【特別企画】
「グランツーリスモ7」に明確なエンディングはない。山内一典氏が“カーライフ・サンドボックス世界”を案内
最新作は“音楽”にフォーカス。新モード「ミュージックラリー」が明らかに
2022年2月3日 07:30
- 【グランツーリスモ7】
- 3月4日 発売予定
- 価格:
- PS5・スタンダードエディション:8,690円(税込)
- PS4・スタンダードエディション:7,590円(税込)
- PS5/PS4・25周年アニバーサリーエディション:10,890円(税込)
ソニー・インタラクティブエンタテインメントより、3月4日発売予定のプレイステーション 5/プレイステーション 4用リアルドライビングシミュレーター「グランツーリスモ7」。いよいよ発売まで残り1カ月と迫る中、「グランツーリスモ」シリーズプロデューサー・山内一典氏が主催するデジタルメディアイベントが2日間に渡って開催された。
1997年12月に発売されるや、レースゲームの世界に革命を巻き起こした「グランツーリスモ」シリーズ。カーライフそのものをシミュレートする、そのゲーム内容は他のレースゲームとは異なる、クルマ文化の担い手としての気概を感じさせるものだ。ナンバリング前作「グランツーリスモ6」より9年、そして前作「グランツーリスモSPORT」より5年、シリーズ25周年記念作品として、満を持して登場する最新作「グランツーリスモ7」はシリーズの中で最高のクオリティと最大規模のゲームボリュームを誇る。すでに公開されている「Behind The Scenes」映像シリーズなどで、実写レベルの映像美に驚いた方も多いことだろう。
今回、デジタルメディアイベントの初日には「オンデマンドメディアブリーフィング」として、新しいゲームプレイ映像や本作「グランツーリスモ7」でどのようにPS5の機能が活かされているかなど、山内氏によるプレゼンテーションを実施。本稿では、こちらのプレゼンテーションの模様をお届けする。プレゼンテーションでは、特に本作で新たに加わったフィーチャーに焦点を当てて、どちらかというと技術的な側面から「グランツーリスモ7」の広大な世界が紹介されており、新たなゲームモード「ミュージックラリー」の存在も明らかに。遂に待望となるシリーズ最新作の全貌がアンヴェイルの瞬間を迎えた。
「グランツーリスモ7」に明確なエンディングは恐らくない。広大で多機能な“サンドボックス世界”
最初に、山内氏が語ったのは“今、この時代に「グランツーリスモ」を作ることの意味”。「グランツーリスモ」シリーズは今年2022年に25周年を迎えるが、この25年間でクルマを取り巻く社会環境は大きく変化したことを指摘した。25年前、当時の豊かなクルマの文化にインスピレーションを受けて制作された「グランツーリスモ」。今では、25年前のようにクルマの文化について誰かが語る、クルマの美しさについて誰かが語る、ドライビングの楽しさについてまた別の誰かが語る、そういった環境ではなくなってきている。
そんな時代認識の中で制作されたのが最新作「グランツーリスモ7」。本作のテーマは、20世紀に生まれた最も素敵な、人類にとってのガジェットの1つである「クルマ」の魅力と文化を新しい世代に伝えること。前提となる知識が全く無くても、クルマの魅力に目覚めて、あるいはそれをコントロールする喜び、所有する喜び、チューニングする喜びを伝えること。それが「グランツーリスモ7」の究極的な目標となっている。
「グランツーリスモ」シリーズお馴染みのワールドマップが復活する本作。ワールドマップは「グランツーリスモ7」の世界を一望できるもの。このワールドマップのUIが本作に含まれている様々なフィーチャーやコンテンツにアクセスする“ハブ”になる。「ガレージ」や「チューニングショップ」といったこれまで見慣れたものもあれば、新たに加わったものもある。プレーヤーは、この広大な「GTワールド」の世界を旅することになる。
「グランツーリスモ7」は、一言で表わすと“ザ・カーライフ・シミュレーター”と呼べるとする山内氏。様々な機能が有機的に統合されることによって、カーライフをシミュレートする“サンドボックス世界”が「グランツーリスモ7」であると説明する。
クルマのグラフィックスやフィジックス、サウンドエンジン、精緻なチューニングシステム、リアルな天候変化・時間変化のシステム、オンラインでのロビーやコンペティションのシステム、そしてゲーム内でコンテンツを作ったり、あるいはそれをシェアするシステムといったものが「カーライフシミュレーター」という根幹を取り囲んでおり、「グランツーリスモ7」をサポートするシステムとして構成されている。
カーライフ・サンドボックスということで、山内氏は「グランツーリスモ7」に明確なエンディングは恐らくないだろう、と説明。「プレーヤーの皆さんは、プレイしてから1年経っても新しい遊び方に気づくような、そんなゲームに『GT7』はなっているはずです」と語っている。
収録車種は400台以上。収録コースは34ロケーションと90レイアウト以上を収録予定
収録車種については、400台以上のクルマを“Day1(3月4日)”から用意。今作ではクルマを購入する場所が「Brand Central(ブランドセントラル)」、「Used Car Dealer(中古車ディーラー)」、「Legendary Car Dealer(レジェンダリーカーディーラー)」の3つとなっている。「Brand Central」では、2001年以降の新車を取り扱う。そして「Used Car Dealer」はいわゆる中古車ショップ、中古車がよりリーズナブルな価格で並んでいるところ。もう1つの「Legendary Car Dealer」は、100年経っても色褪せないような歴史的な名車、同時に高額でもあるクルマが並んでいるディーラーとなる。
また、コースについては、“Day1”の時点で、34を超えるロケーションと90以上のレイアウトを収録する予定。「ワールドサーキット」は、今作においてそれぞれのコースにアクセスする場所であるが、中には「ニュルブルクリンク」といった実在するコースと、今作で復活を遂げる「トライアルマウンテン・サーキット」などの架空のコースが用意される。
以前のシリーズと「GT7」との違いは、色々なレースやアクティビティがそれぞれのコースごとに開催されているという点。シリーズお馴染みの「サンデーカップ」や「クラブマンカップ」など、100以上ものレースイベントが各コースごとに開催されており、コースを学ぶための「サーキットエクスペリエンス」や「ドリフトトライアル」、「タイムトライアル」などもそれぞれのコースごとに用意される。
PS5版はフレームレート優先か、レイトレーシングかを選択可能
PS5版の「グランツーリスモ7」では、2つのグラフィックスモードを選ぶことができる。1つは「Frame Rate mode」で、フレームレートを優先するモード。こちらではレース中、リプレイ中を問わず、可能な限り高いフレームレートでプレイすることが可能となる。「GT7」におけるレース中のフレームレートの基準は秒間60フレーム(60FPS)となる。
もう一方は「Ray Tracing Mode」。「レイトレーシングって、PS5をもってしても非常に重たい処理なんですけど」という山内氏。このモードでは、レースのリプレイや3Dのステージ、フォトモードのレンダリングなど、プレーヤーに対して素早いレスポンスが必要のないモードでレイトレーシングが適用される。プレゼンテーションでは、実際にレイトレーシングON/OFF、「Frame Rate mode」と「Ray Tracing Mode」との比較動画も披露された。
また、PS5版では3Dオーディオに対応する。具体的に対応については“3次アンビソニックス”と呼ばれる3D音響表現手法を使用。従来のスピーカーシステムに例えると、16チャンネル相当の立体解像度を有する。「GT7」のサウンドエフェクトは、3次アンビソニックスにエンコードされた後、PS5はそれを数百チャンネルのスピーカーにレンダリング。プレーヤーのニーズに応じて、マルチスピーカーに出力したり、あるいはHRTF(頭部伝達関数)より、2チャンネルのヘッドフォンにバイノーラル方式で出力する。
山内氏は、一般的にはヘッドフォンで体験するのが最も効果的ではないかと提案する。具体的にどういう体験ができるのかというと、例えば、周囲のクルマが発する音、コースを飛行するヘリコプターの音、雨がルーフを叩く音あるいはウインドウにぶつかる音など、そういった音が異なる方向からやって来ていることがわかるはずだとする。さらに、タイヤが縁石を踏む音は、正確にタイヤのトレッド面(地面に接触する部分)、ドライバーから見れば斜め下方向から聞こえてくる。
それに加えて、「GT7」では“反射音(音が放射されて何かに反射して戻ってくる音)”も表現されている。フェンスに当たって跳ね返ってくる音、コンクリートウォールに当たって跳ね返ってくる音、タイヤバリアに当たって跳ね返ってくる音など、柔らかいものだったり、硬いものだったりとそれぞれの材質によって反射音が変化するという表現も行なわれている。
「グランツーリスモ」シリーズでは常に楽曲の豊富さを大切にしてきたつもりです、と語る山内氏。「グランツーリスモ7」では、過去最高となる75アーティスト、300曲以上の音楽を収録。ジャンルについても、ロックはもちろんのこと、クラッシック、ジャズ、ヒップホップ、エレクトロ、ラウンジミュージックなど、幅広いジャンルのミュージックが収録される。プレーヤーは、レース中やリプレイ中だけでなく、「GTワールド」を探索している様々なメニューでも色々な音楽を楽しむことができる。
PS5のDualSense コントローラーの機能である「ハプティックス」。ハプティックスが可能にする情報出力の周波数は20~200Hz。振動から音にかけてのその間の周波数となっており、それがハプティックスが得意とする周波数。具体的には、路面の微妙な凹凸からやってくる微かなフィードバック、縁石にのったときにやってくる大きなフィードバック、あるいはフロントタイヤが滑ってアンダーステアが出てくるときにやってくる、断続的なステアリングホイールに伝わる振動など、そういったサウンドでは表現しきれないようなフィードバックを、ハプティックスはプレーヤーに伝えることができる。
そして、ハプティックスのもう1つの機能である「アダプティブトリガー」。「グランツーリスモ7」では、アダプティブトリガーを使用してクルマごとにブレーキの重さが微妙に異なるのを表現。さらに、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が作動したときの、断続的なブレーキロックの振動もアダプティブトリガーを使って表現されている。
新登場の「GTカフェ」は広大な「GT7」の世界のガイド役
「グランツーリスモ7」で新しく登場する「グランツーリスモカフェ(GTカフェ)」。カーライフを楽しむ“カーライフ・シミュレーター”である本作は、その機能があまりにも膨大で、かつ多機能なため、プレーヤーがその世界の全てを理解するのにはそれなりの時間が必要になる。それをどういう方法で可能にするのか、というのが「GT7」の開発の大きなテーマだったという。
そこで開発チームが出した答えがこの「カフェ」。GTカフェで何ができるかというと、ここで様々なクエストを“メニューブック”という形でプレーヤーは授かる。そのメニューブックをクリアしていくことで、徐々に「グランツーリスモ7」の広大な世界への理解が深まるようにデザインされている。
1つ1つのメニューブックをクリアするごとに、そのメニューブックに関係する自動車の背景や文化について、カフェのマスターから聞くことができる。あるいは、カフェにはプレーヤーが乗っているクルマのデザイナー本人が登場して、そのクルマについての思い出を語ってくれることもある。
カフェには“メニューブック”という名前の、30以上のクエストが用意されているが、そのクエストを全てクリアすれば、キャンペーンモードにおける一応の“エンディング”を迎えることができる。いわゆるエンディングは、この30以上のクエストをクリアしたことで迎えることができるが、それは一方で、その節目は、その先にある“終わることのないカーライフの始まり”でもある。それが「グランツーリスモ7」の構造といえると、山内氏は説明した。
セッティング画面の中に“小さなミニゲーム”。最新作でチューニングが復活
「グランツーリスモ7」では、チューニングやカスタマイズが復活する。当然、それらをセットアップする「セッティング」が重要になってくる。プレゼンテーションでは、最新作のマシンセッティング画面を解説。画面左側にクルマのパフォーマンスを表わす様々な指標が並んでおり、中央の列には“Measure(計測)”というボタンが配置されている。これは様々なセッティングを変更した後、どうパフォーマンスが変化したのかを知るための部分となる。また、右側に膨大なセッティング項目が並べられている。
「クルマが好きな方は、この画面をパッと見ただけで何か面白そうだぞ、と思われるのではないでしょうか」と説明する山内氏。セッティング画面には「GT7」での大きな進化が隠されているとのことで、1つは、過去のシリーズ作品にもあった、クルマのパフォーマンスを表わす数値「パフォーマンスポイント(PP)」が“シミュレーションベース”になったこと。
以前のパフォーマンスポイントは、車両重量とパワー(最高出力、最大トルク)とタイヤグリップから、簡単な関係式で計算されていたが、今作では実際、背後で自動車物理エンジン、フィジックスをまわして、そのクルマの具体的なパフォーマンスポイントを求めるようになっている。この処理はほぼリアルタイムで行なわれる。そのため、プレーヤーはセッティング画面で何らかのパーツを交換したり、あるいはスライダーを動かしたりした後に、計測ボタンを押すだけで、自分のクルマのパフォーマンスがどう変化したのかを数字で見ることが可能になった。
山内氏は「これはセッティング画面の中に“小さなミニゲーム”が入っているみたいなもので、『GT7』の様々な機能の中でも、僕のお気に入りの画面の1つです」と語ると共に、ここであれこれ試行錯誤して、それをセッティングシートに保存したり、あるいは実際にコースにクルマを持っていって、その成果を確認したりといったルーティンが「GT7」で楽しい遊び方の1つになるだろう、と述べる。
「グランツーリスモ7」のもう1つの側面「ショーケース」
「グランツーリスモ7」というのは、少し違った角度で見ると、巨大な“クリエイティブツール群”、“クリエイティブスイート”みたいなものとして捉えることもできる。
タイムトライアルやレースを、あるいはドリフトをして、そのリプレイを保存する。あるいは「スケープス」で写真を撮る。エアロパーツやカスタムパーツを組み合わせてクルマのスタイルを作る。「リバリーエディター」を使ってもっと複雑なオリジナルのスタイルを作る。色々なことができる中で、そういったコンテンツ、プレーヤー自身が作ったコンテンツを保存したり、他のプレーヤーに向けて共有したり、あるいは他のプレーヤーが作った様々なコンテンツ・作品を探してダウンロードできる場所が「ショーケース」ということになる。
「ミュージックリプレイ」と「ミュージックラリー」追加! 音楽をフィーチャーする「GT7」
「ミュージックリプレイ」は今回、初めて披露された機能。「グランツーリスモ」の大切なピースが「リプレイ」。山内氏は、初代「グランツーリスモ」も“プレイ”と“リプレイ”を全く同じような比重で扱ったタイトルであったとして、それは「グランツーリスモ」の伝統といえるものだとする。
「グランツーリスモ7」では、これまであった通常のリプレイモードに加えて、新たに「ミュージックリプレイ」を開発。これは、音楽に合わせて自動的にリプレイカメラが生成されるリプレイモードとなる。これまでのリプレイは、コースという“空間”の中に予めリプレイカメラが設置されていて、クルマが走ることでそれぞれのカメラがクルマを追いかけるというものだった。一方「ミュージックリプレイ」では、音楽という“時間”に対してカメラが生成されてリプレイを作るというモードとなっている。
山内氏は、この例として「映画は時間の芸術」であることを挙げて、「ミュージックリプレイ」は言ってみれば、その技法をレースのリプレイで実現するテクノロジーであると説明。「これは『グランツーリスモ7』における大きな発明の1つといってもよいのではないか、と思っています」としている。
さらに「ミュージックリプレイ」に合わせて、新たに加わったゲームモードが「ミュージックラリー」。これまで「グランツーリスモ」では、音楽に関してちょっとした悩みがあったと語る山内氏。レース中にBGMを聞きたいけど、エンジンやタイヤのスキール音が聞こえないので、どうしても運転に集中したいときにはBGMをオフにする必要があった。これに加えて、多くのプレーヤーから「美しい景観・景色の中で、リラックスして音楽を流しながらクルマをドライブするような、そんなゲームを作って欲しい」という要望もあったという。
今回新たに用意された「ミュージックラリー」は、そういったニーズへの1つの回答となる。このモードでは、速く走ることよりも音楽を楽しむことが目的になり、音楽を最後まで聞くことがクリア条件となっている。プレーヤーは一定の初期ビート数を持ってスタート。走行するごとに、時間が経つごとにビートはだんだん減っていく。ビートがゼロになると音楽が止まってゲームオーバーとなる。ビートはコース上に設けられた“エクステンドゲート”を通ることで加算される。
持ちビートが音楽の終わりまでもっていれば、無事、音楽を最後まで聞くことができてゲームクリアとなる。「ミュージックラリー」はこれまでのストイックな、速く走ることが最大の目的という「グランツーリスモ」とは全く異なる、リラックスしたドライビング、それと音楽を楽しむゲームモードということになる。
シリーズ最新作「グランツーリスモ7」はいよいよ3月4日発売予定。シリーズの集大成に相応しく、ゲームシステム、ゲームボリュームのあらゆる面で大きな進化を遂げており、プレイできる日が来るのを待ちきれないという印象だ。レースだけではなく、音楽を流しながらドライブが楽しめるモードの追加は、これを待ち望んでいたというファンも多いのではないだろうか。
ちなみに、プレゼンテーションの最後には、「グランツーリスモ7」の新しい発明として紹介された「ミュージックリプレイ」の映像が披露された。映像は「ウィロースプリングス・レースウェイ」を走る「シェルビー コブラ '66」のもので、シリーズの代表曲「Moon Over The Castle」のアレンジバージョン「Moon Over The Castle GT5 Version」に合わせて生成されたリアルタイムの映像となっていた。
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