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会場:Renaissance Hollywood
入場料:40ドル(前売り) 今年の日米のオフラインイベントでも、“いもづる君”や“ギルを抱えて永眠君”といったユニークなネーミングとは裏腹に、強力なアンチRMTツールを導入したことにより、2008年もRMT利用者に対して着実な効果が出たことなどが報告された。 今後は、ワープ行為を繰り返す一発屋のチーターの暴走を防ぐために「自動ジェイル機能」や、アカウントハックを防ぐための「ワンタイムパスワード」などの導入計画も明らかにされた。今回は、クライマックスを経て掃討作戦に乗り出している感もあるSTFに、今年の感想と来年の抱負を聞いた。
なお、日本では「スペシャルタスクチーム(STT)」、欧米では「Special Task Force(STF)」と2つの呼称が併用されているが、「STFが正解です」(Sage Sundi氏)とのことなので、インタビュー中ではSTFで統一している。 ■ 対処率100%を達成。次は2日以内の対処が目標
Sage Sundi氏: 昨年の「アルタナ祭り」だったと思うのですが、「RMTを撲滅します」というお話をしました。しかし、これははっきり言ってしまえばできませんでした。撲滅とは1人もいなくなるということですが、どの業者のキャラクタも100%対処しているのですが、1週間滞在してから対処すると、1週間は他の冒険者たちに、彼らの活動が見えてしまっている。ですから、撲滅率でいえば、100%に到達しているのだけども、発生から対処にはまだ時間が掛かっている状態です。でもこれではまずいですよね。約束していたものが達成できていないことになりますので、こういう風にやっていますよ、やっていきますと発表しておくために、3つの方式を今回発表しました。 新たな公約としては、48時間以内、2日以内に対処していきます。以前だとPLしてキャラクタを育ててということがありましたが、今でもPLすることができないくらい、1週間以内には対処できているわけです。それをさらに縮めて2日以内に対処する方法を導入しました。いよいよ「諦めてくれないかな?」という最終ステージに入ったことの宣言ですね。 編: つまり、対処率100%はすでに達成していて、今はステイタイムをいかに短くするかという高次元の課題にチャレンジしていると? Sundi氏: そうです。その背景には、長時間かけて高レベルキャラクタを育ててノートリアスモンスターを独占して稼いでいた業者たちが軒並みバンされてしまったことで、釣りで稼いですぐにアカウントを消されても大丈夫にしようと戦法を変えてきたことも挙げられます。それに合わせてこちらも戦法を変えていこうということです。 編: 彼らの手法は変わりつつも、目的はやっぱり現金稼ぎなのですか? Sundi氏: もちろんそうだと思います。それも1人2人ではなく、数で勝負という感じですね。 編: 今回「芋づる君」や「ギルを抱えて永眠君」などSundiさんらしいネーミングのツールの存在が明らかにされましたが、このあたりのアイデアは、STFができる前からSundiさんが仰ってましたよね。 Sage Sundi氏: そうですね。当時はそこまでやる必要がなかったのです。キャラクタをもう少し長く時間をかけて処分していっても余裕があったということなのです。しかしこの1年で大きく変わってきてしまいやらなければいけない時期に入ってしまったということです。 田中氏: 特に今回は、釣りに手をつけると一般ユーザーにも影響のあるシステムの変更になるので勇気のいる決断でした。そこまでやらないと撲滅はめざせないということです。 編: 釣りといえば昔、彼らは自動で釣っていましたよね。それが問題となって、釣りシステムそのものが大きな変化を果たしましたが、彼らは、現在手動で釣ってるわけですか。 Sage Sundi氏: 手動だと思いますが、もしかするとツールかもしれませんね。そこは我々にしてみればどうでもよくて、業者らしい動きをしていればすぐに最短24時間で処分できているのです。それをどれだけ早く処分できるかを考えています。今まで1日1回サイクルでログをとって集計して手動で見て処分していたのですが、それでは時間がかかってしまいます。どこまで短縮するかです。 編: それは最近懸案となっているフリートライアルを使った釣り師全員を精査しているということですか。 Sundi氏: フリートライアルを使って入ってきた新規ユーザーだけではなく、釣りをするすべての人が対象です。
■ フリートライアルの効果とその影響について
Sundi氏: フリートライアルは、運営サイドから是非とお願いをしてやっていただいたものです。運営側としてはもっと裾野を広げていきたい。これだけダウンロードが手軽になってくると、「じゃあやろう」と思う人も多いわけです。STFとしては、当然“彼ら”に利用されることは承知の上で、少しきつくなることは覚悟していましたが、その分頑張ればいいではないかと思っています。まずはどんどんお客さんに来てもらいたいという気持ちがあります。 室内俊夫氏: フリートライアルが実現できた背景には、今まで目視で見て処理していたものを「芋づる君」などのツールによってある程度自動的に対処できるようになったこともあります。 Sundi氏: 「フリートライアルをやるよ」と言われた時はさすがに「STF」のメンバーも微妙な顔はしましたけどね(笑)。 編: フリートライアルに関しては、ポジティブな影響の方が断然大きかったといえるのでしょうか。 田中氏: そうですね。定着率もかなり高いです。 Sundi氏: お客さんが残ってくれないとただのやり損なのですが、予想以上に残っていただき新規開拓に繋がりました。 編: 日本だけでなく欧米もでしょうか。 田中氏: やはり日本が断然定着率が高いですね。 Sundi氏: 欧米もすごいですよ。 編: 現在公開されているフリートライアルはWindows版ですが、その効果について数字的なお話はできますか。 田中氏: それはさすがに言いにくいですね(笑)。他のプラットフォームとの比率も公開していませんので……。 編: 今後、Windows以外のプラットフォームへの展開はないのですか。 田中氏: やりたいのですが、やる方法がないのです。PS2にはダウンロードデータをユーザーに配布する方法がないですし、やるとしたらディスクメディアになってしまい、それではコストがかかってしまう。Xbox 360はマーケットプレイスを利用すればやってできなくはないと思うのですが、「FF XI」を起動するのにはゲームディスクが必要というレギュレーションなのでそこが変わってくれないと難しいです。最近のダッシュボードのバージョンアップで、Microsoft側もいろいろと仕様を変えてきているので、今後またお話し合いができるかもしれませんね。 編: ゲームサーバーへの影響ですが、明らかにユーザーが増えた印象がありました。 室内氏: 「STF」でも業者が一気に増えた印象はありましたね。 編: やはりフリートライアルを不正行為を目的に使っているユーザーはいますか。 Sage Sundi氏: それなりにいますね。何をやってくるかわからないし、全部準備しても隙間をぬってきますので、まずはやってどんどん対処を入れていく感じです。 編: 私は比較的人口の多いサーバーでプレイしていますが、コアタイムはユーザーが多すぎてログイン障害が発生することもしばしばです。 Sage Sundi氏: そういう場合は定期的に移転のお願いをしていく形になりますね。 編: 移転以外の抜本的な対策を取るつもりはないのですか? Sundi氏: ログを見ているのですけどね。どのくらい入れない時間があるのか見てはいます。気になる方は是非、他のサーバーに移ってもらいたいです。最終手段としては他のMMOのように強制移動を考えざるを得なくなりますね。 編: たとえば、「EverQuest 2」のようにインスタンスを増やして、ミラーリングすることはできないのですか。また、サーバーのキャパシティを増やすという予定はないのでしょうか。 田中氏: 多分、速いマシンを使うといったことはできるのですが、ゲームシステム的にNMの取り合いや流通するアイテムやギルに関して設計が変わっていない以上、仮にそれをしてしまうとプレイしにくい世界になっていくと思います。今の同じバランスでやっている以上は、条件はすべて同じにしたい。狩場の人口密度もありますのでそこは崩せないです。技術的にはワールド全体では同接で1万人とかいっても構わないのですが、1つのエリアに入れる人は700人くらいが限界です。それ以上になるとゲームとして成立しにくくなってしまいます。ですのでぜひ中村さんも移転していただいて(笑)。
■ 「自動ジェイル機能」でワープするチーターを対処
Sage Sundi氏: 基本チーター対策です。彼らは想定外の動きをしますのでその動きがログに残るのです。それを検知した時にツールが反応する。例えばものすごい距離を動いた時に反応します。 室内氏: 取り組みとしては以前からやっていたんです。ただそれは「STF」が手動でやっていたのですね。「自動ジェイル機能」は、それを究極にリアルタイム化する仕組みです。やった瞬間、キャラクタをジェイルに隔離してしまいます。 Sage Sundi氏: ログを見ていたのですがツールに信頼性が出てきたので、ログを見ずに自動的に放り込みます。 編: 「ヴァナフェス」でチラッとコメントしていましたが、仮実装して暴発したのですか? Sage Sundi氏: ああ、確かに暴発しましたね(笑)。ちょっと実験的にどこからやろうかと試しに1ワールドやってみたのですが、まったく無関係のユーザーさんを飛ばしてしまいました。前から少しそういうところがあって、GMが飛ばされてしまったりということがありました。そうしたことが起きないかどうかを一度ライブサーバーで見てみようとonにしてみたら10分くらいで2、3人飛んできてしまい、飛ばされた方には本当にすいませんという感じでした。 田中氏: システム上、ある特殊なエリアでそういう動きを仕様的に作っていたところがあってそこに引っかかってしまいました。特殊なエリアなのでチェックし切れていなかったんですね。 編: 自動ジェイル機能が実装されると何がどう変わりますか。 Sage Sundi氏: あまり詳細には言いたくないところですが、先ほど挙げた一例として不正な距離を移動した人は隔離されます。そこが大きいです。彼らは目立つのですよね。パッといなくなったり来たりするキャラクタがいると、やはり一般のユーザーさんは「何だろう?」ということになりますよね。 田中氏: 高レベルの業者がいなくなって、みんな低レベルですから、そうなるとやることが限られてきていて、釣りか、クエストを繰り返すワープくらいのものなのです。その2つを封じれば現状ではほぼ100%RMT業者対策ができるのではないかと思います。 Sage Sundi氏: 目立たなければある意味放置できる程度の話ではあるのです。目だってしまえばやるしかない。 田中氏: 12月9日のバージョンアップで釣りの機能も変えるので、業者のやることはなくなるはずです。疲労度の蓄積が大きくなるので、業者にとってはレベル1で釣りをする意味がなくなります。後は釣りで稼いで魚をいっぱいかかえてもある程度の数になれば感知できるのでパスっといってしまう。
■ 「諦めの境地」を狙うSTFの今後の活動について
Sundi氏: 英語で言うと、ライフロングリグレットです(笑)。どうしてもRMT対策はシリアスになってしまうので、少しでも印象を和らげるためにスタッフが考えてくれました。 室内氏: あれを発表したあとコミュニティからわかっているなら早く潰せば良いではないかということを言われました。それも一理あるのですが、全容を理解しないままやっても、我々の把握していないキャラクタがまた入ってくるだけです。どうせ消すのだったら汚いお金や汚いお魚をいっぱい詰め込んだ状態で消えてもらおうというのが「ギルを抱えて永眠君」のコンセプトです。我々が悪いということはわかっていながら生かしているということは、そういう理由からで、その瞬間には悪影響を及ぼしていないためなんです。 編: しかし、実際問題として、それで諦めてしまう業者はいるのでしょうか。 Sundi氏: いますよ。だから、開店休業中の業者も今多いですし、回転しているように見えていても実際在庫はないこともある。 室内氏: RMTサイト自体でサイトが閉じることはなかなかないのですが、最近は看板が出ていてもただ注文を入れてもすぐに納品されずに受注生産といったものがあります。向こうの方も自転車操業化してきているということは言えると思います。 Sundi氏: 警戒をして金庫をたくさん持っていることもいえると思います。いきなりさくっとやられてしまうかもしれない。 編: 直近のSTF活動のトレンドはなんですか? Sundi氏: それはもう対処までのタームを短くすることです。 室内氏: 毎月一斉対処の報告に出していますが、あのカテゴリが一種のトレンドですよね。 Sundi氏: レポートについては、日本での後楽園、ハリウッドのイベント以降に関しては、割と言うことがなくなってきています。今後は、内容的には消極的な数の報告に変えていこうと考えています。逆に言うと、毎月大声上げて言うほど大事ではなくなってきているのです。 編: ネタがないというのは良いことですよね。それでは来年の「STF」の目標は何になりますか。 Sundi氏: 業者の方々に本当に諦めていただいて出て行っていただくことではないでしょうか。他にもMMORPGは世間にいっぱいありますから、RMTが容認されているタイトルの方でやっていただければよいのではないかと思います(笑)。 編: 数年前に比べると余裕が出てきましたよね。昔はイラつきが隠しきれない印象がありました。 Sundi氏: 不正アクセスが増えたときが、一番痛かったですよね。 田中氏: ウチが守りきれない問題なのでフラストレーションがたまりました。我々としてはウィルスチェックを欠かさないでくださいとか、OSのアップデートをしてくださいというしかないですから。 編: アカウントハックについて効果があると言われているワンタイムパスワードの導入についてはいかがですか。 Sage Sundi氏: 導入したいと考えています。会社の方針としてもすでにGOサインは出ているので具体的にどう入れましょうかというところです。よくあるランダムパスワードを生成させるタイプです。すでにBlizzardさんは実装していますよね。今年はもう終わりですので来年のどこかで入れたいなと思っています。なるべく早い時期に入れられるように調整しています。 編: この時期にワンタイムパスワードを導入する理由はなんでしょうか。 Sage Sundi氏: 数は減ったとはいえ、今でも不正アクセスが続いているからです。ワンタイムパスワードが導入されれば、アカウントハックの被害はほぼなくなると思うのです。 田中氏: 「FF XI」だけでなく、今後スクエニが作るオンラインコンテンツ全体の問題だと捉えています。 編: それでは最後にユーザーさんに一言お願いします。 室内氏: 今後も頑張りますのでよろしくお願いします。 Sundi氏: 毎月出すメッセージを小規模にしていくくらい、問題の規模としては小さくなってきています。最後の一握りを潰すところに来ていると思いますので、もうひとがんばりしたいです。 田中氏: 開発でできること、運営でできることクライマックスに来ていると思いますので、後はワンタイムパスワードでアカウントハックの部分を防ぐことができれば完全勝利ということになると思います。
編: 今後も引き続きがんばってください。ありがとうございました。
□スクウェア・エニックスのホームページ (2008年12月12日) [Reported by 中村聖司]
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