゲーム好きですから。あのとき「あれ、もしかして、これヒットするかなぁ」みたいな。 -- それはよく言われますよね。他社でも、社内にゲームをおいて誰もやっていないと「あ、ヤバい!!」とかいって発売日がどんどん伸びていく(笑) 新井: もちろん社内ロケテもやるんですけど、群がっているゲームは大丈夫ですね。大コケはないです。そのかわり、ちょっと群がってパーッと散ってると、出てから「あぁ、やっぱりね」と。社内ロケテの場合、タダじゃないですか。タダでやんないってどういうことよ、みたいな。
■ バランスよく選び出されたコースと内容。それだけに次が……
新井: ボクは上級までですね。八方ヶ原は、ちょっとどうかな、と(笑)。 -- これ以上コースを増やすのは、正直難しいですよね。八方ヶ原以上に曲がりくねっているのも、どうかと思いますし。 新井: そうなんです。だから、あとはもう「本物のコースはこうなっているから勘弁してよ」というか。今回助かっているのは、「頭文字D」が原作になっていることが、ゲームのアラを隠してくれているんです。拓海とかライバルが超早くても「拓海だからしょうがないよね」って終わってくれる。コースもそうですよ。バランス的には、八方ヶ原は悪い。こんなところを走るのかと。ところが、原作に出ているし本物のコースもそうなんだよっていうと、みんな「あー、そうなのか」と文句がパタッとなくなるんですよね。 -- 最終的には、一番多く八方ヶ原を走っているんですが。ずっと振っているようなんだけど、微妙に違うところがあって。どこが本当にきついコーナーなのか、わかりにくい。 新井: 八方ヶ原! 前半と後半でリズムが変わるのが苦手なんですよね。今までエイッ、エイッだったのが、エイー、エイッに変わったりとか。ぼくは秋名が好きなんですよ、やっぱり。あと、最近は碓氷が、中級がなにげに面白くなって。 -- 碓氷はけっこう難しいですよね。 新井: 難しいっす。タイムアタックすると、ワンミスでガクッとくるコースなんで。面白いですよね。 -- ユーザーさんの一番人気は、やっぱり秋名ですよね。インターネットランキングも激戦ですし。 新井: 下りですね。普通に面白いんで。リズムが丁度いいんですよね。ぼくも秋名の下りが一番好きですね。 -- 難しいけど、走っていて気持ちいい。いいコースだと思います。それだけに、次が難しい……。 新井: そうですねぇ。次は、ま、原作に入っている赤城、いろは坂、正丸峠、定峰峠とかも……。この間、いろは坂を攻めましたけど、思ったより面白かったですね。八方ヶ原よりも面白かった。八方ヶ原は、ちょっとボクは攻めていて「死ぬぞー」とか思ってて。いろは坂は、結構、あのー、面白かったですね。ゲームにしたらどうかなーとか、ちょっとわかんないですけど、ゲームにしてもちょっといけるんじゃないかなぁ、と。よかったですね。道も思ったより広くって。しかも一方通行だから、インカットしても対向車がないんで、こりゃいいすね、みたいな感じですよね。右コーナー、ビビるんですよ。対向車とか。今回、いろは坂をガンガン攻めて、面白かったですね。ゲームにすると、また違うんですけど。
■ 次回作は対戦プレイにも配慮したい
新井: 対戦のシーケンスが……ゲームが始まるときに一緒にお金を入れないとダメじゃないですか。今、おかげさまで人気がある状態で、なかなか両方同時にあいているときがない、というのもあります。もし対戦だったら……「湾岸ミッドナイト」みたいに乱入とかじゃないとダメですよねぇ。やはり「対戦したい」というユーザーさんからの要望がありますよ。 -- あとは、システム的にカスタマイズやポイント蓄積といった「クルマを強くしたい」という欲求のほうが、対戦熱を上回ってしまったような気がします。あと、「公道最速伝説」が楽しいということもありますし。 新井: あれでもう、ライバルが現れて“対戦”してますからね。今までって、コース何位で走ってるとかだったんですけど、あれでサシの勝負を毎回やっているから、今さらみたいな感じはあるかもしれませんね。 -- それをふまえて、次回作はもっとユーザーさんに対戦してもらおう、というようなお考えは? 新井: 考えてます、はい。やっぱりユーザーさんからも「対戦したい」という要望が多いんですよね。今回筐体がシングル筐体……いままでのツイン筐体みたいに分かれていないんで、池袋GIGOみたいに向かい合わせで配置しないと。やはり、横並びだと入りづらいですよね。 -- 他のタイトルを見て、影響を受けているところはありますか? 新井: やはり走行性能とかですねぇ。あと、今回こだわったのは、ステアリングがクリクリって回るところとか。ツイン筐体だとドライビングポジションがメチャメチャなもんですから、ハンドルが大きくなると腿にぶつかっちゃうとかあるんですけど、イス下の鉄板を薄くしたりとかしたんですよ。少しでも腿に干渉しないようにしたりとか。それは、色々なゲームをやってみて影響を受けましたねぇ。 -- ゲームでは道幅などがアレンジされているんですよね? 新井: 道幅とか、ちょっとだけですよ。八方ヶ原の始まりのところとか、実際の道が狭かった部分を少し広げたりとか。でも、そんなに大幅には変えていないですね。秋名なんかは、ほとんど一緒ですよ。 -- 走行性能は、ディフォルメされているんですか。 新井: ディフォルメしてますねぇ、かなり。それでも、大嘘をついているのがバレないようなディフォルメを念頭においていますね。みんなが想像しているドリフトから大きく外れないようにしました。それぞれのクルマがちがいますよね。「ランエボ」は四駆が無理やり曲がっているみたいな感じを出しています。あれは、うちの森が走行性能を作ったんですけど、彼がまぁクルマが好きというのもあります。あと、ぼくらの意見もありますけど。ぼくもクルマ好きなもんですから。いやいや、もう少し、こうでしょう、ああでしょう。カウンターは切らせたいね、とか。アタマのなかで「ミッドシップは、やっぱカウンター当てっぱなしで曲がったらカッコイイでしょう」みたいなのがあったり、四駆が「ゼロカウンターでギューッと立ち上がっていくのはカッコイイよねー」とか、そういうとこですよね。実際、ぼくもランエボのっかってますけど、ゼロカウンターで立ち上がっていくなんて相当なモンですけどね。死んじゃう、死んじゃう! って感じですけど。 -- こうしたクルマの挙動とか基本的な作りって、実は以前から変わってませんよね? 新井: そうです。ぶっちゃけていうと「セガラリー2」から変わってないですから。それをやっぱり「頭文字D」という材料が引っ張ってくれているんですよね。
■ ファンの立場で作られた「頭文字D Arcade Stage」
新井: まっったく関わってないですね(笑) 承認という形で。お会いしたこともないですし。何せ忙しいですから。一応、しげの先生からお褒めの言葉をいただいたんですよ。編集さん経由で。 -- じゃぁ、開発中のゲームに乗ったということもない? 新井: ないっす、ないっす。勝手にファンが作ったっていう感じで。 -- 将来的に、しげの先生が直接企画に関わるといった予定はありますか? 新井: やって欲しいですけどねぇ。キャラクタ描いてほしいなぁ、とか。 -- 新キャラクタとか、ゲームのオリジナルキャラクタとか? プレーヤーキャラクタの顔が出てくるとか。 新井: そう。そういうのがやれると面白いな、と思うんですけど。走行性能の監修も、今回はしてもらってないですし。前ですと、プロのドライバーとかお呼びしてやったんですけど、今回はホント自分たちで勝手に作ったって感じです。あと、やっぱりプロの方って「レースのプロ」であって、ゲーム作るのはプロじゃないんで。アドバイスされるんですけど「いや、それはわかっててあえてやってるんですよー」、とかあるじゃないですか。「Gがないねぇ」とかいわれて(笑) -- 無いほうが良かったのかもしれませんね。ファンの視点で作られているというのが重要な部分であって。 新井: プロの方がやると、どうしても難しいほう、難しいほうにいってしまいますから。誤解を恐れずにいうと「たかがゲーム」って思って作っている部分があるんですよ。「ゲームだからいいじゃん」みたいな感じで。 -- そんな、細かく言わないでよ、と。 新井: そ。バカにするわけじゃなくて、ゲームだからこそできる世界ってあるじゃないですか。シミュレーションで作るんだったら、サーキット行けばいいじゃんってなっちゃうんで。そうじゃなくて、ゲームだからいいじゃん、大目に見てよ、とか。でもいいでしょ、ウソついてるけど面白いから、みたいな。 -- そういう意味では、まさに今回の作品は「ゲーム」ということになりますね。 新井: おっかなびっくりでしたね。世に出すまでは。このディフォルメが受け入れられるのかなぁ、とか。あと「頭文字D」という名前をつけることで、お客さんを限定しちゃうのかなぁ、と。 -- 知らない人がやってくれない危険性はありますね。 新井: それはありましたよ。 ぼくらのなかだけで流行っているだけなんじゃないの? もしかしたらっていうのはあったんですよ、当初は。 -- でも、盛り上がったお陰で「頭文字D」を知らない人もやっていますね。ゲームにハマって「頭文字D」を読み始めた人も何人か知っています。 新井: それ、結構聞きますねぇ。うれしいですけど。サーキットとかにいっても、ここ3、4年でハチロクが多いんですよ。 -- 中古の値段も高騰してますし。 新井: もう100万しますから。ぼくが高校のときに30万で買えましたよ。 -- 当時はFRの練習車っていわれてましたよね。 新井: 廃車にするなら売って、みたいな感じの車でしたから、ハチロクって。トレノも俺ら買わなかったですからね。レビンでしょ、みたいな。不思議ですよねぇ……。最近、雑誌を買うと新パーツ発表とかいって「ハチロク用だ」って、エー!! マジで!? もういいでしょう!? みたいな。でも、人気ありますからね。 -- 今回、こういった違う層も含めて盛り上がっていますよね。 新井: そうなんですよ。ちょっとうれしいですよね。ボクらが思っていた以上に、漫画ファンとゲームファンって離れていたみたいで。それが今回くっつきましたよね。漫画ファンでなおかつゲームファンの人は、コンシューマにいっちゃうみたいですね。そういう人たちをゲーセンに呼べたのは、ちょっとうれしいっていうか、よかったなぁっていうか。 -- 出始めの頃、景色が違いましたからね。 新井: 違いました!! -- 女の子がふたり連れで乗っているとか。ある意味、恐ろしい状況。フツーに走れる。あと、ハチロクにジーッと乗ってる。あぁ、拓海が好きなんだろうなぁ、と。 新井: カードを集めたり。 -- 最初の頃、カードが何種類あるとか、情報がないじゃないですか。で、何枚も何枚も引いている人がいましたね。トレカ風に。 新井: そこも、ちょっと狙ったんですけどね。そこまでとは思わなかったんで……。8種類も、はじめは多いかなぁとか思ったんですけど。全然計算外でしたからねぇ。もっと作っとくんだったと(笑) カードは、やはり対戦のときに使ってほしかったですねぇ。オマエ、なんのカードでくるんだ? じゃぁ俺はこれで。今日は上りだからターボでいこうとか。下りだからNAでいこうとか。 -- コースによってチューニングが異なるカードを使い分けたり? 新井: それもちょっと狙ってたんですけど。今回、良くも悪くも予想外の部分がありましたんで。(次回作では)悪かった部分を予想通りにしたいなぁ、というのはありますね。使用車種も、ここまで偏ると思わなかったんですよ。FDとハチロクと。もう少し散らばるかなぁ、と思ったんですけど。そこを、次もし作るんだったら、これを使っても面白いし、これを使っても面白いし。逆に、もっと原作に忠実に、ハチロクは秋名の下りは早いけど上りはダメだとか。 -- ハチロクは上りも速いですよね。 新井: それもちょっと予想外だったので……そういうところですね。直すというか、選択の余地が増えるようにしたいですね。
■ 色々な意味で予想を裏切る“速さ”
新井: 確かにそうなんですよねぇ。ちょっと速くしたところもあったんですけどね。 -- 思ったよりも速かった、ですか? 新井: タイムアタックのタイムとかも、予想より5秒くらい速かったですねぇ。ぼくらは秋名の下りとか、まぁ3分は切るだろうと。2分50秒……そうだなぁ、後半? とかいってたんすよ。が、全然甘くって。 -- 実際の話、ゲームセンターで3分を切る人は、そんなにいないですよ。インターネットランキングを見ていると参りますね。 新井: 嫌ンなりますね(笑) -- 溝をほとんど使わなくても、3分は切れますよね。 新井: 溝ってペナルティが大きいから、だんだん避けるようになってくるんですよね。 -- 溝を使うとなると、それを前提にいつも練習しなきゃいけなくなるから辛い部分があって。普通に調子よく走ってて溝にのっかると、ふられなくて、そのままいっちゃってビビったり。 新井: 調子狂いますよね、なんかね(笑) たぶん、あそこで詰めていると思うんですけど……あそこ、5回チャンスがありますから。あそこで相当稼げるはずですから。10km違ったら、全然違いますよ。あのあと、結構高速が続きますからね。 -- 普通のコーナーでブレーキタイミングとアクセルをオフにしている時間と、脱出して立ち上がるときに、その微妙な具合で随分変わりますよね。最初のうちはギリギリまでひきつけて一気にブレーキを踏もうとするから、それに気づくまでに時間がかかる。 新井: そこが森の凄いところで、本当のクルマと一緒なんですよね。ぼくも実際のサーキットでギリギリまで突っ込むタイプなんですよ。で、ドカーン! っていくんですけど(笑) インストラクターから「突っ込み重視とかいってるうちは、一生速くなんないぞ、新井君!」っていわれて。あれと同じで、そこそこ実車で走っている人は「良くできてるねぇ」っていってくださるんですよね。もちろん大ウソはついているんだけど、肝心のトコはウソついてないよねぇ、みたいな。 -- そこは、逆にドライブゲーム慣れしている人が、かえってハマっちゃうところですね。 新井: そうですね。いわゆる、ドーンといってギュッ! って曲がっていっちゃうようなとこがありますもんね。 -- 本当にスローイン・ファーストアウトなの? って疑いながらいっちゃう。そのぶん、ひとつのコーナーに対して色々なアプローチがあるのが凄く面白いですよね。今までのドライブゲームは、規定のフォーマットで突っ込み、曲がるってやったんですけど、「頭文字D」は溝があるし、車種によってラインも変わる。 新井: だから、対戦すると面白いんですよね。ラインが違うから。今までのレースゲームだとぶつかるじゃないですか。コーナー、どうしてもラインが同じだから。車種が違うと、からまなかったりするんですよ。あれ、オマエそんな内側から曲がるんだ、みたいな。四駆だったら大外から回ったりとか、ハチロクだったら内側からギューと切れ込んでいったりとか。それが競ってる感じがするんですよ。 -- 対戦は、バランス取りが難しい部分でもありますよね。抜く、抜かないというところが。普通はあまり抜けないというのがベースなんですけど、実際ゲームだと、1回で終わっちゃいますから。ちなみに、私の周辺ではインプレッサが一番良いといわれています。スタートが早いんで。 新井: そうかも。森が、どれが一番速いか教えてくれないんですよ! 「それは言えないな。やってください」とか。マジで!? 身内でもダメ!? みたいな(笑) -- 今のところ、インプレッサでスタートダッシュを決めて、あとはぴっちりブロックで押さえるのが対戦で有効じゃないかと思っているんですけど。 新井: ぼくは勝手にランエボ最強説とか唱えてましたけど。あれもトラクションがいいから。 -- ランエボも加速がいいですよね。 新井: そうか、インプレッサか……森の野郎! あれほどランエボを速くしてくれといったのに!!(笑) -- いや、インプについては、私が勝手にそう考えているだけで(笑) 何にしても、個々のクルマに対する思い入れや意見があると、より楽しいですよね。 新井: 性格付けですよね。これは四駆だからアンダーが強いとか、インプレッサは四駆だけどアンダーは弱めとか……なるべく考えて作りましたねぇ。
■ アプローチは異なれど基盤を同じくする同世代のクリエーターたち
新井: 最近、ゲームを作っている現場で力を持っている連中が、ボクらぐらい……30代の連中が多いんですよね。そういう連中、たとえば「湾岸ミッドナイト」の小山さんとか、ボクらほとんど年齢がかわらないんですよね。で、ちっちゃい頃からジャンプ、ヤンマガ読んでっていう連中が、う~~~んってヒネって考えたものって、やっぱみんな一緒なんでしょうね。F1とかでも、早いクルマを作ろうと思うと、全部似た格好になっちゃう。やっぱり、同じ知識の連中が、同じもの考えて、同じ予算って考えると、どっかでシンクロするんでしょうねぇ。 -- 30代というと、スーパーカーブームを経て「サーキットの狼」もあり……。 新井: 多角形コーナリングにもひっかかってますから、ちゃーんと(笑) だから、次もし何かゲームを作るとき、ぶつかるかもしれないですねぇ……。連中と遊んだりするんですけど、趣味とか同じなんですよねぇ、結構。カートしにいったりとか。欲しい車が似ていたり、とか。ちゃんとお話したことはないんですけど「グランツーリスモ」を作った山内さんとかも、たぶん、クルマの趣味とか似ていると思うんですよね。たぶん、山内さんはボクに近いタイプで「CAR GRAPHIC」系のスカしたアレだと思うんですよ。で、小山さんとか石井さんは泥臭い系で「OPTION」とか「CAR BOY」系。ぼくらは「ジャガー」を「ジャグゥア」といっちゃったり(笑) -- 山内さんのこだわりは徹底的ですよね。ミリ単位でこだわる。ユーザーさんに伝わるかどうか、微妙な部分ではありますが。 新井: これ、ちょっと話がずれちゃうんですけど……「CAR GARPHIC」っていう雑誌がありますよね。あれで、イギリスのライターがいて、趣味で「グランツーリスモ2」にハマっているという記事があったんですよ。で、あれセッティングが出来るじゃないですか。60何年型のマスタングで遊んでいたら、どーしても早くならない。で、そのライターがとある友人と話をしているときに、その年式のマスタングだったら、俺が本を持っている。で、そのマスタングが出て勝ったレースのセッティングが載っている。バネが何キロで動く、とか。で、それを見て入力したら、速くなったって(笑) そこで、そのライターが、恐るべし「グランツーリスモ」! と。それは、セッティングしてあるんじゃなくて、ちゃんと作ってあるから反応するんだ、と。そら恐ろしいものを感じましたね。 -- 感動すると同時に、怖くなりますよね。 新井: だから、山内さんはシミュレーションに先鋭化しつつ、あれだけの枚数を売っている。凄いと思います。「グランツーリスモ」は、ぼくの好みとは違いますけど、もう本当に尊敬というか、リスペクトしますよね。ぼくも同じ立場にいるからわかりますけど、そういう風にゲームを作るパワーが違うんでしょうね。普通だったら、下の連中から「そんなに作ってもわかんないですよ」と押し切られちゃいますけど、彼はパワーがあるんでしょうね。羨ましいと思いますね。 -- こだわるといえば、とあるゲームセンターで「頭文字D」をプレイしていたお客さんが「何フレーム、ギアが入らない」という苦情がきて、調べたら本当に遅れていたという実話がありまして。 新井: おっかねーよー(笑)。 -- あとは、各キャラクタのコーナースピードを全部調べている人とか。こんなんありえねーよ、とか。 新井: いるでしょうねー。「グランツーリスモ」だと、こんなところを突っ込まれると大問題になっちゃうと思うんですよ。壁ターンとか問題になりましたよね。今回、さっきもいいましたけど「頭文字D」という題材が難を隠してますよね。 -- コーナーで拓海に勝てると思わないですからね。 新井: ファーストイン、ファーストアウトですから(笑) -- でも、樹には負けたくない(笑) 新井: 樹に負けたらマジ悔しい、とかいうのはありますよね。樹が勝ったときのキャラの絵も、わざとみんながムカつく絵を選んだんですよ(笑) く~ってあるじゃないですか。 -- こいつ喜んでるよー、みたいな。 新井: あれもちゃんと「オマエにいわれたくねーよ」と、ツッコミが入れられるように。 -- 次のときには「池谷先輩から、いい勝負をしたってきいたから」とか。セリフも色々とパターンがあって、車種もちゃんと変えてくれるとか。やってるほうはちょっと違いますよね。 新井: ハチロクのっかってると「ポンコツ」とかいわれて。コノヤロー、みたいな。ななななんだとー、みたいになりますからね。知らないうちに、ユーザーとゲームで気持ちのなかでやりとりができているんですよね。あと、みんな漫画読んでますからね。キャラクタがわかってますから。須藤は態度でかいとか。これはセミナーだとか言われて。おいおい、とか。 -- 有名な決め台詞は、一通り押さえられていますよね。 新井: あれも松本が相当こだわってましたね。それこそ、ユーザーから変につっこまれないように。そんなこと言わねーよ! コイツが! っていわれないように。細心の注意を払って。 -- そういうのが全くないというか、違和感がない。原作のセリフをベースにしながら、状況によってオリジナルのセリフが入ってますよね。 新井: あれはしげの先生にお見せして、了解を戴いているんですよ。 -- 逆に、先生から「こうしてくれ」という要望はありましたか? 新井: ないです。一言いわれたのは「世界観を壊すのは止めてくれ」と。それだけです。ストーリーをかえないでくれ、と。 -- それは、ストーリーの大筋を変えないでくれという意味ですか? 新井: そうですね。例えば、なつきちゃんと拓海がくっつかないようにしてくれ、とか。ゲームに勝つとくっつくとかは止めてくれ、と。あと、妙に態度が悪い樹とかはやめてくれとか。樹はやっぱりイイ奴で、ボケてて、みたいな。そういうトコは変えないでくれと。あとは好きに作ってくれていいと言われました。逆に自動車メーカーがタイヘンでしたね。 -- メーカーさんによっては凄く細かいですよね。クルマの話が出ましたが、車種については、世界観とずれているタイプもあると思うんですが。 新井: ユーザーの方から「NSX」や「Z」を入れてくれとか言われましたけど、峠にいないっしょ、みたいな感じで。そこいらへんは気をつけましたね。車種も、増やせばいいってもんじゃないですからね。入れて「あぁ、待ってました!!」っていわれないと意味ないんで。 -- 単なる品揃えでは、勿体無いですし。 新井: 「これもあるんだ」くらいだったら入れないほうがいい。 -- そういう意味では、今回はベストに近い印象があります。これから足し引きするのは、相当難しいというか。でも、ユーザーさんは贅沢ですから。 新井: 次を作るなら、クルマどーすんだよ、っていうのはありますよね。ユーザーさんは基板の違いとか知ったこっちゃないですからね。「グランツーリスモ3では……」とか言われても……「う、う」って感じで。そうだよなー、お金払うほうは基板関係ねーもんなー、って。逆に、PS2では無理なこととかができますけどね。 -- 通信部分とかですよね。 新井: そうですね。次回作るなら、いろいろ考えて……ぼくは「CAR GRAPHIC」系なんで、攻めるとかいっても箱根とかだったんですよ。で、峠走るなんてそんなーって感じだったんですけど、ラリーが好きなこともあってランエボ買って、でまぁ峠に興味があって行ったんですけど。ま、色々わかったこともありますし。これかぁ、みんなギャーギャーいって面白がってるのは、みたいな。 -- 週末の峠にいってみたり? そういった実際の現場からインプットはありますか? 新井: あります、ありますよ。つけてるパーツですね。エアロパーツにも流行り廃りがあって、「CAR GRAPHIC」系だとエアロパーツつけないんですよ。それは「OPTION」系なんで。自分でもパーツつけたりして。そういうとこですね。峠の走り屋さんがゲーセンきて「なんじゃこりゃ」って言われないような。あと、やっぱりクルマを知らない連中とかもチームにいるんで、そうすると「コレ、かっこいいじゃないですか」って選ぶんだけど「実は、これこれこういう理由で普通は使わないんだ」ということがあって。そこいらへんを気をつけて。ぼくや森の仕事なんですけどね。森は、元々峠を走ってましたから。あと。「OPTION」編集部におうかがいしたりとか。
■ ちょっと不遇なクルマのお話
新井: 峠とか行くと、18、9の免許とったばかりの連中に「来たよ、ランエボ!」とかぬかされますからね。なんだよ、俺関係ねぇよ、って(笑) 結構ヒール。こっちが一生懸命走ってると「速いっすねー、でもランエボですもんねー」って、おいおい、俺の腕は関係無しかよ、みたいな。 -- それって、ゲームやってる人たちの間で「どうせFDでしょ」って言われるのと同じですね(笑) 新井: ぼくもゲームでランエボにハマったんですよね。もー、タイムが出ない。それでFDに乗り換えたら、まー、のりやすいこと。 -- 素直に走るし、曲がるし。 新井: 秋名のヘアピンが楽しいですからね。ランエボのときは「ありゃりゃ曲がんねぇー」とかいってたんすけど、右足一本でキュッキュッと曲がりますからね。 -- 加速は微妙に、速くないんですけどね。そもそも速度が落ちない。 新井: ランエボきつかったっすよ。もうねー、ぼくもランエボばっかりのってたんですけど。乗り換えましたから。もう耐えられない(笑) 手にマメができましたからね。 -- プロデューサーが言うとシャレにならないんですけど(笑) でも、早いですよ、ランエボも。 新井: ツボにハマると早いんですよ。あと、八方ヶ原ではFFが早いんですよ。走り方が全然違うんですけど。アクセルをキュキュッと抜いて曲がるんですけど、見てると速いですよ。 -- 流れる車は、八方ヶ原は結構こするから難しいですね。 新井: それがぼくらの狙いどおりで、八方ヶ原って原作はシビック軍団じゃないですか。だからFFが早いのはOKなんですよ。森が、そうしまして。 -- 一時期シビックが評判を落としましたけど、これで株が上がるかもしれませんね。曲がんねー、速くねーっていわれてて。が、初級から始めた人たちが秋名や八方ヶ原を攻めはじめて……。 新井: 走り方が違うんですよね、FRとかと。で、FRから乗り換えた直後は「なんじゃこりゃ」なんですけど、つかむと非常に走りやすい。 -- でも、試しに1回のっただけだと、わからないかもしれないですね。何回かやってみないと。 新井: ハンドルで曲がるというよりも、こう、アクセルをぬいてキュキュキュキュと曲がっていく、って感じで。豪快に走らせちゃダメ、みたいな。 -- 峠だからグッといきたいけど、そこをこらえて。 新井: オン・ザ・レールで走る。 -- そういう意味で、今一番報われていないのはロードスターっぽいですね。 新井: 不遇ですよねー。実際人気ないんですけど。峠でもロードスターは少ないっすけど。サーキットでは多いんですけど。 -- パーツも多いんですけど。 新井: でも、なんかダメですねぇ。 -- 次から無くなるってことないですか? 人気ないから切っちゃえとか。 新井: ないっす。ぼくら基本的に足していくんで。ぼくはエボ6入れて欲しいんですけどねー。入れてくれないんですけど(笑) -- それはまた、何故? 新井: 今回のゲームの車種の選び方が、原作に出てる車プラス最新のスポーツカー。で、ぼくがこのゲームを作っているときはエボ7が出ていて、6が古かったんですよ。で、うちの松本から「ダメ」と。だから、全部当時の最新車種が入っているんですよね。 -- では、次はもしかするとRX-8が入っている可能性もあるんですね。 新井: 入るかもしれないけど……走り屋からは人気ないでしょうねー。今、走り屋さんは新車で欲しいクルマがないって言ってますから。
■ 世界にはばたく「頭文字D Arcade Stage」!?
新井: 香港の人たちがねー、あれはビックリしましたよね。 -- こういう文化自体は、あまりないと思うんですけど。 新井: あそこ、峠にいったらもう中国でしょ? みたいな。たぶん、一部のコアなユーザーが盛り上がっているだけだと思うんですよ。これはオーストラリアのディストリビューターの方の話なんですけど。香港経由で(日本に)きたらしいんですけど、もちろんオーストラリアの人だから「頭文字D」は誰もしらない。それで、いつもどおり(香港で)ゲームセンターを視察したら、人が群がっているゲームがある。で、「売ってくれ」と。電源とか対応してないんですけど(笑)。 そういう感じで香港では盛り上がっているんですけど、あと韓国でもしかしたら、火がつくかもという噂があって。 -- 最近はインターネットランキングに「another area」が増えていますが、具体的には何処の国からエントリーがあるんですか? 新井: 一番ビビったのが、カナダ。北米!? みたいな。ユーザーからメールがきましたよ。「インテグラが一番速いと思うんだけど、どうか?」って。やっぱり香港からいっているんでしょうね。 -- 知らないところで火がついている可能性がありますよね。アメリカでも「頭文字D」はヒットしているそうですが、彼らに日本の峠とか、そういうのがわかるんでしょうか? 新井: 峠がどうとか、関係ないんですって。今、西海岸のほうで日本車が人気あるんですよ。僕らもあの、アメリカの文化とか関係ないじゃないですか。「スパイダーマン」なんて今の子供たちなんか知らないでしょうけど、映画館なんかではフツーに面白い。結構関係ないですよね。ゲームっていうフィルターとかを通すと、単に面白いか、面白くないか。そういうことだと思うんですよね。
■ ランキングと通信のおはなし
新井: チートは、今のところないですよね。「セガラリー2」のときもそうだったんですけど、台湾の方なんですけどもね。一番速い方がいらっしゃって。で、噂が出てくるわけですよ。2分何十秒って。俺らが「これ、何かやってんじゃないの? 壁ターン使ってるとか」っていってたんですけど。で、東京ジョイポリスで世界大会をやって、その方がいらっしゃったんですよ。そうしたら、目の前でやられたんですよね、その凄い走りを。特に何が凄いって、ミスが1回もないってだけなんですけど、全て最速ラインにのっかってるってだけなんですけど、たぶん「頭文字D」もそういうふうな感じで……。 -- 溝を全部使い? 新井: 溝を全部成功させて、ロケットダッシュをきめて、1回もこすらずみたいな感じできてるんじゃないかなぁ、と。4連ヘアピンも上手くいくと全然違いますからね。秋名の場合は、溝で脱出速度が変わりますから。 -- インターネットのランキング形式ですけど、ネットワーク対応になる予定はないんですか? ユーザーさんを見ていると、デジカメを持ってパスワードを記録する人がいたり……。 新井: 当初、まぁ先ほどいったように「頭文字D」はそんなに期待されていなかったもんですから。そこまでの施設を使う必要ないじゃん、って感じだったんですよね。ぼくらも使いたかったんですけどね。まぁ将来的にやりたいですね。カードを刺しっぱなしで、自動的にランキングされる。 -- きっと、インターネットランキングのタイムも変わると思うんですよ。ランキングに入るタイムを出している人をたまに見かけるんですが、パスワードをメモってないんですよね。それって、もったいないなぁと思って。 新井: やりたいけども、できなかったといったところですよね。あれ、結構金かかるんですよ。同じセガでも別会社ですし。あと、カードが例えば500円とかになると、どうなのかなぁ、と。 -- 車種ごとに別カードだと、厳しいですね。 新井: ぼくらが狙っている層が子供なんで、できれば100円で……。 -- カードの価格が100円というのは、好評を博した部分でもありました。 新井: カードの形も、最初は色々な話があったんですよ。ICチップにして車のキー型にしようとか。で、それはもたねーべ、と。指輪の上にチップを入れるとか。バーチャファイターのカードと一緒で非接触式だから、できるんですよ。SUICAと同じで。でも、やっぱり磁気カードで、財布の中に2枚、3枚入れてもあんまり気にならないヤツって大事だよね、っていう話になって。バーチャファイターカードのとき、ありましたからね。あーっ、家に置きっぱなしになっちゃったよ! っていう。 -- 現状、ゲームセンターの通信インフラで普及しているのはVF.NETですよね。 新井: あれを使いたいところではあるけど、迷うところですね。一長一短……やっぱりゲームって総合的なものじゃないですか。今のチープさというか、いい意味でのお手軽さがあると思うんですけどね。やってみたくはあるんですけど。そうすると、筐体も作り直さなきゃならないとか。 -- そうなるとキットでの供給は難しい? 新井: 無理でしょうね。たぶんねー。やるなら2年先とか、そういう話になるかもしれないですね。いまのところは、考えてないですけどねー。 -- とりあえず、有力な選択肢ではありますね。 新井: あとまぁ、2年経つと変わりますからね、通信も。今、携帯でテレビ電話ができるような時代ですから、2年後とかいうと、また違った通信ものがでてくる。そのうちピッチの回線が余ったりとかして。今、普及台数が下がってますからね。そういうのもあるかもしれないですね。
新井: またゲームセンターに戻ってきていただいて、有難う御座います。
(C)しげの秀一/講談社
□セガ・ロッソのホームページ (2002年6月21日)
[Reported by 石井ぜんじ + 北村孝和] |
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