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★オンラインゲームレビュー★

新しい技術体系「錬金術」と新ストーリーを導入
継続ではなく、新要素を“開拓”していくMMORPG

「マビノギ チャプター3」

  • ジャンル:MMORPG
  • 開発元:NEXON
  • 運営:ネクソンジャパン
  • 利用料金:無料(アイテム課金)
  • 対応OS:Windows 2000/XP
  • サービス開始日:正式サービス中



 株式会社ネクソンジャパンは、Windows用MMORPG「マビノギ」において、12月11日に「チャプター3 ~アルケミスト~」を実装した。

 「マビノギ」は“ジェネレーション”や“チャプター”といった区分があり、ジェネレーションは定期的な大型アップデートを指し、チャプターは開発コンセプトの転換を指す。2005年4月に牧歌的な世界と、世界の歴史をテーマにしたチャプター1からスタートした「マビノギ」は、2006年5月にチャプター2に移行し、新大陸と探検をテーマに、エルフとジャイアントという人間と異なる種族との出会いという新しいコンセプトで開発を進めていった。

 そしてチャプター2から1年半、「マビノギ」はチャプター3となり、新しい方向へシフトする。従来のスキルとは異なる「錬金術」という概念を取り入れ、錬金術の街「タルティーン」今後実装される王都「タラ」、そして魔族が侵攻してくるという「影の世界」をテーマにしたストーリーが進行する。チャプター2の“探検”とは全く違う方向性がスタートするのだ。

 今回のアップデートに合わせて「マビノギ」では無料転生が可能になり、更にクリスマスイベントもスタートした。新規ユーザー、復帰ユーザーの注目も高いようで、筆者がプレイしているマリーサーバーでは、土日のコアタイムに8つある全チャンネルが満員で入れないというほどの盛況になった。本稿では新要素と共に、ユーザー達の動きも紹介していきたい。


■ 錬金術師の街タルティーン。影の世界での戦いを前にエルフとジャイアントが同盟を!?

タルティーンのマップ。ウルラ大陸の西側の地方である。これまでウルラは空を飛ぶことができなかったが、新地域は飛行が可能となっている
タルティーンの象徴である錬金術師の家。かまどで様々なアイテムを作ることができる
 錬金術の都タルティーンには、「マビノギ」でプレーヤーが集う街ダンバートンの西にあるラビダンジョンの近くか、伐採所のある街道トゥガルドアイルの西から行ける。ラビダンジョンの横の道の場合、ネア湖といわれる大きな湖のほとりを進んでいく。新マップではBGMも新しくなっていて、プレーヤーはまず“耳”で新しい「マビノギ」を感じることができる。

 タルティーンの前には農場地帯が広がっている。ここは今後のアップデートでプレーヤーが農作物を育てるようになると言う。ちなみにネア湖にも今後首長竜のようなフィールドボスが登場するとのことだ。

 タルティーンはダンバートンやイメンマハと同じように城壁に囲まれた城塞都市となっている。城門には大きく紋章が描かれている。城壁や街の建物はどことなくくすんでいて、建物の屋根は茶色のものが多く、色は全体的に地味でシックな雰囲気だ。その地味な色合いが、街の歴史を感じさせる。

 タルティーンには雑貨屋、聖堂、ヒーラーの家など基本的な施設は揃っているが、気になるのがエルフとジャイアントの“駐屯地”があるところだ。これまでエルフとジャイアントは新大陸で敵同士として激しく対立していた。彼らが同じ街にいるというのは奇妙だ。話を聞いてみると影の世界から侵攻してくる魔族に対抗するため、人間が仲介して一時的に連合軍として魔族に立ち向かうことになったという。エルフやジャイアントの駐留軍達は、故郷に対しての複雑な思いもありつつ、出兵により何らかの変化も求めているようだ。

 タルティーンの北には人間族の司令部がある。ここの隊長は「ファロン」という人物なのだが、影の世界で魔族と戦っているという。影の世界とは、タルティーンの北西にあるストーンヘンジから行くことができる“裏世界”ともいうべき場所で、タルティーンそっくりな地形をしているが、空は赤く大地は荒廃している。現在、この影の世界に魔族が侵攻しており、ファロンは部隊を率いて戦っているとのことだ。タルティーン周辺は自然と古びた建物の調和の美しい場所であるが、影の世界は激戦地となっているという。

 人間の司令部の東にはこの街の象徴とも言える「錬金術師の家」がある。錬金術師の家の前には奇妙な“かまど”があり、多くのプレーヤーが新スキルである錬金術を習得し、様々な実験を繰り返している。「マビノギ」にはドルイド達が使う魔法が存在するが、錬金術はそれとは全く異なる科学による力だ。アイテムを原料に還元したり、まったく新しいものを合成したり、魔力を結晶化させ、魔法を使う能力のない者達でも利用させる技術など様々な力を持っている。

 タルティーンではNPCから今後実装される王都タラの情報も聞くことができる。展開する「メインストリーム」では街の住人の過去なども語られ、世界観にグッと引き込まれていく。チャプター2はイリアという新大陸でストーリーが展開していたが、チャプター3ではチャプター1とチャプター2で提示された要素を統合し、さらに新しいストーリーが展開しそうである。

タルティーンの前には大きな湖や、農場が広がっている。タルティーンは城門も古めかしい歴史を感じさせる街だ。建物は落ち着いた雰囲気のものが多い
タルティーンには何人ものNPCがいる。エルフとジャイアントの駐留軍も興味を惹かれるところだ。メインストリームではNPCの過去も関わってくることとなる


■ タルティーンの歴史と現在、魔族と錬金術師が謎を投げかけつつ進行する「メインストリーム」

影の世界への入口となるストーンサークル。多くのプレーヤーでにぎわっている
 「マビノギ」は基本的にはプレイ料金無料のアイテム課金制のオンラインゲームだが、インベントリを大きくする「エクストラストレージ」や様々なサービスをセットにした「ファンタジーライフ」など月額制ともいえるサービスがある。これらのサービスを受けていることで「メインストリーム」というストーリーを進めることができる。

 今回導入されたジェネレーション9(G9)のメインストリームではファロン隊長を支援することになる。ストーリーが展開していく内に、2人の錬金術師、聖堂騎士団という組織、かつてそこに所属していたという謎の女性ジェナなど様々な要素が断片的に出てくることになる。これらの要素がストーリーを追っていく内に徐々に合わさって大きな流れになるのがメインストリームの楽しさである。

 メインストリームで驚かされたのが「グラスギブネン」という巨大な怪物の登場だ。グラスギブネンはこれまでのメインストリームを進めていたプレーヤーにとってなじみ深い敵だ。実装に先がけて公開されたムービーでもその存在が描かれ、再登場は予想されていたのだが、G9のメインストリームの非常に早い段階で登場するのだ。グラスギブネンがまるで特撮映画の怪獣のように建物を破壊する場面もある。いつグラスギブネンと正面から戦うことになるのか、なども気になるところである。

 ただ、チャプター2での不倶戴天の敵同士だったエルフとジャイアントが、チャプター3のいきなり同じ街にいるという点が世界観の説明としては足りなく感じた。“新しい流れ”を生み出すための決断なのかなとも思うが、例えばプレーヤーが3種族を取り持つ伝令役を引き受けるなど、何らかのドラマが欲しかったところだ。ただ、筆者もまだメインストリームをはじめたばかりなので、今後このテーマも掘り下げられるかもしれない。

 今後はG9のメインストリームの後日談も実装されるとのことなので、ストーリー要素に関しては特に期待したい。アップデートが行なわれてからはタルティーンの錬金術のかまどの前と、ストーンヘンジ周辺は多くのプレーヤーでにぎわっている。タルティーンを訪れる事で「マビノギ」の新しい流れを確かに感じられた。これから「マビノギ」のプレーヤー社会がどう動いていくか、1プレーヤーとしても見ていきたいと思っている。

中央の白い羽根を持つパラディンは街の英雄であるルー。右の2人の錬金術師の目的など、初期のストーリーでは様々な謎が提示される
左が巨大な怪物グラスギブネン。過去と現在のストーリーが交差していく。魔族の侵攻、人間とエルフとジャイアント、そして謎めいた聖堂騎士団など、様々な要素が絡まり合っていく

■ 魔法結晶を発射! ゴーレム操縦にアイテム合成・分解と全く新しいスキル体系の錬金術

本を読むことで習得できる錬金術のスキル。他にもメインストリームを進めたり、NPCから教わるものも読書から
錬金術師が携帯するシリンダー。ここに結晶を入れることで様々な術を使うことができる
アイススピアの結晶を入れて敵を撃つ。強い魔法の使い手と、マナフォーミングの力があれば更に強力な結晶を作ることができる
 チャプター3で新たに導入された新概念「錬金術」は、従来の「マビノギ」になかったまったく新しいスキル体系である。今回は、「合成」、「分解」、「マナフォーミング」、「ゴーレム練成」、「防護壁」、「ウインドブラスト」、「ウォーターキャノン」、「ライフドレイン」、そして「アルケミマスタリ」の9つのスキルが実装された。

 このうち、「分解」と「ゴーレム練成」は錬金術師の家のNPCから本を購入することで習得することができる。スキルの本は概念など細かく書かれていてテキスト的価値みあるが、ゲームのルール的には一度覚えると使わないアイテムになる。このため、アップデート直後はその場で読み捨ている人が多く、錬金術師の足下にはたくさんの本が捨てられているのがちょっと複雑な気持ちにさせられた。その他のスキルは、条件を満たすことでNPCから教わるもの、メインストリームをクリアすることで習得していく。

 分解はアイテムを素材に分解することができるスキル。インゴットを鉄鉱石にできたり、ポーションを原料であるハーブに還元することができる。このスキルの実装により、鉄鉱石をインゴットに変える「精錬」や、ハーブをポーションにする「ポーション配合」といったスキルを一緒に使うことで効率的に上げやすくなった。生産スキルを上げたいプレーヤーにうれしいスキルだ。

 合成はアイテムを組み合わせることで様々なアイテムを作ることができる。ある組み合わせを行なうと特定のアイテムができるという法則があり、現在多くのユーザーがこの“レシピ”を見つけ出そうと試行錯誤をしている。武器を組み合わせると武器ができる、といった性格もありうまくいけばレアアイテムを入手することもできるという。周囲の敵を凍らせることができる「アイスマイン」なども作ることができ、今後どんなアイテムが作ることができるのか楽しみだ。

 マナフォーミングは魔法からエッセンスを抽出し、結晶を作り出すことができるスキルだ。抽出できるのはアイススピア、ファイアーボール、サンダーの3種類の中級魔法だ。高レベルの術者がチャージすることで強力な結晶を取り出すことができる。これらの結晶は手につける錬金術師の武器「シリンダー」を使うことで打ち出すことができる。中級魔法は習得するためにはクエストをクリアする必要があり、使いこなすためにも修練が必要だ。しかし、結晶を使うことで威力は落ちながら、術を習得していない人も中級魔法を使うことが可能なのだ。

 ウォーターキャノンはシリンダーで水の結晶を打ち出し攻撃するスキル、ウインドブラストは風の結晶を使って敵を吹き飛ばすスキルだ。これらの結晶はNPCから購入することができる。壁を作り出し敵の接近を防ぐ防護壁のスキルは、土の結晶と薪を組み合わせて防護壁の結晶を作り、シリンダーで打ち出すことによって使うことができる。

 ゴーレム練成もあらかじめゴーレムの結晶を作って使用する。「マビノギ」ではボスモンスターとしておなじみのゴーレムを手足のように使うことができる。インターフェイスもユニークで、呼び出すことでキャラクタかゴーレムを操作するか選ぶことができる。ゴーレムはキャラクタと同じように操作することができるが、ゴーレムの操作中はキャラクタの操作ができなくなる。最初は力の弱いロックゴーレムだけだが、スキルを上げていくことで、草の生えたフォレストゴーレム、硫黄地帯で見ることができるサルファゴーレムなど強力なゴーレムを使いこなすことができるようになる。

 ライフドレインは相手から体力を奪い自分のものにできるスキル。アルケミマスタリはかまどで結晶を作ることで上昇し、上げることで錬金術の各スキルの能力を増してくれるスキルだ。錬金術師を目指すプレーヤーは上げておきたいスキルである。

 錬金術のスキルは、あらためて「マビノギ」の生産スキルの重要性を教えてくれるスキルだと感じた。錬金術のスキルを上昇させるためには、様々な生産アイテムや、材料が必要となる。サブキャラクタで生産系を育て、メインキャラクタで錬金術を上げるという人もいると思うし、需要が生まれて改めて熱を入れて生産スキルを鍛えているプレーヤーも多いだろう。

 面白く感じたのがアイスマインを作るのに必要な「謎の鉱石」というアイテムだ。これは海岸などでふるいを使って鉱物や宝石を採取する「鉱物採取」スキルが失敗したときに出るアイテムで、これまで使い道がなかった。スキルが低い人ほど入手しやすいアイテムを、他のアイテムの材料に使うというアイデアには感心させられた。

 今回新スキルの導入に立ち会うことで改めてコアプレーヤーの熱意に驚かされた。錬金術師のかまどの前では多くのプレーヤーが分解や合成、結晶制作を続けている。「マビノギ」はレベル+スキル制のゲームでレベルアップ時に得られるAPを消費することでスキルを上げられるため、プレーヤーは何度もレベルが0に戻る転生を繰り返してAPを稼いでいく。

 スキルを上げるためにはAPと修練の両方が必要になるのだが、今回の錬金術の導入によって、既存の最強まで育て上げたスキルを惜しげもなく下げ.ることでAPを増やし、ひたすら新しいスキルにつぎ込むプレーヤーも登場している。彼らの修練は熱狂的で、その“熱さ”を目の前で見ることができたのはとても楽しい経験だった。

 魔法を結晶化し、シリンダーで打ち出すことができるというコンセプトが非常に魅力的だった。魔法科学とも言えるユニークな要素である。さらにその結晶を利用してアイスマインのような武器を作ることができるのも楽しい。ゴーレムを使役するのも従来の操作とは全く違う感触で、ゴーレム操作中は本体が動けないというのも戦闘に独特の緊張感を生み出している。

 結晶を打ち出すことで発動させる魔法はプレーヤーが使う中級魔法と比べれば威力が劣るが、スキルがない人が使えたり、MPのコストがかからないなどの利点もある。また高威力の結晶を準備してここぞというときに使ったり、ロールプレイも意識して活用する場面を考えるだけでも楽しい。「マビノギ」では持っているスキルによってプレイスタイルが変わってくる。錬金術スキルを存分に鍛え、“錬金術師”となったプレーヤーがどんな戦い方をするのかとても楽しみだ。

インゴットを分解。生産スキルと上げていけば非常に効率よくリソースを使える マナフォーミングは自分やパーティーメンバーの魔法から抽出して結晶を作ることができる 合成は決められたレシピで行なえば成功率が上昇する
壁を作り出し敵を食い止める防護壁 風の結晶で敵をはじき飛ばすウィンドブラスト 鉱物採取の失敗アイテムはアイスマインの原料となる
ゴーレムを使役するゴーレム練成。初期のロックゴーレムでも回転して相手を倒すウインドミルは強力だ。右はゴーレム練成を上げることで使役できるようになるサルファゴーレム。力も強く頼りになる存在だ


■ オープンフィールドでの攻防戦、新しいパーティープレイの影ミッション

掲示板で受けることができる影ミッション。少人数のミッションが多い
アラトのみを使うと視界にブラーがかかるが、隠されたものを発見できる
影ミッションの「挑発」では仲間が見守る中、1人で戦う場面も
 影の世界へは、ミッションを受けることで行くことができる。影ミッションは現在12種類用意されていて、1~8人での挑戦が可能だ。大体は4人くらいまでの少人数のパーティーが対象となっている。影の世界はインスタンスフィールドになっており、途中参加はできない。

 影ミッションはタルティーンにある影ミッション掲示板でパーティーのリーダーが受けることで挑戦できる。ミッションによって目的は様々で、フィールド上の敵を全滅させるもの、拠点を支配している敵を倒すもの、NPCを守るものなどがある。

 各ミッションは受けるときに初級、中級、高級、ハードと難易度が選べる。中級は累積レベルが100以上、高級は300以上、ハードは1,000以上必要で、難易度が上がるにつれクリア時の報酬は高くなるが、敵の体力や攻撃力も増して戦いはきつくなる。

 拠点への攻撃の場合、敵は木の柵を作ってバリケードを作っている。しかも柵の前にはアイスマインのトラップが仕掛けられていて近付くと凍らされてしまう。アイスマインはイリアでの宝物探索に使うLロッドや、影の世界で手に入る「アラトの実」を使うことで発見することができる。発見したアイスマインは弓や魔法などの遠距離攻撃で破壊可能だ。

 「タルティーン防御戦」という影ミッションでは最大6人で3つの拠点を守ることとなる。スタート時にパーティーメンバーは3つの拠点に割り振られるのだが、5人以下のパーティーで挑んだ場合、拠点を1人で守らなくてはいけないので注意が必要だ。

 ドラマ性を感じたのが「挑発」というミッション。このミッションでは円い柵に囲まれたフィールドで次々とわき出る敵と戦うのだが、体力が0になると爆発する硫黄グモ等もいてやっかいだ。中ボスとして巨大硫黄グモも登場し爆発によるダメージも大きい。面白いのは、このミッションでは途中に1人で戦う場面が用意されていることだ。他のメンバーは柵の外にテレポートされ、戦いを見守らなくてはいけない。他のメンバーに見られながら1人で戦うというのは新鮮な体験だった。

 ほとんどがタルティーンのマップでのミッションなのだが、「クラッグカウを退治」、「スリアブクィリンの岩石」は平原のようなマップとなっている。どちらもアイテムを収集できるのが特徴で、クラックガウの方はアラトの実が、スリアブクィリンの影ミッションはツルハシを持って行くことでゴーレムの結晶の原料を採掘することができる。ミッションをクリアせずにアイテム収集だけをする、というのも可能だ。

 これまでの「マビノギ」のダンジョンは、インスタンスフィールドで、1つのテーマでもいくつかの難易度があり登場モンスターが変わるというものだった。緊張感もあり、完成度の高いコンテンツだったが、サービスが続いて数年、ユーザーは次の楽しさを求めていた。影ミッションはプレーヤーの要求に応えた新しいコンテンツといえる。

 オープンフィールドであることや、拠点を攻撃していく感覚、ミッションや難易度によって変わってくる攻略法ダンジョンとは違った戦いのリズムがある。また、これまでのダンジョンは1時間以上かかるものも多かったが、影ミッションは数10分で終わるというのも手軽で良い。

 しかし現在の影ミッションには不満もある。大きいのは、フィールドと敵のバリエーションだ。オープンフィールドのマップは2つだけで、後は全部タルティーン関連のものになっている上、敵の種類も多いとは言えない。今後更にコンテンツが厚みを増していくことで解消されていくだろう。開発者がどんな要素を盛り込んでいくか大いに期待したいところだ。

 影ミッションは「30分くらいで仲間とちょっと楽しみたい」という「マビノギ」プレーヤーが持っていた欲求をかなえてくれる要素だと感じた。しかしこうなると逆に大型コンテンツにも期待したいという思いがある。現在マビノギではインスタンスフィールドはパーティーの最大人数である8人までのものしか想定されていない。ダンジョン入場を工夫することで複数のパーティーが入ることもできるのだが、後から入ったプレーヤーはダンジョンをクリアしても報酬を得ることができない。

 影ミッションで提示された要素も盛り込んだ、複数のパーティーで力を合わせて挑戦できるレイドコンテンツを望みたい。技術的なハードルは高いかもしれないが、影ミッションの充実と共に、レイドミッションをぜひ実現してもらいたいところだ。

敵を倒すと近くの木にアラトの実がなる。集めておけば他のミッションで使える バリケードを使って立てこもる魔族。仕掛けられているアイスマインに要注意だ 防衛戦。ひたすら侵攻してくる魔族を食い止める
仲間と共に進んでいく。時には乱戦となる場面も。ボスモンスターも登場するが、影の世界の色合いが地味なのとマップがまだ少ないためか、ミッションが似たような雰囲気を持っているのが気になるところだ

今回販売されたペットのスプライト。これまでになかった“合体”でプレーヤーの力を増すことができる
11月に行なわれたシーソーイベント。2人のプレーヤーが協力することで空高く飛び上がることができる
 今回のアップデートと同時にクリスマスイベントも開催された。今回のクリスマスイベントは赤、青、黄、緑、ピンクの5人のサンタが世界の各地に登場し、彼らのクエストをすべてこなすとクリスマスプレゼントがもらえる、というものだった。

 ユニークなのはクエストを受けるとプレーヤーの姿がその色のサンタの服をまとうことだ。このため実装時は色とりどりのサンタが街の中を走り回るという面白い光景となった。アバター要素の使い方がユニークで感心させられた。

 「マビノギ」は他のMMORPGに比べてもイベントが凝っている印象を受ける。11月のシーソーイベントではイベントのためだけにシーソーアイテムが販売され、これに2人で乗ることで力を合わせて高く空に飛び上がることができた。夏には日本の提案によるスキーイベントで、タイムアタックができたりイベントのためだけに新しいシステムを盛り込むという開発側の力の入れ方は好感が持てる。イベントで蓄積されたノウハウが恒久的なコンテンツにどう活かされるかも注目していきたいところだ。

 全体的に、今回のアップデートは「マビノギ」の新しい方向性を指し示してくれたと感じた。ユーザーからの要望の大きかったストーリー要素の導入、全く新しい概念と遊び方をもたらしてくれた錬金術と影のミッション、このチャプター3の方向性でどんなコンテンツが追加され、発展していくか楽しみである。

 高レベルキャラクタ向けのマップを実装のみを行なっていくようなMMORPGも多い中、遊びの幅をきちんと広げ、明確な方向性を提示する開発のしっかりしたポリシーと技術力には拍手を贈りたいと思う。

 また、これまで有料だった転生が無料開放されたことは既存のユーザーにとってうれしい要素だ。有料の転生は次の転生までの期間が3週間から2週間に短縮され、価格も下げられた。コアユーザーはより積極的に転生を行ないキャラクタを強くしていくだろう。

 今回のアップデートを契機として新人プレーヤーも増えたと思う。少し問題となるのは、「マビノギ」の“敷居の高さ”かなと思う。タイミングが重要となる戦闘など本作はクリック型のMMORPGとは異なる操作を要求される。また、スキルを上げるための条件が特殊だったり、説明不足と感じる部分も多い。正直、ユーザー達が作っているwikiを見なくてはわからない所も多々ある。

 そのギャップを埋めるためには、やはりギルドに入り、プレーヤーの輪に参加するのが1番の近道だと思う。新人プレーヤーはぜひ勇気を出して、周りのプレーヤーに話しかけ、ギルドに入ってもらいたい。古参プレーヤーも今回を機会に新人プレーヤーを積極的に受け入れて欲しい。MMORPGは人との出会いが重要なゲームジャンルである。みんなでゲームの楽しさを再認識できるコミュニティー作りを目指していくことこそ、ゲームを長く楽しむコツであると思う。

今年のクリスマスイベントはサンタに話しかけるとみんながサンタの恰好になってしまう。ユニークでオリジナリティを感じさせるアイデアだ

Developed by devCAT. Copyright (C)2008 NEXON Corporation and NEXON Japan Co., Ltd. All Rights Reserved.


【「マビノギ」】
  • CPU:Pentium III 800MHz以上(Pentium 4 1.5GHz以上推奨)
  • HDD:1.5GB以上推奨
  • メモリ:256MB以上(512MB以上推奨)
  • ビデオカード:GeForce 2MX以上(GeForce4 以上/Radeon9000 以上推奨)


□ネクソンジャパンのホームページ
http://www.nexon.co.jp/
□「マビノギ」のページ
http://www.mabinogi.jp/
□関連情報
【12月8日】「マビノギ」開発・日本運営スタッフインタビュー
新たな要素となる錬金術や影の世界、今後は初心者との繋がりもテーマに
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081208/mabinogi.htm
【12月1日】ネクソンジャパン、MMORPG「マビノギ」アップデート説明会開催
新スキル「錬金術」や無料での転生を12月11日に実装
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081201/mabi.htm
【4月28日】オンラインゲームレビュー「マビノギ チャプター2」THE 8th GENERATION
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080428/mabinogi.htm
【4月18日】「マビノギ GENERATION8」開発スタッフインタビュー
今回でルエリのストーリーは完結! 全く新しい展開へ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080418/mabiint.htm
【2007年12月25日】オンラインゲームレビュー「マビノギ チャプター2」THE 7th GENERATION http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071225/mabi.htm
【2006年8月10日】オンラインゲームレビュー「マビノギ チャプター2」Part.2
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060810/mabinogi.htm
【2006年5月1日】オンラインゲームレビュー「マビノギ」チャプター2
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060501/mabinogi.htm

(2008年12月19日)

[Reported by 勝田哲也]



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