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特別イベントレポート
EAが放つ本格MMORPGは「次世代の大規模戦闘」をフィーチャー
期待の新作「Warhammer Online」の内容が明らかに

EA Mythicスタジオが開発を進める「Warhammer Online」。今回のイベントで重要な新要素が紹介された
3月7日 開催(現地時間)



 現地時間3月7日にシンガポールで行なわれた、EA Asia主催のプレス向けイベント「MEET THE MAKERS」の中でひときわ異彩を放っていたタイトルが、「Warhammer Online: Age of Reckoning」だ。このタイトルは、今回のイベントで紹介された15タイトルの中にあって唯一、MMORPG様式のゲームなのだ。

 「Ultima Online」以降、EAはMMORPGジャンルにおけるタイトル層が薄いが、「Warhammer Online」の登場により、その認識が過去のものになるかもしれない。本格派MMORPGの装いをもつ同タイトルの紹介で強調されていたキーワードは“next generation Realm vs. Realm”。つまり、「次世代の大規模戦闘」だ。これを実現するゲームシステムは、対人戦志向のオンラインゲームファンなら見逃せない内容だった。本稿ではその詳細をお伝えしたい。

■ 多数の新機軸を打ち出す「Warhammer Online」。その内容とは

作品の説明を行なったJeff Hickman氏。ゲームデザインからコミュニティ戦略まで広範に開発を指揮している
 「Warhammer Online: Age of Reckoning」は、現在EA Mythicスタジオで開発が進められており、2008年中の正式サービス開始を目指している。今回、EA Asiaが主催するイベントでこのタイトルが紹介されたということは、開発スタジオのある北米だけではなく、アジア地域もターゲットにしているということだ。もちろん日本向けのローカライズも進められており、現在、同タイトルの公式ウェブサイトは日本語、中国語、韓国語でベータテストの参加を呼びかけている。

 今回、我々が訪れたミーティングルームで「Warhammer Online: Age of Reckoning」の紹介を行なったのは、EA Mythic シニアプロデューサーとして同タイトルの戦略指揮を執るJeff Hickman氏と、シニアマーケティングディレクターを担当するEugene Evans氏。作品の紹介時間は15分程度の短いものではあったが、次世代的MMORPGとして開発されているという「Warhammer Online」が目指すゴールが明確に見えてきた。

 「3日分のプレゼンテーションを15分でやります」と前置きしたHickman氏の説明でまずわかったのは、本作が本格派のMMORPGを志向しているということだ。Hickman氏はまず、「大量のクエスト、すばらしいクラスシステム、スキル、また服飾など、MMORPGで必要とされるものは全て作りました」とし、「ですがそれは誰にも想像が付くことですので、今日は重要な新機能についてお話しましょう。15個もあるのですが、時間がありませんので、今回は4つご説明します」と、他のMMORPGと差別化をはかる新機能の話題に焦点を移した。

・“Public Quest”(公衆クエスト)

銃士のようなクラスのキャラクタでモンスター退治クエストを進行。操作はスキルベースのMMORPGスタイルを踏襲しているようだ
 そこで紹介された4つの新機能を、順を追ってお伝えしよう。まず最初に紹介されたのが、彼らが“Public Quest”と呼ぶ、特殊なクエストシステムである。これはプレーヤーが特定のゾーンに入ると自動的に発動するタイプのクエストで、さらに、そこに存在する全てのプレーヤーに「助けを求める」ことができるというのがポイントのようだ。

 例示されたクエストは「17匹のモンスターを倒せ」というもので、これを1人でクリアすることもできるが、近場にいるプレーヤーに手伝ってもらい、素早く完了することもできる。その場合の報酬は、貢献度に応じて各プレーヤーに分配される。クエストを協力するにあたってパーティに加わる必要もないというのが特徴で、デモを担当したEvans氏によれば、「一般プレーヤーがカジュアルな形でグループを形成するきっかけにもなります」とのこと。さらに、1人でプレイした場合と、協力してプレイした場合では、そのクエストから派生するイベントに変化が起こるのだという。確かにこういったクエストがゲームの主流を占めていれば、各プレーヤーが自然に協力関係を築く上で大きな助けになりそうだ。

 クローズドβテストでこの手のクエストを300以上も用意したところ、テスターに非常に好評だったとEvans氏は説明した。他のMMORPGタイトルではこれに近いものを「ミッション」などの呼称で搭載していることもあるが、わざわざ4つの新機能の一つとして紹介するあたり、本作ならではの特別な仕掛けがさらに組み込まれているのかもしれない。

・“Tome of Knowledge”(知の大典)

「知の大典」には、倒したモンスターの数を含み、冒険のあらゆる記録が追加されていく
 クエストに関連するもうひとつの機能として紹介されたのが“Tome of Knowledge”(知の大典)システムだ。「Warhammer Online」では、各プレーヤーにそれぞれ強力なジャーナル機能が与えられている。それが“Tome of Knowledge”で、ジャーナルには冒険のありとあらゆる出来事や、得たもの、捨てたもの、発見したすべてのものごとが記録され、美しく装丁された大典の形で表現される。デモ画面では倒したモンスターの数まで記録されており、これだけでも競争意識がかき立てられそうである。

 単なる詳細記録だけではないのがポイントだ。冒険を重ねて、この大典に新たなページを加えること自体がひとつの巨大なクエストのようになっており、様々な条件を達成することで、称号を得たり、新たなスキル獲得したり、金銭を得ることができるのだという。何を得られるかは達成する条件によって異なっており、冒険する意欲を後押しする上で非常に強力なものに仕上がっているとのことである。

・“Living City”(生きている都市)

本作における都市は、プレーヤーの功績に応じて成長していく存在。ホームタウンへの愛着が沸きそうだ
 MMORPGにおいて、「都市」は人が集まる場所であり、流通や生産の拠点となる場所だ。「Warhammer Online」の世界でもそれは同様なのだが、一般的なMMORPGと決定的に異なる点として、都市が成長するというシステムが紹介された。プレーヤーが所属する各勢力は勢力圏内に都市を保有しており、その所属プレーヤーがクエストをこなしたり、モンスターを倒す、敵対勢力を倒すといった活躍をしていくと、対象の都市がどんどん拡大していくのだという。

 都市が拡大すると、利用できる設備が増えたり、機能が充実していく。それによって新たなクエストが得られるようにもなるということで、都市が静止した存在として扱われる一般的なMMORPGに比べると、ずいぶんとダイナミックに世界が変化していくようだ。自分の所属する勢力の都市が成長していくことで、プレーヤーもやりがいを感じ、都市に愛着を感じるようになるという。

 実は、これは単なるクエスト目的の冒険要素ではなく、本作のPvPシステムに深く根を下ろした機能なのだ。プレーヤーが都市に対して愛着を感じるというのも、次に紹介する徹底的な大規模戦闘で起こりうる現象にむけた伏線なのである。

グラフィックスの作風は絵本的で、「World of Warcraft」を思わせる。都市の映像には巨大な船が見えたが、海上での戦いもあるのだろうか?

■ 都市すらも劇的に変化する、広大かつ変化に富む対人戦環境を実現
  「Warhammer Online」がキーフィーチャーとして掲げる「次世代のRvR」とは何か?

本作は大規模戦闘に多くの開発努力が注がれているようだ
 上記までに紹介された3つの機能は、プレーヤーが世界を冒険する意欲をかきたてる、どちらかといえばストーリーを負うRPG的な色合いが強い機能だ。残る1つの機能は、PvP(対人戦)システムそのものに変革をもたらそうとするものである。Hickman氏はプレゼンテーション時間の半分以上を対人戦システムの紹介に割き、その要点を明らかにしてくれた。

・“Openworld Realm vs. Realm”(オープンワールドの大規模戦闘)

 「Warhammer Online」最大のゲーム要素が、最後に紹介された“Openworld Realm vs. Realm(RvR)”である。これは機能というよりは、ゲームデザインコンセプトそのものだ。これをお伝えする為にまず、「Warhammer」というファンタジー世界が持つ特徴について説明しておく。

 「Warhammer」という題材がそもそも日本ではあまり知られていないが、北米ではよく知られたファンタジーブランドだ。長い歴史があり、オリジナルはミニチュアを使ってプレイする戦闘志向のボードゲーム。「Old World」と呼ばれる中世ヨーロッパ的な土地を舞台に、ドワーフやエルフといったおなじみのファンタジー種族が登場する世界だ。この世界は種族・勢力毎に軍隊が組織されており、それらの間で繰り広げられる戦争が物語の主題をなしている。本作「Warhammer Online」の世界はこれを継承しており、プレーヤーは善の勢力である「エンパイア」、「ドワーフ」、「ハイエルフ」、もしくは悪の勢力「ケイオス」、「グリーンスキン」、「ダークエルフ」のいずれかに所属してゲームをスタートする。

 本作における最大の特徴は、これら敵対する善悪の勢力の関係を完全にゲームコンセプトとして生かしている点だ。この世界では敵対する勢力同士が「永久的、継続的な戦争状態」にあって、そもそもプレーヤーが世界に存在しているだけで、すでに対人戦が始まっているようなものなのである。それは定められたアリーナでスポーツ的に戦うようなものだけではなく、勢力全体の版図を塗り替えるほどにダイナミックに展開するのだ。本作ではこの世界観をゲームとして実現するため、以下の2つの大規模戦闘形態がある。

“Scenario RvR”と呼ばれるモードでは、国境の特定の地域が一種の闘技場となり、互角の条件で戦いが楽しめる
 1つめは、“Scenario RvR”と呼ばれるモードだ。このモードでは、あらかじめ決められた戦場に、敵味方それぞれほぼ同レベルのプレーヤーがマッチングされ、互角の条件で戦うよう、システマティックなゲームルールが構成されている。これは従来のMMORPGでもよく見かける形態だ。

 2つめが本作の本質、“Openworld RvR”である。先に述べたように、これはゲームモードというよりは、世界全体を支配するゲームコンセプトそのものだ。この種に分類される大規模戦闘の形態は、規模に応じて次の3つのレイヤーから構成されると説明された。

デモ映像では、敵対勢力と遭遇して戦う様子が紹介されていた
 最も小さな単位のレイヤーが、“Skirmish”(遭遇戦)と呼ばれる戦闘形態である。これはシステマチックに構築されたゲームルールというよりは、ゲーム世界が“Open”であり、戦争状態が常に継続しているという、ゲームコンセプトから自然発生する戦闘である。当然システム的には互角の条件で戦うなどほとんど考慮されず、プレーヤーは、負けたくなければ数を揃えてから紛争地域に乗り込め、ということになるだろう。

 次のレイヤーが“Battlefield Objective”(オブジェクティブ戦)と呼ばれる戦闘形態で、このレベルでは、世界各地に配置されている「オベリスク」のようなオブジェクトを争奪して局地戦を戦う。どちらかの勢力が、守るべきオブジェクトを失い、戦力を喪失すれば決着がつく。

 その上位レイヤーに位置するのが、“Keep Siege”(攻城戦)である。このレイヤーでは、各勢力が保持する拠点を巡り、カタパルトやトレビュシェットといった攻城兵器をも交えた戦いを繰り広げる。拠点が落ちれば、その地域の支配権は勝利した陣営の手に渡る。

本作における戦闘は、「継続的な戦争状態」から自然に発生する、3つのレイヤーに分類されている。イメージ的には、プレーヤーが巨大な戦略ゲームのコマとなって、大きな戦いを推し進めていく感じだといえるかもしれない

・全ての戦闘が壮大な「キャンペーン(戦役)」を構成する!

これは「キャンペーン」のイメージ映像。街道で繋がれた地域の最前線が光り、紛争状態を表現しているようだ
 本作最大の特質は、上記で説明した“Openworld RvR”を構成する各戦闘が、さらに上位の目的を達成するために存在することだ。今回のプレゼンテーションで示された地図には、勢力の版図を示す点と、それらを結ぶ街道が示されていた。この地図に示された版図を取り合うというレベルで進行する戦いが“Campaign(戦役)”であり、本作のもっとも基本的なコンセプトとして、すべてのレイヤーにおける戦闘が結実する場なのだ。

最終的には勢力の首都までも破壊されてしまうという。敗者の運命や如何に
 「Warhammer Online」における各陣営は、広大な世界を舞台に遭遇戦、オブジェクティブ戦、攻城戦を行ない、版図を奪い合い、最終的には敵対勢力の首都までも攻め滅ぼすことになる。そして、戦役に敗北した勢力の首都は焼かれ、破壊され、全ての財産が奪われる。プレーヤーの努力によって成長した都市は、戦役の敗北によって灰燼に帰する運命にあるわけだ。デモ映像では、炎上した都市で逃げまどう人々、そして、城門からなだれ込む戦士達の姿が描かれていた。

 Hickman氏による大規模戦闘の説明は、時間切れのためここで終了した。敗北した勢力がどうなってしまうのかという問題が不明なままだったのは残念である。しかし、ここで説明された“Openworld RvR”というゲームコンセプトの神髄は見えてきた。つまり、「Warhammer Online」は、1人ひとりのプレーヤーの視点レベルでは冒険や対人戦を楽しむMMORPGの姿をしているが、最上位のレイヤーでは、国盗り系の戦略ゲームなのである。

 したがって、プレーヤーそれぞれの立場に応じて、各自が果たすべき役割は幅広いバリエーションを持つことになるだろう。現場で戦う1人の戦士から、部隊を束ねるギルドマスタークラスの指揮官、そして「どの地域を攻め取るか」といった戦略決定を下す、将帥クラスのプレーヤーというふうに、戦役を巡って展開する、プレーヤーコミュニティの大きなうねりを目の当たりにできる可能性がある。そのコンセプトだけに注目すると、本作の雰囲気に近い既存の作品は「World of Warcraft」ではなく、「EVE Online」や「World War II Online」など、プレーヤードリブンで全てが展開するタイトルが思い起こされる。

 実際のところ、今回のプレゼンテーションでは基本的なコンセプトが示されたのみで、戦役が展開するにあたって、プレーヤーがどのレベルの意志決定を行なえるのか、また、戦役の決着がついた時点で世界がリセットされるのかどうか、などの部分は紹介されずに終わった。続報によっては、想像以上のものになるとも、そうならないとも言えるが、期待感は大きい。

 なお、本作を開発するEA Mythicスタジオは、現在のEA傘下に収まる以前に、MMORPG「Dark Age of Camelot(DAoC)」を開発している。彼らは「DAoC」でも本格的な攻城戦を実現しており、大規模戦闘に関する開発経験は豊富だ。本作はその経験を生かして制作されているとのことで、最終的な仕上がりには大きな期待がもてる。近く新たなベータテストが予定されているので、今後の動向を注視していきたい。

【Warhammer Online: Age of Reckoning】
キャラクタデザインはやわらかめで、アジアでも受け入れやすい印象を受けた。それでいてグラフィックス全般の質感は高い水準にあるので、ある程度低スペックのPCでも動作するかどうか、気になるところである

【Warhammer Online: Age of Reckoning】
こちらはモンスターのイラストだと思われる。実際のゲームフィールドでお目にかかる時を楽しみに待ちたい


□Electronic Artsのホームページ
http://www.ea.com/
□「Warhammer Online: Age of Reckoning」のページ
http://www.warhammer-online.jp/japanese/home/
□関連情報
【2007年9月20日】EA、クローズドイベントに新作を多数出展
古典的名作「ポピュラス」がDSで復活!
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【2007年7月15日】Electronic Arts、Ubisoftブースレポート
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【2007年7月13日】第5回China Digital Entertainment Expoが中国上海にて開幕
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【2007年6月4日】米EA Mythic、「Warhammer Online: Age of Reckoning」
βテスターの募集を開始。日本語版サイトでも日本枠を用意
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【2007年4月3日】米EA、MMORPG「Warhammer Online: Age of Reckoning」
日本を含むアジアでもサービスを展開
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【2006年8月28日】「Dark Age of Camelot」第3回ファンイベント開催
会場が一体となる暖かい雰囲気、今後の展開や「Warhammer Online」の姿も
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【2006年6月21日】米EA、大手MMOデベロッパーMythic Entertainmentを買収
「EA Mythic」ブランドでEAのオンラインゲーム事業を推進
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【2006年5月14日】Mythic Entertainmentブースレポート
すべての要素をRvRへと集約する、力強さと独特のユーモアに満ちたMMORPG
「WARHAMMER ONLINE: AGE OF RECKONING」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060514/e3_war.htm

(2008年3月9日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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