【特別企画】
いよいよ満を持して「WoW」超えへ。「FFXIV: 黄金のレガシー」で再スタートする光の戦士達と吉田直樹氏の新たな冒険
2024年6月6日 19:00
- 【ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー】
- 7月2日発売
- 価格:
- 4,620円(通常版)
- 6,600円(コレクターズエディション)
スクウェア・エニックスは5月中旬、プレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/Windows/Mac/Steam用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー」のメディアツアーを東京本社にて開催した。
筆者も初日からメディアツアーに参加して、新たな拠点トライヨラに降り立ち、新エリアや新しいダンジョンを一足先に楽しんできた。初日の冒頭には、「ファイナルファンタジーXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏によるプレゼンテーションも行なわれ、新たなビジョンも語られた。本稿では、メディアツアーレポートの導入として、吉田氏のプレゼンと、試遊を通じて感じたことをお伝えしたい。一刻も早く「黄金のレガシー」の最新情報が知りたい! という方は下記リンクを参照いただきたい。
なお、記事中で使用している「黄金のレガシー」のスクリーンショットは、試遊時の最終調整前のものであり、リリース時には変更される可能性があることにご注意頂きたい。
【「FFXIV」、いよいよ「WoW」超えへ】
▼いよいよ満を持して「WoW」超えへ。「FFXIV: 黄金のレガシー」で再スタートする光の戦士達と吉田直樹氏の新たな冒険
【吉田直樹氏インタビュー】
▼「FFXIV: 黄金のレガシー」メディアツアーインタビュー
もっと楽しく、自分たちが面白いと思うものを作りたい。そんな思いが詰まった拡張
【新エリアレポート】
▼「FFXIV: 黄金のレガシー」エリアガイド
新たな冒険の拠点「トライヨラ」と「コザマル・カ」と「オルコ・パチャ」をガイド
【新IDレポート】
▼「FFXIV: 黄金のレガシー」インスタンスダンジョンレポート
レベル91のダンジョン「濁流遡上 イフイカ・トゥム」を一足早く紹介
【最新ジョブレポート】
▼「FFXIV: 黄金のレガシー」ジョブレポート「ヴァイパー」
超高速に繰り出す多段コンボが気持ちイイ!
▼「FFXIV: 黄金のレガシー」ジョブレポート「ピクトマンサー」
カラフルで可愛くお手軽、アートの世界はとにかく楽しい!
▼「FFXIV: 黄金のレガシー」ジョブレポート「近接DPS編」
モンク、竜騎士、忍者はより使いやすくシステムを修正、侍、リーパーは正統進化
▼「FFXIV: 黄金のレガシー」ジョブレポート「遠隔DPS編」
召喚士に新召喚獣「ソルバハムート」が登場。機工士は最終兵器化か?
▼「FFXIV: 黄金のレガシー」ジョブレポート「タンク編」
上位防御バフと追加攻撃で正当進化。「FFVIII」のスコールの技が新技として登場
▼「FFXIV: 黄金のレガシー」ジョブレポート「ヒーラー編」
学者はセラフィムに変身!占星術師はカードシステムが大きく変化
日本を皮切りとしたグローバルメディアツアー。開発期間は過去最長の2年7カ月
メディアツアーの初日恒例となっているのが、吉田氏のプレゼンテーションだ。メディアに向けて「FFXIV」のこれまでを語りつつ、新しい拡張パッケージの新規コンテンツに触れながら、中長期的なビジョンを語る時間。こちらはスライドなども駆使して説明されるが、吉田氏含めて、撮影不可となっていたので、本稿の資料はPAXのスライドで代用したい。
吉田氏に会うのは、1月の東京ドームでのファンフェス以来。ファンフェスでは、正月休みを取って活力がみなぎり、リフレッシュした印象だったが、今回は目の下にクマができ、明らかに疲労が蓄積されていた。同時期に行なわれたプロデューサーレターLIVEで気付いた視聴者もいるだろう。
吉田氏からは、前回「暁月のフィナーレ」では、初となる2週間の発売延期をしていただけに、二度は繰り返さないという強い意志が感じられた。今回のPLLにおいても、発売延期は最後まで発表されず、無事7月2日リリースを迎えることができそうだ。
ただ、やや今回気になったのは、開発期間の長さ。「FFXIV」は新生以降、ほぼ2年ごとに拡張パッケージをリリースしてきたが、前作の「暁月のフィナーレ」は、コロナ禍での制作となり、2年と5カ月掛けている。「黄金のレガシー」は、そこからさらに延びて2年と7カ月掛かっている。つまり、どんどん長くなっているのだ。
【FFXIV拡張パッケージ リリースリスト】
パッチ2.0 新生エオルゼア 2013年8月27日
パッチ3.0 蒼天のイシュガルド 2015年6月23日
パッチ4.0 紅蓮のリベレーター 2017年6月20日
パッチ5.0 漆黒のヴィランズ 2019年7月2日
パッチ6.0 暁月のフィナーレ 2021年12月7日
パッチ7.0 黄金のレガシー 2024年7月2日(予定)
もっとも、吉田氏はPAXで、「もっと早くリリースしたかったが、『ELDEN RING』のDLC(6月21日発売)を避けた」という半分ネタ、半分本音のトークを展開しており、延期してしまった前回に比べると、リリース時期はしっかりコントロールできている印象がある。また、「黄金のレガシー」で、従来の夏発売に戻したという見方もできる。
なお、先日行なわれたPLLでは、パッチサイクルについて、コンテンツボリュームの増大をふまえて3.5カ月から4カ月への変更を発表した。夏期と年末年始でさらにプラス1週間を確保するとしており、これは当然、拡張パッケージへのスケジュールにも影響を及ぼすだろう。「FFXIV」の拡張パッケージというと夏リリースというイメージを持っていたが、今後は変わってくると考えた方が良さそうだ。
「黄金のレガシー」はワクワク感と驚きいっぱいの新しい冒険を提供。8.0以降の伏線もスタート
さて、吉田氏のプレゼンに話を戻そう。吉田氏は、この10年で、最初の「新生エオルゼア」も含めると5つの拡張パッケージをリリースし、累計登録アカウント数は3,000万(日本・北米・欧州・中国・韓国の 5リージョンの累計アカウント数。フリートライアル版のアカウントを含む)、月額課金会員数も過去最高に達したことを報告。近年のグローバル規模でのインフルエンサーによる盛り上げは、「仕込みではなくラッキーだった」としながらも、プレイヤーの声がインフルエンサーを動かしたと、コミュニティの貢献であることを強調。
吉田氏曰く「情熱的で世界一の健全なプレイヤーコミュニティに支えられていることが『FFXIV』最大の財産」としながら、彼らに向けて「新たな挑戦をし続け、前人未踏の山を目指していく」と、あくまで守りに入らず、攻め続けることを表明した。
「黄金のレガシー」で描かれるのは、「ハイデリン・ゾディアーク編」のくびきから解き放たれた、まったく新しい冒険だ。吉田氏は、「伏線に縛られずに、枷を外した新たな冒険を提供していく。新しい場所に行き、色んな人と出会い、新たな敵と戦う。これをさらに大きく広げていく」と語り、RPGとしての原点回帰を図っていくとした。
大事にしているのは「ワクワク感」と「驚き」で、これ自体は「FFXIV」共通テーマということで、過去にも言及されているが、今回は完全なる新章ということで、それらを強く押し出していく。また、物語の途中には、今後の展開、つまり8.0以降にも繋がるワードも出てくるということで、7.xシリーズ自体が、新たな大きな物語の伏線となっていくようだ。そういう意識でプレイしてみるのもおもしろいだろう。
肝心のコンテンツについては、すべてネタバレになるということで、吉田氏の口からはほとんど語られなかった。ジョブやエリア/ダンジョンなどの詳細については上記レポートを参照いただきたいが、吉田氏からは、3,000万アカウントもの超巨大なコミュニティに対して、新しい冒険を提供できることに開発者として大きな喜びを感じている様子だった。
さらに開発規模を拡大し、「MMORPGとしてのさらなる進化」へ
吉田氏とその開発チームが、「黄金のレガシー」を皮切りにスタートする新章で「次なる挑戦」として目指して行くのは、MMORPGとしてのさらなる進化だ。現時点で判明している内容は、「マルチプレイの強化」、「多人数コンテンツ拡充」、「遊びごたえの強化」、「報酬の強化」の4点。過去を振り返りながら、詳しく見ていこう。
「FFXIV」がMMORPGとして最盛期を更新し続けている理由、言い換えれば、多くのゲームファンに支持されている理由は、その調整能力の高さだ。光の戦士達をはじめ、多くのゲームファンから絶大な支持を集める吉田氏だが、決して全能かつ無謬の存在ではなく、過去にはコアゲーマーであるがゆえの失敗も犯している。
PAXではその振り返りも行われ、一例を挙げると、「新生エオルゼア」では、同時アクセス数の読みを誤り、大混雑によるサーバートラブルが発生したことを筆頭に、「極タイタン討滅戦」のような激ムズコンテンツの存在、コンテンツやリワードの少なさなど、いくつかの設計ミスがあったことを認めている。
筆者も10年前、何十回目かのトライで「極タイタン討滅戦」を奇跡的にクリアした時、MMORPGのコアプレイヤーが作ると、あの「FF」がこうなってしまうのかと戦慄すると同時に、今後もこの難易度を標準にバトルコンテンツを作られたら、とてもこのゲームは続けられないと思ったことを良く覚えている。同様にレイド「大迷宮バハムート」も難しかった。レイドだからクリアできなくて当然、参加できること自体が光栄という世代のゲーマーだから、クリアできないことについてはなんとも思わなかったが、FCメンバーに「(下手だから)参加は遠慮して欲しい」といわれたときは寂しかった。
筆者は、旧「FFXIV」時代からのプレイヤーとして昔語りがしたいわけではない。マスのゲーマーに遊んで貰うMMORPGとして、一線を越えたコンテンツについて、吉田氏は真面目に受け止め、その都度軌道修正を掛けている。その後の討滅戦は、タイタンレベルの対応は求められなくなったし、レイドについてもノーマルと零式に分かれ、よりカジュアルに楽しめるようになった。このあたりの空気感は、下記レポートが参考になると思う。今読み返してみても初期の吉田版「FFXIV」は、コアゲーマー向けの味付けになっていたなと思うし、このまま行っていたとすれば、今の興隆はなかっただろう。
吉田氏によれば、2つ目の拡張パッケージ「紅蓮のリベレーター」あたりで、バトルバランスやジョブ操作難易度の調整が完成し、3つ目の拡張パッケージ「漆黒のヴィランズ」あたりから、ストーリーMMORPGとしての体裁を強めていく。登録アカウントの伸びがグンと上昇するのもここからだ。物語のスケールも一気に大きくなり、果たしてこれをどう畳むのか、その終末の行方に誰もが熱中した。“ストーリーは添え物で仲間とのゲーム体験こそがすべて”、という従来型のMMORPGの価値観を覆す、MMORPGとしての新しい扉を綺麗に開いた瞬間だった。
そして1回目のフィナーレとされる「暁月のフィナーレ」で、ストーリーMMORPGとしての「FFXIV」は、ひとつのピークを迎える。旧「FFXIV」時代から続いてきたストーリーを「ハイデリン・ゾディアーク編」と命名し、その完結を壮大なスケールで見事に描いた。
一方、この間も、吉田氏と開発チームは、新たにこの世界にやってきた光の戦士達の様々なニーズに応え続けた。その代表例がインスタンスダンジョン(ID)のソロプレイ対応だ。メインストーリーを担う主要キャラクターと共にIDに挑めるコンテンツサポーターと呼ばれるシステムだが、パッチ毎に対応IDが拡充され、現在は「新生エオルゼア」から「暁月のフィナーレ」まで、メインクエストの進行に必要なすべてのIDがコンテンツサポーターに対応した。
文字にするとわずか1行だが、これはもの凄い荒技だ。キャラクターのAIをジョブ毎に準備し、各IDごとにモンスターやボスのギミックを理解させなければならない。しかも、初期のIDは、当然コンテンツサポーターを想定していない。これをひとつずつ手作業で実装していったわけだ。
筆者自身もありがたく活用させて貰っているからよく分かるが、古くからMMORPGをソロで遊びたいというニーズは存在した。市民権を得てきたのは2010年代のように思う。GDC 2011で実際にそれをテーマにしたセッションも開かれているので興味がある方は一読いただきたい。吉田氏は、グローバルで勝負するためにソロ対応は必須と捉え、時間とコストを掛けて、「FFXIV」のソロプレイ対応を完成させた。
こうして振り返ってみると、「FFXIV」は10年に渡って最盛期を更新し続けるだけの理由が存在することがわかる。しかし、吉田氏は、せっかく6.xで完成したストーリーMMORPGあるいは、ソロプレイ対応MMORPGの座に固執せず、MMORPGクリエイターとしてやりたいことを「黄金のレガシー」で実現していく。それが吉田氏がビジョンとして掲げた4点だ。
「マルチプレイの強化」、「多人数コンテンツ拡充」、「遊びごたえの強化」、「報酬の強化」。これらはPAXでも語られているので、ぜひ一読いただきたいが、これらの根っこはすべて同じであり、筆者はMMORPGとして「FFXIV」をいよいよ本質的な意味で進化させていく決意表明だと受け取った。
準備万端。いよいよ満を持して「WoW」超えへ
吉田氏が新生した「FFXIV」のベース、MMORPGとしてのアーキテクチャは間違いなくBlizzard Entertainmentの「World of Warcraft」だ。これは吉田氏自身が過去に何度も語っており、吉田氏は最大限のリスペクトを持って、同じジャンルの最大のライバルとして認める存在でもある。
これまでの「FFXIV」は、「WoW」が過去に実現してきたゲームデザインの枠内で勝負してきた。信頼が地に落ちた旧「FFXIV」を立て直すにあたり、当時はまだ無名の存在だった吉田氏はいきなり“俺のMMORPG”で勝負することは避け、すでに実績のあるシステムを採用して、貪欲かつ大胆に「FF」らしさを取り入れ、MMORPGとしての「FF」の建て直しを最優先した。
その後、複数の拡張パッケージを挟みながら、依然としてゲームとしてのベースは変えずに、丁寧にユーザーの意見を反映させながら、失墜したブランドの回復、MMORPGとしての完成度を高めていった。
これは外から見れば偉大なサクセスストーリーだが、吉田氏としてはひょっとしたら我慢の10年間だったかもしれない。PAXでは「ターゲットサークルがやけくそにデカい」、「またこのパターンなのか」、「自分がプレイしてても眠くなる」などと、「FFXIV」の不満点を自虐的に語っていたが、これはとりもなおさず師匠筋である「WoW」への“反発”ともとれる。筆者には「『WoW』フォロワーの立場はもういいですよね?」と言っているように聞こえた。
同様に今回のメディア向けプレゼンでも、「タンクのMT、STの役割を明確にすると、今度は殴れない時間を作ってほしくないと言われる。挑戦、おもしろさよりもプレイヤーの反応、顔色を見すぎた」とも語っており、自身や開発チームにこれまで掛けてきた縛りを「黄金のレガシー」から徐々に解き放っていくという強い意志を感じた。
これはMMORPGファンにとってワクワクするような決意表明だ。「FFXIV」が文字通りゲームとして、MMORPGとしてまた進化するということだし、日本有数のMMORPGの遊び手である吉田直樹氏の“俺のMMORPG”が見られるかもしれないからだ。
その皮切りとしてグラフィックスアップデートが行なわれるが、それは表面的な変化に過ぎない。今後、バトルも変わるだろうし、ジョブも変わるだろう。となると、絶対不可侵だったタンク、DPS、ヒーラーというロールも大胆にイジってくる可能性がある。そこまでいけば、IDやレイドの概念が変わっても何の不思議もないし、ストーリーの見せ方や光の戦士の関わり方も劇的に変化する可能性もある。
MMORPGは「World of Warcraft」が2004年にリリースされてから、この20年間、本質的に進化が止まっていると思う。それはMMORPG界の殿堂入りタイトルである「Ultima Online」、「EverQuest」、「ファイナルファンタジーXI」がそうであったように、“自身が生み出した成功体験”という硬い殻を、「WoW」もまた破れていないように思うし、その最大のフォロワーである「FFXIV」も、新生以降、ゲームデザインの進化より、ユーザーのゲーム体験の向上を優先させてきたからだ。だが、「7.0」以降はそれが変わるという。MMOウォッチャーとして、吉田直樹なら、「FFXIV」開発チームなら、あるいはやり遂げるかもしれないという期待を抱かせてくれる。
下手の横好きの境地に突入している筆者としては、どういう進化もウェルカムだが、唯一ゲームとしてこれ以上難しくならないことを願うのみだ。この点についても吉田氏は「遊びごたえの強化は難易度アップではない。ただ、新しいことをはじめるので、難しく感じるかも。慣れからの脱却です」とも語っており、戸惑いはしそうなものの、引退まで追い込まれることはなさそうで胸をなで下ろしている。
今回、吉田氏は、「黄金のレガシー」のストーリーについては語らなかったものの、吉田氏らしい印象的なコメントを残しているので、そちらを紹介して締めくくりとしたい。
「今回の冒険の舞台であるトラル大陸には、多くの民族が登場し、色んな種族との出会いが待っています。メインストーリーでは、新しい人びととの出会いが全編にわたって描かれています。それぞれ価値観、宗教観も違う中で、どうやって1つの想いで繋いでいくのか。世界情勢が非常によろしくない中で、相互理解だったり、お互いの文化への尊重だったりをしっかり描いているので、そのあたりの現在の世界情勢や、自身の身の回りを振り返る機会にして貰えれば」。
MMORPGの拡張パッケージのストーリーに、世界平和のメッセージを込めるあたりが吉田氏らしい。今後も引き続き吉田氏と「FFXIV」開発チームの取り組みを見守っていきたい。
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