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【特別インタビュー】
「幻想水滸伝IV」インタビュー |
河野純子さん 株式会社コナミコンピュータエンタテインメント東京 制作部 プロデューサー |
発売日を1週間後に控えた、コナミの大作RPG「幻想水滸伝」シリーズの4作目となる「幻想水滸伝IV」。プレイステーション 2をプラットフォームに選択した「III」、そして「IV」という流れの中で、本作はどのように作られていったのだろうか? 「IV」のプロデューサーを務めながら、企画とデザインにも深く携わる株式会社コナミコンピュータエンタテインメント東京の河野純子さんに、制作に関する様々なお話を伺う機会を得た。 河野さんは、初代「幻想水滸伝」では、企画に入っていたことからデザイナーや雑用的役割も含めて作品にべったり関わっていたとのことだが、続く「II」、「III」では暫くシリーズから離れていた。再び関わることとなった「幻想水滸伝IV」では、プロデューサーとして監督的役割を担いながら、企画とデザインもこなす、多忙な日々を過ごしていたという。 |
河野 今回は、船や海というところを気持ちよく操作させたいというところから始まって、「じゃあ、舞台は島々があるような所にしよう」と。シリーズを通して存在する、「ゲームを通しての気持ちよさ」を主で進めていこう、というところからスタートしています。
--海や船というキーワードはどこから出てきたんですか?
河野 「水滸伝」と言えば、名前からして「湖の畔」で毎回水がらみではあるんですが、今回はきっかけとして「いっそ海にしようか」とか、「今まで追求していないような水の綺麗さを追求したい」という辺りのアイデアが同じようなタイミングで出てきたので、「海で気持ちよく走ろう」になったんだと思います。
--制作の期間はどれくらいですか?
河野 ざっくり2年くらいです。「III」の制作の、後半にちょっとかぶった時期に案が出始めました。
--「IV」で重視したところ、ここを見てほしいというところは?
河野 1番重視しようとしたのが、操作感の気持ち良さやテンポ、あとはイベントシーンなどの演出を、シリーズの中で最も凝ったものにしたいなと。見せたいところはちゃんと見せ、あとはサクサクやりたいと。要するにメリハリをはっきりつけるというところを中心に作っています。感覚としては、ストレス無しでサクサク進む初代や「II」に近付きたいなと。当然PS2では表現の方法が違ってくるので、PS2ならではの表現方法でそこにもっていきたいという目標はありました。
--PS2というハードに変わって、ノウハウとして「III」から「IV」に受け継がれたものはありましたか?
河野 制作のラインが違うということもあって、制作上のベースが引き継がれている部分はあまりないんです。でも当然、世界観や基本的な世界のルールなどは完全に受け継いでいます。最初の段階では、ゲーム全体の世界の中でも何を引き継ぎ、何を引き継がないのか、という選択をしました。4作目にもなるので、新しいユーザーを取り込むところを主に、かつ今までのシリーズをプレイしてくれた人たちも面白く遊べることを考え、「これは重要だから継続してやりましょう」、「これは引きずりすぎても、どうなの?」というところを見極めていきました。
--別ラインということで、制作中に「III」を意識されたことはありましたか?
河野 時期的に「III」の発売前で、ユーザーの反応が無い状態だったので、「III」を遊ばせて頂いて、差別化を図るところを叩き出しました。そこで、「キャラクタの等身を変えよう」という案や、「テンポを重視しよう」という話が出てきましたけど、それ以上はあまり意識して変えようというのはなかったかな。
--キャラクタの等身を変える上で意図されたことはありますか?
河野 イベントシーンなどでキャラクタを出す時に、「もうちょっとイラストのイメージに近づけたい」というのがありました。あと、わりと年齢が高い人も出てくるので、あまりデフォルメしない方がいいかなと。
--今作の紋章「罰の紋章」の狙いや、「罰の紋章」を通して描きたいことはどんなことだったのでしょうか?
河野 「III」では3人いた主人公を今回1人に戻して、その1人と、それに関わる紋章の「呪い」だとか「力」だとか、原点に戻ったようなところがあるんです。それをクローズアップさせたいというのがあったので、「呪いを強めに」と(笑)。
ただ、これは作りようによっては暗くなっちゃうな、という懸念はあったので、そんなに暗くならない感じにしていこう、という意識はありました。「呪い」に対して、どういう解決を見出すか、というところをゴールにしたいかな、と思ってます。
--時代設定は、初代「幻想水滸伝」よりもさらに前にさかのぼっていますよね?
河野 「III」までで、ちょっと区切りがついちゃってる感じではあるんですよ。とは言っても、キャラクタ全員の結末を描いているものではないので、「III」の後も気になるところは残っているのですが。気分一新、これまでと繋がってはいるけれど新しい「幻想水滸伝」の世界を作ってみたい、というのはありました。場所もこれまでどんどん北へと広がってきていたのを今回南へ移して、今までと違う切り口で違う方向に広げようと。
■ 個性豊かなキャラクタの制作の舞台裏
河野 キャラクタ集めの難度については、今回どうしようか悩んだんですけど……。結果、気が付いたらいたよ、というようなキャラや、「ちょっと簡単かな?」というキャラもいます。
--シリーズに出てきたキャラクタを次のシリーズで出す、出さないといった選定の基準や理由があれば教えてください
河野 私は関わってないので「II」、「III」の選定の理由は何とも言えないんですが、特にユーザーが望むからというのではなく、語りたいお話に必然的なものから選ばれていると推測します。「IV」では時代が過去に遡って場所も遠くなり、既存のキャラクタはかなり出しにくくはなってますので、初めてシリーズをプレイされるという方でも、初代から「III」までを遊んでいないと誰だかわからない、というようなことはないと思います。逆に「この人は、あの人と関連あるのかな?」という感じのキャラクタもいますので、そこは今までのシリーズをプレイされた方にはニヤニヤしながら遊んでもらいたいですね。
--シナリオや登場してくるタイミングなどを含め、キャラクタはどのように生み出されているのですか?
河野 だいたい1番最初に、名前、年齢、簡単な性格などをこちらでサクッと決めて、「これでビジュアルのアイディア下さい」とチームのデザイナーにプランを提示します。シリーズを通して役割が決まっているキャラクタがいて、例えば「武器を鍛える人」などから、先にアイデアを投げていきます。
そして、いくつか出してもらったビジュアルの案の中からこちらでピックアップして、戦闘参加キャラであれば、武器タイプなどの割り振りを決めます。そしてシナリオの進行にあわせて、ここまでに何人出てくるか、という流れを割り振っていき、そこからお話を作るというのが基本ですね。
書いている間にそのキャラクタに段々変な色が付いてくるのはその後の段階で、脇のキャラクタになればなるほど、後の段階で性格がついてくるという感じです。シナリオに当てはめる前の段階ではキャラクタのフリー枠があるので、そこでどういうキャラクタが欲しいか、様々なスタッフからアイディアをもらいます。
あとは、何人もの人が一気に仲間になることができるだけないように、また老若男女のバランス、種族のバランスも考えながらまとめていきます。
--見た目から性格など1人のキャラが出来上がるのにどれくらいかかるものなんですか?
河野 デザイナからビジュアルが上がってくるのに2週間とか1カ月、その中から決めて、書いて、シナリオに実際に入れて。そこから細かいキャラクタとして完成されていく、という感じなので……と言うと結構長いように聞こえますけど、数キャラ並行してちょっとずつ肉がついていくという感じなです。
--キャラ配置を分散させる段階で、アイディアが足りなくなったり、似たキャラになったりしませんか?
河野 それはしますよ(笑)。似ているから後で書き直すこともありますし、肉付けしている間に性格が変わってきちゃったりするんで、久しぶりにそのキャラのセリフを書いた後、見直してみると、口調が違ってたり。あだ名でずっと呼び続けていたために正式名称が混乱するといったこともありましたし。キャラが埋まってきた最後の方で、「どうしても入らないこの5人」というのが出てきたり(笑)。でも108人の生活を考える部分では、バランスを取って調整する作業1つ1つがキャラクタの個性になっていくので、面白いところでもありますけどね。
--108人分そういったものを作っていくというのは、実際すごく大変なんだろうなと思います
河野 チーム内からは、「キャラの数が10分の1だったら、あと10倍の手間が掛けられるのに……」という声も出ますけど、108という数字を取っちゃったら「水滸伝」じゃないですし。でも作業量は増えちゃいますよね。何をやるにしても、全部「掛ける108で」、「ハイ」みたいな(笑)。
■ 特長となるシステムで、継承すること変わったこと
河野 サクサク進められるテンポや、見せ方というのが1番大きい理由です。6人入れて試したり、いろいろ研究してみたんですけど、今までのように2列にするとカメラの見せ方によって隠れてしまうキャラクタが出てきたりするんです。でも、カメラは動かした方が劇的だし。コマンド入力の回数なども含めて、早い段階で「今回は4人でいきましょう」と決まりました。
--本拠地のシステムの今回のアピールポイントを教えて下さい
河野 108人が活躍する場でもありますから、できるだけ生活感を出したいなと思うので。「幻想水滸伝III」では劇場ひとつとっても人数分のシナリオも必要であったりとかしましたし、「幻想水滸伝IV」についても、詳しくは言えないんですけどそういった感じで色々なものが入っています。お風呂はちゃんとポリゴンモデルになってます(笑)。ミニゲームも、単体で売れるんじゃないかというくらいのものが入っていたり、数も今までにないほど多いです。海では当然「釣り」ができて、それも「どうせだったら漁にしよう」と、網をかけられるようにもなってます。本拠地だけで、ずっと遊べるような感じです。
--本作のサウンドまわりのコンセプトは?
河野 スタッフは基本的には「III」と同じです。「III」はドラマの後ろに流れている劇伴(※1)みたいな感じで作られているんですが、今回はちょっとうるさいかもしれないけど、もうちょっとメロディーが前にくるような感じで、とお願いしてます。ゲームゲームしてるという気もしなくもないけど、たぶんその方が気持ちがいいかなと。
--曲の制作はどのように進んでいきましたか?
河野 まずマップの方から入れてもらって、動かせるようになったらそれでイメージしてもらって。並行しながらイベントシーンもできてくるので、入れたい曲のイメージを伝えて計画を立ててもらい、遊んでいく頭の方からだんだんできてきました。「このマップは、こういうイメージではないんで」などというやりとりも結構ありましたが、段々すりあわせがうまくいってきて、終わりの方では一発オッケーが多かったです。
--cobaさんを起用された理由は?
河野 今回は舞台が海ということで東南アジアのイメージもあるんですけど、ちょっとヨーロッパ地方のイメージもあったりして。それで情熱的な曲が欲しい、という中から「是非cobaさんにお願いしたい!」と、熱烈な希望でお願いしました。TGS(東京ゲームショウ)での最初のお披露目の時も、プロモーション用にもcobaさんの曲を使わせて頂いてます。
--依頼を受けたcobaさんの反応はどんな感じでしたか?
河野 結構ゲームを好きな方だったらしくて、「幻想水滸伝」の過去のシリーズ(~「III」まで)をお渡ししたら、すぐにずっとプレイして下さったらしくて。だから今回、ご自身の楽曲がどこでどう使われるか、楽しみにして下さってるんじゃないかなと。肝心の完成品はまだお渡ししていないので、お楽しみということで。
■ シリーズファンと新規プレーヤーに向けて
“海賊ブランドの隣りにいるあれ”が映っているスクリーンショット |
河野 中学生以上という感じで、上は広く。RPGを好んでやってる方が中心にはなると思うんですけど、「幻想水滸伝」の持つ独特の世界観に共鳴していただける方は、その周りにもたくさんいらっしゃると思うので。今までやったことのない方も含めて、広く見据えてはいます。サクサクした感じになっているので、これまでRPGをやっていてストレスを感じている方や、RPGをやったことがなくて面倒臭いというイメージを持っている方も、入り込めると思うので。
--ファンの方からの意見や要望で、ユニークなものなどはありましたか?
河野 キャラクタに関するものは多いですね。あと、「IV」で新しく音声が入るという情報が出たときには、起用する声優さんの要望も当然ありましたけど、「私を声優として使ってください」、「出たいです」という方も結構いらっしゃいました。
--実際には声優さんを起用されたんですか?
河野 そうですね。「社員じゃないか?」とか言われていますが、そんなことはなくて(笑)。声優さんにイメージを伝えて理解していただくのにも、人数が多いとその分だけ打ち合わせが必要になるので、その時期はつきっきりでした。1日に何人もの声優さんと打ち合わせしましたね。
--こだわられているんですね……
河野 イメージ重視で。ただ、声優さんの中にも「幻想水滸伝」を遊ばれている方がわりといらっしゃったので、そういう方はスパっと役に入っていただけましたね。
--スタッフの中で人気のあるキャラクタは?
河野 みんな様々ですよ、ファンの方とあまり変わらないんじゃないかな。「IV」の中で好きなキャラというのも、みんなそれぞれ違うんじゃないかという気がします。
--ちなみに、河野さんのお気に入りは……?
河野 海賊ブランドの隣りにいるあれ(※2)ですかね。ちょっと変わった外見ですけど、立体になってきたらすごく良かったので。
--最後に、これまでのファンやこれからシリーズに触れる方を含め、読者に一言メッセージをお願いします。
河野 色々な遊び方ができるように仕込んであります。サックリ終わらせようと思ったら、お話をなぞってすぐ終わらせられますけど、その脇にお遊びや謎を解き明かすものなど、いろいろ散らばらせて置いてあるので、探しながらゆっくり遊んでみて下さい。
※1……劇伴(げきばん)
映画やテレビ映像、ドラマなどの劇中で使うために作曲された音楽のこと。
※2……海賊ブランドの隣りにいるあれ
目がくりっとしていて、甲羅を背負った不思議な外観のキャラクタである。画面にちらちら登場していることから、スタッフ内の人気ぶりが伺える?
(C)1995 2004 Konami Computer Entertainment Tokyo
□コナミのホームページ
http://www.konami.co.jp/
□「幻想水滸伝IV」のページ
http://www.genso.com/IV/index.html
□関連情報
【6月27日】コナミ、「幻想水滸伝IV」試遊イベントを新宿で開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040627/konami.htm
【6月22日】コナミ、PS2用RPG「幻想水滸伝IV」
大阪と東京で体験会を開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040622/genso.htm
【6月1日】コナミ、PS2「幻想水滸伝IV」
携帯電話向け特設サイトをオープン
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040601/genso.htm
【4月22日】コナミ、PS2「幻想水滸伝IV」限定版の仕様公開!
特典は特製キャラクタイラスト&設定資料集とキーホルダー
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040422/genso.htm
【4月21日】コナミ、PS2「幻想水滸伝IV」予約キャンペーンを
4月22日から6月7日まで実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040421/genso.htm
(2004年08月12日)
[Reported by 河本茉澄]
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