【特別企画】
「グランツーリスモ7」では何が変わる? 最新トレーラーより垣間見えた“シリーズ集大成”の世界
2021年9月16日 22:00
- 【グランツーリスモ7】
- 2022年3月4日 発売予定
- 価格:未定
“GRAN TURISMO IS BACK(グランツーリスモが帰ってくる)”。この印象的なメッセージと共に、2020年6月にタイトル発表されたリアルドライビングシミュレーター「グランツーリスモ」シリーズの最新作「グランツーリスモ7」(以下、GT7)は、遂に2022年3月4日、プレイステーション 5とプレイステーション 4向けに同時発売されることが決定した。
「グランツーリスモ」シリーズは、山内一典氏が代表を務めるポリフォニーデジタル開発のレース&カーライフシミュレーションゲーム。
1997年12月23日に初代「グランツーリスモ」が発売されるや、“走る・曲がる・止まる”という実車の挙動を忠実に再現する物理シミュレーション、スポーツカーはもちろん、レースとは縁遠いファミリーカーやクラシックカーといった実在する車種を多数収録したことなど、当時のアクション性の強いレースゲームとは一線を画す、リアルに再現された「カーライフ」の世界がゲーマーのみならず本物のクルマ好きまでも虜にし、レースゲームの世界に革命を巻き起こした。
そんなシリーズの原点である初代「グランツーリスモ」の登場より25年。シリーズの集大成を掲げる最新作「GT7」の目標は、長きにわたるシリーズのファンだけでなく、クルマをよく知らない初心者の方にも、過去150年もの自動車の文化とレースの文化のすべてを伝えられるデザインにすることだという。モータースポーツの側面を強く意識した前作「グランツーリスモSPORT」とは打って変わり、ファン待望の「キャンペーンモード」の復活が示すように、まさしく“GRAN TURISMO IS BACK”として「GT7」は、原点であるカーライフシミュレーターへの回帰を果たす。
9月10日に配信された映像番組「PlayStation Showcase 2021」にて、発売日のアナウンスと同時に披露された最新トレーラーの映像は、PS5のレイトレーシング機能をフル活用。先に公開されたアナウンストレーラーでの映像美を遥かに超えて、もはや「実写」と見紛うレベルに。なんだか新作が出るたびにそう言っている気もするが、それほどまでにリアルに構築されたクルマ、コース、光の反射や空模様の再現度に、筆者はもちろん多くのファンが驚愕することとなった。
さて、本稿ではこれまでに公開された最新作「グランツーリスモ7」のゲーム概要をおさらいしながら、最新トレーラー映像やスクリーンショットに散りばめられた本作の新たな要素を探ってみたい。これまでのシリーズ以上に“カー・コレクション・ゲーム”としてデザインされているという今作。25年に及ぶシリーズの歴史が生み出す新たな「グランツーリスモの世界」にもう期待しかない!
「グランツーリスモ7」はシリーズの集大成! 歴代オープニング映像をリメイクした最新トレーラー
「GT7」はシリーズの集大成にして、原点回帰の作品となる。それを強く意識させるのがやはり最新トレーラーの冒頭だろう。
「グランツーリスモ」シリーズのテーマ曲である「Moon Over The Castle」のメロディが流れる映像は、初代「グランツーリスモ」、「グランツーリスモ2」、「グランツーリスモ3 A-Spec」、「グランツーリスモ4」の歴代オープニング映像がリメイクされ詰め込まれたもの。ファンにとってはこれだけでもう感涙必至だ。今作「GT7」が“シリーズの集大成”なのだと確かに感じられるメッセージが込められている。
ちなみに、公式YouTubeチャンネル「GRAN TURISMO TV」では、現在でも「グランツーリスモ4」のオープニングムービーを見ることができる。「フォードGT LMレースカー SpecII」を中心に景色が巡るオリジナルのものと、今回の「ポルシェ917リビング・レジェンド」のものとを比較してみれば、驚異的なグラフィックスの進化も実感できるはずだ。
「グランツーリスモ7」は何かが違う? 最新トレーラー&スクリーンショットからまとめてみた
待望の“キャンペーンモード”は「GTキャンペーンモード」として復活!
シリーズのタイトルである「グランツーリスモ」とは、イタリア語で“大旅行”を意味する言葉。過去作のキャンペーンモードにあたる「グランツーリスモモード」は、今作では「GTキャンペーンモード」という名称となり、プレーヤーが自分だけの“旅”をして人生の学びを得る場として、新たにデザインされ復活を果たす。
中でも、2004年12月に発売された「グランツーリスモ4」以来となるワールド・マップの採用は、ファンにとって非常に喜ばしい出来事。マップのデザインは、アナウンストレーラー公開時のものとは大きく異なる3Dマップで構成されたものに変更されたが、チューニングショップを示す“レンチ”のマークや、ライセンスセンターを示すであろう“パイロン”のマークなど、マップ上に様々なアイコンが表示されている。
「FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ」のチャンピオントロフィーが示すのはおそらく「GTスポーツモード」。車両の購入や売却、チューニング、レースをしながら、自分だけのカーコレクションを充実させていく「グランツーリスモ」の原点である「カーライフ」体験はもちろんのこと、「モータースポーツ」の要素もしっかり用意されており、オンライン上の他のプレーヤーと競い合い腕を磨いていく楽しさも味わえるようになっている。
また「GTワールド・マップ」の画像上部にある表示に目を向けてみると、前作「グランツーリスモSPORT」にもあったデイリーワークアウト(ドライビングマラソン)の表示も確認できる。デイリーワークアウトとはレースやイベントに参加し、1日の走行距離がマラソンと同じ42.195km(26.21mile)に達すると、ランダムにクルマがプレゼントされるというもの。レベルと経験値も表示されていることから、「GT SPORT」に見られたいくつかのシステムは引き続き、採用されるようだ。
そのほか「ライセンスセンター」の画像も公開されている。ライセンスセンターは、まさに「グランツーリスモ」の世界への入り口。クルマの“走る・曲がる・止まる”という基本操作から、高度なスポーツドライビングまで、あらゆるテクニックを学びながらライセンスを取得し、クルマを購入してレースに挑む。このシリーズの根幹たる遊び方は最新作でも変わらない。ライセンスの種類も、国内B級・国内A級・国際B級・国際A級・スーパーライセンスとお馴染みのもの。まさしくあの“グランツーリスモモード”が帰ってきたという印象だ。
コースレイアウトは90種類以上!?「GT SPORT」収録コースに加わる新たなラインナップに期待
今作には「トライアルマウンテン・サーキット」や「ハイスピードリンク」といったオリジナルコースの再登場を含め、90種類以上のコースレイアウトが収録されるという。最新トレーラーには、世界各地にあるサーキット・コースを選択できる「ワールドサーキット」というモードが映し出されており、そこから本作に収録されるコースの一部を確認することができるが、そのほとんどが前作「GT SPORT」に収録されたコースばかりなのは気になる。
「GT SPORT」の収録コースは発売後のアップデートによって追加されたものを含め、すでに30ロケーション82レイアウト。仮に今回「GT7」向けに発表された「トライアルマウンテン・サーキット」と「ハイスピードリンク」の順走・逆走を入れたとして、少なくとも6レイアウト以上が未だベールに包まれているということになる。近年の作品ではリアルサーキットの追加が目立っただけに、最新のグラフィックスで再現された「コート・ダジュール」や「シアトル・サーキット」、「香港」といった人気の高い市街地コースの復活も期待したいところだ。
初代「グランツーリスモ」よりお馴染みのオリジナルコース「トライアルマウンテン・サーキット」と「ハイスピードリンク」はナンバリング前作「グランツーリスモ6」以来となる、再登場を果たすことが明らかとなった。これらのコースはPS5の表現力に合わせて、よりディテールに富んだリッチなコースに仕上げられているほか、レイアウトの一部にも手が加えられている。
特に全開走行が可能な高速サーキットである「ハイスピードリンク」は、第2コーナー付近に巨大なスタンドが設置されるなど、過去作のものとの違いは歴然。そんな大改修によりコース幅も狭くなっているように見受けられるが果たして。今までに登場したサーキットも表現力の向上と共に改修されることで、まるで新規サーキットのような輝きを放ちながら復活を遂げているだけに、今後披露されるであろうコースにもますます期待が高まる。
その上、今作では時間変化・天候変化も復活する。「GT SPORT」ではコースごとに設定された固定の時間帯・天候を選択する形となっていたが、「GT7」ではより自然でリアルな時間変化及び天候変化を実現。そのシミュレーションは、NASAの学術データベースをはじめとする膨大な気象観測データを手がかりに、それをゲームに仕立て上げたポリフォニー・デジタルならではの機能だという。
大気中のエアロゾル粒子の粒径分布や濃度分布の空間的・時間的な状態の再現が地球規模のスケールで実施されており、その結果、時間帯や天候による光の変化や、リアルで複雑な空模様を表現することに成功している。「GT SPORT」の段階でも自然界と変わらない光の強度や色彩、空模様が再現されており、まさに「実写」だと思わせる完成度だったが、PS5のレイトレーシング機能によって路面に溜まった水たまりに周辺の景色が映り込むなど、それを遥かに上回る「実写」感にただただ脱帽するばかり。もはや「ゲーム」であることを忘れてしまいそうだ。
インターフェースはこれが完成形? 路面の水量に関する表示を発見
2020年に開催された映像配信イベント「THE FUTURE OF GAMING SHOW」にてタイトル発表された「GT7」。そこで披露されたトレーラーには早くもゲームプレイ映像が収められており、電撃的なタイトル発表と共に二重の驚きであった。
そのゲームプレイ映像では、本作のカバーカーの1台である「MAZDA RX-VISION GT3 CONCEPT」によるトライアルマウンテン・サーキットの走行シーンを収録。コクピットビューでのインターフェースは基本的に「GT SPORT」のものを踏襲していたため、ここから完成版に向けてデザインが変更されるのではないかと噂されていた。
そして最新トレーラーに収められているコクピットビューでは、まずより鮮明になったメーター類が目を引く。これならレース情報の表示をオフにして、実際にメーターを見て運転しようとしても問題なさそうだ。また、フロントガラスやサイドミラーに反射する光の表現が強化され、背後からハイビームで照らされると本当に「眩しい」と感じられるようになっている。
表現力の強化の一方で、なぜか画面右隅に表示されていた「マルチ・ファンクション・ディスプレイ(MFD)」が消えてしまったほか、ライバルカーの頭上に順位と車名等が表示されるなど、若干だがインターフェースの変化も確認できる。
とりわけ注目されるのが、装着タイヤ・メカニカルダメージ表示の左隣りに、路面の水量を表わす表示が新たに追加されていることだ。これは今回の「Release Date Trailer」より確認される表示で、晴れている「ハイスピードリンク」での走行シーンでは“0”を示し、一方、雨が降っている「筑波サーキット」での走行シーンでは“100”と表示されている。これによってクルマの挙動がどのように変化するかはまだわからないが、コース上に水たまりが確認できるスクリーンショットが公開されているだけに、「グランツーリスモ」シリーズでは初となる“ハイドロプレーニング現象”の再現にも期待したい。
トレーラーの公開のたびに、少しずつ変化を遂げているインターフェース。コクピットビューもこれで完成形と断定するにはまだ早そうだ。
「GT7」はこれまで以上に“カー・コレクション・ゲーム”になる。果たして収録車種はどれほど増える?
前作「GT SPORT」で期待外れに感じた点があるとすれば、まず筆頭に挙がるのが収録車種の少なさだろう。カーモデルは自動車メーカーが製造に使用するCADデータを除けば、世界でもっとも高品質、高精度なモデリングを実現し、またシリーズ史上初となる「ポルシェ」を収録したことはシリーズファンを大いに喜ばせたが、発売時点で162車種という点は、確かに無料アップデートによって300車種以上までに追加されたものの、「グランツーリスモ6」が1,200台以上(内装視点なしのモデルを含む)を収録したことに比べれば、少ないと言わざるを得なかった。
それでは、今作「GT7」のブランド・セントラルや中古車ディーラーではというと、420種類以上のクルマを利用可能とのこと。満を持してゲームへの登場となる「ポルシェ917リビング・レジェンド」や「ランボルギーニ ランボ V12 ビジョン グランツーリスモ」をはじめ、「GT SPORT」で収録された車種以外にも新たなクルマが追加されると共に、「メルセデス・ベンツ CLK-LM レースカー」に「トヨタ カストロール トムス スープラ」など過去作に収録されていたモデルも全てモデリングし直され、インテリアの再現も行なわれるようだ。
ところで、これまでのシリーズ以上に“カー・コレクション・ゲーム”としてデザインされているという「GT7」では、カー・コレクションを始めるきっかけとなり、またゲームの序盤をナビゲートしてくれる場として、新たに「GTカフェ」が登場する。プレーヤーは、そこで依頼された“文化的な意味を持つカーコレクション”を、レースに出場してプレゼントカーとして獲得したり、ブランドセントラルや中古車ディーラーで購入しながらコンプリートしていくという。
クルマの形と名前を知ること、覚えることは、クルマへの愛を持つきっかけ。「GT7」ではそんな最初の一歩をクルマをよく知らない初心者でも踏み出せるようにデザインされている。最新のクルマのみならず、過去の名車も広く収録することで知られる「グランツーリスモ」シリーズ。最新トレーラーでは「BRIGHTON ANTIQUES」という施設も披露されており、過去の自動車文化を振り返る上で欠くことのできないレジェンドカーたちに出会えるほか、購入することもできるようだ。
ホイールのサイズ変更もできるようになったチューニング! お馴染みの「GTオート」も復活
「GT7」では再び、「ノーマルカー」よりスタートして、エンジン、サスペンション、トランスミッションのギア比、ブレーキ、タイヤなどを調整して、自分好みのクルマに仕上げることができる。中でも、復活したエアロパーツの変更では“ウイングレス仕様”も選択可能。さらにホイールのカスタマイズではサイズ変更もできるようになったほか、リム幅(Rim Width)やオフセット(Offset)の値が変えられるオプションも用意されている。
そしてファンには嬉しい「GTオート」も復活を遂げる。「GTオート」は「チューニングショップ」とは別にクルマのカスタムやメンテナンスを請け負うショップで、エンジンオイルの交換や洗車が行なえるシリーズお馴染みの施設。レースに参加しては何度も通い、ノリノリなジャズのBGMを聞きながら愛車をぐるぐると高速回転させて洗車していた日々が懐かしい。シリーズを通してコミカルに描かれてきた洗車シーンが今作でどのように表現されるのか、非常に楽しみだ。
そのほか、クルマのワイドボディ化、ボディペイント、ロールケージやエアロパーツの装着などのドレスアップも楽しめる。市販車をレーシングカーへと改造する「レーシングモディファイ」の復活もできそうだ。またインターフェースを改善し、実用性と使いやすさを向上させた「リバリーエディター」も「GTオート」の中に設けられているのが確認できる。
「スケープス」は遂にレイトレーシングに対応! 世界各地でクルマを撮る楽しみが味わえる
世界各地で撮影された風景の中にクルマを配置し、フォト撮影が行なえる「スケープス」。「グランツーリスモ4」より実装されたフォトモードの完成形ともいえる機能で、クルマを走らせる以外に、クルマを撮る楽しさが味わえる。撮影した写真は他のプレーヤーに公開して共有することもできる。
今作では、撮影画面において大きな変化は無そうに見えるが、世界43カ国、2,500カ所以上のフォトスポットでお気に入りのクルマの写真を存分に撮影できるとのことで、新規の撮影スポットも多数用意されるようだ。またレイトレーシングにも対応し、HDR技術と合わせてフォトリアリスティックな撮影、高度なエフェクトや、流し撮りなども可能となる。レーサーでありつつ、フォトグラファーとして愛車と共に世界各地を“旅”する。そんな素敵な体験が待っている。
シリーズ最新作「グランツーリスモ7」は2022年3月4日に発売される。驚異的なグラフィックスの進化はもちろんのこと、野心的な作品だった前作「グランツーリスモSPORT」のモータースポーツ要素も継承しつつ、キャンペーンモードを主体とした王道路線への原点回帰を目指そうとしている。まさにナンバリング最新作にして、カーライフシミュレーターとして25年間に渡って紡いできたシリーズの集大成というのも納得の大きな変化といった感じだ。
ただ、これはあくまでも最新トレーラーやスクリーンショットを見ての感想にすぎない。本当に気になるのはドライビングシミュレーターの根幹たる、クルマの挙動シミュレーションやライバルカーAIの進化など、実際にクルマを走らせてみた際の操作感や手触り感だろう。特にPS5「DualSense ワイヤレスコントローラー」のアダプティブトリガーで再現されるという、ABSやタイヤの回転による振動、クルマごとに異なるブレーキの抵抗などは、やはり体験してみないことにはわからない。だがその一方で、「グランツーリスモ」らしい、クルマを巡るありとあらゆる楽しさと愛が込められた作品であるということは確かに伝わってきた。
今回の発売日発表で、もう1つファンを驚かせたのは、いわゆる“縦マルチ”としてPS4版が同時展開されることだろう。現状、PS5版とPS4版における表現等の違いは明らかにされていない。おそらくレイトレーシングの有無やロード時間の長さに差が出てくるとは考えられるが、まだまだ新規収録のクルマやコースが少ないと感じられるだけに、それがさらなるボリュームアップの足枷にならないことを切に祈るばかりだ。
余談にはなるが、キャンペーンモードの情報が公開された今回。シリーズの集大成ということで、一ファンとしてはアーケードモードも気になるところ。願わくば名曲「Slipstream」のサウンドにのせてスタイリッシュ、かつクルマの走る姿がカッコいい「グランツーリスモ3」のあの感じを復活させてほしいなあと思う次第である。
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