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★PS2ゲームレビュー★
宿命を背負って集う108人が織りなす群像ドラマを描いてきたコナミの人気大型RPGシリーズ「幻想水滸伝」。待ちに待った最新作、「幻想水滸伝IV」がついに発売日を迎えた。本稿では、シリーズ最新作のプレイ感覚を中心にお伝えしていきたい。
広大な海に浮かぶ群島には、1つとなるべき108の運命が今はばらばらに散っている。テーマとなっている海の表現や、帆船が悠々と海を渡る様が非常に美しく、海上で味わえるのは、孤独感、疾走感、何か未知のものに出会えるかもしれないという期待感だ。さざめく波を連想させるcoba氏の美しい音楽も特徴的で、これぞ水のほとりに展開する「幻想水滸伝」のシリーズだ、と言わんばかりだ。
■ 物語の舞台は大海原に浮かぶ島々 物語の端緒を切る舞台は、ガイエン公国の端にあるラズリル公国である。これまでにも紹介してきた通り、主人公はガイエン海上騎士団の訓練生。彼がいよいよ正式な騎士と認められるところから、物語は始まる。
訓練生を正式な騎士と認める「火入れの儀式」を終えて、ある日、海賊ブランドと出くわしたことから海上騎士団のグレン団長の手に「罰の紋章」が宿る。時の情勢はラズリルにとって平穏なものとは言い難く、海から攻めてくる敵船団に対して「罰の紋章」の力を使ったグレン団長は力尽き、たまたま傍にいた主人公が「罰の紋章」を譲り受けてしまう。そしてそれだけでなく、傍らに倒れていたグレン団長を手に掛けたという無実の罪を着せられ、流刑となってしまうのだ。これが主人公のさすらいの始まりで、歴々と所持者の昔の記憶を背負った「罰の紋章」を携えた興味の尽きない冒険の幕開けでもある。無実を信じてついてきてくれた仲間2人と、たまたま流刑船の中で寝ていたネコボルト族のチープーと共に、舞台は大海へと移る。
■ 船上での生活は居心地が良く、いろいろなことがスムーズに行なえる
本作では、過去のシリーズに比べてかなり早い段階で本拠地となる場所が手に入る。1カ所にポンポンと人を詰め込んでいく感覚が好きな筆者にとっては、これは非常に嬉しいところ。早い段階から人々が貯まっていった方が、本拠地への愛着もより深まるというもの。シリーズにお約束のお風呂もあるなど、遊べる要素がどんどん増えていく。また本作の本拠地には意外な事実が隠されていて(ネタバレすると申し訳ないので詳細は述べない)、かつてない利便性に富んだ場所になっている。
本作では街と街を歩いて移動する感覚で、島と島の間を船で移動することになる。物語が進むと船で自由な移動ができるようになるのだが、海上での生活はとてもスムーズだ。移動中にメニュー画面を開けばその場でいつでもセーブできるほか、“碇泊する”コマンドを選べば自室のベッドで体力を回復できたり、アイテムを買い求めに船内をうろつくことも可能だ。 最初のうちは船の操作がわかりにくい。本来書かれてあるべき取扱説明書に海図の使い方が記載されていないので、ここに操作方法を記述しておこう。船の操作は、△ボタンで海図の画面を開いて、目的地を赤いカーソルで指定し、海図を閉じてR1ボタンでスピードを上げる、という流れで行なう。また左スティックで舵を取り、L1ボタンで視点切り替え、視点によっては右スティックでカメラを動かすこともできる。 島には上陸できる場所とできない場所があるので、アプローチする際、上陸できない方向から島に向かっていっても、島にぶつかった時点で別の方向に船首が向きを変えてしまい、上陸することはできない。そういった場合は、カーソルの位置を別方向から上陸地点へ船がスムーズに進行できるように何度か指定しなおすか、左スティックで舵を取って島のまわりを回り込んで、いかにも上陸できそうな岸辺を探してそこから近付いていくといいだろう。 海図は、船で自らが移動した場所だけ、島の形などの詳細が書き込まれていくというもの。海図を塗りつぶして完成させるのも結構大きな楽しみだ。海は広いので、海図のちょっとしたエリアを塗りつぶすだけでも何度も敵と遭遇して大変。筆者もがんばっていればすどうにかなるだろうと思ってトライしているところだが、物語があまり進んでいないうちは、ストーリーの絡みで、もともと流刑にされたラズリルには近づけないなど、ある程度移動できる海域が制限される。
また、一度訪れた島にも改めて立ち寄ってみるとイベントがサクサク進行することもあるので、そうなるとつい海図を放ったらかしにしてストーリー進行に一生懸命になってしまい、なかなか海図の隅々を埋めることができないでいる。
島同士の距離がかなり離れている上、エンカウントも激しいので、島と島を移動するにはある程度の時間がかかる。そのためか、シリーズを通して登場してきたテレポート少女「ビッキー」が今作ではわりと早めの段階で登場する。行ったことのある島へひとっとびできるのはありがたい。とは言え、テレポートに頼るのは本編ストーリーをグイグイ進めていきたいときや、各地を飛び回って交易をする時などだけにしたい。せっせと海上の移動を行なっていればレベルアップもするし、海図を塗りつぶしていけばこそ上陸可能な島を発見できる。
■ 船上では3つのパーティで交替して戦える 敵との戦闘については、店頭試遊イベントレポートでも述べたところだが、非常にテンポよく進められて無駄なストレスを感じない。エンカウントは多めだが、パーティメンバーが4人であること、コマンド入力にかかる時間が短いことなどから、ザコ敵相手なら、戦闘はあっという間に済ませられる。これは初代、「II」に近いイメージだ。 陸地と同じく海上の移動中にも敵とのエンカウントが多い。海上は、移動距離が長いときはとことん長いため最初はちょっとかったるい感じもするが、船での移動生活が本格的に始まると、これが楽しくなってくる。というのも船上では、主人公のいる基本パーティと、その他2つ、合計3つのパーティを交替させて戦うことが可能となる。最初に3つのパーティを構成するメンバーを選んでおけば、その12名に関しては、いちいち船内に戻ってメンバーを交替することなく戦闘に出せる。つまり、大勢を手っ取り早く育てやすいのだ。
戦闘中に、メンバー交替コマンドを選べば、ターンを消費せずに選んだパーティが出てきて、そのパーティの攻撃から始められる。また最初に強いパーティで敵にある程度損害を与えておいて、まだ弱めのメンバーに入れ替えて最後の経験値だけ与える、ということもできてお得な感じだ。
物語の随所で勃発する「海戦」は、これまでのシリーズでは「戦争イベント」と呼ばれてきたものとほぼ同様のもの。今回は、船で海上に設定されたマス目を移動して、火、水、雷、風、土の5属性を宿した“紋章砲”を撃ち合う船対船の戦いになっている。 海戦の最初には、勝利条件が示され、敵の紋章砲の紋章の種類をよく見てこちらの紋章砲担当者を決定する。紋章砲には2人の紋章手(砲手)を選抜することができ、彼らの属性が戦闘を左右するということになる。砲撃を受けたときには、迎撃できる状態にあれば迎撃することができ、このときジャンケンのように敵の属性とこちらの属性の相性によって、攻撃をうち消したりダメージが変動する。船上の人数が減っていき、ゼロになるとその船は消滅する。
この海戦は、画面の見た目はシミュレーションゲームという感じであるが、単純な操作になっており、あまり難しく考える必要はない。筆者はこれまで集団戦闘というと軍師様のお知恵を拝借することが多かったのだが、今回の海戦は取っつきがいいのと、ちょっとコツがわかれば勝たせてもらえるので、まぁ何とか自力で進めていけている。
また、場所を問わず1対1で戦う、一騎打ちの場面も訪れる。相手の言うセリフから次の手を想像しながら選択肢を選んで戦うというもの。お互い1本のゲージを持ち、相手のゲージを先にゼロにするためセリフから想像してじっくり進められる分、緊張感の高いシチュエーションだ。キャラクタの攻撃モーションが非常に良く見え、これがとても格好いいので、動きにも注目してほしい。
■ 人間臭さが溢れるキャラ達の織りなす物語 ゲームの冒頭はなかなか本題に入らせてもらえず、ちょっと焦れる感じがあるが、グレン団長に「罰の紋章」が移る辺りから物語が急に動き始め、その後はストーリー進行上、必定で加わるキャラクタがわりとひっきりなしに次々と入ってくるので、加速度的に面白さが増していく。物語はわかりやすく進み、一国の王やその娘、従者、別の島の権力者、その息子……など、それぞれの立場からくるその人の感情の動きに同感しやすく、行動にも納得がいくし、それぞれが感情移入しやすい魅力の持ち主ばかり。 そして序盤から登場するキャラの中では、接触している時間は短いのに、長らく行動を共にするチープーたちよりもはるかに強い印象を私に与えたのが、主人公の幼なじみの「スノウ」だ。身よりのない主人公がお世話になっているラズリルの領主フィンガーフート家の跡取り息子で、もとはと言えば彼の勘違いのせいで主人公は流刑となったようなもの。
スノウは、“憎めないけれど好きにはなれない”絶妙なキャラクタに仕上がっている。跡取りとして大切に育てられたためか、世間知らずのいわゆる“おぼっちゃん”で、自信過剰なところがちょっと危なっかしいのだが本人には微塵もそんな自覚がないところが困りもの。これに対して主人公は、1歩も2歩も引いたようなところがあり、与えられたことは文句も言わず着実にこなし、あまりに表に出ようとしない。指導者という感じではないタイプだ。
今回、要所に挟まれるデモでキャラクタが声を発することは、プレーヤーを物語に引き込む材料として功を奏していると感じさせられた。声の雰囲気もキャラにバッチリ合っているし、イラストから伝わってくる雰囲気に声のイメージがプラスされたことで、よりはっきりキャラクタの棲み分けがなされたというか、輪郭がくっきり浮き出た感じがする。 本シリーズだからこそ、キャラごとの印象が際立つものになることは重要なことだろう。そんな中、主人公は喋らないので、周囲の仲間に比べると当たり前だが寡黙な印象になっている。
個人的には、この主人公の存在の透明感が心地良い。主人公があまり具体的な言葉を発すると、物語を体験した中から発露するプレーヤー側の感慨と、画面の中の主人公の発する言葉に多少なりともズレが発生するだろう。それ自体は別に悪いとも思わないが、この辺りのプレイ感覚も、時代だけでなく1、2作目にさかのぼった感じを受ける。
本シリーズ全般に言えることだが、大勢のキャラクタそれぞれをクローズアップして見てみると、ごく普通の庶民と言うべき人たちも多く存在する。まぁ、中には突飛な個性を持つキャラクタ……エレベーターを造ることに心血を注ぐ人や、キノコ研究に明け暮れる変わり者など……も何人かいるのだが、それぞれが自分の主義に乗っ取って集まってきて、凸凹の個性が1つに結束するという面白みがある。 いかにも主人公としたヒーローっぽい個性を持つ人ばかりがメンバーではない。ごく普通のおじさんやおばさん夫婦、子供、ネコボルト族までも108人を形成するメンバーに入ってくる。そして本拠地に生活臭みたいなものが漂うところに、リアルな感覚を持たずにはいられない。ごく身近な存在に思える人々が自分なりの正義をもって戦う姿を見ていると、大きな冒険の種というのは、実はこんな日常に潜んでいるのかもしれないな、という気分にさせてくれる。そして今の人生そのものが、“数奇な運命の船に揺られているのではないか”という気分になってくるのだが、それはさすがに妄想の翼を広げすぎだろうか。
しかし本作をプレイすれば、まだ見ないたくさんの人たちとの出逢いが、そんな感覚をもたらしてくれるだろう。海辺のリゾートへ足を運ぶつもりで、冒険に踏み出してみてはいかがだろうか。 (C)1995 2004 Konami Computer Entertainment Tokyo
□コナミのホームページ (2004年8月24日) [Reported by 河本茉澄]
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