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入学式では、デジタルエンタテインメントアカデミーの学長・平野雅一郎氏のほか、来賓として、社団法人コンピュータエンタテインメント協会(CESA)の専務理事・堀口大典氏、株主代表として、株式会社カプコンの執行役員 東京支店長・山田節雄氏と、テクモ株式会社の執行役員 ハイシナジープロダクション本部長の原尾宏次氏の3名が挨拶を行なった。平野学長は、新入生を前にして「本校のカリキュラムは厳しい」と辛口のコメントから入り、「卒業までめげずに頑張ってほしい」と新入生たちを鼓舞した。 そして、毎年恒例となっている、入学式の後に実施される「特別講演会」では、株式会社カプコンの常務執行役員 開発統括本部長の稲船敬二氏が「次世代機に見るゲームの将来」と題して講演を行なった。なお、ここからは在校生も列席し、新入生とともに稲船氏の話に聞き入っていた。 氏は、カプコンに入社することになった経緯から講演を始め、ファミコンで遊んだ数々のゲームに魅力を感じてゲームクリエイターになろうと思ったことや、入社試験のタイミング次第では、今頃「コナミの稲船」になっていたかもしれないことなど、時折、笑い話を交えて緊張感漂う会場の雰囲気を和ませながら、話を展開していった。 そういった中で、特に印象に残ったのは「世の中には、乗り越えなければならない壁がいくつもある」ということについて。 とにかく利益を最優先し、いわゆる“売れる”ゲームを求める企業側と、自分たちの思う面白いゲームを作りたいクリエイター側の考えが、必ずしも一致するとは限らない。これは、ゲーム制作において、もっとも悩ましい点であると稲船氏は言う。特に、新ハードが発売される際には、そのハードがどの程度売れるのかを予測することが困難なため、新作ではなくネームバリューがあり、ある程度の利益を見込めるタイトルの続編が出されることが多い。実際に、カプコンでもこういった考え方が主流となっているようだ。 だが、氏は「新ハードでは、どんなことができるのだろう」と期待を膨らませているユーザーの気持ちを重視し、プレイステーション登場時には「バイオハザード」を、プレイステーション 2登場時には「鬼武者」をというように、常に新作を世に送り出してきた。 もちろん、発売に至るまでには、一企業として利益の追求を重視する経営サイドと何度もぶつかり、その都度、お互いが納得できるまで意見をぶつけ合うことで、立ちはだかる大きな壁を乗り越えてきたと熱く語った。 それを象徴するのが、2006年の9月(アメリカでは8月)にXbox 360用のソフトとして発売された「DEAD RISING」。救助のヘリコプターが到着するまでの72時間、ただ生存していればいい(ゾンビと戦い続けても、屋上のヘリポートで救助ヘリを待ち続けてもいい)という自由度の高さから、日本人には受け入れられないのではないかという経営サイドと品質管理部の予想(この部署が「ダメだ」と感じたタイトルは、ほとんどが売れなかったらしい)を覆す、カプコンで41作品目となるミリオンセールスを記録した。今や、海外の営業から「続編をぜひお願いします」と要望がきているという。 この点について「続編については、この場では作っているとも作っていないとも言えない」としながらも「(社内で否定的な意見が多かったことから)作るつもりはなかったので、現状では制作ラインもなく、てんてこまいです」と続けた。
稲船氏は、「ゲーム制作に関して、自分たちの世代は大変苦労してきた。それを、これからのゲーム業界を担う人たちに味わってほしくないので、少しずつ時間をかけてゲームを作る環境を整備してきた。これは、決して楽をするためではなく、クオリティを上げるためである」と述べ、最後に「カプコンを世界一のゲームメーカーにしたいという夢があり、それを叶えるには、皆さんのような若い世代の力が必要です」と、次世代を担うゲームクリエイターの卵たちにエールを送って講演を締めくくった。
□デジタルエンタテインメントアカデミーのホームページ http://www.d-e-a.co.jp/ □関連情報 【2006年4月6日】DEA、第15期生入学式を挙行 スクウェア・エニックスの橋本氏が特別講演を実施 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060406/dea.htm 【2005年4月7日】DEA、第14期生入学式で特別講演会を開催 PS2用新作「グランディアIII」のデモプレイを実施 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050407/dea.htm 【2005年1月11日】DEA、特別講演「ドラゴンクエストVIIIへの道」開催 堀井雄二氏「次回作はもう一度3Dでやりたい」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050111/dea.htm 【2004年4月8日】デジタルエンタテインメントアカデミーの入学式で日野晃博氏が講演 堀井雄二氏らとともに未来のゲームクリエーターにエール http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040408/dea.htm (2007年04月05日) [Reported by 中野信二]
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