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星龍太郎氏: いや、振り分けられるんです。それぞれのメンバーの得意・不得意だけでなく、以前担当していたタイトルにも関係してきますね。荒川などはミリタリーものをよく手掛けています。 -- なるほど。EAさんは「バトルフィールド」シリーズや「メダル オブ オナー」シリーズなど多数手掛けられておられますが、「マーセナリーズ」はそれらのミリタリーものとは若干色が違うじゃないですか。初めてプロデューサーとして「マーセナリーズ」を見たときにどのような感想を持たれましたか? 星龍太郎氏: 僕は正直、浅くばーっとプレイしたので、「なんか1本道のありきたりのゲームね」という印象を受けました。もともと自由度が高いと言っても、「Grand Theft Auto (GTA)」があったし、自分でも「GTA」をプレイしていましたから、それと比べるとどうかなと思ったのですが、プレイしていくうちに、「あ、これもできるじゃないか、これもできるじゃないか」と本筋とは逸れたところで色々と遊び初めて、そうするとミッション通りに遊んでも良いし、逆に脇道に逸れて何時間でも遊べると言うことに気付きはじめてから、かなり面白いなと思いましたね。 荒川友美氏: このゲームはミッションが決められていて真っ直ぐ1本道に見えるんですけど、ひとつのミッションをクリアするのに、この武器を使ってこの方法でという風に決められていなくて、何通りもの方法があると気付いてからは、その方法を見つけるという楽しみ方になりました。 -- なるほど。しかし、「マーセナリーズ」といえばやはり北朝鮮を舞台にしているだけあって少々過激な印象もあると思うのですが、やはり日本と米国では (北朝鮮に対する考え方に) 温度差があるのでしょうか? 星龍太郎氏: 全然違うと思いますね。日本ではやはり北朝鮮に対して危機感がありますが、米国ではそれほど感じてないと思いますね。米国では特に危機意識などはなかったようですね。 -- では逆に、 (日本ではリスクのある北朝鮮問題を取り扱った「マーセナリーズ」を) 日本でリリースしようと決断した理由はどこにあるのでしょうか? 星龍太郎氏: 純粋にゲーム性が高いと判断したところもありますし、話題に乗っているという……ある意味イヤラシイ気持ちがないとも言い切れませんね (笑) 。 荒川友美氏: でも、特に北朝鮮だけを攻撃しているわけではないんです。悪者扱いしているわけでもないし、集中攻撃しているわけでもない。ゼロではないですが、残虐な表現も少ないですし。それに、ゲームの中で日本が関係していないんです。そういったところからも、会社として大丈夫と判断しました。
■ 日本版で変更を加えた点とは?
星龍太郎氏: まずキャラクタに差を付けなければと感じましたね。キャラクタのチューニングはされているのでしょうが、僕らがプレイしてみて「あっ、このキャラクタは違うな」と明らかに感じられなかったんです。結局、どのキャラクタを使っても同じだと感情移入できないじゃないですか。というのが理由のひとつですね。それとキャラクタが3人もいるのだから、それぞれ遊び方に幅を持たせてあげても良いんじゃないかなと考えまして。USA版ではどのキャラクタを使っても同じ様な戦い方しかできなくて、“自分流”のようなゲームのプレイスタイルを出せないと感じたんです。そういった点からもそれぞれのキャラクタに色を付けました。 -- そういったキャラクタのパラメータ調整によってゲームバランスに変化が出てきたと思いますが、調整というのは再度行なわれたのですか? 星龍太郎氏: そうですね、結構、調整しましたね。でもやっぱりひとりだけ上級者レベルのキャラクタは出てきてしまいましたけど、そのキャラは1度ゲームをクリアしてから楽しむときに使っていただければと思いますね。ジェニファー・ムイという女性キャラクタなのですが、 (日本で変更したのは) 敵に見つからない (ステルス性) かわりに体力が弱いんです。敵のバランスはいじっていません。 -- その他に日本にローカライズするにあたって何か気を付けられた点はありますか? 荒川友美氏: 北朝鮮以外に中国と韓国が登場するのですが、それぞれの国の扱い方ですとか、実名が出てくると問題がありますので、本当に細かいところまでひとつひとつ隅々まで、グラフィックス的に似ているキャラクタがないかとか、そういうチェックはかなりやりました。要人がたくさん出てくるのですが、全部ひとつずつ表記的な問題からキャラクタの造りですとか見て、問題ないかのチェックですね。結果的に日本版を出すにあたって変更したところはなかったのですが、大変でした。 実は、党首の銅像 (モニュメント) が出てくるのですが、それがちょっと危険かなぁと思ったのですが、銅像は実際にもあるのですが、ポーズが違っていたので、まぁいいかなと (笑)。 あとは、日本語への翻訳にも気を付けました。ミリタリーものが得意な翻訳家さんにお願いしたり。あまりキツイ表現にならないように……でも、あまりおとなしくても面白くないので、遠回しな表現など使って、とにかく気を遣いました。 星龍太郎氏: 言葉はなるべく短く。なおかつわかりやすくにですね。 -- しかし、舞台設定を北朝鮮に持ってきた限りは、あまりに現実とかけ離れていても、リアリティが無くなってしまいますよね? 星龍太郎氏: そうなんです。だから、落としどころが難しくて。 大柳氏 (広報) : そういった点には会社的にも気を遣っていました。保険会社を使い、トラブルがあった場合は保険会社がネゴシエイションしてくれるといった用意をしたりですとか、サポートにクレームが来たときの対応ですとか、対策は制作と並行してやってましたね。 -- 「マーセナリーズ」の制作にあたっては実際に北朝鮮に取材で出かけることはできないわけじゃないですか? 全てあり物の素材で行なわれたんですよね? 星龍太郎氏: Lucas Artsもかなり素材にはこだわっていたみたいですね。電車ですとか、建物ですとか、銅像、地形や位置関係などなどですね。実際、我々も航空写真を引っ張り出してきてゲームと比べてみたんですが、ピッタリでしたね。 荒川友美氏: 寧辺の原子炉の位置も同じですし。 -- 発売されて2週間ですので、そろそろゲームもクリアして、プレーヤーの中には“寄り道組”が出てくる頃かと思うのですが、ゲームを楽しむためのポイントというか、注目点を教えて欲しいのですが。最終的にはプレーヤーが自力で探すものだと思うのですが、ヒントのようなものがありますでしょうか? 星龍太郎氏: ミッションをプレイするにあたって「この道を通って、こうやって遊んでくださいね」といった指標のようなものは、ゲームの方から提示されるようになっています。それを裏切るようなプレイを心掛けていると何か発見があるとおもいますね。「見つからないように行って爆弾をセットして帰ってきてくださいね」……といったミッションで、あえて正面突破してみるとか、バリバリ破壊してみるとか。どのようにプレイしても、それなりの結果が出るようになっています。やればやっただけ、何か発見があるんです。 荒川友美氏: 敵がワァーっと集団で攻めてきた時に、一人一人倒していくのもいいんですが、民間のトラックを盗んで、そこにC4爆弾を積んでつっこませて一気に何人倒せるか! といった具合に派手にやってみるとか。あえて銃を使わずに手榴弾だけで行くとか……。 星龍太郎氏: ひとつそういった手を見つけだせば、ぱぁーっと広がっていくと思いますね。例えばC4爆弾をセットして、武器を拾おうとしたら間違ってC4爆弾を蹴ってしまった。「あっ! C4爆弾けれるじゃん!!」みたいな (笑) 。けっ飛ばしていって爆破してみるとか、ビルの上から蹴り落として爆破するとか、じゃ、車両にもいけるのかなとか……。
■ 物理エンジンはHAVOC、AIもかなり賢い
星龍太郎氏: AIのほうもプレーヤーの行動に対してそれなりに対応できるだけのエンジンなので、たとえばAIが操作しているキャラクタが乗っている車のボンネットの上にC4爆弾をガチッとセットすると、AI慌てますからね、やっぱり (笑) 。ちゃんと「C4爆弾だ!」って認識するんですよ。一気にバックし始めたり、面白い動きを始めますよ。 --それだけAIと物理エンジンはしっかりしていると言うことですね。 大柳氏: 物理エンジンはHAVOCですね。ゲームエンジンは「マーセナリーズ」のためにイチから造っているオリジナルなはずです。 --逆にAIとの知恵比べという楽しみ方もあると言うことですね。 星龍太郎氏: そうですね。で、おかしな動きをする部分も我々の方でフィルタリングしていて、笑える動きなどはわざと残してあります。 --おかしな動きというと? 星龍太郎氏: 例えば落ちている銃を蹴るとずっと遠くまで飛んでいくとか。戦闘中に後ろから「アニョハセヨ」と声かけられたり……。 --ある意味、「マーセナリーズ」だからこそ許される点かも知れませんね。もっとシリアス一辺倒なタイトルだったら許されないかもしれませんね。 星龍太郎氏: そうですね。雰囲気を壊してしまいかねないですからね。 --ミッションをクリアしていけばいいとはいえ、フィールドも広いですし、わりと洋ゲーにはありがちですが、ユーザーをフィールドの中に放り込んだら後は自由にと言うタイプのゲームが多いですが、そういったユーザーに対するヒントといった点では手を加えられましたか? 星龍太郎氏: それはもうかなり加えましたね。米国のソフトらしくフィールドに入ると「後は自分で見つけてね」と言うことなので (笑) 。ミッションの説明にしても、英語でダーッと書かれているだけですが、日本ではなるべく順番立てて箇条書きにしてわかりやすくしてあげることで、ユーザーの方も迷わないかなぁといった配慮もしてみました。 --マニュアルもかなりのボリュームになっていますね。 星龍太郎氏: それは自分なりのこだわりですね。 大柳氏: マニュアルにはゲームのバックグラウンドとか世界観が書かれているのですが、ゲームをスタートするとそれほど出てこない情報などもマニュアルには書かれていますしね。そういう意味ではマニュアルもよく出来てますよね。
■ やり込めばさらに面白い隠し要素が登場? --裏技のようなものが存在するとか。 荒川友美氏: フィールド上に設計図とかアイテムが落ちているんですが、それを100個以上集めるとコードを貰えるんです。それで裏技のように着替えたりできるんです。ぜひそこまでじっくりやって欲しいですね。 星龍太郎氏: 偏執的なまでに探していたからなぁ (笑)。 --ということは、それはそこまでやり込まないと達成できないのですか?。 荒川友美氏: はい、できません (笑) 。私は2週間くらいかけてそれだけやってましたから。色々なキャラクタに変身できるんですよ。外観が変わるだけなのですが。ガスマスク付けたりですとか、インディジョーンズですとかハン・ソロですとか……。 星龍太郎氏: 笑っちゃいますよね、インディジョーンズがバズーカ背負って走ってますからね。 荒川友美氏: そこまでぜひ遊び込んで欲しいですね。
--ありがとうございました。
□エレクトロニック・アーツのホームページ (2005年5月14日) [Reported by 船津稔]
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