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【連載第46回】韓国最新オンラインゲームレポート

韓国で今年最大注目作NCsoft「AION」の正式サービスがスタート
最高同時接続者は20万人以上! 韓国市場に久々の大ヒット作が誕生

11月25日正式サービス開始

利用料金:30日間(300時間)19,800ウォンより

 NCSoftの新作MMORPG「AION」が11月25日から正式サービスがスタートした。昨年10月から3回に渡って行なわれたクローズドβテストを経て、11月11日からスタートしたオープンβテストに続く形で待望のサービスインを迎えた。

 「AION」は天族と魔族の2つのプレーヤー勢力と、NPC勢力の竜族との3種族間の戦いを描いたMMORPGだ。天族と魔族のRvRに竜族が介入するRvR専用フィールド「Abyss」が目玉コンテンツになっている。

 「AION」は本連載で第1次クローズドβテストの様子をお伝えした。ゲーム導入部の掴みが上手く、ストレスを感じないゲームの流れがユーザーのハードルを下げている。正式サービスでは「Abyss」などの高レベル向けコンテンツが盛り込まれMMORPGの初心者から上級者まで幅広く楽しませてくれるのが特徴だ。

 オープンβテストでは同時接続者20万人以上で、サービスイン後もユーザーが減った様子はない。ピークタイムではサーバー入場に1時間待ちといった状態が続いたため、正式サービス後もサーバーを投入し続け現在34のサーバー体制で運営されている。今回は「AION」の人気の秘密に迫りたい。


■ 「AION」の人気の秘訣とは!? プレーヤーを魅了するコンテンツ力に注目!!

アニメーションとボイスでわかりやすく説明するチュートリアル機能。別のマップで、プレイする必要がないため、プレイにストレスを感じない
クエストのターゲット位置をマップ上に表示できる。ストレスを感じず、スムーズにクリアすることができた
 韓国オンラインゲーム市場に久方ぶりの大旋風を巻き起こしている「AION」の人気の秘訣は何だろうか。「リネージュII」の後にリリースされ、サービス中止の憂き目にあった無数のMMORPGとの違いは何なのか。それは濃厚なストーリー展開だ。

 「AION」のストーリーは、今回筆者がプレイした「天族」の場合、プレーヤーは記憶を失ったかつてのヒーローというシチュエーションで世界に降り立つ。プレーヤーは魔族との戦争中、味方の裏切りにより罠に嵌められ、突如として現われた竜族に敗北してしまう。その後、何らかの理由で生き延びるが、記憶を失ったまま目を覚ましたところからゲームがスタートする。

 レベル1から10までのメインクエスト「ミッション」をクリアしていくことで、プレーヤーは味方に裏切られ記憶を失われる過程が判明していく。レベル10の転職を迎えるまでに、プレーヤーに求められた役割を把握することができる。レベル10で転職した後は記憶を取り戻すためのミッションが続き、さらには裏切り者の正体を明かすための旅が続いていく。

 本作ではミッションの端々に、かつての自分の活躍を回想するシーンが流され、本来の自分の姿を知ることができる。また、随所でムービーを挿入することで、プレーヤーが作品に溶け込めるような演出も盛り込まれている。「英雄だった過去の自分を取り戻す」というストーリーの核心をプレーヤーに強く意識させている。

 また、クエストにおいては「おつかい」形式の往復するものが少なく、レベルに合わせて徐々に活動エリアを拡大していくようにできている。同じ場所をグルグル回るストレスを排して、いつも新しいところでプレイできる。レベルが上がるに従って次のマップに徐々に進み難くなるが、プレイ導入部のシームレスさは群を抜いている。

 さらに、クエストには、ターゲットをマップ上に表示する機能があり、指示に従うだけで、簡単にクリアできる。上級プレーヤーには簡単すぎるかも知れないが、ハードルが低い分、様々なプレーヤーが楽しむことができるだろう。

 筆者はこの記事を書くまで天族の魔道星レベル22までプレイしてみた。クローズドβテストから変わったところではレベル10まではアイテムのバランス調整とチュートリアルくらいのもので、洗練された雰囲気をそのまま楽しむことができた。

 チュートリアル機能はアニメーションにボイスを入れたもので、プレイ中に1つずつガイドが出てくる仕様だ。転職までのプレイタイムは3~4時間ぐらいで、次から次へとマップを移動していくイベント進行は、幾度もプレイしてきた筆者にも飽きを感じさせなかった。

 レベル17からは「ベルテロン」内にある区域「トゥルシン前哨基地」と「トゥルシン駐屯地」をプレイできる。この2つの区域はパーティープレイ専用で、登場するモンスターは同じレベル17でも、一般モンスターより数倍のHPと攻撃力を持っているエリート級のモンスターたちだ。しっかりとしたパーティーを組まなければ、クリアは難しい。本地域でのパーティープレイは「ミッション」内に含まれているため全てのプレーヤーが通らなければならない。

 そのおかげで、「トゥルシン」エリアの「ミッション」クリア向けのパーティー募集も活発に行なわれていた。パーティは最大6人で組むことができ、ソロプレイには不向きな守護星(タンク役)や治癒星(ヒーラー役)の役目が大きくなっている。さらに、エリート級のモンスターは経験値やアイテムなどの報酬も良いので、多くのユーザーがパーティープレイを積極的に行なっていたのが印象的だった。

 とは言え、ソロプレイが必ずしも困難な道のりというわけではない。経験値に関してパーティープレイが特別優遇されているわけではないため、比較的自分の好みに合ったスタイルで楽しめるバランスとなっている。

 他のMMORPGにありがちな、高レベル帯のユーザーがパーティーを組んで狩場を独占するといった光景から少しでもユーザーを遠ざけていくようなゲームバランスの方向性を見出すことができた。

 「AION」はすぐにパーティープレイの必然性を見せずに、ソロプレイで序盤を乗り越えたプレーヤーには「ミッション」を通じて一度はパーティープレイの面をちゃんと見せるというやり方で、「AION」の世界での「暮らし」を教えてくれている。

 なお、「AION」はオープンβテストではレベル30まで制限し、RvRフィールド「Abyss」は未実装だった。サービスインと同時にレベルキャップを45へ、そして「Abyss」を実装した。コンテンツを小出しにするやり方もユーザーのプレイペースにマッチしている。アップデートは特に発表されていないが、プレーヤーたちがまだ十分に遊べてない「Avyss」の他、大規模レイドや攻城戦といった今後のコンテンツも気になるところだ。

キャラクタを作成し、世界に降り立つとムービーが流れる。魔族との戦闘中に現われた竜族にプレーヤーは敗北してしまう

レベル20になるとプレーヤー達を罠に嵌めた裏切り者の正体が明かされる。次なるミッションでは何が待ち受けるのか?!


■ 韓国で104週ぶりに首位交代。有料転換ユーザーは90%以上。韓国オンラインゲーム界に変革が来た!!

PCバンのゲーム利用率リサーチサイト「Gametrics」オープンβテストから2週連続1位を獲得。1位が変更されたのは2年ぶりだ
プレーヤーが多くて、キャラクタ作成が制限されたサーバーも……。キャラクタ作成を制限して、新規サーバーへと誘導している
 「AION」はオープンβテストから爆発的な人気を集めていた。NCSoftがリリースした内容によれば、オープンβテストが開始された11月11日に最高同時接続者9万7,000人を記録。そこからうなぎ登りに同接者を伸ばし、16日の日曜日には午後2時から午前0時までずっと20万人以上の同接を維持していたという。サーバー数もオープン当初は18個のサーバーを運営していたが、現在は34個まで増強されている。

 一方、PCバン(ネットカフェ)のゲームリサーチサイト「Gametrics」では11月13日にPCバンにおける「AION」の利用率が12.16%で1位を記録し、約2年に相当する104週間1位を維持していたGameHIの「サドンアタック」を抜く快挙を達成した。正式サービス4日後の11月29日にも18.27%を記録している。名実共に大ヒットの到来といってよいだろう。

 OBT開始直後から、いずれのサーバーも1,000人以上の入場待機者が待ち構えており、すぐにプレイできない状況だった。「AION」のサーバーには入場制限が行なわれ、制限人数一杯になるとウェイティング状態になり、順番に入場するシステムが設けられていた。

 人が少ない平日の午後6時以前はウェイティング無しで入れたものの、午後6時以降は常時ウェイティングが掛けられていた。待機者が1,000人ぐらいになると、入場するだけで1時間以上の待ち時間が必要だった。中には3時間以上待ち続けたユーザーもいたという。

 筆者も何度か1時間以上待たされたことがあった。これだけ大人気なのだから、それなりのラグを予想していたが、いざ中に入ってみると入場制限の甲斐あってかラグが無く快適にプレイすることができた。

 さらに、「AION」はサーバー内にチャンネルシステムを実装していた。初心者向けの狩場でモンスターよりプレーヤーが多くて正常に狩りができないといった問題を見事に解決していたのだ。「AION」のチャンネルシステムは初心者フィールドである「ポエタ」では12個まで用意されており、レベル10で転職した後のフィールド「ベルテロン」では7個のチャンネルを用意していた。

 開発側がサービス当初に初心者フィールドにユーザーが集中することを予想して、多めに用意していたのである。一方レベル20以降の「エルテネン」エリアではチャンネルが1つしか無いため、頭1つ抜き出た上級ユーザーであふれており、早くもユーザーの活動エリアが分かれてきた印象を受けた。

 ここ数年でリリースされたタイトルの多くは、正式サービス後に急激にプレーヤーが減って行く傾向が強かった。しかし、「AION」はサービスインしてからも相変わらずの人気を維持していた。非公式な数字だが、現在の同時接続者は約18万人だ。オープンβ当時に比べ、90%に及ぶユーザーを維持している。ここ2年間なかなかヒット作が現われず、冬の時代と目されていた韓国オンラインゲーム界の救世主とも言えるだろう。

 ビジネスモデルは、従量制と月額制をミックスしたユニークな料金プランを打ち出した。30日間300時間限定で19,800ウォン、90日間900時間限定で47,520ウォン、さらに3時間追加で3,000ウォン、30時間追加で12,300ウォンの料金プランが用意されており、接続時間により料金を区切る体系を設けている。30日間の料金プランを購入し300時間のプレイタイムを消耗した後は30日間は同じプランを再度購入できず、3時間か30時間の追加利用券を購入する仕組みだ。

 このビジネスモデルを採用した背景には、深刻なRMT問題がある。「Lineage」シリーズは、その高い人気とは裏腹に、活発なRMT活動が行なわれているMMORPGとしても悪名を轟かせている。「AION」のビジネスモデルには「Lineage」シリーズで張られた負のレッテルを払拭しようという強い意志が感じられる。

 今や韓国だけに留まらず、中国まで24時間体制でゲームマネーを稼ぐ業者たちが横行しているが、プレイ時間にリミットを貸すことで、そのビジネスモデルに歯止めをかけようという考えだ。貴重なモデル事例としてその実効の報告が待たれる。

夕方になると、全サーバーは“混雑”状態。どのサーバーもウェイティングが掛けられ、1時間待ちは覚悟しなければならない

サーバーに入ってみると意外にも人が少ないが、これは12個のチャンネルがあるからだ。チャンネルが1つしかない「エルテネン」に行くと大勢の群れが!!


■ 「Lineage」ファンではなく新規ユーザーの獲得に成功。「World of Warcraft」との戦いの行方はどうなる!?

筆者も「Abyss」に向けてレベルを上げている1人だ。現在、天族の魔道星レベル22。「Abyss」の入場はレベル25だが、本格的にRvRを楽しむにはレベル40でまだまだ遠い
 ここまで人気が集中すると他の大型タイトルの動向も気になるところだ。NCSoftの人気タイトル「Lineage」と「Lineage II」の状況を見てみよう。

 NCSoftは「AION」の同時接続者20万人突破のリリースに合わせて、「Lineage」と「Lineage II」の同時接続者に本作の影響はないというリリースを出した。リリースを出すことで、影響があったことを告知しているようなものだが、わざわざリリースを出したのは理由があった。

 それは「Lineage」も「Lineage II」もそれぞれ大型アップデートを実装したことだ。「Lineage」はシーズン3「Eternal Line Episode1: Crack of Time」を11月19日テストサーバーに実装した。「竜騎士」、「幻術師」といった2つの新規クラスが登場。実に5年ぶりの新規クラスが登場したのである。

 「Lineage II」の場合、「セカンドスローン 希望のグレシア」のパート1、2に続くファイナルバージョンを11月26日に実施した。「セカンドスローン 希望のグレシア ファイナル」では空を飛ぶことができ、全サーバーのプレーヤーが参加可能な大規模PvPなどが盛り込まれている。新作に負けないだけの大型アップデートを同時に打ち出すことで、NCSoftタイトル全体が盛り上がっている印象だ。

 その一方で「World of Warcraft」は最新拡張ディスク「World of Warcraft: Wrath of the Lich King」が11月18日に韓国で実装された。「World of Warcraft」はこれまでMMORPG部門1位を誇っていたタイトルで、「AION」と人気をどのように分けるかユーザーの関心も高かった。Blizzard Koreaからこれといった発表はないが、サーバーの様子を見る限りでは「AION」登場以降僅かながらユーザーを減らした様子で現状を維持しているようだ。

 その他のタイトルに関してはオープンβテスト開始の時期が近かった「Prius Online」など「AION」のリリースの影響をモロに受けたMMORPGタイトルも多かったが、確実に言えるのは長年、動きを見せなかった韓国オンラインゲーム界の順位が「AION」によって、大きく変化したということだ。「AION」によってMMORPGを楽しもうとするゲームファンが増えてくれたことは非常に喜ばしい。今後予想される海外展開を含め、今後もその人気が定着するかどうか注目していきたいところだ。

現時点で発表されている「AION」の海外展開の予定は、2009年の上半期に中国、欧米地域のみ。日本と東南アジア地域はその次のスケジュールで、2009年下半期から2010年頃を予定しているという。中国以外のアジア展開の遅さが気になるところだ

(C) NCsoft Corporation.

□NCSoftのホームページ(韓国語)
http://www.ncsoft.com/kor/index.asp
□「AION」のホームページ(英語)
http://aion.plaync.co.kr/

(2008年12月17日)

[Reported by Dong Soo “Luie” Han / 三浦尋一]



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